2010年02月20日

過労死を未然に防ぐためのシグナル

 経済が急速に発達してきて、生活が豊かになった中国で、いま直面している問題が「過労死」です。上海でも、若年層の過労死が徐々に増え始めており、現地新聞でもニュースとして紹介されはじめています。政府もいろいろな対策を打ち始めていますが、その一つに中医学や漢方にある「治未病」の考え方の活用です。

 中医学や漢方の特徴として、病気になる前の未病の状態で治療してしまおうということを非常に重視します。すなわち、陰陽のバランスが崩れたり、体全体の不調を感じたとき、その小さな症状も見落とさないということになります。

 では、どういったシグナルがあるか?「過労死」予防のためのシグナルとして、一般的に以下のようなものが挙げられます。

1.髪の毛が抜けやすくなった・・・ご存じの通り、円形脱毛症や壮年性脱毛症などもストレスと関係があることが多く、大切なシグナルです。

2.体型の急な変化・・・お腹が出だしてきたりすると要注意です。高脂血症や脂肪肝、高血圧に心臓病のリスクが高まります。最近よく見かけるのが、お酒もタバコも吸わないのにお腹が出てきたという人。食べることが直接的に影響しているようです。

3.夜寝られなくなった・・・不眠症までいかなくても、眠りが浅いとか、よく目が覚めるといった症状も含みます。

4.注意力が続かなくなった・・・「不注意」ともいいますが、これ以外にも会話中に話のつじつまが合わなくなったり、話の筋道がおかしくなったりする。

5.記憶力の衰え・・・物忘れがひどくなり、時には次になにをするべきか思い出せなくなる。

6.計算力の低下・・・暗算の間違いが増える。

7.性欲減退・・・中医や漢方では足腰のだるさなども関係があります。

8.情緒のコントロールができなくなる・・・怒りやすくなったり、イライラしたりする。さらに、悲観的になり鬱になりやすくなる。

9.原因不明の耳鳴り、頭痛、立ちくらみなどがよく発生する。

 多かれ少なかれ合致するものがありますよね。都市生活をしている人間が抱える問題の数々でもありますが、こうした症状を少しでも緩和できるような生活習慣にしたいものです。
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2010年02月15日

立春、春節と迎えて・・・肝と春と養生

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 春節がくると、上海もいよいよ春本番です。暦の上では、立春に以降が春となりますが、気候的には春節をこえないと上海では本格的な春の訪れは感じられませんよね。

 春の風が吹き始めると、今まで冬眠していた動植物を目覚め、寒かった大地にもエネルギーが満ちあふれてきます。農耕文化が根強い中国では、これから農作業も始まってきます。春の雨、春の雷、それらがすべて欠かせません。

 中医や漢方では、立春・春節以降の季節、「陽気」をしっかりと守ってあげることに力を入れます。冬場は多少遅く起きていた日常生活も、起床は少し早めにし、大自然の陽気を体で受けられるようにしてあげなければなりません。衣類の調節も大切で、暖かくなってきたからといって、すぐに衣類を脱ぐようにはせず、多少厚めの状態にしておくことを勧めています。この時期、寒さと抵抗していた人間の正気がゆるみ始め、逆に風邪などをひきやすい状態になるからです。でも、冬場よりよりリラックスできるような服装を心がけ、屋外での活動を積極的に行うことが大切だとされています。

 五行説では、春は「木」に属します。これは肝とも呼応し、中医の肝の働きを注視してあげる必要があります。精神的(メンタル的)な影響を受けやすい肝ですので、春に鬱病になる人が多いこともわかりますが、中医学の世界では、春先はイライラせず、楽観的な態度で臨むことが大切だとされています。自然界の陽気が盛んになるにつれて、新陳代謝もよくなってきます。そうした陽気を体に受ける以外にも、体で発生した余計な陽気も泄してあげる必要があり、体を動かしたりする必要が説かれています。

 中医学の肝の病気というのは西洋医学のそれとは違います。よく言われるのが、両脇が痛くなったり、怒りやすくなり、頭痛・聴覚・視力に関わる疾患も、肝と関係があることが多いとされています。

 では、食べ物に関してはどのような注意が必要なのでしょか?中医学ではよく『黄帝内経・素問』の『臓気法時論』にある一説を引用します。「肝は春を主る・・・足の厥陰・少陽の主治なり・・・肝は急を苦しむ。急に甘を食して以て之を緩む・・・肝は散を欲す。急に辛を食して以てこれを散ず。辛を用いてこれを補い、酸をもてこれを瀉す」。

 余談ですが、最近、あまり辛いモノを食べなかった上海人が辛いモノを食べるようになっています。これもストレスと絶対関係があると、私はみています。
 
 ここからもわかるように、肝の病気では発散することに重きを置きますので、そういうときは「辛」の薬物を補い、逆に肝を瀉するときは「酸」の薬物を使うことになります。
 よって、この時期によく使う生薬としては、丹参・延胡索・鬱金(ウコン)・枸杞があります。いずれも、肝を柔らかくし、養ってくれます。食品だと、棗(ナツメ)・香菜(コリアンダー)・ネギ・落花生などがそうです。

 いずれにしろ、春は人間だけでなくウイルスや細菌などの病原菌も活動開始です。はしかや日本脳炎などが流行し出すのもこの時期ですし、体を鍛えることは非常に大切です。また、窓も頻繁にあけて、換気するように心がけたいところですね。
posted by 藤田 康介 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年02月07日

「暦」を作りました

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 診察室に座っていると、よく聞かれるのが、この季節にはどういうものを食べたらいいの?といった質問です。中医学では、季節(暦の上での節気)と食生活の関係を非常に重視しますからね。

 じゃあ、それをカレンダーにしてしまえばいい!ということで、今年はクリニックで作りました。受付に置いてありますので、興味のある方はぜひ持って帰ってください。中国に伝わる「暦」を参考に、中医学的な要素を加えて編集してあります。

 たとえば2月4日〜18日にかけての「立春」前後では、大根・香菜・ニラ・ネギ・ニンニクなどがお勧め。いずれも体を温めるものですね。しかし、こうした食品にスイカなど、体を冷やすものと温めるものの極端な混合はよくないです。あと1週間足らずで旧正月を迎えますが、旧正月にはさすがに狗肉や山羊肉は食べません。

 こういった習慣は、中国の農村で残っていて、それが暦にも反映されています。漢方や中医学の養生訓、さらには薬膳とも深く関係がありますので、一度ぜひ見てみてください。
posted by 藤田 康介 at 06:38| Comment(3) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年02月05日

数限りあるものは大切に・・・不妊の問題

 中医学や漢方を使って不妊症の治療をされている方は、日本でも中国でも沢山おられます。妊娠できる、できないの問題は、女性の間でも非常に個人差があり、まだまだ生命の神秘のベールに包まれていますが、ただ一つ言えることは、女性の卵子の数には限りがあると言うこと。もちろん、諸説がありますが、これが今のところ通説になっています。

 女性の卵子は、胎生初期のころの原始生殖細胞からスタートします。お母さんのお腹の中から卵子製造の工程が始まっているのですが、原始生殖細胞から、卵祖細胞、卵母細胞と経て、原始卵胞として卵巣に保存されていきます。
 ただ、残念ながらお母さんのお腹にいるときから、淘汰が始まっていて、結局、卵母細胞まで残るのには並大抵のことではなく、もともと700万個前後あった卵母細胞の数は、出生時には100万個前後、さらに女性が思春期を迎えたときの卵母細胞の数は30万個にまで減ります。そのなかから、月経の周期によって、複数の卵母細胞が卵巣内で成熟し続け、最後は1個だけが排卵されます。だとすると、女性が一生のうちで排卵できる数は300〜400個前後しかないわけです。
 こうして、何万とあった卵母細胞も、時間の経過とともに数を減らし、更年期のころになるとなくなってしまい、閉経となります。卵巣にあった卵母細胞の蓄えをすっかり使い切ってしまったのです。

 最近、英国スコットランドのセントルイス大学とエディンバラ大学との研究で、思春期以降のこの卵巣での卵母細胞の蓄えについて、実は、通説よりもかなり速いスピードで消耗しているのではないか?という研究結果が出ていました。
 それによると、思春期に30万個あった蓄えは、30歳には平均88%失ってしまい、40歳になると平均97%も失ってしまうということです。時間がたてばたつほど保存されていた卵母細胞の質も落ちますし、さまざまな外的要素の影響を受けています。排卵があっても必ずしも妊娠しないというのはこういった要素とも関係があります。 よって、中医学では、女性はとくに冷えや情緒・ストレス、食生活について注意するようにいいますが、「蓄え」の保管庫をちゃんと機能させるためには欠かせないことです。
 というわけで、子作りの時期というのは非常に大切だと思います。現代社会では、仕事など様々な問題が重なって、子作りが遅れる方が少なくありませんが、日常生活の問題が100%解決することはあり得ないわけで、できることなら可能な限り早く子作りに励むべきだと思います。中国でも以前は「晩婚晩育」が奨励されていましたが、今ではあまり言われなくなりました。
 
 残念ながら、病院などの入り口に「遺棄」される赤ちゃんが少なくない中国では、出産に対してはまた別問題があるのでしょうけど、こうやって非常に低い確率で生まれてきた我々自身の生命の偶然性に感謝しなくてはいけないと思う今日この頃です。
posted by 藤田 康介 at 07:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年01月31日

電磁波と認知症

 日本だけでなく、この上海市もとんでもない高齢化社会です。若い人材が地方から流入しているので、見かけ上は若者が多く感じられますが、上海人だけをみるとかなり深刻です。

 上海市では老人ホームが不足しており、在宅看護の推進を行っていますが、これもまだまだ発展途上。しかし、医師の訪問診療制度も充実しており、制度的には日本よりもうまくいっているところもあります。(詳しいことはまた後日)

 さて、認知症の原因についてはいろいろ討論されており、その中にも電磁波が関係するとかしないとか。。。まだ結論は出ていません。しかし、アメリカでおもしろい実験がされていました。医学誌「Journal of Alzheimer's Disease」に掲載されましたし、日本でも報道されていますね。

 アメリカのフロリダアルツハイマー病研究センターのGary Arendash氏の研究で、96匹のマウスの遺伝子を組み換えて、脳部にアミロイド斑ができるようにしました。アミロイド斑とは老人斑とも言われ、アルツハイマー症が出てきたときに、脳に見られる病理的変化の一つといわれています。

 さて、この96匹のマウスに対して、携帯電話の電磁波に相当する高周波電磁波に7〜9カ月間毎日2回、1日1〜2時間曝露させその状態を観察しました。その結果、電磁波を浴びたグループのマウスでアルツハイマー症の発症が防げたということに。さらに、知能も遺伝子を組み替えなかったグループと大きな差は出なかったそうです。

 もちろん、これだけの実験では、電磁波がアルツハイマー症に与える影響は、まだはっきりとわかっていません。しかし、電磁波が生物体に何らかの影響を与えていることは確かで、それが体にいいのか、わるいのか、今後の研究が待たれます。

 痴呆症関係でもう一つ。これもアメリカニューヨーク大学の研究ですが、日頃から物忘れや、友達の名前などを思い出しにくいという主観的な認知障害を持っている高齢者は、健康な高齢者と比較して、4.5倍認知症になりやすいという研究です。

 7年間の追跡で、主観的な認知障害がある場合、認知症まで発展した人は全体の54%、そうでない場合は15%程度だったそうです。

 考えてみれば、今の我々の生活では、パソコンなどの道具に頼ってしまって、単純な作業で頭を動かすシチュエーションが減りつつありますね。電話番号も覚えなくなって久しい。便利になることは結構ですが、そのために頭のトレーニングのために時間を割くような人も。
 
 結局、人の体は使わないとダメになってしまう、そんな感じです。
posted by 藤田 康介 at 07:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年01月30日

タバコ15本で・・・

 上海で生活していると、相変わらずタバコの煙に接するチャンスが多いです。歩きタバコはもうしょっちゅうだし、とくに繁華街では、日本以上に煙を感じることもよくあります。

 タバコの体に対する有害性は、もうあちこちで報道されているし、タバコの箱にも書かれているのですが、それでもやめられない人が多い。2003年の研究でも、喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者が肺がんになる確率は20倍ほど高まるといわれています。

 私の祖父も肺がんで亡くなりましたが、かなりのヘビースモーカーでした。
 ご存じの通り、癌というのは遺伝子の突然変異が関係あり、その結果、細胞が誤った方法、時間、場所で急増殖し、悪性腫瘍となってしまいます。タバコの場合だったら、その煙が要因となっていますし、悪性黒色腫瘍も日光に当たりすぎることがその要因となります。

 イギリスで、しかもあの『Nature』にも掲載された論文なのですが、The Wellcome Trust Sanger Instituteが行った研究で、肺がん患者と悪性黒色腫瘍の遺伝子を調べました。

 その結果、肺がんの遺伝子のうち、約2.3万種類の突然変異が発生し悪性黒色腫瘍でも3.3万種類の突然変異が発生していたことがわかりました。

 研究では、平均するとタバコ15本を吸うと、1回の遺伝子の突然変異が発生するといった具合になります。

 もちろん、すべての突然変異が癌になるというわけではありません。突然変異をし続けているうちに、ふとある瞬間に癌に向かう突然変異をしてしまい、それが人間にとって致命傷になってしまうというわけです。

 だからといって、肺癌になってしまったらもうダメだ!というわけでもありません。同じく、英国のThe University of Birminghamでは、こんな研究もありました。

 もし肺がんが早期に発見されて、すぐに禁煙することができたら、癌細胞の拡散速度を遅らせることができ、生存率を高めることができるというものです。

 肺がんの早期とわかった患者が、すぐにタバコをやめれば、63〜70%の患者は5年後も生存できたのに対して、やめることができなかった患者は、29〜33パーセントしか5年後生存できなかったということです。

 おそらく、タバコの煙のなかに、がん細胞を急速に拡散させる成分があるのではないか?という推測が出されています。

 タバコは庶民の楽しみであり、完全禁煙はけしからんといった論調もありますが、すくなくとも、煙を吸わされている我々からするととんだ迷惑であり、そのあたりの問題も考えていただきたいとおもうわけです。
posted by 藤田 康介 at 16:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年01月24日

上海で急増している若年層の糖尿病

 上海市で、サラリーマンやOLを中心に糖尿病の患者が急増しており、大きな問題になりつつあります。

 最近のデータでは、上海市だけでも毎年10万人の規模で糖尿病患者が増えています。特に、注意しないといけないのがサラリーマンでかつ20〜39歳の世代。この世代のサラリーマンは、仕事のストレスや不規則な生活、外食などの接待で健康管理が難しいため、糖尿病の発病が急増しているというわけです。

 中国では、現在糖尿病の患者数が9200万人に達しているといわれています。しかし、境界型と呼ばれる人たちが1.48億人おり、今後の動向が気になります。

 上海市でも、糖尿病の発病率は急増中です。2001年は6.2%に過ぎなかったのが、最新のデータでは2008年で9.5%に増えています。人口2000万人(上海人は1300万人ほど)の都市で、糖尿病の人の総数が100万人を超えている計算で、今後さらに増えていくことでしょう。

 注意しないといけないのは、中高年に多いと言われていた糖尿病の発病年齢が、徐々に低年齢化しているという点です。

 毎年10万人規模で増えている糖尿病患者のうち、20歳〜39歳が3.2%、40歳〜55歳が4.5%を占めています。明らかにストレスのある仕事環境、欠乏している栄養に対する知識、不規則な食生活などが影響しているようです。

 さらに、上海市の場合、低く見積もっても患者の50%で症状が出ておらず、医療機関に検査にもいっていないということがわかっており、潜在的な糖尿病患者のあわせると、その数はもっと増えることになります。特に、中国人は症状が出てこないと病院に行きませんから、その傾向が強いように思います。

 お腹がぽっちゃりと出てきたら要注意といわれています。最近、上海人の間でもよく見かける体型ですね。昔はそんなにいませんでした。一般的に、ウエストが男性で90センチ以上、女性で85センチ以上の場合、糖尿病になる確率は3倍程度高まるといわれています。ただ、日本人の場合は、太っていなくても糖尿病と指摘されているケースも多いので、注意が必要です。

 お金稼ぎも結構ですが、たまには自分の健康も注意したいですね。会社がつぶれても、健康さえ問題なければいくらでも再起は可能です。特に、上海での生活では注意すべきことが非常に多いと思います。
posted by 藤田 康介 at 07:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想