今年8月、中国の中医内科学の「主治医試験」に合格することができました。
日本人では間違いなく初めて、外国人でも初めてだと思います。本来は、医学博士を取得した翌年に受験できるハズでしたが、外国籍の問題でなかなか実現しませんでした。
職称試験は、中国人の医師が受験するのは当たり前なのですが、これが外国人となるとなかなか大変で、私もまずは中国の永住権を取得して初めて受験資格がもらえました。以前は、永住権を持っている外国人でもダメで、一切門戸を閉ざしていた資格でもあります。しかし2年前の制度改革で、ついに受験が可能になったことは、私にとってはラッキーでした。ものは試しと言うことで、私も早速チャレンジしての今回の合格でした。今年は例年通り
60%の得点率で合格だったようです。
ちなみに、公立病院に勤める中国人の医師にとっては、職称は将来もらう退職金の額とも関係してくるため、非常に重要な資格でもあります。
職称は大きく分けて中級・副高級。高級の3段階あるのですが、医師・薬剤師など医療系以外でも、小中高大学の教職や弁護士などの国家資格にはすべてついてきます。私が今回合格できた主治医はこの中で「中級」に相当します。また専攻では今回私は中医内科を受けましたが、中医学では中医内科学・中医外科学・中医小児科学・中医鍼灸学・・・などいくつかの専門に分かれて受験します。私も次の資格を目指して勉強していきたいと思っています。うちの妻も、全科医・中医内科医・鍼灸医の3種類の主治医師資格をもっています。まあ、冷めた中国人はそんなの必要ないと言いますが、私は勉強するキッカケとしては決して悪いものではないと思います。知識の補充にもなりますし。
詳しいことは、日本の東洋学術出版社が発行している季刊『中医臨床』2016年9月号に「中国の医師職称制度〜外国人初の主治医師資格(中医内科学)合格体験記〜」で紹介していますので、関心のある方はぜひご一読ください。
この職称制度によって、医師は西洋医学・中医学(中国伝統医学)にかかわらず、医師免許取得後のキャリアに応じて職称をスキルアップしていくのですが、日本だと専門医制度と似ているのかもしれません。ただ、中国の場合は職称資格は国の一括で行政(人力資源社会保障部)が管理していて、統一試験の形で実施されています。こうした医学系の試験は問題のデーターベースがあるそうで、すべてパソコンで行われます。一般に、大学や各種学校には大きなパソコンルームが完備されていて、筆記用具などの持ち込みは一切禁止で、パソコンの前でキーボードから択一試験を解いていきます。この方法だと、マークシートを塗り違える心配もありませんし、前後左右で受験する専攻科目が違うので、カンニングの心配もありません。こうした試験システムは、さすが科挙の国中国だけあり、ほんとうによく出来ています。日本も見習えるところがあるかもしれませんよ。
ただ、受験したのは上海の5月後半、梅雨前のジメジメしたときに、1日かけて朝から晩まで行われた試験はさすがに疲れました。
出題範囲は、私の専攻である中医内科学以外にも、中医学の基礎科目全体と西洋医学との融合問題、症例問題、法律・倫理・心理学なども含みます。一応、1000ページぐらいの参考書も売られていて、それをみて練習問題も解きつつ復習しました。相変わらず、中国の参考書は字面ばかりで図などで一切整理しないのが特徴ですね。
主治医資格を取得すると、初級(住院医師)医師の指導にあたるほか、他院でのアルバイトも認められます。また、有名な先生について公式に弟子入りして勉強するときも、最低限の資格として求められたり、行政での仕事でも資格として必要となることもあり、中国で医師として仕事をしていく上でも最低限の職称となります。
とはいえ、一連の職称取得レース(?!)のなかでは、主治医師の資格はまだまだ入り口。今回、外国人の私が初めて受験できて、さらに合格したことで、中国の職称制度にもすこし風穴を開けることができたのではないかと思っています。
次に向けて、まだまだやることがいっぱいです。
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posted by 藤田 康介 at 00:00|
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