2016年05月31日

大気汚染だというのに減らない中国の喫煙人口

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(食事はタバコが欠かせない上海人)

  中国疾病予防コントロールセンターが発表した、中国の喫煙者人口は5年前と比較してなんと1,500万人増加の3.16億人に。さらに、1日あたりの平均喫煙量も前年比1本増加の15.2本に。男性の喫煙率は52.1%、女性の喫煙率も27.7%と一向に減少する気配もありません。ちなみに、中国では18歳で成人と見なしますので、そこから合法的にタバコを吸っても良いことになります。

 これだけ中国で大気汚染が言われていて、大気汚染時の喫煙はさらに肺へのダメージを高めるとまで言われているのに、気にかけてることもない様子ですね。そういえば、大気汚染でN95マスクをしているくせに、タバコを吸っている強者も上海の街角で見たことがあります。そこまでタバコに未練があるわけなのでしょうか。

 中国政府も禁煙に躍起になっているのがよく分かります。公共の場所ではタバコ禁止、高速鉄道も喫煙ルームもないし、全車禁煙。だけど、駅などではトイレなどでタバコを吸う人が後を絶たないし、禁煙と書いていても待合室で堂々とタバコを吸う人もいる。受動喫煙が問題になっているのに、街角でタバコを吸う人も多い。街を歩いているときに、前でタバコを吸っている人を見かけたら、なるべく先に追い越すようにしています。

 さらに、農村に行けばタバコを吸う人も割合はもっと増えます。農村では女性の喫煙はあまり見かけませんが、男性は殆どタバコを吸っていますし、上海など大都会では逆に女性の喫煙者をよく見かけますように思います。

 まあ、日本もあまり人のことを言えません。先日、ある禁煙していない居酒屋でPM2.5値を測定したら、300〜400㎍/㎥でしたし、喫茶店など飲食店の禁煙率も非常に低いのが現状。ちなみに、分煙程度では全く意味ありません。
 上海で言う「重度汚染レベル」の中で働く若い従業員の皆さんが気の毒です。1日中その煙の中で仕事をしているわけですから。

 鉄道でも、近鉄特急もいまだに喫煙車がありますし。

 総じて、アジアは喫煙に寛大なのでしょうか。

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2016年04月02日

ますます進む上海人口の高齢化

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 上海市が発表したデータによると、2015年の上海市民(上海戸籍)の平均余命は男性が80.47歳、女性が85.09歳、男女合わせて82.75歳でした。女性はついに85歳の大台に乗りましたね。生活レベルや医療レベルがあがるにつれて、平均余命が長くなる傾向は今後も続くとみられています。上海戸籍における65歳以上人口の割合は19.6%だったようです。
 ちなみに日本は2015年9月の推計で65歳人口の割合は26.7%でさらに高い数字になっています。(総務省

 現在、上海市の戸籍人口は1442.97万人でこのうち60歳以上が30.2%の435.95万人、65歳以上が19.6%の283.38万人。ただ、上海市に住んでいる人口は2400万人といわれており、外来人口も加えると2020年には60歳以上の人口は570万人以上になると見込まれています。さらに、一人っ子政策の影響もあり、近い将来に一人っ子の両親が高齢化を迎え、その割合が高齢者人口の8割を占めるようになるとのこと。高齢者の核家族化が増え、若い世代の負担が重くなるのは明白ですね。また、現在でも1000万人以上いるといわれている上海戸籍をもっていない人たちが、今後多かれ少なかれ上海で老後を過ごす可能性もあり、こちらの対策も急務ですね。

 ちなみに、上海市で100歳以上の高齢者の数は1751人で、このうち420人が男性。ここでも女性は長生きです。また、80歳以上の人口は78.05万人で、上海戸籍の5.4%を占めています。ちなみに日本では80歳以上の人口は7.9%だそうです。

 上海の地下鉄に乗っていても、出勤時間帯は若者が多いものの、休日になると高齢者の割合がぐっと増えます。公園や住宅地で運動する人たちもまた然りです。健康にどうやって老後を過ごすか、またデイケアサービスのネットワークをどう拡充させていくのか。課題はいっぱいです。

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2016年02月23日

抗生物質と上海の子供の肥満の関係

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 上海地区の子供の肥満の問題は、上海ではかなり前から問題になっています。最近、上海で7〜16歳の子供たち9,000人を対象にした調査では、体重が正常だった人が72.1%、やせ気味だった人が6.9%であったのに対して、肥満もしくは体重超過気味だった人の割合は21%にもなっていました。肥満の原因はいろいろ考えられますが、これまでの研究では、遺伝的要素は30%にすぎず、環境的な要素が大きいという結論になっていました。さらに最近の研究では、環境的要因に抗生物質が関わっていることが分かってきました。(関連記事は2014年にも

中国のもう一つの抗生物質濫用問題
で書いています。)

 復旦大学公共衛生安全教育部重点実験室と復旦大学公共衛生学院の共同研究が、『Environment International』に投稿され、上海で大きな話題を呼んでいます。

 その結論は、

 「子供の尿を調べると、家畜向けの抗生物質は動物用の抗生物質暴露が、子供の肥満や体重増加に明かな相関性があり、食品による抗生物質の暴露と子供の肥満リスクの間には正の相関関係があり、こうした抗生物質の源は汚染水と食物から体内に入っているとみられている」

 ということででした。

  この研究では、2010年から2014年にかけて上海・浙江省・江蘇省の子供たち1,500人分の尿を集めたほか、さらに2013年には上海地区の8歳から11歳の586名に対して尿中に含まれる抗生物質を分析しました。このなかで、79.6%の尿中に21種類の抗生物質が発見されました。そのうち、マクロライド系が5種類、βーラクタム系が2種類、テトラサイクリン系が3種類、キノロン系が4種、サルフア系類が4種類、クロロマイセチン系類が3種類とのこと。

  さらに、尿中に含まれていた抗生物質の濃度を高・中・低に分類し、年齢・性別・収入・喫煙状況などの要素を加味して分析したところ、高濃度の子供が肥満になるリスクは、低濃度の子供と比較してリスクが1.99〜3倍になるとしています。おそらく、抗生物質が脂肪の生成と関連しているのではないかということです。

  実際、家畜と抗生物質は、切っても切っても切り離せない問題だと思います。特に鶏の飼育は、アヒルに比べて難易度が高く、病気がきっかけで全滅してしまうことも珍しくない。これは農民達ならよく知っている事実です。だけど、そうした食材への需要は高いわけで、本来は十分に気をつけて育てないといけなく、手間暇とコストがかかるわけです。湖南省で有機農法を頑張っている農民達も、水が農薬や抗生物質に汚染されないように細心の注意を払っていました。それぐらい敏感な問題なんです。

  ちなみに2013年のデータでは全世界の抗生物質の半分にあたる16.2万トンが中国で消費され、このうち52%が動物用で、48%が人間用。人間用は高濃度であっても使用期間は短期間ですが、問題は自然環境に低濃度で存在する抗生物質。長期にわたって暴露されると、何らかの影響が懸念されます。

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2016年02月01日

上海市で女性の平均余命がついに85歳を越える一方で、楽観できない肥満問題

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 2015年の上海市民の平均余命が市当局から発表されました。

 男性:80.47歳
 女性:85.09歳
 男女平均:82.75歳

 調査をはじめて以来、女性がはじめて85歳を突破したようです。

 また、妊婦の死亡率は6.66/10万人、新生児死亡率は4.58‰(←%ではありません)
 こういう数字から見る限り、上海市民が如何に長生きかわかりますね。この年代は、若いときに非常に貧困や飢餓など非常に苦労しています。妻の父親も70歳を越えていますが、自転車が趣味で、泊まりがけで数百キロを平気で走ってきます。

 一方で、若年層の肥満問題が深刻化しています。2013年の統計で18歳以上で体重が基準値を超えているもしくは肥満である人も割合は42.3%。これは今の上海人の生活をみていたら十分に理解出来ます。これだけ道路が渋滞するわけだから、歩く人が減っているのも確か。最近では、自転車も電動自転車に切り替わっていて、めっきり数を減らしました。一方で、2007年と比較して体重が基準値を超えている人の割合は3.5%の増加、肥満率も1.7%の増加になっています。

 これに関して、やはり市民の栄養に関する認識の不足が大きいと思います。上海人と外食したり、お宅にお邪魔してご馳走になったとき、その食べ物の内容で検討がつくと思います。

 まず、上海料理は全体的に甘味。しかも主食の取り方が半端ではない。量もそうですが、たとえば砂糖+モチ米+こしあんでつくる上海名物の八宝飯とか、さらには最近では西洋風のスポンジケーキ類まで今や主食と認識されています。その背景には、お腹にいっぱいになることが健康であるというような間違った考え方が多い。ご飯信仰も一際強いため、私も中国人の患者さんに説明するのに一苦労です。

 一方で、野菜・果物類の摂取に関しての誤解も多い。最近の健康ブームで、果物・野菜ジュースがブームでもあるのですが、大量に飲んで野菜を摂取した気分になっている人が多い。実際、これらの飲み物は糖分が半端なく多く、肥満の原因になってしまうわけです。

 上海市では市民の野菜の摂取量は1日300〜500gと定めていますが、実際には250g弱程度、果物は1日200〜400gと定めていますが、実際には75g程度とかなり少ないわけです。

 さまざまな食べ物が溢れている飽食の上海。若い世代の間で高血圧・糖尿病などの疾患が今後急増するのは想像に難くないです。

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2015年11月07日

中国の長寿地図、やっぱり温暖湿潤な地方のほうが長寿か?

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 2015年10月に中国科学院地理研究所から発表された長寿地図。ネットでも紹介されているのでご存じの方も多いはず。

 これによると、長寿な人(100歳以上)の分布は省別に、

(1)海南
(2)上海
(3)広東
(4)広西
(5)福建
(6)江蘇
(7)山東
(8)浙江
(9)河南
(10)四川

 となったらしい。

 相変わらず、上海は長生きエリアですね。2014年度の平均余命は82.29歳(男性80.04歳、女性84.59歳)でした。同時に高齢化が著し大都市でもあります。中国のハワイと言われている海南島もすごいですね。

 これをみると、上海を中心とする長江デルタエリア、広東省を含む珠江エリアなど沿海部南部、もしくは標高があまり高くないエリアや平地などに多いことが分かります。さらに、気候は温暖であり、降水量が多く、大河にも恵まれています。また、山間部に行くと良い空気にも出会うことが難しくありませんし、海岸エリアなら海風の影響で大気汚染の影響軽減に役立ちます。一方で、中国東北エリアなど寒さがきつく、空気が乾燥しているエリアでは長寿の人が相対的に減るようです。厳しい気候条件の影響もあるのでしょうね。さらにこうしたエリアをみると経済的な発展とも大いに関係あるのではないでしょうか。

 長寿の秘訣は人によっていろいろだと思います。もちろん遺伝子そのものの影響もあるでしょうが、うちの妻方の親戚筋も結構長寿家系で、詳しく見てみるとこれも指摘があたっていると思いました。

1.良質な睡眠(とにかくしっかり寝ている)
2.(人に嫌われても)くよくよしないでマイペース
3.(体調不良と言いつつも)食欲旺盛で肉も魚も野菜も何でも食べる

など色々な共通点が見当たります。

 水の要素も大切ですね。
 日本の厚生労働省が、健康のために水を飲もう!と紹介していましたが、日本みたいに水が水道水からも飲めて、水資源が豊かであればいいですが、中国では北方エリアや内陸エリアを中心に水不足が深刻で、それに伴う疾患のリスクも大いに高まります。中国の長寿エリアでは水が相対的に豊かであることからも分かると思います。

 このような背景をみてみると、日本の生活環境は恵まれていますね。長寿の人が出やすい土台があるわけです。あとは、どうやって老後を健康かつ快適に過ごすか?ですね。そしてカゼも含めた、病気にかかる回数を如何に減らすか?といった工夫も必要ではないかと思います。

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2015年10月15日

40歳未満の女性乳癌に関する上海での最新調査結果

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 上海で腫瘍を専門に治療・研究復旦大学附属腫瘤医院の乳腺外科の研究グループが、中国の若い女性に関する乳癌に関しての最新調査結果『生活方式と心理ストレスが若い乳腺患者疾患に与える影響』を発表しました。研究対象が中国人ということもあり、日本人にも参考になるのではないかと思い、ここに紹介します。

 調査対象となったのは、40歳未満の乳癌患者582例と40歳未満の良性の乳腺疾患患者540例。

 全世界では、乳癌患者の11%が35〜45歳の世代であり、アジアではさらに増える傾向にあるということ。中国では2008年に乳癌発病総数の12.56%が40歳未満であり、上海市の調査でも、1990〜2007年にかけての40歳未満の乳癌患者数は乳癌発病総数の10〜20%前後に推移しているようです。

 今回の調査では、初潮年齢、流産回数、睡眠状態、飲食状況なども踏まえて分析されました。
 その結果、直系親族に乳癌患者がいた場合、いない場合よりも乳癌リスクが2.4倍高まり、子供を産んでいない女性は産んだ女性よりもリスクが高まるほか、妊娠出産した年齢が若ければ若いほど、リスクが下がることも分かりました。また、喫煙との関係では、日常生活でタバコの煙を吸う受動喫煙の状態であれば、乳癌発生リスクは1.6倍に高まるとのこと。また、動物性油が乳癌発生リスクに関係あることも分かったということです。

 また精神的ストレスと乳癌の関係も強く、疲れやすかったり、忙しすぎたり情緒不安定であったりすることも危険因子であると言われています。特に、夫婦間の円満な関係も重要です。

 結局、規則正しい生活・禁煙・野菜類の摂取・ストレスからの解放・情緒の安定・適度な運動などを続けることが乳癌予防に関してとても重要であることが裏付けされたと言えるのではないでしょうか。とすると、中医学で言ってきている様々な養生に関する考え方も、きっと有効に作用するものと推測されますね。

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2015年02月05日

上海市でも癌発生率・死亡率トップは肺癌、男性は特に注意を!

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 中国で増え続けている癌について昨日は書いてみましたが、今度は上海市の実情についてみてみたいと思います。
 上海市疾病予防コントロールセンターの最新の数字によると、上海市で年間に新たに発見される癌患者の数は3.6万人で、このうち男性が60%、女性が40%という比率になっています。ここでもやはり男性の方が多くなりましたね。

 さらに、2011年に男女あわせて上海市で発生した癌のなかで発生率ともに死亡率ともにトップとなったのはやはり肺癌でした。喫煙率といい、生活環境の問題といい、まあ想像できる結果だと思います。新たに発生した癌の17%が肺癌と言うことです。その次が大腸癌で13%となりました。以下順番に胃癌、肝臓癌、前立腺癌となります。
 一方で、女性の場合は、乳癌が17%でトップとなり、続いて大腸癌、肺癌、甲状腺癌、胃癌となります。

 5年間生存率でみると、男女あわせての場合、上海市の数字は54.3%で、日本の58.6%と比較するとやや低め。ただ、10年前と比較すると25.8%も増えており、近年の上海市での高齢化問題を考えても、医療レベルの進化と関係がありそうですね。

 ただ、男女で分けてみると、男性の5年間生存率は46.9%、女性は62.8%で差が大きく開きます。癌の種類別に見てみると、男性の場合、5年間生存率が最も高いのが前立腺癌で、最も低いのが膵臓癌、肺癌は20.3%、大腸癌は72.3%でした。一方で、女性の場合は甲状腺癌の5年間生存率がトップで99.8%、肺癌は22.11%、大腸癌は70.1%、乳癌は91.5%となりました。人口の高齢化の影響もあるようで、たとえば乳癌の場合、10年前は診断される年齢の平均が55.65歳だったのに、いまでは58.08歳にまであがりました。

 WHOによると、癌の50%はタバコを吸わないとか、食生活に注意する、積極的な運動などで予防できるといわれています。また早期発見はとても大切で、上海市でも65歳以上を対象にした無料の健康診断や、大腸癌や婦人科検査も行われています。

 大気汚染があるだけで、健康に対するリスクは高まるわけで、そのために日本に居るとき以上にできるだけ健康な生活をおくるように心がける必要があります。

 4月までの日本と中国各地への出張スケジュールが出て来ました。↓をご覧ください。
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2015年02月04日

今後急増すると予測される中国の癌患者

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 今日の上海の大気汚染はひどかったです。PM2.5値は362㎍/㎥。再び「厳重汚染」が点灯しました。

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 これほど大気汚染がひどかったら、さすがの私もランニングなど外出を控えましたし、春節休みに入っている娘も外出禁止令。まったくもって厄介な季節に突入しました。

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(クルマの中にて)
 ちなみに窓を閉め切って、空気清浄機をつけても屋内のPM2.5値は30〜40㎍/㎥程度でした。同じ頃の東京文京区のPM2.5は11㎍/㎥でしたからね。


 最近、中国で有名人が癌で亡くなるニュースが続きました。芸能界でもまた然りです。さらに、上海の医学界でも、相次いで有名な先生が若くして癌で亡くなっています。

 すこし古いデータですが、報道によると2012年に中国で発生した癌患者の数は306.5万人で全世界の五分の一、死亡者数は220.5万人で、全世界の四分の一。数の規模が半端ではないですね。このままいくと2020年には癌による死者が300万人、2030年には350万人まで増えるだろうと予想されています。

 北京市の腫瘤防治弁公室の担当者の話では、35歳以上に関してみると、この10年間で北京市の肺癌発病率は43%増加しているほか、2006年度の中国全国の調査でも、30年前と比較して乳癌の死亡率は96%上昇し、肺癌に関してはなんと465%も上昇、さらに癌全体の死亡者のうち、22.7%が肺癌によるものだそうです。また、中国の特徴として5年間の生存率が30%程度と低いのも挙げられます。そもそも病院に行かない人も多いので、早期発見が難しく、アメリカの60〜70%と比較しても大きく差があけられています。

 大気汚染だけでなく、不健康な生活習慣、高齢化、食品の安全問題なども中国の癌発生率増加と大きく関係あるのは間違いありません。また、最近の傾向としては、癌が貧困層だけでなく富裕層へも増えてきている点です。これまで中国では癌の発生と関係のある生活環境や飲食習慣の問題は貧困層に多いとされていましたが、今後は富裕層の運動不足や栄養過多などによる問題も深刻化しています。

 これから先、癌に対してどのような対策ができるか?中国では今まさに待ったなしの状態になっていると言えるでしょう。
 
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2015年01月03日

中国での乳癌の状況

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 最近、ランセットに掲載された記事から。
 復旦大学附属腫瘤病院が2014年に発表した論文に
Breast cancer in China
というのがありました。いろいろと参考になるような内容があったので、ここでもご紹介します。

 現在、中国でもとりわけ上海や北京など大都市で乳癌患者が増えているという話は、このブログでも時々ご紹介しています。中国全体でもその傾向が出ていて、毎年中国で新たに発症している乳癌患者は全世界の12.2%、死亡者は全世界の9.6%で、その増加率は世界平均の2倍といわれています。乳癌と診断される年齢は平均45〜55歳で、これも欧米の数字と比較しても10〜15歳若い傾向にあります。

 上海と北京に限った場合、乳癌発症のピークは45〜55歳、70〜74歳と二つあることが分かってきました。とくに中国の場合、一人っ子政策の影響で、子供を産む数が少ないという特徴があります。女性が一生に生む子供の数は、上海に限ってみると2010年は0.81人に過ぎず、中国全国でも50年代前半の6.0人から2010年の1.6人にまで落ち込んでおり、子供を産む数が少ないことも乳癌リスク上昇と関係があると言われています。また、初潮の年齢が早かったり、初産の年齢が遅かったり、閉経の年齢が遅すぎたり、さらに母乳をあげる期間が極端に短すぎることにも関係あるといわれています。中国でも日本同様に閉経前の乳癌が増えていることは確かみたいです。

 中国の都市部における食生活の変化も見逃せません。食の欧米化は、上海でもちょくちょくみられる現象で、中国の伝統食といわれる米・小麦・野菜・豚肉・大豆などの食材以外に、乳製品、揚げ物などを含む西洋的な食材や過度な添加物を摂取することが増えてきています。また、クルマ社会となってきて運動するチャンスが明らかに減っており、閉経後の肥満問題も増えてきています。
 調査によれば、中国人女性の場合、BMI値が24以上の女性が乳癌にかかるリスクは、24未満と比較して4倍に増えるといいます。とくに閉経後の場合は顕著になってきているようで、肥満を如何に抑えるかが中国の乳癌予防でとても大切な要素となってきています。

 そのほか、体内もしくは体外から摂取される女性ホルモンとも関係があるといわれています。特に、更年期対策に使われることもあるホルモン療法や、ピルなどの避妊薬の服用も、その服用期間の長さによっては、乳癌リスクと関係がある可能性も指摘されています。ちなみに、更年期対策では、ぜひ漢方医学や中医学も一度活用してみてください。かなりの効果が期待できるはずです。

 また、最近では乳癌の遺伝的原因も遺伝子レベルの研究で分かってくるようになってきました。それにより発症する時期も推測できるような乳癌の種類も分かってきています。

 いずれにしろ、乳癌予防の基本的なポイントは、1.良好な生活習慣、2.アルコールの摂取を控える、3.高脂肪・高カロリーな食材の摂取を控える、4.ストレスの軽減、5.運動を欠かさない、などが挙げられます。このブログでもこれまでにいろいろ紹介してきました。(運動アルコールに関してはリンクをご覧ください。)

 乳癌の定期的な検査は早期発見のためにも重要です。25歳以降になればぜひこの問題を留意してほしいです。若くして乳癌に罹患する日本人や中国人の女性が少なくないからです。

 また、マンモグラフィーの検査は重要ですが、乳腺などに邪魔されて表示が完璧ではないということも留意しておく必要があります。年齢が若い、20代のぐらいの女性でマンモグラフィー検査を一般的に推奨されないのはそのためです。不必要な検査による被爆は避けなくてはいけません。

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2014年03月11日

高齢化の上海、乳癌の発病も高齢化傾向

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  上海市の乳癌の傾向について、上海市疾病予防コントロールセンターがデータを発表していました。それはどうも発病年齢が高齢化の傾向にあるということです。上海でも乳癌の発病率は高く、女性の癌の中ではトップで、癌による死亡原因では第4位になっています。ちなみに、女性の癌では第2位が甲状腺癌となっています。

 詳しくみてみると、乳癌の発病は40年前は平均で54歳だったのが、2013年度のデータでは57歳になっています。また、年齢分布で見ると、20〜29歳では発病率は40年前と大きく変わっておらず、また30〜39歳では1995年以降上昇から3%程度の低下に転じている一方、40歳以上では明らかに上昇傾向にあるようです。たしかに、上海市の女性の平均余命は80歳を越えていますからね。

 とくに、近年上昇率が目立っているのは50〜59歳のグループで、40〜49歳と比較して23%高まり、さらに30〜39歳の4倍、20〜29歳の38倍も発病率が高まるとのことです。

 ただ、欧米人と比較するとまだ上海の乳癌発病率は半分程度と低く、世界全体と比較しても17%低いとのこと。

 一般に乳癌に関して、年齢や遺伝的要素意外にも、初潮の年齢が早かったり、閉経が遅かったり、出産が遅かったり、妊娠経験がなかったりした場合、さらに授乳期間が短すぎたり、タバコや肥満なども原因とされています。ただ、家族のなかでの遺伝がなくても乳癌になるリスクはゼロではありません。実際に7〜8割の乳癌患者には明らかな家族での乳癌の遺伝がみられなかったとされています。

 少しでも早期に発見できるように注意する必要はあります。

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2014年02月23日

浙江省でノロウイルスの原因はガロンタンクの水だった

  浙江省の海寧市や海塩県で小中学校・幼稚園などで20日12時までにあわせて511人が腹痛・下痢・発熱などを訴えた事件で、疾病予防コントロールセンターが疫学調査をしたところ、飲み水用ガロンタンクの水によるノロウイルス感染と断定されました。

 水道水が直接飲めない中国では、水道水を生活用水として使う一方で、ウオーターサーバー+ガロンタンクという組み合わせで飲み水を準備することが多いです。ただ様々な業者が製造しているガロンタンクの水質については、以前からいろいろ問題があったのも事実。とくに、今回のケースでは学校施設に設置されたタンクでノロウイルス感染が発生し感染者を増やしてしまいました。幸いにも重症者は出なかったようです。

 しかし、最近は学校でもタンクの水を飲むようになったのですね。私が上海中医薬大学にいたころは、水道水を湧かして飲むことが多かったです。そのため、夜の自習の時間になると、魔法瓶を片手にお湯を持ちながら教室にやってくる学生達ばかりでした。最近、母校を訪れてみるとお湯を提供する装置が各階に設置されていました。そもそも、こちらの水(水道水)が信用できないという不信感もみんなありましたからね。とくに、長江の水が海水の影響を受けやすい時期は水質が劣化しやすく、最近でも上海市崇明島で問題になっていました。

 家庭でガロンタンクを使うときは、なるべく早く使い切ってしまうことが大切です。また、ウーターサーバーは汚染されやすいので定期的に洗浄することも必要で、特に夏場は水の劣化が進みやすいので注意して下さい。


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2014年02月14日

上海人の癌疾患、男性は肺癌・女性は乳癌がトップ

 上海市疾病予防コントロールセンターが発表した、上海市の癌疾患の統計をみてみると、男性の場合は肺・大腸・胃・肝臓・前立腺・膵臓・食道・膀胱・腎臓・脳と中枢神経系と続き、女性は乳腺・大腸・肺・胃・甲状腺・肝臓・膵臓・脳と中枢神経・胆嚢・卵巣と続くようです。また、上海人100人中1.7人が癌に罹患していて、男性では100人中1.5人、女性では100人中2人ということで、毎日150人癌患者が増え、毎日100人が癌で死亡しているという計算になっています。
 
 癌患者を世代別にみると、70歳以上が全体の45%を占め、続いて50〜69歳が42%、50歳以下が13%となっていました。

 また、タバコを吸っている人は、吸っていない人よりも肺がんリスクが10倍高まるとか、夜勤が多い女性は乳癌になりやすいとかそういった傾向も上海でみられますが、なんといっても日常生活での問題点は多い。

 たとえば、カビの生えたトウモロコシや落花生に含まれるアフラトキシン問題は中国で暮らしている人なら一度は耳にしたことがあるはず。「地溝油」と呼ばれている不良リサイクル油もこのアフラトキシンを含んでいて、肝臓癌の原因にもなります。また、冷蔵庫に食材を詰め込むことも実は癌の発生にも深い関係があります。食材は新鮮な物を買い、使い切るようにしたいところです。

 癌予防に関しての運動の重要性については、このブログでも何度も取りあげていますが、それでも運動不足の人が相変わらず多い。毎日最低30分は歩かないといけないし、出来ることなら1時間は確保したいところ。その他、塩分の取りすぎ、果物の摂取不足、糖分のとりすぎ、肉類の食べ過ぎなどなど挙げるとキリがないですが、基本はバランスの良い生活をすることです。

 上海市の女性に多い乳癌に関して、興味深い試算が紹介されていました。

 もし早期で発見され、患部の外科手術だけで治療が行われた場合、放射線治療も抗癌治療も必要なく、6000〜7000元程度で治療は完了します。しかし、手術範囲が広まれば、放射線治療や抗癌治療も必要となり、その費用は20000〜30000元にもなるとのこと。(上海市での場合)

 また、上海市癌康復倶楽部の統計でも、癌治療にかかる費用のうち、40%は最後の1年に費やされ、このうち40%は亡くなる最後の1ヶ月に費やされることになるという調査結果を出しています。早期発見と早期治療が経済的な負担に関しても如何に大切かがよく分かります。

 最近、日本人の間でも癌治療に関して、中医学(漢方医学)の活用を考えられる方も増えてきていますが、残念なのは末期になってから来られる方が多いということ。西洋医学の標準治療法や検査はもちろん大切ですが、我々東洋医学をやっているものからすると、少しでも早く活用してもらえたらと思うのです。最近は、中国でも煎じ薬だけでなく、エキス剤の活用が便利になってきて、患者さんの負担も軽くなってきています。

 今後も様々な研究が行われていくことかと思いますが、西洋医学同様に東洋医学でも早く手を打つことが大切だと思います。


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2013年10月19日

やっぱり歩こうではないか!

 上海もすっかりと気候がよくなって、過ごしやすくなってきました。朝晩となると、少し寒いぐらいです。上海マラソンも近づいてきて、我が家の近くにある世紀公園の周りをランニングする人は日に日に増えてきている感じです。1周5キロある公園ですから、走るのにはもってこいですね。

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(ただ、上海の徒歩通勤で一番困るのは歩きタバコの煙)

 最近、中国人は明らかに運動しなくなっています。アメリカの運動医学科学院が行った調査では、1991年と比較したときの中国人の運動量は45%も減少しているのだそうです。2030年になるとさらに減少し、51%になるのだそうです。
 成人病大国となりつつある中国では、毎年530万人が運動不足と関係がある疾患で死亡し、タバコが原因で死亡したとみられる500万人よりもさらに多いことになります。これは今後間違いなく中国の医療費を圧迫することになるのではないでしょうか。その予防には、子供のころからの鍛練が必要なのですが、中国の親御さんは殆ど関心無いのが実情なのです。

 運動することのメリットはいろいろ報告されています。
 
 Imperial College LondonとUniversity of Londonの研究では、2万人のイギリス人を対象にアンケート調査を行い、公共の交通機関や歩いたり自転車を利用して通勤する人は、クルマやタクシー通勤をする人と比較して肥満になるリスクが下がり、さらに高血圧の罹患率は、歩いている人のほうがクルマを運転して通勤する人より17%低いのだそうです。

 さらに、米国のAmerican Cancer Societyの研究では、1992年〜2009年にかけて73615名の閉経後の50〜74歳の女性に対して調査を行ったところ、毎週7時間以上歩いた人が乳癌になる割合は、毎週3時間未満歩く人よりも14%低くなり、さらに毎日1時間歩いてさらに水泳やマラソンなど強度のある運動をすれば25%低くなるのだそうです。


 イギリスの研究では、もしイングランドで人々がしっかり運動する習慣があれば、毎年7000人の乳癌患者、5000例の大腸癌患者を減らすことができ、1.2万人の心臓病患者が救急治療を受ける必要がなくなるともいわれています。また、運動不足によって寿命が3〜5年縮まるという報告もありました。

 それではどれぐらい運動するのが理想なのか。イギリスのMacmillan Cancer Support によると、毎週2時間半は早歩きや自転車などの中程度の運動を行うべきだということです。これにより、ストレスを発散できますし、睡眠もよくなり、さらに鬱病など精神疾患にかかるリスクを30%以上下げることができるだそうです。



 私本人も毎日1万歩を目指しています。世紀公園で走る時間が足りないときはなるべく地下鉄駅まで2キロの道のりを歩くようにして出勤し(往復だと4キロ)、雨の日以外出勤時は極力クルマを運転しないようにしました。とはいえ、なかなか毎日1万歩歩き続けることは大変ですね。


 上海は典型的な都市生活の街です。歩くように努力しなければ、なかなか歩くチャンスがないのもまた現実だと思います。






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2013年10月17日

上海の秋はダニの季節

 上海ではスギ・ヒノキの花粉症はなくても、春は全体的に鼻炎のシーズンですが、同様に秋になると鼻がムズムズしてきたり、クシャミがとまらなかったり、蕁麻疹が出てきたりする人が毎年確実に増えます。原因は色々考えられますが、そのなかでやはり気をつけておきたいのはダニの存在です。アレルギーのIgE抗体の血液検査をしても、ダニだけダントツに反応が出てくる人も少なくありません。

 脚が8本あるダニは、とても小さな節足動物でクモなどの仲間です。(ちなみにノミは脚が6本で昆虫になります。)大きさは170〜500ミクロンほどなので肉眼で見つけるのは至難の業です。また寿命は2〜4ヶ月ほどと言われています。上海エリアでは、秋のアレルギー反応のうち、もっともよく見かけるのがダニによるものです。さらに、小児喘息の8割以上はダニと関係があるともいわれています。

 問題となっているダニアレルギーの最大の原因は、ダニの死体と排泄物の存在です。とくに、毎日使う布団や枕、さらにソフアーや絨毯などが格好のすみかになっています。また、秋〜冬にかけて、中国では大気汚染も悪化するため、窓を開けないという人も少なくありません。ましてや、布団を外に干すというチャンスも減ってしまうので、マットレスや枕に湿気がたまったままというのは極めてよくありません。(よく知られていますが、布団を外に干して太陽光や紫外線などでダニを直接退治することに関してはまず無理といわれています。)やはり、大気汚染の情報には注意して、空気がよい日にはしっかりと窓を開ける必要があります。

 ダニたちにとって、気温25度前後、湿度70〜80%というのは、格好の生息環境。従って、部屋の中の通気性を高めることと、適度な干燥はダニ対策には欠かせません。例えば、湿度が50%以下だったら、ダニは脱水症状を起こし死んでしまいます。また高温も苦手で、55℃以上で10分間熱を加えるだけで死んでしまいます。ダニアレルギーと関係があるとされている各種タンパク質も100℃以上の温度で変成してしまいます。

 逆に、これからの季節では加湿器を使う時の注意が必要で、一般に40〜50%前後に湿度を抑えておくことがよいとされています。また、加湿器の水タンクは週に1回はしっかりと洗浄したいところですよね。アトピー性皮膚炎などの症状があるときは、外と中との湿度差を縮めることが、外での皮膚の乾燥予防に役立ちますので、部屋の中の湿度をあげすぎないように注意したいところですね。

 対策としては、ダニを直接捕獲できる無害なキットも上海では東急ハンズなどで売られていますし、日本だったらダニが入ってこられないような高密度なシーツやベッドカバーなどもあります。大掃除をするときはマスクをするだけでもかなりラクでしょう。中国ではよく殺虫剤や消毒剤を使う人もいますが、逆にこれら化学物質が身体に及ぼす害のほうが心配ですのでやめておいた方が無難です。

 上海の秋のダニシーズン、なんとか乗り切りたいところです。

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2013年09月12日

中国での若者の自殺

 日本でも問題になっている若者の自殺ですが、ちょっとデータを調べてみると先進国のなかでも、15歳〜34歳の若い世代での死因のトップが自殺という結果になっていました。
 実は、中国でもこの傾向が出ていて、若者層の自殺が問題になっているのと、中国ならではの事情があるのではないかとも思ってしまいます。『人民日報』が報道していました。


 発表されたデータでは、中国で自殺による死亡者数は25万人、自殺未遂者は200万人といわれています。人口10万人あたりの自殺率でみると、中国全体での自殺率は6.86であるのに、農村では10.01、中小都市では8.37、大都市では6.41となるようです。つまり、農村エリアのほうが大都市よりも自殺率が高いという結果になっていました。また、高齢者の自殺が、若者より多い一方で、若者(15〜34歳)の死因のトップが自殺となっているようです。ここから見るかぎり、農村に残された高齢者の自殺が多い傾向にあるということになります。

 自殺未遂に関しては、毎日本当に様々な場所で発生していて、こちらのニュースをみてみると「ビルの飛び降りから助けることができた」などの話をよく聞きます。少しでも自殺を思いとどまるよう、政府も病院も力を入れているらしい。


 ちなみに、Wikiによると日本の2012年の総自殺者数は27858人で、人口10万人あたりの自殺者数は21.8人とのこと。この数字の異様な高さをみると、中国以上に対策を急がないといけません。日本でも、先進国ではめずらしく15歳〜34歳の世代での死因のトップは自殺らしい。もし人々の犠牲のもとでの今の繁栄であるのなら、それは決して許されることではありません。




8月〜9月の日本出張予定
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2013年09月05日

中国の1.1億人の糖尿病患者と5億人の予備軍  

 だいたい、都市部の中国人の生活様式をみていて、これで糖尿病にならないはずがないと誰もが思うのではないでしょうか。食べ過ぎ、車社会、運動不足、そして浴びるように飲む酒類。しかし、これまで実態がはっきりと分かっていませんでした。

 もちろん、中国の糖尿病患者の増加がすごいことになっているということは、これまでも中国国内の学会で何度も言われているのですが、上海交通大学医学院附属瑞金医院の寧光教授らのグループが、18歳以上の中国人約10万人(98658人)を対象とした糖尿病の国際基準をつかった疫学調査を行い、論文を発表しています。

 今回の調査は、2010年のアメリカの基準に従い、HbA1c(6.5%以下)と経口ブドウ糖負荷試験2時間値(OGTT)の結果をあわせて中国全国を対象にしているところがポイントです。

 これによると、2型糖尿病の発病率は、全体で11.6%あり、このうち女性(11%)よりも男性(12.1%)の方が高く、都市部(14.3%)のほうが農村(11%)よりも高いことが分かりました。

 また、糖尿病予備軍に関しては、アメリカの基準に当てはめると中国人の50.1%がそれにあてはまる一方で、2型糖尿病を認識している人は、18歳以上では30.1%に過ぎず、意識がまだまだ低いことが分かります。このうち、都市部での認識率は38.7%、農村部では24.6%に過ぎません。

 また、糖尿病の治療を受けている患者で血糖値のコントロールがうまくいっている症例(HbA1cが7.0%以下)の割合は全体の39.7%となっていました。さらに、糖尿病患者のうち、男性の50%は喫煙していて、さらに生活習慣に問題があることも分かりました。

 中国の糖尿病の発病率は年々上昇傾向にあります。まだまだ国全体が貧しかった80年代は、糖尿病の発病率は1%だったのが、90年代に入ると2.5〜5.5%に、さらに2007年には9.7%となり、現在は11.6%という結果です。今後、さらに増えることが予想されてもいます。

 糖尿病は、腎臓病など様々な合併症が問題となっていますが、近年では女性は乳癌や卵巣癌、男性は大腸癌や膀胱癌のリスクを上昇させるともいわれています。




8月〜9月の日本出張予定
 
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2013年07月24日

腹七分目がいいらしい、上海での実験

 中国にいると、会食などで満腹になることが社交上必要となる状況にどうしてもぶちあたりますが、これが身体によくないというのは百も承知です。

 中医学の養生ではハ分目どころか、腹七分目というのが普通で、中国語でも「腹七分目」が一般的です。この違いに意味があるかないかは私はよく分かりませんが、上海交通大学の趙立平教授らのグループがこんな実験をして発表していました。

 結果は7月にすでに『Nature Communications』に発表されています。
 実験ではマウスを使い、脂質が少ないエサと脂質が多いエサをグループ分けして与え、さらに摂取量も全く自由に食べさせるグループと7割程度に制限するグループ、自由に食べさせて運動させるグループにも分けました。

 この結果、寿命が一番長かったのは、低脂肪のエサを摂取制限していたグループで、低脂肪のエサを自由に食べていたグループよりも寿命の中間数が20%増加したということです。一方で、一番寿命が短かったのが、高脂肪のエサを自由に摂取していたグループ。これと低脂肪のエサ摂取量を制限していたグループと比較すると、高脂肪のエサを自由に摂取していたグループよりも寿命の中間数が50%も増加しました。長いものでは4年間も生きたそうです。

 さらに、興味深いのは高脂肪の食べ物でも、量を制限したグループで有意義的に寿命が延び、低脂肪で自由に摂取したグループと低脂肪で運動させたグループのとほぼ同じぐらいの効果が見られたということ。やはり食べる量は重要ですね。

 さて、運動に関してですが、高脂肪のエサを食べていたグループでは、運動有無による寿命に対する影響はあったが、低脂肪のエサでは運動有無による寿命への影響は殆どなかったらしい。運動する時間がないのなら、極力低脂肪の食べ物を摂取するほうがよいということかも。

 結局、低脂肪と高脂肪の食べ物が寿命に与える影響は大いにあり、肥満と寿命との関係も十分考えられますね。

 この実験では、さらにマウスの腸内細菌についても調べています。マウスの腸内細菌は、年齢と相関性があり、とくに中年時期になると飲食の影響を大きく受けやすくなるということです。
 また、低脂肪のエサで摂取制限をしていたグループは、その他のグループと腸内細菌で大きな違いがあることもわかりました。ただし、運動の有無による腸内細菌の違いは殆ど見られなかったと言うことです。

 そこで、研究グループでは寿命が長くなることと関係のある腸内細菌と、逆に短くなる腸内細菌を洗い出しました。その結果、寿命が長くなる腸内細菌は、乳酸菌など腸の細胞に栄養を与えたり、炎症を防ぐ働きがあったりしますが、寿命が短くなる腸内細菌は、疾患の発生と関係があるということでした。

 摂食制限により、適度の量の栄養が吸収され、残った食物繊維が腸に適度残り、有益な腸細菌を残す一方、食べすぎることで過剰なタンパク質などの栄養素が身体に有害な腸内細菌を増やしているのではないかと考えられています。

 研究グループでは、さらに研究を進めて、腸内細菌と食べ物の関係を明らかにし、腸内細菌がどういう構成で成り立っていて、毒素類を出していないか、さらに毒素がどういう影響を身体に与えているかを分析できるようにしたいということです。

 現代社会では食べるものが溢れているので、量を制限するのは難しいことかもしれませんが、でもどんなに身体に良いものでも、食べ過ぎたらダメと言うことですね。




 
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2013年06月27日

上海で急増しているアレルギー疾患の実態研究

 先日、中国で始めて行われた成人の喘息患者の動向についての疫学調査については、このブログでも紹介しました。北京・上海で増える喘息患者に書いております。

 今度は、中国の子供に関しての喘息・アトピー性皮膚炎・鼻炎に関しての調査が行われ、さらに室内内装との関連について考察されています。とくに、個性的なゴタゴタした内装がすきな中国なので、この問題は日本以上に大きな問題だと思います。

 中国環境科学学会室内環境と健康分会が2013年6月に公表したデータですが、2010年〜2011年にかけて、北京・上海・ハルビン・西安・重慶・長沙・武漢・太原・南京・ウルムチの10都市で、1〜8歳の幼稚園・小学生の4万8000人の子供たちを対象に、International Study of Asthma and Allergies in Childhood (国際小児喘息、ISAAC)での調査でもちいられる方法を使い、このうち3〜6歳の子供に関してのデータを分析したということです。

 この結果、こどもの喘息の発病率は、1990年は0.91%、2000年は1.5%だったのに、2010年は6.8%と大幅に増えていることが分かっています。細かく見ていくと、呼吸がゼイゼイとする子供が13.9〜23.7%、鼻炎症状が24.0〜50.8%、アトピー性皮膚炎が4.8〜15.8%ということでした。


 上海に関して詳しく見てみると、この10都市のなかで、呼吸がゼイゼイとする項目はウルムチがトップでしたが、それ以外の鼻炎症状やアトピー性皮膚炎に関しては上海がトップでした。また、10都市のなかで、喘息の罹患率は上海がトップで10.6%、逆に一番少なかったのが太原で1.6%でした。


 私が興味深いなと思ったのは、こうした疾患の原因となっている物質として、屋外のPM2.5やPM10との関連よりも、むしろシックハウスなど室内環境との関連性があったという結果です。
 調査したのが室内環境を研究している学会なので、そのあたりの分析をみてみると、近年の住宅建設ラッシュで、大量に新建材を使ったり、気密性の高い構造のマンションが増え、また有害ガスを発生する電気製品の増加で、室内環境の悪化が進んでいるとしています。


 たとえば、この学会が調査した室内の化学物質による汚染状況は、基準値を超えた住宅の割合は上海の場合、ホルムアルデヒドが25%、ベンゼンが2%、キシレンが34%、トルエンが38%でした。特に、キシレンの基準値超えは中国では深刻のようで、杭州や南京では67%の住宅で基準値を越えていました。


 上海の場合、中国人の暮らし方をみていると、子供も大人も屋内で活動することが多いように思います。実際、1日のうち87%以上は部屋で過ごしているという研究データもあります。そうなると、屋外の大気汚染も問題ですが、屋内の建材やダニ・カビなどによる汚染による影響も大変大きいのは想像に難くないはず。とくに、今のような梅雨時期でジメジメとしているときは、要注意ですね。


 これから暑くなってくると、エアコンの衛生問題も対策をしておく必要があります。エアコンのフィルターは、カビ・ダニ・ほこりのすみかになっています。上海のような高温多湿なエリアでは、1ヶ月に1回はフイルターの掃除・消毒をしたほうがよいともいわれています。空調のある部屋の細菌数は、空調のない部屋と比較して多いという研究もありました。


 しかし、中国の家具・建材の問題は厄介ですね。こうした製品の値段は安いのですが、果たしてちゃんとした基準を満たしているかどうかはしっかりとしらべないといけません。室内環境の揮発性有機化合物(VOC)を増やさないためにも、内装は極力簡単にし、家具や建具を置きすぎないことは重要だと思います。


 上海のアレルギー疾患も、いよいよ先進国並みに増えてきました。経済の発展に伴い、ある意味仕方がない結果なのかもしれません。健康と発展の両立は難しいです。


参考文献:上海『新聞晩報』



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2013年06月23日

前立腺癌と揚げ物の関係

 中華料理も、家ではそれほどやらなくても、外食するとよく出て来ますよね。それ以外にも、朝食に油条を習慣的に食べている中国人も見かけます。食欲をそそる揚げ物ですが、揚げ物と前立腺癌との関係について、ある研究結果がありました。

 雑誌「The Prostate」に発表されたJanet L. Stanford博士らのグループによる研究ですが、35〜74歳の1549名の前立腺患者と1492名の健康な男性をを比較した結果、フライドポテトやフライドチキン、ドーナツなどを週に1回以上食べた場合、1ヶ月に1回以下の人たちと比較すると前立腺のリスクが30〜37%高まるということでした。そのなかでも、進行前立腺癌のリスクが高まるようです。

参考:
Study finds eating deep-fried food is associated with an increased risk of prostate cancer

 
 高温の油を使うと、AGEs(終末糖化合物)の発生量が増えます。たとえば、ニワトリの胸肉1かたまりを20分間揚げると、AGEsの濃度が、1時間煮詰める場合と比較して9倍も多くなるとか。AGEsは、身体に炎症反応を引き起こし、酸化ストレスを高めます。

 なお、現代の研究では、大豆に含まれるイソフラボンが局全前立腺癌や、緑茶の飲用などが進行性前立腺癌の予防に効果があるともいわれていますが、中医学でも使われるザクロも効果があるようです。

 
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2013年06月21日

やっぱり朝食は食べたほうがいいと思う

 今日は夏至ですね。
 夏至を過ぎると、いよいよ一年で最も暑くなる三伏の季節になります。上海では針灸科がとっても忙しくなります。

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(中国の朝食時の市場は面白い)

 さて、基本的に、私のところにこられる患者さんの多くは、何らかの症状(不定愁訴も含む)をもって来られることが多いわけですが、よく質問をすると睡眠や食生活になんらかの問題があることが多い。そのなかで、朝食をどうしているか?という問題は大切だと思います。

 上海人の生活を見ていると、朝食のスタイルがどんどん崩れていて、いまや煎餅(露天でよく売っているもの)を食べ歩きという人も少なくないです。小中学生でもそういう人を見かけます。また、朝食を食べる習慣がなかったら、食べなくても大丈夫というような人も見かけます。特に若者の中国人に多い。

 朝食を食べないことにより、胆嚢にアルカリ性の胆汁が欝滞し、胆嚢が膨張、これた胆嚢炎の原因にもなります。また、胃が長時間飢餓状態にあると、胃酸の分泌が過剰になり、胃潰瘍や胃炎の原因になるほか、低血糖や肥満などとの関連も言われています。

 では朝に何をたべるといいのか?

 これも結構悩ましい問題かと思います。

 中医学的には、朝とはやっと陽気が上昇してきた状態です。まだ夜の陰気が完全に消えていない状態のなかで、まだ筋肉や神経、血管などが十分に活動できていないので、当然刺激のあるものは避けなければいけません。やはり、まず暖かいものを摂取するようにしたいです。よく冷たい牛乳・ヨーグルト・野菜ジュースを摂取している人をみかけますが、できる限り常温にしてからにして欲しいところ。

 また、牛乳・豆乳も結構かと思います。豆乳に関して、よくイソフラボンが女性ホルモンと似たような働きをするとも言われていますが、研究によると1日150mg以上のイソフラボンを、5年間摂取し続けた場合に、子宮内膜増殖症のリスクが高まり(内閣府・食品安全委員会)、日本での安全摂取量は70〜75r/日とされています。

 これが大豆製品でどの程度の量になるかと換算すると、豆乳の場合100gでイソフラボンが9r程度と言われているので、仮に300g飲んでも30rにも達しません。ほかの大豆製品を組み合わせても、そもそも加工されている大豆食品の場合、イソフラボンの流失も大きいので、総量的にもそう心配することはないです。むしろ、タンパク質や脂肪などの摂取において、身体にとっては必要だと思われます。とくに、卵や豆腐製品は胃の中に留まっている時間も長いので、午前中しっかりと活動するのにも有用です。

 また、新鮮な野菜・果物もぜひ組み合わせたいところ。野菜摂取の代わりに野菜ジュースという方もおられますが、その場合は量に気をつけて下さい。私は、基本的には食べる方がよいと考えています。

 そうすると、食パンやお粥・ご飯に豆乳・ヨーグルト・味噌汁などを組み合わせ、そこに果物・野菜類を適度に足すのがやはり無難ということになりますね。

 ちなみに、朝から小籠包や油条、こってり肉まんを食べる人もいますが、これはちょっと避けたいところ。胃腸の負担が増すだけで無く、脂肪の摂取量もオーバーになりがちです。煎餅を食べるときは、油条を外してもらうのも手です。

 私自身は、朝が4時半と起床が早いので、食べないと出勤までお腹が持ちません。(^_^)


 
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