2014年10月26日

産後の腰痛の中医治療

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 中国では、産後1ヶ月はしっかりと休み、身体を養うことが一般的です。「坐月子」ともいいますが、家庭によってはテレビを見るのをダメとか、髪の毛を洗うのもだめとか、ちょっと行きすぎているところもありますが、いずれにしろ、この時期の休養は中医学ではとても大切とされています。

 先日診察した患者さんに「産後の腰痛」でこられた方がおられました。

 夏でも時々見かけますが、寒くなる秋〜冬にかけて出産した人がより気をつけてほしいのが「産後の腰痛」です。

 一般的に、出産によって女性の身体は一時的に気血が消耗しており、腎の気がかなり低いレベルにあります。瘀血が身体の中に残っていることもあるでしょう。

 そこに、病気の原因となる寒さの邪気、「寒邪」を受けやすくなり、その結果、腰の重さ・怠さ・冷え、下半身の怠さなどを感じるというわけです。

 そんなときは、寒さをとってあげて、腎を補ってあげればよい効果がでることが多いです。滋腎として六味地黄湯をベースに腎陽を補う仙霊脾・川断・巴戟天・桑寄生などを加減し、痛みが強いときは桂枝・白芍など加えて通痺させます。これに、膀胱経からアプローチできる鍼や灸を組み合わせると、さらに効果的です。

 ちなみに、産後のおっぱいの問題にも中医学は広く使われます。母乳の出が悪いときや詰まったりするとき、さらに乳腺炎になりそうなとき、ゆくゆく断乳や卒乳をするときなどには中医学にはさまざまな経験があります。

 産婦人科の分野と中医学は、現代の中国でもとても密接な関係にあります。

東和クリニック・中医科での担当スケジュール
posted by 藤田 康介 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2014年05月06日

尿道結石予防のために、散歩も大切

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 今朝の上海も良いお天気です。PM2.5も30㎍/㎥前後と良好。
 ぜひ屋外で運動したいところですね。 

 健康診断の結果などを見せてもらうと、意外と石を持っている方がおられます。これから暑くなると、何かと厄介な結石の問題。日常生活からどんな注意ができるか、また中医学や漢方ではどこまで対応出来るか、考えてみたいと思います。

 一般的に、尿道結石は30〜60歳の男性によくみられます。腎臓や尿道、膀胱にできる結石の成分は1種類だけではありません。一番多いのがシュウ酸カルシウムによるもので、全体の8割を占めます。シュウ酸は中国語では草酸。尿に含まれるシュウ酸の半分は飲食と関係があるといわれており、トマト・ほうれん草・セロリ・紅茶・豆腐・チョコレートなどに多く含まれています。これら食品を食べるときはしっかりと熱するだけでなく、カルシウムを多く含む食品と一緒に食べないことも大切です。いわゆる、食べ合わせの問題ですよね。

 ただ、カルシウムの摂取量を減らしたらよいかと言えば、むしろ逆です。もしカルシウムの摂取量がすくなすぎると、腸でシュウ酸塩の吸収が促進され、逆に骨からカルシウムが流失し、結石ができやすくなってしまいます。よって、一定量以上のカルシウムの摂取は結石予防に関しては必要といわれています。適度にチーズやヨーグルト、小魚を摂取することが必要です。

 そのほか、尿酸結石で関係してくるのがプリン体の問題。ビールなどのアルコール類や、濃いお茶・コーヒーなども注意する必要がありますし、動物の内臓や、とくに中国での飲食では火鍋などスープ類には要注意。また豆類や菌類にもプリン体を多く含む物があります。一般に、肉類を多く摂取すると尿が酸性に傾きやすくなるため、野菜などアルカリ食品を食べることが大切です。

 塩分についても注意が必要。尿中のナトリウムが増加することで、カルシウムの排出量も増えるからです。

 ただ、なんといっても水分は特に汗が多くなる夏場はしっかりと摂取したいことろです。一般に、1日の尿の量が1リットル以下だったら結石のリスクが高まり、逆に2リットル以上だったら下がります。そうなると、1日2リットルぐらいの水は必要になります。ただし、甘い飲用水は糖分の影響で尿中のカルシウムの量を増やしてしまいますのでダメです。お茶類では麦茶、もしくは普通の水でいいと思います。また、夜中トイレに行くことがある場合は、尿が濃縮されるのを防ぐためにこまめに水分をとる必要があります。

 さて、中医学・漢方などで保守的な治療法をする場合、一般に結石の大きさが8〜10ミリ以下で、尿管などを塞いでいなければ適応症で、生薬だけで対応出来ることが多いです。結石の排出を促進する方向で処方します。もちろん、食生活の見直しも大切で、繊維質のものを食べることで腸でのカルシウムの吸収を抑制します。また、マグネシウムを含む食材を食べることで、シュウ酸とマグネシウムを結合させて腸からの吸収を減らすことも必要です。また、柑橘類も結石予防にはよいとされています。そのほか、中医学では山査子などもよく使います。

 一方で、近年の米国・ワシントン大学の研究で、閉経後の女性8.4万人を対象としたデータでは、家事を含めた運動が腎臓結石予防に有効であると発表しています。たとえば、毎週1時間ジョギングをするか、毎週3時間散歩をするだけでも、腎臓結石のリスクを31%も減らすことができるようです。

 結石の予防のためには、飲食の問題と運動、そして水分摂取が大切ですね。


おしらせ

posted by 藤田 康介 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2014年05月05日

産後の冷え

 IMG_0494.jpg(上海市高橋鎮にて)

 不妊治療で中医学・漢方や鍼灸を使う人が、以前と比較して明らかに増えてきたと思います。これは母体の負担を軽減するのにも結構な事だと思いますが、残念ながら相変わらず当帰芍薬散を不妊治療の目的で延々と飲み続けている人が多いのもまた事実。本当はもっと体調にあわせて変化が必要なのです。

 しかし、意外に知られていないのが産後の体調管理に中医学・漢方を使うということ。
 中国では極めて一般的な習慣でもあります。

 産後1ヶ月間は「坐月子」といって、中国ではすべての活動をストップさせ、身体を休めます。(テレビすら見ないという人もいます)そのための専用の家政婦さんを雇うぐらいですから。このとき万が一女性が家事などで休めなく、しかも体調不良になったりしたら、すべて旦那さんの責任!と一生言われ続けられることになります。そのほかにも、乳腺炎になってしまったとき、おっぱいの出がよくないとき、詰まってしまったとき、そして逆に母乳をとめるときなども使えます。

 さて、産後の体調管理で、ときどき私も診ることがあるのが産後の身体の冷えです。これは正常に出産したとき以外にも、流産をした後も含みます。とくに、寒い季節の冬や、エアコンをよく使う夏場なんかも要注意です。関節の冷え以外にも、四肢の冷えや痺れ、腰や背中の怠さも伴います。これが、産後から数ヶ月、場合によっては数年間続くこともあります。

 基本的に、産後は身体が弱ります。中医学的には、出産により母体が元気を損ない、気血が損傷されると、様々な外邪が侵入する腠理という体表の穴が緩くなり、気血がさらに不調になります。そして様々な症状を引き起こすわけです。

 このうち、季節柄よくみられる外邪が風邪・寒湿邪で、これらが腠理から体内に入り込むと冷えや痛みを引き起こしやすくなります。そこで、気血を補い、それをベースにして血の巡りを整え、温めてあげることが必要です。こういう場面では、やはり中医薬(漢方薬)は力を発揮できるわけです。産後のケアで、黄耆・白朮などの益気健脾系、杜仲・続断・巴戟天などの補腎助陽系の生薬が使われやすいのもそのためです。
 

おしらせ

posted by 藤田 康介 at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2014年04月05日

春は肝の養生・不眠対策編

 一年を通して、春は不眠を訴える患者さんが多い時期でもあります。春は肝と密接な関係があることは前回紹介しましたが、この肝の養生にとても大切なのがやはり睡眠の問題です。最近、睡眠がうまくとれないと訴える患者さんが多いのも特徴ですが、基本的に春は睡眠のバランスが取りにくい季節で、中医学では「春困」といいます。

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 春本番となると、気温が暖かくなってきて、身体全体の血管が拡張し、相対的に脳にいく血液量が減ってくると眠気の原因になるという説もあります。そのためには、まずは日中に運動などで身体を動かし、呼吸代謝を改善して脳への刺激を高め、血液量を増やしてあげる必要があります。


 春の睡眠の特著として、『黄帝内経』の言葉を借りると、「夜臥早起、広歩於庭、被毛緩行、以使志生」というのがいいとされています。つまり、ちょっと遅めに寝て、早めに起きる、起きたら屋外を散歩して、衣類の調節に気をつけながら、悠然とするのが良いみたいです。衣類の調節はとても大切で、いきなり薄着になるのはよくないとされています。

 この原則から行くと、部屋に遮光カーテンをつけて真っ暗にして寝ることはあまり望ましくありません。朝早めに起きるためには、どうしても自然な太陽の光が必要だからです。我が家は、日差しが強いときはカーテンをすることがありますが、それ以外はなるべく開けておくようにしています。1日を陰陽で考えたとき、昼間は陽で、夜は陰となりますが、その陽のなかでも朝は陽の中の陽、夕方は陽の中の陰、夜も夜更け前は陰の中の陰、さらに陰の中の陽を細かく分類できます。こうした陰陽の動きと身体の陰陽をうまく合致させることが不眠を克服するポイントにもなります。

 されに、飲食が睡眠に与える影響は大きいと中医学では考えます。この時期、春の陽気を高めるような葱・棗などの温性の食材を使うのはいいのですが、冬場に欲しくなるようなピリ辛の刺激が強いものは避け、むしろ陽気を穏やかに整えることを重視するのがいいといわれています。また、肝が強くなりすぎると、脾を圧迫し、脾の気を消耗すると不眠の原因になります。そのため、春特有の緑野菜も食べたいところですね。

 不眠には色々な原因が考えられます。中医学では、体質・精神・疾患・環境・薬物による5つの要素を考えますが、その中でも肝が強くなりやすいタイプ、則ち責任感が強くて、真面目な性格の人たちに多い傾向にあります。現代社会で、精神的なストレスを感じる人たちもこの肝気鬱結や肝陽上亢などの類に入ってきます。私のところへ診察を受けに来られた段階ですでに睡眠薬の服用を始めてられる方もおられますが、実は中医薬でもなかなかの成果を出せることがも多いので一度は試してみる価値はあると思います。むしろ、薬からの離脱のしやすさを考えると、中医薬や漢方薬のほうが有利なこともあります。そのほか、耳針や鍼灸を組み合わせますが、基本的には如何にして自身の生活リズムを立て直すかがポイントです。

 もちろん、不眠の背景には、さまざまな基礎疾患が関わっている場合もあります。そうした原因を排除しつつ、安易に薬に走らないで問題を解決する方法を少しでも考えてみたいものですね。また、中医学でも市販の中成薬で睡眠剤をまぜたものもありますので、取り扱いには注意が必要です。これに関しては、エキス剤を使うことで対処できます。また、単味生薬で「安神」と呼ばれる、睡眠を改善する働きのあるものが色々ありますので活用していくことになります。

 
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2013年07月30日

午後の発熱感ー猛暑の中の中医学

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上海は7月26日の13:36〜13:47に上海市徐家匯で1873年観測史上最高の40.6℃を記録し、さらに赤色高温警報が発令されました。今日、27日もお昼に出勤するときにクルマの温度計をみたら41℃を示していました。こう暑い天気がつづくと、もう身体が暑さに対して麻痺してしまいますね。それでも、上海には冬があるので、いつかは気温が下がるという望みがあるのは救いです。

 暑くなってくると、体温調節がうまくいかないという声を時々聞きます。

 先日診察した42歳の女性。平熱は36.0℃前後なのに、7月に入ってから午後に微熱を感じるようになる。体温を測ると37℃前後となり、頭が痛く感じ、胸が痞えるなどの症状もありました。喉の渇きはとくにないが、疲れを感じることが多い。四肢は平素より浮腫みやすい。舌質淡白苔白厚、脈弦細。


 こうした午後に身体が火照りやすいという症状は、夏によくみられます。中医学でも昔から色々な学者が研究しています。清代に書かれた『温病条辨』の有名な条文に「長夏初秋、湿中生熱、則暑病偏於湿者也。」とあります。中医学では、湿は陰性の邪気になるため、湿が身体に留まることで熱が体内に籠もってしまい、午後に熱が出てくるという考え方があります。さらに、湿が気の流れを妨げるため、身体のだるさが顕著になってきます。

 ただし、注意しないといけないのは、陰が不足することで発生する午後の発熱との区別です。もし間違って陰を補う生薬を使ってしまうと、湿を追い出すことが難しくなるからです。

 そんなとき、とても素晴らしい処方が伝わっています。それが、『温病条弁』の「三仁湯」です。処方構成は生薏苡仁・滑石・杏仁・半夏・通草・白豆蔲・竹葉・厚朴となっていますが、とても切れのいい効果を発揮します。処方構成は湿熱を上焦・中焦・下焦から除去しようと考えられていて、本来は湿温病の初期に用いますが、それ以外でも応用範囲が広いと思います。


 さて、上記の患者さんにもこの処方を中心に、多少加減をして使いました。すると、服用1週間で不快な午後の発熱感が解消されずいぶんラクになりました。その後も、再発がないとのことです。


 補足ですが、H7N9型鳥インフルエンザの治療でも三仁湯を使ったという症例報告もあります。湿熱系の治療には欠かせない名処方ですね。

 まだまだ蒸し暑い猛暑が続く上海では、まだまだ活躍しそうです。


posted by 藤田 康介 at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2013年07月26日

月経周期を整える「調経」の考え方

 中医学を使った治療で、中医学が比較的得意とする分野に、女性の月経周期をきちんと戻す、「調経」という治療があります。「調経」は一般の中国語でも比較的よく使われる言葉で、中国人女性の間では中医学治療への認識が高い分野でもあります。

 先日、妊娠したと報告をうけた患者さん(35歳)も、この調経治療を行ってきた結果、うまく妊娠できた症例です。今から10ヶ月前に受診されたとき、もともと月経周期が2〜4ヶ月に1回という稀発月経で、そもそも基礎体温が殆ど安定せず、排卵時期も読みづらい傾向にありました。月経前後のPMSもあり、胸の張りも顕著で、肩こりと偏頭痛を持っているという体質。便秘気味で、腹診は腹直筋の攣急を認めるタイプ。出血量は決して多くなく、血塊も殆どなかったので、まずは扶脾滋養肝腎・調理冲任を処方。さらに、肝気の流れに着目して、疏肝理気させると、便通は大きく改善し、とりあず生薬服用開始1週間目に約100日目ぶりの月経がきました。

 ただし、この回の月経痛がひどかったので、気の流れは多少整ったものの、血の流れにまだ問題があると判断し理気剤を減らして活血調経法に。その後だいたい35〜40日程度で月経が来るようになり、なりよりも基礎体温の低温期と高温期がだんだんと読めるようになってきました。月経痛もおさまり、月経周期が安定してくるとしめたものです。少しずつ処方の加減を繰り返し、10ヶ月目の今年7月に妊娠したことが分かりました。

 月経病の治療は、中医学でもかなり細かく分類されています。今回は、調経の目的での稀発月経の治療でしたが、中医学では月経後期もしくは経水後期と呼びます。その他、月経時の下痢・頭痛・嘔吐・発熱・痤瘡(ニキビ)などなどさまざまなケースに中医学の先人達は経験を残しています。

 もちろん、この患者さんの場合も、ご自身による身体養生の努力もありましたが、とにかく妊娠まで到達することができて私も非常に嬉しかったです。


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2013年06月24日

汗の観察

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 暑くなってくると、私達の生活の中で、汗を意識しない日はないと思います。ただ、空調が普及してきて、以前と比べて現代人の発汗チャンスは減ったのではないかと思います。その結果、夏に蓄えるべき陽気が不足し、汗を出すパワーが無かったり、汗を出す腠理の調節が旨くいかなかったり、そもそも汗を出すための陰液が不足していたりとというケースも見受けられます。その観点からも、夏にかける汗は大切にしたいところです。

 中医学でも、昔から汗に対しては様々な考察が加えられてきました。単なる体温調節だけで捉えていないところに醍醐味があり、自汗・盗汗といった言葉もあります。こういった言葉は、中医用語と言うよりもむしろ一般の中国人もよく知っています。


 例えば、『傷寒論』の桂枝湯(桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草)では、衛気と営気のバランスが崩れることで汗がでると考えます。
  衛気とは体表に近いところに位置する気で、一方で内側には営気と呼ばれる気があり、この両者がバランスをとることで汗がコントロールされるいます。例えば衛気が弱かったりしても、中の営気が飛び出してきて汗は出てしまいます。これは、発熱は無いけど、汗が多いと言うときの動きになります。
 逆に病気の原因となる邪気に対抗するために衛気が強くなりすぎると、営気もそれとともに体表に引き出され汗が出てしまうと言うパターンもあります。これは発熱のときの汗に多いと考えられました。ちなみに、衛気という気は、一日のうちでも昼間と夜とで動くパターンがあります。こうした変化は、『黄帝内経』にも記載されています。

 その他、陰と陽のバランスが崩れての発汗というのもあります。寝汗が多いとか、手足が熱く感じるとか、顔が赤くなる(火照る)といったパターンです。当帰六黄湯(当帰・乾地黄・熟地黄・黄芩・黄耆・黄柏・黄連)を使うことが多いです。教科書にはあと麦味地黄丸(麦門冬・牡丹皮・茯苓・澤瀉・五味子・熟地黄・山茱萸・山薬)もよく登場します。

 身体の中の熱、つまり裏熱の強さによっても処方を使い分けれます。たとえば、熱が高く、全身で汗が多く、喉の乾きがひどい場合は陽明気分熱証となり、白虎湯がよく使われました。熱が多少収まっても、熱により陰が傷つき、それでも汗がまだ収まらない場合は竹葉石膏湯を使ったりします。

 さて、この湿気の多い上海で、ジメジメを感じることが多いわけですが、その場合は湿邪との関わりが多くなります。汗が粘っこく感じ、首から上によく汗をかき、腹部膨満感などが見られる場合は、湿熱対策として竜胆潟肝湯(木通・地黄・当帰・沢瀉・車前子・黄芩・竜胆・梔子・甘草)、一方で熱の症状が強くなく、湿熱が身体に滞っている場合は四妙散(黄檗・蒼朮・牛膝・薏苡仁)を使いました。

 不眠を伴い、身体が疲れやすく、悩み事があったりしたときに出てくる、気持ち悪い汗に対しては、健脾養心の帰脾湯(黄耆・人参・白朮・茯苓・酸棗仁・竜眼肉・当帰・遠志・大棗・乾生姜・甘草・木香)を使います。先日、不眠・身体の不快感・気持ち悪い汗を主訴に来られた方(女性)は、この帰脾湯の加減を1週間服用だけですっきりとされました。このようにあっという間に効いてしまう場合もあります。

 私が思うに、意外と見落としてしまうのが瘀血による汗。これは、血の巡りが悪くなり、そこから熱が発生して汗がでるというもの。特徴は、全体に汗がでるというのではなく、局部的に出てくるというもの。もしくは、午後や夜間に熱く感じ、不眠やイライラなどを伴うこともあります。よく使うのは、血府逐瘀湯(生地黄・桃仁・当帰・紅花・川芎・赤芍・牛膝・柴胡・枳殼・桔梗・甘草)です。

 いずれにしろ、汗をかきやすいシーズンですので、一度、自分の汗を観察してみるのもよいかもしれません。
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2013年06月18日

シェーグレン症候群の中医学治療研究

 黒竜江省の衛生当局から新技術応用1等奨を表彰された研究結果のようですが、中医学の清肝養陰法がシェーグレン症候群の治療に有効であるという結果が発表されていました。

 大慶油田総医院中医リウマチ科の李俊松教授等のグループによる研究で、68名のシェーグレン症候群の患者を無作為に2組に分け、一組は西洋薬の硫酸ヒドロキシクロロキン(中国では結構普通に使われています)、もう一組は硫酸ヒドロキシクロロキンと中医薬の併用しました。生薬処方は、清肝養陰・祛瘀潤燥の処方を組み、菊花・枸杞・白芍・太子参・山薬・生地黄・知母・沙参・麦冬・玄参・竹葉・丹参・莪朮・鬼剪羽などを使っていました。要は、一貫煎などの基礎処方に、活血化瘀を加えた感じでした。

 この結果、西洋薬を使ったグループでは、口の渇き・目の乾きが改善したのが78.1%であったのに対して、中医薬を併用したグループでは91.7%と効果が高まった模様。

 シェーグレン症候群は、中年以上の女性に多い疾患で、肝腎陰虚・陰液不足が基礎にあり、燥熱と陰虚が強まると、瘀血が発生して、脈絡が阻害され、さらに陰虚や燥熱が強まる流れになります。よって、このグループが使った処方に、活血化瘀を加えているのはなるほどですね。

 シェーグレン症候群のような自己免疫疾患では、やはり漢方薬・中医薬との併用が一定の効果が出せるようですし、今回の研究ではありませんでしたが、中医薬単独でも症状改善に役立つのではないかと思います。

posted by 藤田 康介 at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2013年06月16日

中国で紹介されたH7N9型鳥インフルエンザの中医症例報告(1例)

 先日、鹿児島で行われた日本東洋医学学会の車座勉強会で討論したかったのですが、時間的に厳しかったので流してしまいました。
 中国で紹介されたH7N9型鳥インフルエンザの中医学的治療を行った症例報告をこちらに記しておきます。
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第1日目 4月11日午前 
 5歳女児が北京地壇医院に来院。父母によると咳嗽8時間、発熱5時間ということ。父母が鶏の飼育・販売をしていたことを病院側は重視。
来院時体温37.3℃、軽い咳、呼吸正常、肺呼吸音正常、胸部レントゲン検査:両肺炎症。
症状が軽いのに、レントゲンが肺炎症を示していることに病院側は注意。


 4月11日午後2時 A型インフルエンザ検査簡易検査陰性。抗生物質などを投与。
 その後、容体が急変し、体温40.2℃。物理的解熱法は効果なく。肺呼吸音湿性ラ音。
 再度A型インフルエンザ簡易検査で弱陽性。サンプルをCDCに送り、タミフル投与開始。
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 第2日目 4月12日午前
 CDCの検査で、A型H1N1インフルエンザ、ウイルス性肺炎、細菌感染合併の可能性。酸素吸入・解熱・細菌ウイルス感染対策。
4月12日午後 中医薬処方開始。
体温39.8℃、高熱無汗、赤面、唇は赤。座臥不安・乾咳・口渇なし。小便淡黄、便秘2日間。舌質赤で絳・舌辺尖赤で芒刺あり。舌苔薄白黄、脈浮滑数。
弁証論治:衛気同病(毒熱は気分にあるものの、衛分の邪気も抜けきっていない。)さらに、営分へ進む可能性も。
治方:辛散透邪 解毒清熱
処方:銀翹散+白虎湯(濃煎)+青蒿



第2日目(4月12日)の15時半より服用開始。
17時半にCDCよりA型インフルエンザ(H7N9型鳥インフルエンザ)、北京で初めてのH7N9型鳥インフルエンザ患者。
ICU減圧隔離病棟に移る。

20時、CDCの専門家の回診。呼吸は正常に戻り、体温37.3℃。肺呼吸音は多少荒い程度。すでに熟睡。

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第3日目 4月13日午前7時
体温は正常。タミフルと中医薬は引き続き併用。
お昼頃に排便あり。
午後2時頃 舌質赤舌苔薄黄、脈滑細。
熱病により気陰が傷ついている可能性有り。よって銀翹散+白虎湯+青黛から、発汗作用のつよい荊芥を外し、甘寒養陰・清熱解毒の玄参・白茅根・大青葉を追加。
胸部CT再検査。病変部位辺縁の改善が見られ、H7N9型鳥インフルエンザ検査で2回とも陰性。

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第5日目 4月15日
お昼頃に普通病棟へ。
舌質軽度の赤。舌苔中央の黄・干燥。脈細滑。
玄参・大青葉など清熱解毒剤をはずし、西洋参・穀芽・麦芽を足して養陰益気・健脾益胃。
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第7日目 4月17日 退院

 温病学の理論を旨く組み合わせた症例かと思います。ガイドラインも出ていましたが、全体的に臨機応変に加減されており、しかも迅速に煎じ薬が活用されているところが印象的でした。

posted by 藤田 康介 at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2013年05月12日

三焦理論・腎臓病中医治療の思考法(メモ)

世界中医薬学会聯合会(WFCMS)の第7回国際腎臓病学術大会のメモ

1.天津中医薬大学第一付属医院・黄文政教授

 慢性腎炎の治療を考えるときに、とく病因病機で登場するのが三焦。三焦の焦は、温熱する・火熟物を摂取する…の意味。歴代の文献から、水穀を「焦干」して、清濁に分け、さらに津液を通す働き。特殊な膜状の組織・循環システムが三焦。そこで、気が循環する。五臓六腑に必要な各種栄養物質を吸収し、老廃物を出す。さらに、上焦・中焦・下焦に分かれて活動し、そのエネルギーとなるのは少陽相火。その少陽相火の源は命門(もしくは腎陰)。そこから、三焦と腎の関係は緊密。

 従って、三焦の働きが悪くなると、腹部膨満・下腹部下垂感・小便の出が悪くなり…の症状。結果、気滞・湿聚・血瘀の病理状態になる→湿濁と血積が腎に発生→腎気が衰える→浮腫・淋濁・腎風・腎労。慢性腎炎の症状となる。

 治療法:疏利少陽・斡旋三焦・調理枢機+健脾補腎・清利湿熱・活血化瘀。
 基本処方:黄耆(三焦を補い、衛気を充実)、丹参(活血化瘀)、柴胡+黄芩(疏解少陽)

 たとえは、脾虚だひどい場合は、太子参・党参・茯苓・山薬・蓮子など。
 尿蛋白には芡実・金櫻子・覆盆子など。
 腎陽虚には菟絲子・巴戟天(はげきてん)・淫羊藿・鹿角膠など。
 湿熱内蘊には白花蛇舌草・土茯苓・石韋・萹蓄・萆薢
 瘀血内結には益母草(やくもそう)・桃仁・赤芍・紅花・川芎・山査子・鬼箭羽(筆者注:血糖値を下げる働きに注目)
 血虚には熟地黄・当帰・白芍・鶏血藤。
 血尿には茜草(せんそう)・生地楡・地錦草・仙鶴草・小薊(しょうけい)・苧麻根(ちょまこん)
 
2.蘭州大学第二医院 劉宝厚教授

 中医学と西洋医学の2重診断。(筆者注:これは大事だと思う。CKD治療の場合、予後の推測には西洋医学の病理学的な検討が必要)中医薬を利用した西洋医学のステロイドや免疫抑制剤の副作用の緩和、使用量の抑制が可能。QOL向上。

 慢性腎炎の病因病気の根本にあるのが本虚標実。本虚はともかく、標実となるのは、風邪・湿熱・血瘀・湿濁となる。風邪が出てくるのも、治療で防風や雷公藤などを使うことからも分かる。

 CKDにおいて、血液レオロジーに問題がでてくることは、これまで多くの研究で分かってきているが、さまざまな中医薬の活血系の生薬を使える。代表的なのは、当帰・赤芍・三七・莪朮・沢蘭・水蛭。このうち、劉教授は莪朮の使用にスポットを当てていた。莪朮は、桃仁・紅花よりも効果が高いと。また、水蛭と地龍の組み合わせは、尿蛋白を減らすのとアルブミンを上昇させるのに有効。(筆者注:私も水蛭はよく使います。活血化瘀の働きは素晴らしいと思います。)

 さらに、湿熱に関してはCKD治療において注意しなければならない。とくに、実熱証が発現する割合が多いときで7割以上にもなり、この湿熱を除去することで効能が高まる。とくにネフローゼのときは、附子と肉桂に使用に注意。一方で、陽虚がある場合は巴戟天・肉蓯蓉・鎖陽、陰虚のときは生地・知母(ちも)・血虚のときは当帰・鶏血藤(けいけっとう)を使う。



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2013年05月11日

反佐・尿蛋白・升麻(メモ)

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世界中医薬学会聯合会(WFCMS)の第7回国際腎臓病学術大会で南京に来ていますが、今日は1日講演会場で発表を聞いていました。中国中から中医学の腎臓病の専門家が集まっているだけあって、非常に中身が濃いです。印象に残ったことをブログにメモしておきます。

1.南京の鄒燕勤(すうえんきん)教授の経験

 江蘇省の名中医で、医療活動50周年を迎えた鄒燕勤教授は、今回の学会でも中心的存在の専門家の一人です。夜に、50周年記念の宴が製薬会社主催で開かれたぐらいです。1933年生まれですので、80歳ですが、まだまだお元気でした。江蘇省中医医院では、70年代から中医腎科があり、その設立に尽力されました。

 今回話されたテーマは、鄒氏中医学における反佐療法の研究です。これは、身体が熱いのに、単純に身体を冷やすのではなく、少し温める生薬を加えたり、身体が冷えているのに、身体を温めるだけでなく、少し冷やす生薬を加えるという治療法です。とくに、慢性腎不全の患者の中医学治療では、脾腎陽虚や気血両虚であることが多く、陽系の生薬を使うことが多いですが、そこにあえて黄連を反佐として加えることで、温めすぎるのを防ぐということです。ポイントは、反佐の生薬はあくまでも少なく。黄連なら2〜3グラムで十分です。また、毒素を出すために、内服のほかに灌腸法を使いますが、この中には普通大黄や蒲公英を使いますが、反佐として熟附子を使うことで寒性が行きすぎるのを防ぐことができます。

2.天津の張大寧教授の経験

 CKD治療において、大切なのは尿蛋白をいかに抑えるか、またGFRをどこまで改善できるか、ということですが、この先生は生薬・升麻の使い方を紹介されていました。

 張教授は、升麻を10〜30グラム使われます。この薬の量は、おそらく北方の人の体質にあったものかと思います。

 升麻は、補中益気湯や普済消毒飲に入っていますが、どちらも李東垣の処方です。しかも、どちらも柴胡とペアで使われているのがポイントです。前者での升麻+柴胡は、上向きのベクトルに薬効を向かわせるために、後者は大頭瘟(おたふく風邪)の治療で使う代表処方ですが、清熱解毒の効能の中に、升麻と柴胡を加えて方向性を与えるものとして使われると考えられています。

 現代医学で、尿蛋白の治療といえばステロイドを使うのが常套ですが、なんとかその使用量を減らしたいと普通は考えます。そこで、中医学が活用されるわけですが、張教授の場合、尿蛋白を抑える働きのある生薬(たとえば蝉脱や萕菜花)+補気+活血+固摂させるのが定石ですが、これに升麻を使うことにより、補気の力を強めます。また、補気には尿蛋白を抑えるために生黄耆を90〜120gも使うと言うことですから、すごい量です。黄耆が尿蛋白を抑えることは、もう様々な実験で明らかになっていますが、一般に生黄耆を使います。活血には、川芎を使います。同様に、慢性腎不全であれば、補腎+健脾+活血+排毒を考え、排毒には灌腸として大黄と大黄炭を使うようですね。また、厄介な顕微鏡的血尿の場合、補気+少量の活血+止血+升提を治則とされているようですが、ここでも升麻を使うことで、統血と補気の力を補うと考えられていました。
 その他、CKD治療においては、湯液に含まれるカリウムの問題が出て来ますが、こちらはイオン交換法を活用して克服しているみたいです。患者の血液カリウム量を測定しながら、投与量を計算していました。これは、実際にみてみたいですね。(つづく)


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2013年02月27日

劉元素の黒地黄丸

 うちの中医クリニックでは、毎月定期的に医師向けの院内勉強会を行っているのですが、そこで色々なテーマに対して大学付属病院の専門家を交えながら討論しています。今回、黒地黄丸が話題にあがりました。

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 黒地黄丸は、劉元素の『素問・病機気宜保命集』に出てくる処方で、熟地黄・蒼朮・乾姜・五味子で構成されています。この生薬構成から、陰を補うことと湿を乾燥させることという、ちょっと相反する効能を持っている処方といわれています。

 金代の医学者、劉元素(1120〜1200)が生きていたころの時代背景というのも興味深いものです。この当時、世間一般に体を温めたりする辛熱や香燥作用のある生薬がよく使われていて、その弊害が指摘されていました。たとえば、この当時熱性の病気が流行したのに、麻黄や桂枝といた生薬で発汗させたりする辛熱法が多用され、そのため様々な弊害がみられました。そこで、劉元素は火熱病に関して寒涼系の生薬の応用でさまざまな見解を示しました。実は、日本の漢方でダイエットで一躍有名になった防風通聖散は、劉元素の書いた『宣明論』の中に出て来ます。

 あらためて、この黒地黄丸をみてみると熟地黄は、腎の真陰の不足を補い、五味子は滋腎益陰で、両者が腎の乾燥を整える一方で、蒼朮で健脾燥湿して熟地黄による陰の滞りを防ぎ、乾姜によって中焦の寒さをとばして、蒼朮とともに健脾の働きを高めます。同時に、陰のなかに、腎陽を補う生薬を足すことで、さらに陰を補う力を高めることができ、全体としては、養陰と燥湿を兼ね備えた名方となっています。原文では「治陽盛陰虚、脾腎不足、房室虚損、形痩無力、面多青黄而無常色、宜此薬養血益腎。」と紹介されています。

 この処方は、劉元素によると痔瘡にも効果があるとされ、とくに血虚型には効果が高いとしています。ここで劉元素の考える痔瘡の病因病機は、風邪によって熱が発生し、風邪+湿+熱が腸に侵入することで、排便に支障が出て、血熱が流出し、久病は腎に影響を与え腎陰が不足します。これがさらに進むと湿熱が鬱積して精血を消耗し、腎陰に影響を与え、さらに湿熱が脾臓に長く留まれば、脾臓の働きが弱まり、脾虚となって湿邪がますます盛んになるとも考えられます。そのため、結果的に脾の湿と腎の燥が問題となります。

 いずれにしろ、過去の処方を探っていくと、昔の医学者達の研究成果のエッセンスが沢山詰まっています。こうした流れを見ていくのも中医学の醍醐味の一つだと思います。


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2012年11月26日

月経期の頻尿と中医学

 日本でも中国でも、漢方や中医学を使って、婦人科の治療を行っている方は多いと思います。とくに、月経痛や月経前症候群(PMS)対策では、東洋医学はかなりの特色を持っています。

 最近、私が見かけた患者さんで、効果が比較的良好だったのが、月経期の頻尿での中医学の活用でした。いずれも、月経がないときは、トイレに行く回数は普通なのに、月経が始まると途端に回数が増え、酷いときには15分に1回の割合でトイレに駆け込むという状況でした。西洋医学の検査では、とくに異常は見つかっていないけど、ただ月経時の腰痛や下腹部の不快感はかなり強いものがありました。日常生活に支障が出ていたので、受診されました。1例は湿熱毒邪+蘊結下焦の実証で、もう一例は、気血不固+腎虚の虚証で弁証すると、症状がおさまりました。

 一般に、月経期はヒトの腠理(いわゆる毛穴のこと)が大きく開き邪気が入りやすくなると同時に、腎虚がすすみ、膀胱の気化がうまくいかなくなります。そのため、補腎と理気を促す生薬が有効で、津液の代謝を整えます。

 今回は、山薬・菟絲子(としし)・覆盆子(ふくぼんし)・黄耆・党参などを使い、症状の変化を見ながら清熱去湿作用のある鳳尾草(ほうびそう)、月経を整えて補腎作用がある鹿含草などを加減させてみました。

 中医学の特徴を利用できる、効果的な治療法だと思います。



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2012年11月22日

下半身の冷えを中医学でどう考えるか

 寒くなってくると、女性を中心に体の冷えを主訴に来られる患者さんが増えます。冷えの改善には、日本でも漢方薬が活用されますが、こちら中国の中医学でも同じです。ただ、冷えで困っている患者さんの数は、どうも日本人の方が多いような気がします。(あくまでも、私の感覚ですが。。。)

 一言に冷えといっても、強烈な冷えの人は本当につらくて、幾ら衣類を重ねても効果がないことが多く、とくに腰から下が冷たいだけでなく、場合によっては痛みも伴うことがありますし、冬だけでなく年中冷たいという場合も少なくありません。そして、冷えとともに風邪を引きやすいといった体質もともなっている症例も多いように思います。

 それでは、中医学や漢方ではどう考えるか?

 「冷えているから、温めたら良い」という発想は容易にできるかと思いますが、それこそ暖かい靴下を履いたり、お灸や薬用足浴の活用ということになります。内服する場合だったら、体を温める生薬を使えば?ということになりますが、残念ながらそれぐらいでは頑固な冷えの効果は高まりません。

 例えば、上海エリアの場合、この冷えは単なる寒さだけではありません。「陰冷」と呼ばれるように、必ず湿の存在があります。つまり、寒湿になっているのです。また、寒邪に体が襲われた場合、それが経絡の流れを阻害し、気血が滞り、瘀血が形成されることも忘れてはいけません。やはり、単なる脾腎陽虚だけでなく、瘀血や気血両虚、さらに肝が筋脈を主るという理論からも、考えるべき問題は広範囲になると思います。(冷えすぎたら、足の痙攣がおきる場合がありますが、まさに肝主筋脈と関係があります。)

 そうなると、単に温めるだけでは足りないことになります。やはり、ちょっと汗をかけるような太極拳やウオーキングなど運動は、気血の巡りには欠かせないことが分かるかと思います。

 では、生薬ではやはり活血養血の処方に、温陽や補肝腎を足すというのがよく使われます。また、場合によっては四逆散のように、疏肝理脾することもあります。四逆散の四逆とは、そもそも手足が冷える、少陰病ことを意味すると言われています。また、こうした患者さんの多くは、下半身に症状をもっていることが多いので、下向きに生薬の効能が高まるように、川牛膝や独活(うど)を使うこともあります。

 いずれにしろ、冷え対策は単に温めるだけでなく、広範囲で考える必要があります。




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2012年11月02日

頸部リンパ節炎に著効した牛蒡解肌湯

 中医外科で必ず勉強する『瘍科心得集』という清代の書物があります。中医外科では心得派に属する、高錦庭が書いた本ですが、温病学の影響を強く受けいます。ここに出てくる有名な処方に牛蒡解肌湯というのがあります。構成は、牛房子(牛蒡のタネ)・薄荷・荊芥・連翹・山梔子・丹皮・石斛・玄参・夏枯草(カゴソウ)で、原書にはグラム数が書かれていませんので、患者さんの症状にあわせて加減することになります。病因病機は、外感の風熱が、陽明の痰熱を導き、顔面部の風熱、頸部の痰毒、風熱の歯の痛みを発生させるというものです。そのため、全体の処方構成は疏風清熱・涼血消腫となっていますが、玄参・石斛など滋陰もフオローされています。

 さて、今回の患者さんは今週水曜日に来られた40代の女性。去年の秋頃から頸部リンパ節の腫脹があり、一旦西洋医学で抑えられたものの完治せず、2012年9月に頸部の違和感と腫れ、臼歯の痛みを訴えました。痛みはかなりひどく仕事での集中力を欠くほどで、来院。エコーでは左頸部リンパ節腫大を確認。甲状腺は異常なしでした。まさしく、「風熱痰皆発於頸項間」の症状に一致します。そこで、夏枯草どんと30gにして、この牛蒡解肌湯を2週間分処方しました。すると、服用中に大量に粘っこい黄色い塊のような痰が出て来て、あれほど苦しかった痛みがすっかりと軽快しました。

 このように、中医学・漢方の処方にはあっという間に効果が出てしまうものが結構あります。今後は、正気を補って、再発しないように処方を調節しています。参考までに。


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2012年09月21日

秋の咳・喘息の発作対策

 秋も本格化してきて、空気の乾燥が一段と感じられるようになってきました。私のところに来られる患者さんも、ぼちぼちと呼吸器疾患が多くなる傾向になっていました。昼間や夜寝ていると時に、すこし油断して風寒の邪気にあたってしまうものなら、夜には咳が始まるというケースもあります。

 秋の咳は、「秋燥」と関係があるといわれています。よく五行説の考えから、肺と秋はともに金に属し、肺は潤しを好み、乾燥を嫌うので、秋の燥邪の影響を受けやすく、咳が発生するという仕組みです。また、気候の変化によって、秋の初めはまだ気温が高いから温燥となり、秋の終わりには涼燥となります。温燥では、はき出しにくい痰(血が混じっていることも)や咳、鼻や口の乾燥、喉の痛みなどの症状があり、有名な処方として、桑杏湯(そうきょうとう・桑葉・杏仁・北沙参・浙貝母・梨皮などなど)や清燥救肺湯(せいそうきょうはいとう・生石膏・桑葉・麦門冬・阿膠・枇杷葉などなど)などを使います。

 一方で、涼燥の場合は、秋の深まりと共にやってきて、頭痛・鼻水・咳・唇の乾燥・鼻づまり・喉の痒みなどの症状となります。冷えなどもともない、空咳がなかなかとれないタイプです。よく使う処方が、杏蘇散(きょうそさん・紫蘇葉・杏仁・茯苓・前胡・桔梗・枳殻などなど)です。以上の処方は、患者さんの症状にあわせて、さらに細かく加減していきます。例えば、咳が頑固な場合は百合や紫苑なども使います。このあたりは、いろいろなバリエーションがあります。

 また、そうした咳や鼻炎などの風邪の症状が、気管支喘息の発作を引き起こすことがあります。

 中医学で喘息の発作というと、痰飲が体の中にたまり(宿痰)、それが寒さ・雨などの気候の変化や情緒の不安定により動き出し、発作が起こると考えるのが一般的です。特に、気温が下がったり、湿度が雨などで急に高くなったときなど、変化があるときに喘息の発作がよくおこるが、気温が上がりはじめると発作が減る傾向にあるという研究もあります。さらに、上海だったら以前紹介した大気汚染の原因も十分に考えられるでしょう。

 軽度の咳なら、わざわざ薬を飲まなくても、日頃の食べ物で調節したいところ。蜂蜜・百合根・梨・蓮の実・蓮根・山芋・白キクラゲなどで、辛いものや刺激の強いものを避けなければいけません。また、のど飴もうまく使う必要があります。もし、薄荷が入っているような刺激の強いのど飴なら、口の粘膜の血管を収縮させる働きがあるので、燥邪による咳のように、はっきりとした炎症がない場合は、血管が収縮するので粘膜を傷つけ、口内炎になることがあるといわれています。

 喘息の発作が考えられるのなら、まずは大気汚染度も含めた天気予報には注意したいです。気温が急に下がりそうな場合は、冷たい空気で刺激しないようにマスクなどをして喉をまもるか、秋も深まってくると、早めに衣類を増やして寒湿から体を守る必要もあります。もちろん、秋の初めは体質を改善するために、外での適度な運動も必要です。免疫力を高め、寒さ対策をする絶好のチャンスです。中医学による喘息治療の特徴は、発作が起きないように症状緩和期にどれだけのケアができるかというところにあります。

 

【連絡】・東京での温泉気候物理医学会講演のため、10月7日(日)は休診します。
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posted by 藤田 康介 at 09:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年08月27日

如何に夫婦生活を高めるか

 中医学や漢方を使って、不妊治療を行っている方も多いと思います。男女問わず、一定の効果が確認されていることもこれまで幾度となく紹介させていただきました。

 一方で、私達の治療を難しくしているのは、やはり夫婦生活の回数が極端に少ないことです。未成年の望まない妊娠や、倫理的に問題のある性交渉は今回議論しませんが、根本的に夫婦生活の回数が少なすぎることに関して、もっと討論されるべきだと思います。


 特に、2人目の子供の妊娠に関して、夫婦生活の減少が顕著だと思います。確かに、排卵期の夫婦生活が大切なことは十分に理解はされていると思うのですが、だからといって排卵期だけに月に1回夫婦生活をすればいい、と合理的に割り切ってしまうのも問題だと私は考えています。

 なぜ夫婦生活が減ってしまうのか?これには本当にいろいろな理由があると思います。男性側の仕事が忙しく、毎日お酒を飲んで夜11時や12時に帰ってくるような生活では、夫婦生活どころか家庭生活的にも問題があります。また、女性側が望んでいるのに、うまく話を切り出せないというケースもありました。女性側の涙ぐましい努力には、頭が下がります。このように、妊娠にたどり着くまでに微妙な問題が沢山あるのです。

 中医学や漢方医学の歴史をみてみると、養生のなかに夫婦生活の過剰に関しては色々注意がでているのですが、現在のように少なすぎる夫婦生活に関しては、あまり記述がありません。昔の人は、過剰な夫婦生活による「虚労」を恐れていたのでしょうか。

 でも、現代社会においては、過剰よりも過小のほうがもっと問題があるように思います。

 社会が発展してきて、娯楽も増えてくると、夫婦生活よりももっと楽しいことが沢山あるのかもしれません。ただ、直面している日本の少子高齢化の問題に関しては、とにかくもっと積極的に夫婦生活が出来るような環境作りをするべきなのでしょう。そして、夫婦生活が十分でない状態で、現代医学の不妊治療に安易に子作りを頼ってしまうのは、私はいかがなものかなと思います。

 こうしてさまざまな症例を研究してみると、今医療として何ができるのかを考えさせられました。もう少し、夫婦生活も日常生活の一部として重視してもらえたらと思うのです。


【連絡】・日本温泉学会参加のため、9月6日(木)〜13日(木)まで休診します。 
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2012年08月08日

夏場の長引く咳、中医学の「夏に生姜、冬に大根」の発想

 暑くなってきて、しつこい咳でうちの中医クリニックに来られる方が少なくありません。

 私のところに来られる咳の患者さんは、9割方は上海市内の各病院・クリニックを一通り巡回されてからの方が殆ど。胸部レントゲンを見てみても異常はないし、血液検査もとくに問題なし。さらに、どこの病院でも出される西洋薬の種類もそう変化はなく、中成薬やエキス剤も出されるも、これまたとくに効果なし。痙攣性咳嗽のような症状をともない、咳することで体力を消費してしまいます。そこで、煎じ薬を服用したいということで来られます。

 五行説でいうと、夏は火になります。相克の関係から、火は金を冒すから、肺が痛みやすいという話は中医学ではよく出て来ます。また、肺は大腸と表裏の関係にあるので、中には夏場の便秘などの症状を併発されている方もおられます。

 肺はその性質から、一般的に乾燥や冷えを嫌う一方で、鼻口で外気とつながっているので邪気を受けやすいという特徴があります。

 夏の暑さにより、熱が肺や大腸を襲うと、前身の津液の流れや量に影響を与え、口や舌の乾きを導き。甚だしくなると咽の痒みや乾燥といった症状が出来ています。この場合、痰の量が極めて少ないのが特徴です。さらに、時間が経過すると皮膚の痒みや発疹などにつながることもあります。

 一方で、夏には体の陽気をしっかりと蓄える必要があります。暑くなって、エアコンを使いすぎたり、扇風機の風を直接受けたりすると、体の表面にある毛穴(腠理)から寒涼の邪気が入りこみ、肺の衛気を傷つけ、免疫力が低下します。さらに、アイスクリームなど冷蔵庫や冷凍庫に入っている食品をパクパク食べることで、脾・胃の陽気を消耗させ、陽気を消耗させるというパターンもあります。


 その対策として、夏場の天気が暑いときこそ、肺を補うために、ちょっと辛めの食品を食べてみようという発想があります。それが、中国でよく言われる「夏に生姜、冬に大根」の発想です。発散・行気・活血・化湿作用のあるネギ・生姜・ニンニクなどを少々食べてみようというわけです。

 そのほか、夜寝る前にリラックスした姿勢で椅子に座り、意識を丹田に集中させ、胸に位置する膻中を軽く叩き、さらに背中の肩胛骨の間あたりを軽く叩いてもらって胸の気を通して上げるという方法が推拿にあります。

 話が変わりますが、上海の属する江南エリアは、その気候風土によって様々なパターンの感冒を見受けます。子供の場合、夏場の感冒はその症状の変化が比較的はっきりとしていて、初めは微熱程度で、悪寒がして、咽もあまり痛くない風寒感冒となり、1〜2日後には風熱感冒となって発熱や咽の痛み・充血などの症状になります。また、エアコンの使いすぎや冷えが原因で、頭やお腹が痛くなり、嘔吐・発熱する暑湿感冒もよくみられます。

 初期の段階である風寒感冒だったら、教科書的には荊防排毒散を使ったりしますが、それ以外にもネギの白い根っこの部分にあたる葱白や調味料にもよく使う豆豉なんかも使ってみることができます。中国だったら、簡単に自宅でできます。

甘霖・我が愛しの上海へ

【連絡】 
・8月19日(日)は東京でのTCMN15周年夏大会での発表のため、休診します。

      
posted by 藤田 康介 at 11:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年06月25日

水蛭と腎疾患

 中医学の特色の一つに、私は活血化瘀があると思います。難治疾患に対して、治療効果が出ないとき、活血化瘀をうまく使うと、思わぬ効果がでることがあります。その中で、今回はFACEBOOKで御質問をいただいた水蛭について。少しでも臨床に役立てばと思い、ここに書かせて頂きます。

 中医学や漢方医学で使う水蛭は、一般に夏〜秋に捕獲され、乾燥させて使用します。活血剤のなかでも最も強い破血のグループに入ります。そのため、妊婦には使わないのが一般的です。

 水蛭そのものは非常に粉にしにくく、使いにくいので、製薬会社で粉にしてもらって、カプセルにした活血通脈膠嚢を使います。1日3回 0.5gの量です。この場合は、生薬とは別に頓服で服用することになります。IgA腎症以外にもネフローゼによる浮腫にも使います。中国では、膜性腎症の場合、ステロイドを使わないで生薬だけで治療することもありますが、高凝固状態での活血化瘀はかなり有効とされていて、仮に舌や脈で瘀血の証が見当たらなくても、血液分析・尿FDA・血液レオロジーなどの指標で投与することも多いです。一般的に、中国ではIgA腎症は気陰両虚で、滋陰清熱・祛瘀止血の治療原則で考えますが、水蛭以外にも、丹参・川芎・益母草・蒲黄・桃仁・紅花を使います。

 さて、腎臓疾患といえば、蛋白尿の問題と向き合う必要があります。これは歴代の医学者によって様々な研究がされていますが、私の師匠の陳以平教授は、蛋白尿と腎虚よりもむしろ。風開腎門・熱擾腎竅・湿滞腎関・瘀塞腎隘と考えることの方が多かったように思います。そのため、治療には通因通用の発想から、久漏宜疏・久漏宜通の治療原則を使います。これは、まさに腎生検において、糸球体に免疫複合物が蓄積し、メサンギウム細胞や基底膜が厚くなったりする病理変化は、中医学的には「瘀血証」とみなすことができますし、サイトカインや炎症性因子の形勢や補体活性化などは、中医学的には湿熱や熱毒と捉えることもできます。これらは皆、尿蛋白形成と関係があるので、この通因通用法は広い意味で根拠があるとも言えそうです。あと、先生の経験で、精神的ダメージと尿蛋白との関係もあるとおっしゃっていました。私も同感です。

 腎生検において、crescent formation(半月体形成)が認められた場合、場合によっては急性進行性腎炎症候群(RPGN)となり、予後がよくないケースも多いのですが、中医学と西洋医学との併用は、中国ではかなり一般的になっています。第一段階では、ステロイドの使用が多いため、中医薬では清熱系の生薬を使います。代表的には、紫花地丁・忍冬藤・白花蛇舌草などです。これに、活血化瘀系の赤芍・生地・丹参・製大黄を加えます。第二段階では、健脾補腎泄濁法をとり、黄耆・当帰・黄精・杜仲・枸杞・白朮・党参・葛根・川芎・丹参・六月雪・製大黄などを使います。ステロイドを多用した場合、舌苔が膩になっていることが多いので、藿香・木瓜・梹榔・佩蘭などを加えます。一般的に、中医薬を併用した場合のほうが、ステロイドの使用を軽減できるとしています。
posted by 藤田 康介 at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年06月18日

子供の偏頭痛

 子供の様々な疾患が抱える症状は、本当に多種多様です。私も、アトピー性皮膚炎の皮膚の痒みから、夜尿症まで毎日様々な疾患を診察していますが、どれとしてパターン化できるものがあるわけでもなく、中医学の基本に立ち返って、いろいろ作戦を練る毎日です。ただ、子供は生薬を飲むのが一般的に苦手。ごく一部で甘くしないと飲めない子供たちがいますが、大部分の子供たちは、最終的には煎じ薬でも自家製の丸薬でも処方できるようになっています。そのために、まず、子供自身に、この中医薬が効いているのだという実感をもってもらわなければなりません。同時に、医者も当然、各生薬の本来の味には精通しておかないといけないと思うんです。だから、私も、時間があれば、薬局から生薬を拝借してきて、味の確認をしています。そうすることで、生薬の品質も確認することができます。

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 というわけで、うちの台所はいつもこんな感じです。生薬をひとつひとつ煎じながら、味を確認していくのです。

 最近、時々診察しているのが、子供の偏頭痛です。それも、西洋の病院などにいって、いろいろな検査をしたのにも関わらず、原因がはっきり分からずに、痛みが襲ってくるというパターンです。先日も、国語の時間に教科書の文字を追うと痛み出してくるパターンの頭痛がありました。眼科の検査も受けていますが、こちらも異常なし。そこで、中医学での処方を考えました。

 最初はすこし時間を要しましたが、2ヶ月目ぐらいから痛みが治まりだし、教科書を読んでいても痛みがすぐに解消するようになりました。そして、最近では、殆ど痛まなくなっています。

 私も生薬の加減をいろいろ考えていたのですが、効果が出だしたと実感したのは、やはり虫類の生薬を使い始めてからです。その昔、上海中医薬大学附属竜華医院で、神経内科の故胡建華教授の外来に出たことがありましたが、教授が虫類の生薬を巧みに使っておられたのが非常に印象に残っていました。虫類は確かに生薬の味にはダメージを与えてしまうのですが(味がまずくなってしまう)、痛み止めに関してはその効能は確かだと私も実感しています。

 特に子供の場合、その生理的特徴から、中医学では『幼科発揮』にある「肝常有余、心常有余」といわれるように、肝陽上亢がしやすいとされています。子供が高熱の時に熱性けいれんを起こしやすいのも、そのことと関係があるとされています。よって、こうした頭痛の場合、肝から考えていくと、上手く行くことがあると思います。また、今回の子供のように、眼の使用と関連がある場合は、なおさら肝をうまくコントロールすることが大切だと思い、私も密蒙花(清肝・明目)、菟絲子(補陽益陰・明目・止瀉)を虫類の生薬と組み合わせながら処方してみました。

 痛みに対しては、生薬は様々なアプローチができます。痛みと言えば、鍼灸を思い出す方も多いかもしれませんが、生薬と組み合わせることで効果を高めることができます。この患者さんの場合は、補助的治療として耳鍼を使ってみました。
 今後は、生薬を減量しながら、再発しないようにアプローチしていこうと思っています。
posted by 藤田 康介 at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察