2013年06月20日

上海での男性の更年期障害の研究

 上海長海医院泌尿外科の孫教授等のグループが行っている遅発性男性性機能低下症(いわゆる男性更年期障害、LOH)の研究は、上海市の重大基礎性研究の一つにもなっており、中国で初めての中年世代を対象とした男性更年期障害の疫学調査として注目されていました。
 この研究では、上海市仁済医院・第五人民病院など各病院の協力を得て、3,000人の中高年男性を対象に血液中の総テストステロンと遊離テストステロン濃度など各種ホルモンを測定したところ、50歳以上の男性のうち発病率は11.6%ということでした。

 中国全土だと、少なく見積もっても1.5億人〜2億人の50歳以上の男性が居ることから、LOHの症状がある人は少なくありませんが、中国での研究はまだ始まったばかりです。

 一般に、男性は40歳を境にテストステロンの濃度が下がっていきます。それに伴い、性欲が減退したり、夫婦生活の回数が減ったり、疲労や肥満、気分的な落ち込みなどの症状がみられるようになります。また、場合によっては心臓病や悪性腫瘍、精神病などの発生とも関連があるとも言われていますし、肥満の場合は、テストステロンの低下がさらに早まるという研究結果もあります。

 西洋医学では筋肉注射によるホルモン補充療法などが一般的ですが、ここに中医学を介入させてみようという研究もあります。

 中国の中医学系の文献を見てみると、やはり腎から考えることが多いようです。よく使われるのは六味地黄丸とか金匱腎気丸などが有名ですが、中国で、単味生薬を使った薬理実験では、五味子や菟絲子も有効なほか、淫羊藿や蛇床子には男性ホルモン的な働きも確認されています。補腎系の生薬には視床下部ー下垂体ー性腺軸の調節作用があることが知られています。

 以上のように、女性の更年期障害には中医薬はかなり有効ですが、もちろん男性にも使うことは可能ですし、今後の研究にも期待したいところです。


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2013年06月19日

北京・上海で増える喘息患者

 5月にニュースになったのですが、中日友好病院の林江涛教授らのグループが、中国ではじめての成人を対象とした喘息患者の疫学的調査を行い、その結果を発表していました。

 この調査では、中国全国7つのエリアの8都市で行われ、調査対象は16.4万人。そこから、喘息の罹患率は1.24%となり、男性よりも女性のほうが多いことも分かりました。特に、10年前を比較すると、北京地区で147.9%、上海地区で190.2%の増加となっていることも分かりました。この割合で行くと、中国全国で3000万人の喘息患者がいる計算になります。

 私も、日々の臨床で喘息患者が増えていることは感じますが、そんなに増えているとは驚きです。

 様々な原因が考えられますが、研究グループによると喫煙の問題、母乳をあげない育児の増加、父母世代のアレルギー体質、アレルギー性鼻炎や肥満、動物の飼育などとも関連があるとしています。このなかには、大気汚染の影響については触れられていませんでしたが、今後の研究課題として注目されることかと思います。

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2013年04月29日

中国江蘇省にみる長寿の人たちの生活方式

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 日本同様に、中国でも高齢化が進んでいます。上海市の場合、2012年の平均余命は82.41歳で、2011年の82.51歳と比較すると若干落ちましたが、それでも2005年以降80歳以上をキープしています。

 そんななか、江蘇省が100歳以上の高齢者を対象に調査した、彼らの生活方式について興味深い結果が報告されていました。江蘇省といえば、如皋のような、中国全国でも有名な長寿の街があります。米や野菜が豊富に収穫できるエリアです。

 さて、運動に関してみてみると、大部分はあまり激しい運動をする習慣がないということでした。特に、運動のしすぎは身体によくないと考えている人が多いようで、だけど散歩とかストレッチとか、気分をすっきりさせるような運動をするようです。中医学と関係のある運動も、一般的にはゆっくりした動作が多いですからね。

 また、食べ物に関しては、大豆製品を食べる人が多いという特徴です、毎日大豆製品を食べると言う人は、全体の90%以上だそうです。野菜に関しては、1日2〜3種類食べて居る人が最も多く85%に、その他にも肉や魚、卵もしっかりと食べているようです。

 果物に関しては、毎日食べているという人は25%程度で、偶に食べて居ると言う人も合わせてやっと50%程度。殆ど食べて居ないという人も25%ほどいました。食べ物が比較的豊かに揃う現代では、そこまでして果物を食べる必要はないのかもしれませんが、やはりバランスよく摂取したいところです。

 主食は、米以外にもジャガイモや山芋、落花生や粟など雑穀を食べて居る人が多く、また生野菜の和え物(涼伴菜)として、キュウリや大根、ニンニク、アスパラガスなどもよく食べて居るようです。熱する食べ物が多い中華料理ですが、うまく生野菜も摂取していることが分かります。

 また、食べ物はなるべく地元でとれるものを重視。特に、田舎などにいくと野菜程度は自分で植えてしまう人が多く、食べる直前に収穫して調理しているのだそうです。肉も魚も新鮮にこだわっています。また、栄養価の損失を極力避けるために、1晩たった野菜料理は食べないというのは、中華料理の鉄則でもあります。

 飲み水に関しては、7割の人が、水を飲むことを好み、朝起きたら水を飲む習慣があるそうです。飲むものはお茶よりもむしろ白湯。そして、お粥を食べることが多いという特徴もありました。生姜茶や生姜を食材として使うことも多いようです。

 ちょっとしたことばかりですが、我々もぜひ実践してみたいですね。

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2013年02月15日

大丈夫か?上海人の小学生の体力

 確かに、上海のような運動場も十分に確保できないローカルの小学校では、存分に体を動かすと言うことは難しいわけですが、でもそのツケはじわじわと子供たちの建康を脅かしているような感じがします。
 上海に同済大学体育部と上海海洋大学の体育部が行った研究で、上海人の子供たちの体力が日本人と比較して劣っており、運動量の不足が深刻であるという結果が発表されていました。
調査の対象となったのは、上海市楊浦区のある学校の545名の小学生です。

 この中で、運動が好きだと答えたのは全体の90%以上だったのに、大部分が「運動する時間がない」という答えだったとか。とくに、学校の業間の休み時間に何をするか?という質問に対しては、低学年ではまだ運動場で遊ぶことが多いものの、高学年になると本を読んだり、おしゃべりをしたりする人が多く、外には出て行かないようです。さらに、4〜5年生を対象とした調査では、放課後に屋外で遊ぶというのは3割程度で、遊ぶ内容も最も多いのが羽根を蹴飛ばす蹴羽根。あとは自転車とか縄跳び程度。私達が子供の頃によく遊んだ球技類は全然入ってこなかったということです。球技好きな日本人の子供達とは全く違いますね。

 確かに、上海で比較的運動量の多い幼稚園に通わせているお子さんでも、日本に戻ったときに日本の幼稚園に通わせると、体力が続かなかった、という話も聞いたことがあります。

 ちなみに、上海の小学生の体力測定で、もっとも成績が悪いのがボール投げと持久力だったらしい。球技ができない子供時代って、私からするとちょっと想像できないけど、確かに、上海でキャッチボールとかをしている子供たちの姿は見たことがありません。

 もう一つ気になるのは、身長・体重・肥満率ともに、上海人の子供たちは、日本人の子供よりも高いということ。これには、食生活の問題が大きいと思われます。こっちの小学生は、自由に買い食いしていますし、特に夕食前のお菓子の摂取が多いことが分かっています。朝食に関しては、8割以上が食べていますが、大部分は登校時に歩きながら食べたりしていうことが多いみたいです。

 一方で、上海医薬高等専科学校の調査では、毎日朝食を食べている8〜13歳の小学生の割合は68%で、全く朝食を食べないという小学生も2.6%いました。さらに問題となっているのはその中身で、朝食で過去3日間に炭水化物しか食べて居ないという子供たちは35.7%、タンパク質しか食べて居ないという子供も15.2%いました。タンパク質しか食べないというグループで多かったのが、朝食に牛乳と卵だけ、炭水化物系ではパンや饅頭だけといったパターンです。共働きが多いのも原因かもしれませんが、朝にしっかりとお母さんがテーブルに朝食を用意しているところも少ないみたいです。やはり、子供には最低でも主食+タンパク質(肉類、乳製品など)+野菜・果物の組み合わせが必要ですね。

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 写真は、上海の朝のコンビニで並んでいたとき、ある中国人のOLさんが選んだ朝食です。甘い菓子パンにアイスクリーム、クッキーにおでん(関東煮)という組み合わせでした。朝食をバランスよく食べる習慣がなかったら、こんなことになるんだなあと思いました。しかし、朝からハーゲンダッツというのもすごい。


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2013年01月17日

昨今の大気汚染が体に与える影響

 今日は久しぶりに上海でも青空が顔をのぞかせています。それだけでも、なんとなく気分がいいものですね。PM2.5の上昇にともなる大気汚染の悪化は、とりあえずは冷たい空気の南下で多少汚染物質は拡散されたようです。お昼前後のPM2.5も150を割っています。

 さて、大気汚染の悪化にともない、上海市内の病院は呼吸器疾患を中心に、患者数が急増しているようですが、具体的にまずはどういった症状に注意しないといけないのか、私もよく聞かれるので整理してみました。

 まず、よく言われるのが喘息の発作です。スモッグが出ている時は、空気の流れがよくないので、容易に有害な微粒子を吸い込みやすくなります。そのため、粘膜を刺激し発作がおこるというわけです。また、スモッグが出やすいときは、一般的に気温の変化が大きいことがおおいです。そんなとき、気管支炎や咽頭炎もおこしやすくなります。対策としては、マスクをしたり、水分をとることが必要です。特に、冬場は季節柄、子供もあまり水を飲めていないので、こまめに適量の水分を摂取するようにしたいです。でも、日本で喘息の発作が出ていた人が、中国にくると必ずしも出るとは限りません。逆に治まってしまった人も見かけます。

 さらに、意外と忘れられているのが、空気が悪いときに脳溢血や高血圧が発生しやすくなるということです。スモッグが出ている時、気圧が下がるため、空気中の酸素濃度が相対的にさがります。そのため、胸の不快感、頭が痛いなどの症状を訴える人が少なくありません。

 そして、結膜炎の人もよく見かけます。大気汚染により、刺激性のある有害物質が目に炎症を起こすからです。

 ただ、大気汚染はけっして常時悪いわけではありません。光化学スモッグのように、様々な気象条件とも関係があって悪化します。よって、HPなどで数字を確認しながら、適切に対処しなければいけません。ちなみに、先日あれだけ数字の悪かった北京の大気汚染も、今では普通のレベルに戻っています。

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2013年01月11日

中国での癌の分布状況

 中国の全国腫瘍登記中心がまとめた『2012年中国腫瘍登記年報』が初めてまとめられ、公表されました。これは、中国全国24省にある72箇所の観測点で調査されたもので、人口では8500万人をカバーしているということです。これによると、毎年新しく癌と診断された症例は312万例で、1日平均すると8550人になるということです。つまり、1分間につき6人が癌と診断されたことになり、中国のマスコミでも大きく報道されました。

 年齢別に見ると、35〜39歳での癌の発生率は10万人中87.07人、40〜44歳では倍増して10万人中154.53人、さらに60歳以上になると発生率は1%を超えるようになるということです。癌による死亡率の男女比は、男:女で1.68:1となり、男性の方が高いことが分かりました。

 癌の発生に関しては、明らかに地域性があり、河南省・河北省エリアでは食道癌、胃癌は、上海・江蘇省・甘粛省・青海省、肝臓癌は中国東北エリアと広東省など南部沿岸エリアになっています。食生活との関係も高そうですね。

 癌の種類別では、肺癌・肝臓癌・胃癌・食道癌・大腸癌となりました。北京を例にみてみると、肺癌が急増しており、2001年〜2010年の間に北京市での肺がんの発生率は56%増加し、新たに発見された癌の五分の一は肺癌ということです。タバコや大気汚染との関係が指摘されています。

 中国では都市化が急に進んでいますが、それにともなう生活環境と食生活の変化は非常に大きいです。人口が多いだけに、数や規模も大きくなってしまいますが、何らかの手立てを考える必要があります。もちろん、中医学も応用され、一定の効果をあげていはいますが、この数字から分かるようにまだまだ研究段階であることは否定できません。


posted by 藤田 康介 at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年12月18日

大気汚染に上海市教育委員会も動き出した

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(今朝の世紀公園)

 今朝、上海のマスコミでも報道されたので、ご存じの方も多いかと思いますが、ついに上海市教育委員会と上海市環境保護局が、大気汚染時の市内幼稚園・小中学校への対応についての規程を定めました。
 AQI指数がすでに対外的に発表されていることは、上海大気汚染の新指標「AQI」の見方でもお知らせしていますが、それ以外にも大気汚染が基準値を大きく超えたとき(警報レベル)には、SMS方式で学校に伝えるという仕組みです。通知を受け取った学校は、屋外での運動を控えたり、体育の授業を他の授業に切り替えたりするように対応します。

 また、大気汚染の状況が改善された場合(警報解除)も通知が出されるようです。

 上海の大気汚染度に関しては、今や公式情報でも様々なサイトが登場しています。

 HPでは、上海空気質量実時発布系統 http://www.semc.gov.cn/aqi
 新浪Weiboでは、上海環境というのもあります。http://weibo.com/shhjbh
 
 ちなみに新浪Weiboは私もやっています。藤田康介で検索(中国語でも日本語でもOK)していただければ、見つかると思います。

posted by 藤田 康介 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年12月02日

上海地区で近年急増している大腸癌

  上海エリアで癌の発生率で一番多いのが肺癌で、近年も増加傾向です。大気汚染との関係も指摘されており、「肺癌と中国の大気汚染問題」にも記事を書きました。

 さて、その次に多い癌が大腸癌であることをご存じでしょうか?とくに、この50年間で上海エリアでの大腸癌の発病率がなんと5倍にも増えています。1962年の大腸癌の発病率は10万人に8.7人だったのが、2008年には10万人に48.4人にまで増えました。



 復旦大学附属腫瘤病院のデータによると、この大腸癌のうち、結腸癌が全体の4割を占め、直腸癌が全体の6割ということです。また、発病年齢は年々高齢化し、中位年齢はいまでは70歳に届こうとしている一方で、発見される時期が遅く、50%が発見段階で肝臓に移転しているということでした。また、ステージ1で発見された人は、11.8%しかおらず、まだまだ低い状態です。



 中国では、とくに上海など大都市では、飲食の変化が顕著です。以前はあまり口にできなかった肉料理が、もの凄い勢いで増えてきていますし、食生活の乱れも問題になっています。伝統的な中華料理(上海料理)はまだヘルシーなのに、いったいどこにいってしまったのかと思いますね。

 なお、大腸癌の予防としては、歩くことも有効です。以前に1日30分歩くことと大腸癌のリスクというような記事も紹介しました。

 適度に動くこと。ぜひ実践したいですね!




甘霖・我が愛しの上海へ
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年12月01日

上海の子供は成人病予備軍

 私もこれまでに上海の日本人学校に呼ばれて講演したこともありますが、日本人に限らず、上海人の家庭でも、子供の食育問題は極めて深刻な状態ではないかと思っています。

 特に、上海人の家庭の場合、食生活がますます豊かになり、選択肢が増えすぎていることとも関係があります。また、子供の学校給食も日本のようにきっちりと栄養を考えたものになっているわけではなく、嗜好任せというのが現実らしい。そもそも、40代前後の親の世代で、食育に対する正しい認識が非常に低いのが問題と思います。ぶくぶくに太った子供たちを上海でよく見かけますよね。

 そこで、上海市衛生局では、子供の栄養状態を管理するために、市内17箇所の小中学校を対象に、栄養を考えた給食など食生活のあり方の改善を行っています。

 上海仁済医院の調査では、市内6箇所の小中学生3000人のうち、体重オーバーもしくは肥満と認められた子供の割合は24.6%で、このうち脂肪肝は体重が正常グループでは0.2%しかいなかったのに、肥満グループでは36.9%もいました。また、高血圧も正常グループでは5.8%だったのに、肥満グループでは21.7%いました。つまり、上海の子供たちの多くは、幼少期から成人病の脅威に曝されているというわけなのです。

 また、栄養士による学校給食の調査も行われました。この結果、子供たちの好む揚げ物が多い傾向にあり、緑黄色野菜や大豆製品が少ない傾向にあることも分かってきました。私のところに来ている上海人の子供の患者さんも、まずい給食は残飯に直行のようなことを平気で言っていました。また、インターなどでは、ピザとか高カロリーのメニューがしょっちゅう出てくるのだそうです。

 そこで、上海市の金山小学校では、学校給食のメーニューに1年間にわたって栄養士を介入させると、脂肪肝・高血圧・体重に関しては大変な効果があったようです。また、肥満対策として食事内容を日記として書かせたり、今後のフオローも行うようです。ただ、まだ一部の学校で始まったばかりなので、広く普及することが望まれますね。

 上海の場合、共働きが多いからか、外食する子供たちが多い傾向にもありますし、朝食を抜いたり、歩きながらお菓子を食べて済ませる子供もよく見かけます。親からして、十分な食育をうけていないので、それを子供に伝えること自体が難しいかと思いますが、我々も臨床を通じて地道な努力をしていくしかないのです。




甘霖・我が愛しの上海へ
posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年11月18日

上海大気汚染の新指標「AQI」の見方

 どうも最近、うちの中医クリニックの臨床でも咳が止まらないという患者さんが多いです。西洋医学の病院で一通りの検査やレントゲンをとって異常は見当たらず、薬を処方されているのでは、効果があまりないというパターンです。咳・痰といえば、昨今の大気汚染の影響も考えられるわけで、全般的な対策が必要になります。

 上海市の大気汚染は季節によってその原因がいろいろ異なりますが、一般的に冬〜春にかけては黄砂が原因のPM10が上昇し、夏はオゾンが、秋冬の今の時期はPM2.5が上昇する傾向にあります。また、地域的にみても、上海の西部・西北部・西南部は空気がよくなく、海に近い東南部は比較的汚染が軽い傾向があります。そのため、これまで空気が良い場所として、モデル地点に指定されていた青浦区淀山湖がモデル地区から外されました。理由は、空気がよい地区の基準のはずなのに、大気汚染が進んでいることが明らかになったからです。今後、奉賢区や浦東新区南東部などに新たな基準地点が設置される予定です。

 そんななか11月16日から、上海市では大気汚染の指標として、あらたにAQIが導入されました。

 さて、このAQI指数に関しては、これまで中国で使われてきたAPI指数と大きな変化があります。中国の大気汚染基準はこれまではおもにPM10・二酸化窒素・二酸化硫黄をベースとしたAPI指数を1日1回発表していました。しかし、市民の間から、体感する汚染度との間に開きがあるという声が出ていました。そこで、AQI指数指数では、APIの指標に加えて、PM2.5・一酸化炭素・オゾンの3項目が追加され、6項目になりました。また、発表ペースも1時間に1回となり、発表するためのShanghai Enviromental Monitoring CenterのHPも作られました。これはかなり画期的なことだと思います。これまでは、アメリカ領事館など一部でしかPM2.5の数字が分かりませんでしたが、やっと政府公式の数値が出されることになったのです。

 さて、そのAQi指数の見方ですが、一応以下のようになっています。

緑色:優秀(1級)・・・・・AQI 0~50 汚染ほぼなし。

黄色:良(2級)・・・・・・AQI 51−100 汚染度可。ごく一部の人たちに汚染物資影響有。

オレンジ色:軽度汚染(3級)AQI 101−150 軽度汚染。健康な人でも刺激症状あり。

赤色:中度汚染(4級)AQI 151−200 弱い人への反応大。健康な人でも心臓・呼吸器に影響の可能性あり。

紫色:重度汚染(5級)AQI 201−300 心臓・呼吸器疾患のある人はさらなる症状悪化に要注意。持久力が低下し、健康な人でも 症状がでる。

茶色:厳重汚染(6級)AQI 300以上 健康な人の持久力は明らかに低下し、強い症状が出て、疾患が出てくる。

 そこで、このブログを書いている11月18日未明のデータをみてみますと、AQI指数は192で、4級の中度汚染レベルであったことが分かります。

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 今回のAQI指数が定められたことで、さらに画期的なことが行われると発表されました。それは、上海市の環境保全部門による、大気汚染警報の発令です。日本でも、光化学スモッグ警報などがありますが、上海ではこれまでありませんでした。そこで、上海市では重度の汚染になったら、教育委員会を通じて屋外での体育などを行わないようにする制度をはじめるようです。これは大きな前身ではないかと思います。

 ただ、学校のある場所で、AQI指数を測定できているわけでもないので、今の段階では、個人での判断も大切で、日々発表されるデータには注意を払うべきだと思います。マラソンなどそとで激しい運動をするときは、ぜひチェックしてみてください。

 ちなみに、同様の制度は、長江デルタエリアでは行われていて、江蘇省の13都市、浙江省の11都市で発表されています。




甘霖・我が愛しの上海へ
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2012年11月08日

上海の大気汚染中のPM2.5 が肺に与える影響とその対策(1)

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(どんよりとした上海の朝焼け)

 今日は朝から雨ですね!上海では間違いなく空気が浄化されるので、なんとも嬉しいことです。PM2.5 のレベルもとりあえず、Goodレベルに落ち着いています。

 11月5日に書いたブログの続きになります。この時期、上海で深刻化する大気汚染、とくにPM2.5問題が人体に与える影響について、もう少し考えてみたいと思います。


 PM2.5と呼ばれる浮遊粒子状物質は、遷移元素(鉄・クロム・ニッケル・亜鉛などなど)や硝酸塩、硫酸塩などのほかにも病原体なども吸着して浮遊するという特徴を持っています。これが、呼吸器に入ってくるとかなり厄介で、これまでも各国の研究で、大気汚染が悪化すると、肺気腫や気管支炎、さらに肺癌の発病リスクが高まるということが分かっています。

 復旦大学附属中山医院呼吸器科の李教授らの研究グループによると、PM2.5 が呼吸器系に与える影響として、こうした遷移元素がPM2.5に吸着して肺に入ってくると、局部的に高濃度な金属トランスポーターとなり、強力なフリーラジカルを発生させます。酸化作用が働き、炎症反応となり、場合によっては悪性腫瘍にもなっていまいます。すなわち、肺に取り込まれた浮遊粒子状物質は、肺胞にあるマクロファージによって食べられ、サイトカインや前炎症性分子を分泌し、これらが肺胞の上皮細胞や内皮細胞にも影響をあたえ、さらにサイトカインによってマクロファージ・好中性顆粒球・単球などの炎症細胞が集まってきて、炎症反応を促進させるのです。

 こうした肺胞内の変化は、身近なところでは、喫煙でも起こります。喫煙により、浮遊粒子状物質が肺胞に溜まり、その上でPM2.5の影響を受けると、喫煙の有害性がさらに増幅される可能性があると指摘されています。空気の良くない中国の大都会での喫煙はよくないですよ!

 上海市疾病予防コントロールセンター(SCDC)によると、上海市で発生する癌の30%は肺癌で、肺癌の発生率では中国全国でトップになっています。大気汚染が原因と考えられていますが、その中でも発がん性物質とクルマの排ガスの増加とは関係があります。上海では今、130万台の上海ナンバーのクルマと、50万台の地方ナンバーのクルマが走っています。特に、中国ではガソリンなど燃料の質が悪いのも大きな問題です。PM2.5は、そうした燃料に含まれるPAH(多環芳香族炭化水素)を細胞表面に吸着させる働きがあるほか、PM2.5そのものに含まれる遷移元素系の金属やベンゼンなどの有害物質は、DNAに対しても影響を与え、遺伝子の突然変異を誘発し、癌の発生へとつながります。

 そんなことを考えると、とくに空気の悪い日にマラソンなどの持久走をすることはよくないことは明らかですね。残念ながら、今現在では上海では光化学スモッグ警報のような、関連する規程が出ていません。よって、学校関係の方がもしこのブログをお読みでしたら、ぜひ子供たちの健康のためにも、体育の時間とその時の大気汚染の関係をよく調べていただきたいものです。最近、咳や喉の不調を訴える患者さんがうちの中医クリニックで多いのも関係があると思います。

 PM2.5による汚染は、大気全体と関係があるため、なかなか対策が難しいですが、次回ではその対策を考えてみましょう。



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2012年11月03日

上海でのED(勃起不全)の調査

 中医学(漢方)の分野では、不妊の治療で来られる女性の患者さんは多いのですが、それと比較すると、ED(勃起障害)で来られる患者さんは、意外と少ないように思います。ただ、不妊治療の問題で厄介なのは、やはりセックスレスの問題もあり、そのなかにもEDの問題がちらついていることは否定できません。

 上海市男科学研究所の調査で、上海市の1720人の40〜80歳の男性を無作為に調査したところ、EDの罹患率は49.2%になることが分かりました。人口から推定すると、少なくても230万人の中高年男性がEDである可能性があると指摘しています。

 では、EDとなった原因を検討してみると、高い血糖値がEDリスクのなかで最も高く、一方で中性脂肪に関しては、EDと明らかな相関性はなかったとしています。また、台湾の研究では、腰回りが太くなればなるほど、テストステロン(男性ホルモンの一種)の濃度が下がるという結果もでています。つまり、メタボであると夫婦生活にも影響を与えることになります。

 また40歳以上の中高年男性のうち、56.13%がすでに夫婦生活がないと答え、特に60歳以上ではさらに顕著になっている一方で、これはEDと深く関わりがあると分析されています。しかし、夫婦生活があると答えた698人のうち、39.4%がやはり何らかの勃起障害を抱えているということでした。

 経済的にも豊かになり、食生活にも恵まれている上海。だけど、その影響が様々なところで出始めているのもまた事実。なにが幸せなのか、分かりませんね。


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2012年10月26日

上海で50歳未満の脳梗塞患者が増える傾向

 上海市衛生局のデータによると、上海には600万人の高血圧患者がいるといわれています。このうち、血圧のコントロールができているのが三分の一程度で、血圧のコントロールがうまくできていない人が多いのが現状です。また、よく言われることですが、成人の2割は運動不足(実際はもっとでは?)、4割が肥満、男性の5割が喫煙しているとのこと。さらに、油と塩の摂取では、5割以上で健康に必要な量をオーバーしていると言われているのですが、そんななか近年、50歳未満の脳梗塞が上海で増えていることが明らかになってきました。

 10月に行われた「第4回上海国際脳健康論壇」でも、上海市の3000人の脳梗塞患者を調べたところ、50歳未満の割合が10人に1人となっていて、中でも男性が全体の7割を占めているとのことです。男女比では女性の7倍にもなっています。

 脳梗塞の前兆として、手足のしびれや無力感があることが多いのですが、多くの場合見過ごしてしまうことが多い。実際に、復旦大学付属華山病院の調査では、実際に症状が出て3時間以内に病院に行けた人は、15%にも満たなかったそうです。一方で、若年層の脳梗塞の場合、高齢者と違って昼間に発生することが多く、うまく病院に搬送できれば、十分に回復するチャンスがあります。

 とはいえ、日頃から健康に気をつけることは大切。中国式生活習慣のリスクは必ず頭の中に入れておいて下さい。タバコやお酒を制限し、食べ物もバランスよく摂取するなど基本的なことが大切です。また、最近の上海での日本人駐在員の間でもみられるのですが、キャパシティーを越えた仕事を禁物です。また、血圧のチェックは日頃から忘れないでください。電子血圧計は、上海の電気店で普通に手に入ります。


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2012年10月23日

上海流長寿の秘訣〜長寿の人たちの健康生活研究

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 上海が長寿社会であることは、こちらでご紹介しましたが、では実際にどのような生活をおくっているのか?上海中医薬大学付属曙光医院の徐燕教授らのグループが興味深い研究を行っています。研究では、上海の100人の100歳以上の高齢者を対象に調査しました。
 まず、遺伝的背景では、両親のうち、最低どちらかが80歳以上長生きしているようです。また、体型についてはBMIが18.2±3.3ということで、やせ気味。また、これまで大きな病気をしたことがないという人が75.3%で、糖尿病や心臓病などを患ったことがない人が80%になりました。疾患別にみると、糖尿病を患っている人が1.2%、高血圧の人が16.0%、心臓病を持っている人が7.4%、気管支炎を持っている人が2.4%となっていました。

 さらにすごいなと思ったのは、この100人のBMIや動脈硬化のレベルは全員が正常範囲、HbA1cや血糖値、血脂に関してもすべて正常だったということです。やはり、100歳以上で元気に生きようと思ったら、そうした健康の基礎がなければいけないということなのでしょうか。

 また、中医学的な体質論で分類すると、陰虚であるひとが最も多く、全体の25.4%、痰湿であるひとが21.6%、気血両虚であったひとが12.4%、瘀血であったひとが11.6%、正常体質であったひとが10.3%、湿熱が9.8%、陽虚が8.2%、実熱が0.2%でした。ここから分かるように、全体の半分以上が虚証であり、また長生きをするためには、養生的にも養陰など適度な補法が必要なようです。

 睡眠時間に関しては、平均6.6±0.7時間で、生活は規則正しく、昼寝の習慣もあるということ。運動に関しては、93.8%がこれまでよく運動していたと答え、肉体労働をしていた人も11.1%いました。また、100歳をこえた今でも外で運動している人は18.5%で、自分のことは基本的に自分でできると答えた人は74.1%になりました。何でも自分でできる人が多いみたいです。

 食生活に関しては、清代生まれの彼らにとって、若い頃は貧しく厳しいものがあったようです。今の我々のように、油っぽいものや肉類は少なく、野菜や雑穀が中心でした。そうした生活を、今でも続けている人が多いといいます。主食はご飯で、全体の93.8%。ご飯の量は1回平均で75g。ちなみに、一般的な中国人が食べるご飯の量は100〜150gぐらいです。また、野菜と果物を摂取する習慣はしっかりとあり、毎日新鮮な果物を食べると言う人が88.9%、野菜を食べるという人が87.7%でした。もちろん肉類が大好きという人も21%いました。

 酒・タバコに関しては、タバコを吸っていた経験がある人はたったの3.7%、お酒を飲んでいたと答えた人は8.6%。酒とタバコにかんしては、ほとんどの人がたしなんでいないようですね。一方で、現在でもお酒を飲んでいると答えたのは、2.5%でした。やはり、酒・タバコは健康によくないということでしょうか。

  予想では2011年12月で80歳以上の人口が62.92万人だったのが、2015年になると70万人にも増加するよいわれています。その結果、一人暮らしの高齢者の増加も避けられず、今後の家庭や地域での高齢者に対する支援が求められています。

 上海市では、老後の生活について、「9073」を唱えています。すなわち、3%が専門施設に入り、7%が政府福利政策に基づいた家庭でのケア、そして90%が家族または自分自身のケアで地域のディサービスなどを利用するというものです。今回の100歳以上を対象にした調査では、80.2%が自宅で子供たちと一緒に生活し、14.8%が施設に、また一人暮らしをしている人も4.9%いました。やはり、家族と一緒にいることができるというのは、幸せだと思います。

 ちなみに、上海市で100歳以上生きている1156人のうち、男性は249人、女性は907人と女性の方が圧倒的に多かったです。やはり女性強しですね。

posted by 藤田 康介 at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年10月19日

中国での性早熟症と環境汚染の関係(2012年記)

 私が今から5〜6年ほど前に復旦大学付属児科医院で臨床研究をしているころから言われていたのですが、近年、中国で性早熟症と思われる子供が増加傾向にあるようです。最近行われた「東方科技論壇」で討論された「環境と児童の健康研究の現状と展望」でも、上海市の子供たちの間での性早熟症の発病率は1%に達しているということが明らかにされていました。

 性早熟の研究に関して、復旦大学付属児科医院はかなり前から取り組んでいて、私も2006年7月のブログに記事を紹介していますが、最近も「環境ホルモンによる児童の性発育異常のメカニズムと中医薬治療研究」という研究結果を同大学の蔡徳培教授らのグループが発表していました。この研究では、110例の性早熟症の子供と100例の正常な発育の子供を比較しています。正常な子供の場合でも、血液中から有機塩素系の殺虫剤であるDDTが全員から検出され、洗剤の分解物が検出されたのが64%、プラスチック可塑剤が検出されたのが40%であったが、性早熟症の子供の場合、DDTは100%、洗剤の分解物は86%、プラスチック可塑剤は61%となり、また血清中の含有量も有意義的に多かったことが分かりました。

 この研究結果から、現在、上海の子供の多くは環境ホルモンによって汚染されており、性早熟症の子供はその程度が深刻化しているとし、環境ホルモンによる汚染程度と生殖器官と骨格の病変とは有意義的に正の相関関係があるとしています。

 さらに研究グループは、水産物を養殖している淡水の池の調査を行っており、汚染された池で養殖された魚・エビ・蟹・貝類などに含まれるプラスチック可塑剤の濃度は、その池の水よりも10〜9000倍も高く、蓄積されていることが分かっています。そのため、妊婦や子供は、なるべく汚染された川や湖の魚介類は食べないようにと注意しています。

 しかし、これだけ工業化が進んでしまうと、汚染されていない魚介類を見つけるのが大変ですね。




posted by 藤田 康介 at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年10月18日

肥満と精神的に病んでくる人たちが増えている?!

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 おそらく上海市民全員に配られたのかと思いますが、先日我が家のポストに「上海市民心理健康知識120問」が入っていました。中身をみてみると、前書きは上海市衛生局の局長が書いています。内容は、精神病に関する基礎知識からはじまり、児童編、少年編、青年編、中年編、老人編と分けられていて、異なった年代で抱える精神的問題の解決法について、質問形式で分かりやすく記載されていました。
 こういう書物が無料で配られるというのも、いま上海が抱えている都市生活の問題点が浮き彫りになっているようです。今朝のニュースでも、ホワイトカラーと呼ばれる人たちのストレスについて、中国は全世界でもトップクラスであり、その中でも上海と北京が突出しているということが報道されているのをみても、市民の抱えるストレスの問題は結構深刻だと思います。日本のように、地下鉄に飛び込む人や、さまざまな理由で自殺する人も最近は少なくありません。

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 さらに、今回は上記の本と一緒に冷蔵庫に貼る「中国居民平膳食宝塔図」も入っていました。上海市健康促進委員会が発行したものらしいので、官製ですね。ピラミッドではなく、「宝塔」というのも中国式です。(^_^) 

 毎日お昼時間にオフィス街を歩くと分かるのですが、一般に昼食の問題は、上海ではなかなか難しい。うちの中医クリニックのスタッフを見ていても、昼食をコンビニ弁当や出前で済ます人が非常に多い。ローソンでも、毎日とんでもない行列になっています。日本みたいな健康的な定食が安く食べあれる店が少なく、こういった栄養知識よりも、むしろコンビニなどの弁当で、健康的なメニューを売った方がもっと効果的ではないかと思います。近年、若年層でお腹が出て来ている男性が増えているように感じます。


 食の問題と、精神の問題。WHOが提唱する健康の概念には、身体の健康、心理的健康、さらに良好な社会的適応力が必要とされていますが、上海のような都市生活で健康を維持するには、色々な困難があるのもまた事実です。

 こうして配られた書籍をみて、今の上海が抱える問題について考えてみるのでした。

posted by 藤田 康介 at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年06月06日

プラスチック容器の濫用と糖尿病の関係

 中国では確かに劣悪なプラスチックや発泡スチロール容器が散乱しています。以前は、油モノのアツアツを、平気で発泡スチロールの容器に入れていたのを目撃したことが多数ありました。さらに、近年禁止になったはずの発表スチロールの弁当箱もまだどことなく見かけます。

 問題となっているのは、こうしたプラスチック製品に使われている環境ホルモンと関係が深いとされるBPA(ビスフェノールA)とよばれる物質です。中国では、2011年6月1日よりプラスチック製のほ乳瓶の製造を禁止したほか、2011年9月1日より輸入・販売の禁止にしました。ただ、実際にはほ乳瓶以外の食器には使ってもよいため、BPAを使った製品に巡り会うことはゼロにはなっていません。


 いったい、このBPAが体にどのような影響を与えるのか、上海交通大学医学院付属瑞金病院の内分泌科が興味深い研究を発表しました。疫学的にも、かなりの数のサンプルを集めた研究でした。


 それによると、上海で40歳以上の3423人で、経口ブドウ糖負荷試験を行って2型糖尿病と確定し、尿中のBPAの量を測定しました。その結果、87.7%で尿中のBPAが検出され、平均濃度は0.81ng/mLでした。さらに、BPA検出量が多い場合、2型糖尿病のリスクは37%高まり、少ない場合は、未検出のグループとそのリスクは変わらないとしています。


 また、BPAが多いグループでは、全身肥満のリスクが50%高まり、IR(インスリン抵抗性)のリスクが37%高まるとしています。


 さらに、この研究では、BPA濃度と、尿タンパクとの関係を調べており、BPAの濃度と、尿タンパクや循環器系疾患、甲状腺機能亢進と関係があるとしています。


 よって、食器に関しては、極力プラスチック製のものをさけ、電子レンジなどで加熱する弁当箱もガラス系のものに変えたほうがよさそうです。また、ほ乳瓶はBPAが含まれていないものか、ガラス製のものを使うようにしたいところですね。

 とくに、中国のコンビニ弁当に使われているプラスチック容器。以前も問題になりましたが、やはり極力避けたいです。
posted by 藤田 康介 at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年05月14日

上海で近年急増している大腸癌

 上海市衛生局は、市の重点公共医療サービスの一環として、2012年度は地域にある社区衛生サービスセンターを活用して、大腸癌リスク評価や大便潜血検査を無料で行う方針を発表しています。

 その背景にあるのは、上海市での大腸癌患者の近年の急増があります。

 1970年代には、悪性腫瘍のなかでの発病率が第6位だったのに、現在では第2位に急上昇しています。さらに、発病率も70年代の10万分の12から10万分の56にまで上昇しており、なんと3.67倍の増加医。年平均にすると4%の増加になります。

 この原因について、上海疾病予防コントロールセンターは、いろいろ挙げていますが、どれも納得がいく理由ばかり。

 上海に来られた方なら分かるかと思いますが、いままで経済的に豊かでなかったときは、なかなか摂取できなかった高タンパクで、高カロリーな食生活が、ここ数年で爆発的に増加していますし、穀物摂取の減少、果物や野菜類の摂取減少、運動不足、そして健康診断に行かないという現実。大便鮮血検査の受診率は5%未満ですし、大腸カメラ検査も3%程度ということです。大腸癌を早期で発見するには不可欠な検査なのですが、上海市でも発見されれば大抵は末期で、早期で発見される割合は11.8%で、5年間生存率は43%と低いのです。

 上海にいる日本人を日頃から診察していますが、一部を除いて、大部分が運動不足。大腸癌の予防には、歩いたりする運動が有効なことは、以前にもこのブログで1日30分歩くことと大腸癌のリスクに書きました。

 食生活などライフスタイルを、もう一度見直してみたいとところですね。
posted by 藤田 康介 at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年05月09日

「補脳」という発想

 中国人の健康食品とかみてみると、「補」という言葉がよく出て来ます。間違いなく、その出所は中医学で、「補腎」や「補肺」など虚証に対して補う「補」の発想なのだけど、これが近年エスカレートしてきているような気がします。

 その典型的な言葉が「補脳」。特に、初夏に行われる入試が近づいてくるこの時期、スーパーなどにいくとよく見かけます。中医学的な「補」という発想から、脳も補ってあげると、頭がよく働き、試験の問題もスラスラ解けてしまうといった錯覚に陥ってしまうようです。

 そもそも、「補脳」といった考え方は、大学の教科書で勉強する中医学では出てきませんし、中国の国家食品薬品監管局も、そうしたエセ「健康食品」は食用しないようにと呼びかけています。

 でも試験が近づいてくると、そうした「補脳」できる中医薬や漢方薬があれば、思わず服用したくなるところですが、そう単純な問題でないことは明らか。また、この広い中国には、規制しても規制しきれないぐらい不法企業も沢山あり、「国家○○○局の批准を受けた・・・」とでも書いてしまうこともチラホラ。ほんとに消費者の判断に委ねられる、自己責任の国です。

 そうした怪しい健康食品に頼ることなく、最善の精神状態で試験に臨んで欲しいところですね。
posted by 藤田 康介 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年04月21日

上海で増える大人と子供の睡眠・不眠の問題

 いつも東京に出張にいくと、ビックリすることがあります。
 それは、夜の10時も過ぎた頃でも、結構親に連れられた子供を見かけるのです。それも、ベビーカーにのせられた乳幼児も少なくない。
 「寝てるからいいのでは?」と言われそうですが、明らかにいい習慣ではないです。明るい状態で寝ると、体内時計を司るメラトニンの分泌に影響をもたらします。メラトニンは暗くなったら松果体から分泌されるホルモンで、明るくなると分泌がなくなり体が活発になります。この分泌リズムがおかしくなると、体内の他のホルモンバランスにも影響が出てくるのは容易に想像がつきます。

 子供の睡眠の問題は、上海でも大きな社会問題として取りあげられています。先日、中国の国家科技進歩奨の2等奨をとった研究で、『睡眠の子供の成長に対する影響とその応用』というのがありました。勉強などの負担が重い中国の子供たちにとって、睡眠時間の確保が大きな問題で、中国では近年、睡眠時間の不足は、子供の肥満や多動症の原因となっているということです。それによると、乳幼児の睡眠は、時間的に不足していないものの、睡眠のしかたに問題があるとしています。さらに、学校に行くようになると、小中学生の70%に睡眠不足の問題があり、その原因はやはり宿題だとしています。子供に食欲がなかったり、精神的に集中できなかったり、肥満気味であったりするのなら、睡眠をもういちど見直す必要があるようです。まとまったお昼寝は5歳ごろぐらいまでは必要ですが、それ以降は、45分程度の短い昼寝で十分で、それ以上になると、子供でも夜の睡眠の影響を与えることになるようです。

 一方で、成人の睡眠の問題も、上海ではあまり芳しくありません。上海市中医睡眠疾病研究所の疫学的調査によると、市内の5箇所の住宅地の20000人を調査したところ、何らかの不眠の症状を抱えている人が38.2%にも達したと言うことです。とくに女性の不眠は男性よりも多く、その数は1.5倍になるということです。
 また、夜更かしも不眠の原因になるようで、成人が半年間毎日6.5時間の睡眠を保つことができなければ、不眠となる可能性が高まり、週末と平日の睡眠時間の長さの違いも、1時間以内にする必要があるということです。
 疲労感をうまく取り除く睡眠は、まずは10時〜12時の間には寝ること。大人が一番眠りに入りやすい時間です。これ以降に寝る習慣をつけてしまうと、眠りが浅かったり、起きたときの疲労感が出やすいので、不眠にもなりやすいのだそうです。

 部屋を暗くして、決められた時間にはさっさと寝る。これが健康には欠かせないですよね。

 
posted by 藤田 康介 at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情