2016年03月10日

春の気温差があるときには活用したい「春捂」の考え方

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 3月7日〜9日まで、日本特有の春先の「雑用」を色々片付けるために奈良今井に戻っていました。そして3月10日に上海に戻ってくるとなんと寒いこと!3日前に上海を出発したときはそうでもなかったのに、一気に季節が逆戻りした感じですね。

 旧暦では「春三月」の真っ只中にいる今現在、中医学でもこの春先の季節は体調の変化に特に注意しないといけない時期で、体の体温調節を如何に自然に順応させるかが大切な問題です。

 中国語には「春の天気は子供の顔、1日に3回表情がかわる」という言葉もあります。朝晩の温度差も大きいですし、さらに風が強いときも多いです。大陸の気候なら尚更です。このとき、どうやって衣服の調節をしたらよいかというのが大きな問題になります。その対策が「春捂(しゅんご)」という習慣です。

 もちろん、国土の広い中国なので北方エリアと南方エリアとでは習慣が明らかに違いますが、今回は日本の関西エリアとも気候が似ている華東エリアでのお話です。

 まず「捂」という字ですが、中国語では「Wu」と発音します。押さえる、被せる、封じ込めるといった意味があります。つまり中医学でいう陽気をこの春先にしっかりと守るために、衣類などを体に被せて封じ込めるというわけです。

 中医学では「寒従脚下起(寒さは足下からやってくる)」という言葉もあります。足は体の中でも血液循環が悪いわけで、男性女性にかかわらず足の冷えを訴える患者さんが多いです。当然、中国でも伝統的に足下を温めることは一般的に認知されていて、そのため春先の衣類は「下厚上薄」というのが大原則になります。
 また、頭の保温も大切です。頭は体の陽気が集まる場所であるけど、陽気が発散しやすい場所でもあり、とくに風にあたったりすることを極端に嫌います。帽子などを被って風を防ぐことが大切とされています。

 さらに背中は「陽の中の陽」とも言われていて、背中からも寒さが侵入しやすい。背中がぞくぞくするというのは非常に良くない感覚なのです。そして、お腹の保温も忘れずに。腹部の冷えは胃腸だけでなく、婦人科疾患とも密接に関係があります。

 体を鍛えるために「寒さを我慢する」ことがいいとする考え方もありますが、あまりムリをしないように。とくに子供や高齢者は体が熱しやすくて冷めやすい。体を温めるエネルギーでもある陽気をしっかりと守ってあげることが必要なわけです。

 とはいえ、春も終わりに近づいてくると、気温が安定してくるので春捂する必要もなく、今度は適度に衣服を脱いで今度は陰気を守りましょうね、ということになります。それでも、足下は冷やさないでください。「寒従脚下起」ですからね。

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2016年02月19日

iPhoneに旧暦と二四節気、「立春」が過ぎて「雨水」に、そしていよいよ元宵節へ

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  2月4日の立春が過ぎてしまい、2月8日の春節も終わり、あっというまに2月19日の雨水にまで来てしまいました。旧暦でいうと1月12日になります。そして、1月15日になるとついに元宵節で、春節イベントも大詰めを迎え、上海の街に出稼ぎ労働者が戻ってきます。2週間以上の春節休みが本当に終わってしまうわけです。地方では、数が減ったとはいえ、都会へ出て行く家族とのお別れがあったり、学校も本格的な授業に入ることになります。

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 元宵の宵は「夜」の意味で、春節を越えた1年のうちで最初に満月になる日になります。豫園にいくと、様々な形をした「立山」に明かりがともされ、多くの市民が繰り出します。またお団子を食べるのも元宵節の楽しみの一つ。ちなみに、道教では旧暦の1月15日を上元節、7月15日を中元節、10月15日を下元節と言います。やはり1月15日というのは大切なんですよね。例年は爆竹花火大会になりますが、今年は上海市内の規制がキツイでのおそらくムリでしょう。

 旧暦や二四節気がいいなと思うのは、中医学の臨床における患者さんの体の季節的変化と季節の変化が直感的に一致すると言うこと。そして、日常生活で暦でうまく区切りが出てくるので、生活にメリハリがつきます。

 もちろん、iPhoneやiPadのカレンダーでも、簡単に旧暦(中国歴)や二四節気を表示させることができます。

 旧暦表示は、設定→メール/連絡先/カレンダー→別の暦を表示→中国歴

 二四節気の表示は、設定→メール/連絡先/カレンダー→アカウントの追加→その他→照会するカレンダーを追加 と進み、サーバーの覧にこの

http://www.google.com/calendar/ical/2i7smciu430uh0mv3i0qmd8iuk%40group.calendar.google.com/public/basic.ics

 をコピーして貼り付けて下さい。日本の国立天文台の二四節気のデータが表示されます。

 ぜひ、旧暦のある生活を日常に取り入れてみたいです。

 さて、雨水の季節になると、雨が明らかに多くなります。上海でも昨日今日と雨がちです。気温が上昇し、雪がある地方では雪が溶け始め、三寒四温の状態になるわけです。雨が多くなるので「雨水」といいます。

 中医学では「肝」の季節です。春になると肝が旺盛になり、消化器とも関係が深い脾・胃の働きを弱めてしまいます。中医学では五行説の関係を使って「木克土」といいますが、お腹の調子を崩しやすくなります。また、雨水になって、雨が多くなると、外界の寒湿が体を襲い、脾胃に湿気が溜まるわけです。というわけで、体を冷やすような食材を控え、またストレスなど肝に負担がかかることを控え、消化のよい雑穀など五味で言うと「甘」と呼ばれる食材を使うわけです。

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 また、気温差が激しいので、高齢者の血圧の変化には要注意です。狭心症や心筋梗塞が起きやすくなります。そのため、中医学では伝統的に「春捂」ということを考えます。首や肩をしっかりと温め、寒邪が入ってこないようにするわけです。また、気温が上昇してきても、衣類をすぐに減らさず、下半身の保温を重視した「下厚上薄」も、血液循環が思わしくない下半身を温めるのに有効ですね。なにより、これから温かくなると精神的な疲れを訴える人が増えます。情緒的な不安定は、高血圧や喘息、心臓病などを持っている人からすると体へのダメージが大きいわけで、様々な養生法を活用していきたいところですね。

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2015年08月23日

ついに8月23日は処暑!中医学も本格的に秋養生へ

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(秋になると上海の空気も澄みます)

 台風の影響で雨模様の上海で、猛暑を感じることはほとんどなくなりました。おかげで、ここしばらくの大気汚染状況は非常に良好。気兼ねなく外で活動できるので結構なことです。

 中医学でいう三伏天の末伏も終わり、8月23日は処暑でした。いつもならまだまだ暑さを感じるハズなのですが、今年は本当に涼しい。下手したら夜に窓をしめないと寝冷えしてしまいそうです。本来、この時期の暑さを「秋老虎」と呼びます。まだまだ昼間は本格的な暑さがあり、汗の消耗が多く、空気も徐々に乾燥し出すので、基本的に養陰に注意しないといけない状態に変化してきます。

 上海の日本人社会では、一部インフルエンザが見られています。秋気といえば、肺。肺は潤し好み、干燥を嫌います。特に、エアコンをよく使う昨今では、室内の空気の乾燥が気になりますね。もうこの時期になったら、積極的に窓を開けたいところです。大気汚染が心配で窓を開けないという方の話をよく聞きますが、この時期の上海のPM2.5値は十分に低く、今朝も浦東新区で13㎍/㎥です。エアコンや空気清浄機では換気ができていませんのでご注意を!

 実際に、鼻が乾燥して痒くなったり、髪の毛が抜けやすかったり、目が痒かったり、そういう症状もよく見かけます。

 さて、この時期の食材は、すでにスイカやゴーヤの季節はすぎて、潤すものを食べたいところです。トマト・ニンジン・ブドウ・クログワイ・梨などが代表選手。クログワイはシャキシャキとした食感が美味しくて、この時期の中華料理には色々とでてきます。

 さらに秋が進んでくると、キクラゲ・蓮の実・ゴマ・豆類・カボチャ・サトウキビ・アヒルの卵などもいいですね。ただ、揚げ物や焼き肉、辛いモノなどは避けたい季節に入っていきます。陰が不足して、陰虚になってくると肌荒れや便秘にも注意しないといけません。

 夏ばての後遺症で胃腸の調子がよくない人は、あずき・はとむぎ・芡実などの食材がお薦め。これらは健脾祛湿の働きがあります。また、山査子や五味子など多少酸味のあるものを活用するのも手です。一方で、葱・トウガラシ・生姜などの発散させる食材はほどほどに。

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2014年10月21日

中医学を普及させるための上海市の取り組み〜按摩器のプレゼント〜

  日本でも、漢方医学の普及にさまざまな活動が行われていますが、こちら中国でも同様で、中医学の普及を目指して様々な取り組みが行われています。「未病を治す」を実行するために、市民が自宅でもできる中医学の療法を普及させるのが狙いのようです。

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 これまで、メタボを確認できる?!メージャーや、クシを使った健康法などもありました。

 メジャーに関しては、こちらから、クシに関してはこちらに記事があります。

 さて、今回、上海市民全世帯対象に配られたのはなんと「按摩機」。我が家にも、管理組合を通じて届きましたが、アイデはなかなかだと思います。経穴を刺激する部分と、刮痧につかえる部部とに分かれていて、手に握って使います。

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 さらに、上海市健康促進委員会弁公室が発行している「上海市民建康生活応知応会手册」という冊子もついていて、「上海市人民政府 贈」となっています。

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 今回は、常用するツボ(経穴)の紹介です。いずれも、臨床でとってもよく使うものばかり。この16箇所はぜひ知っておきたいですね。

 頭痛には太陽穴

 目の保養に四白穴・晴明穴

 耳鳴りに聴宮穴

 鼻づまりに迎香穴

 失神したときに人中穴

 秋の干燥に魚際穴

 夏ばてに労宮穴

 骨と腰の強化に後渓穴

 歯の痛みに合谷穴

 四肢の冷えに陽池穴

 口臭に大陵穴

 車酔いに内関穴

 便秘に支溝穴

 健康長寿のための足三里

 月経を整える三陰交


 いやいや、とっても分かりやすい。しかも、ツボの取り方も図表で示されているので、誰でも簡単に見つけられると思います。そのツボを使うためのワンポイントアドバイスなんかも良いですね。

 ちなみに、上海市民の健康ホットラインの電話番号は12320だそうです。Wechatのアカウントもあります。

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2014年09月07日

暦で「白露」を迎えて気をつけたい秋の養生

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(さよなら、2014年夏!沖縄瀬底ビーチにて)

 我々現代人の生活では、なかなか旧暦を注意しないかもしれませんが、中医学では旧暦による季節の変化をとても大切にします。2014年も9月8日についに白露です。実際に、気温もどんどん下がりだし、上海でも肌寒さを感じるようになってきます。今年は、夏の暑さがかなり中途半端な印象だったので、秋の感じ方も例年とはちょっと違うように思います。

 この時期、まず気をつけたいのが「秋凍」の考え方です。寒くなってくると、人の腠理(皮膚表面にある毛穴のような無数の穴)がだんだんと閉じてきて、冬対策にはっていくのですが、この状態で早くから暖かい格好をしてしまうと、腠理が十分に閉じることができず、外の寒気を体内に入れてしまうことになります。

 中国人がとてもびっくりすることの一つに、日本の幼稚園や小学校の服装がとても薄着であることですが、冬の乾布摩擦なども本来はこの「秋凍」の養生思想と関係があるのではないかと思っています。

 ただ、この「秋凍」もほどほどにしなければなりません。とくに、高齢者や子供、基礎疾患があるような人は、温度変化にあわせて適度に衣類を着るようにしたいところです。とくに、足と腹部を温めるようにしてください。

 臍灸が有名ですが、中医学ではお臍を使った治療法「臍療」もいろいろあります。そもそも、お臍部分の表皮は薄いだけでなく、皮下脂肪も少なく、豊富な末梢神経があるところです。そのため、とても敏感な部位となるわけですが、とくに「寒邪」に関しては十分な注意が必要です。寒さが原因で胃腸を壊したり、下痢・腹痛をおこしたりするのもそのためです。この時期、うちのクリニックでもお灸を希望される方が増えてきます。

 また、足には足厥陰肝経、足太陰脾経、足陽明胃経、足少陽胆経、足太陽膀胱経、足少陰腎経の6本の重要な経絡が走っているだけでなく、心臓からも離れており、血液の循環が悪くなりがちです。そのため、「寒さは足からやってきて、熱は頭から発散する」という言葉があるわけです。

 食べ物に関しては、まさに「食欲の秋」になってきます。暑い夏の間、体力を消耗してしまい、気候もよくなってきて食欲全開となるわけですが、やはり注意も必要です。中国では、「貼秋膘」という言葉があって、味の濃いこってりした肉類を食べる習慣がありますが、これも胃腸の負担がかからないようにするする必要があります。一方で、真夏は必要だったスイカなどの食材はそろそろやめなければいけません。

 秋口になってくると、酸っぱい物が恋しくなります。上海の市場でも石榴が並ぶようになってきました。ブドウやそろそろ酸っぱいミカンも美味しい季節になってきています。秋は肺に属し、酸っぱい物を食べることで肺を収めてあげる必要があるからです。

 いずれにしろ、元気に冬を迎えることが出来るように身体を調節したいところですね。

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2013年12月21日

冬至、「冬令進補」に忙しい季節

 いよいよ冬至の季節です。
 冬至は、24節気の中でも最も古い節気の一つで、2500年前の春秋時代からあるらしい。

 季節と共に動く中医養生ではとても重要な意味がある季節でもあります。八掛学の考え方から陽気が徐々に盛んになってくるのがまさにこの時期なのです。とくに、慢性疾患で陽虚体質の人には体質改善をするちょうど良い時期ともいわれています。それを「冬令進補」と呼びます。陽虚以外にも、気虚・血虚・陰虚などがあり、身体に何かが足りない「虚」である場合には、身体を補う大切な時期でもあります。

 実は、中医学の不妊治療をしていて、結果が出やすいのもこの時期のような気がします。陽気が徐々に盛んになってくることと関係があるのかもしれません。

 一般的に身体を温めるものを食べることが多いですが、代表的なのはニワトリや山羊、牛肉などの肉類、胡桃や胡麻などもそうです。折しも、新疆ウイグルの農場の友達から今年産の胡桃や大棗が送られてきました。完全無農薬でこれがとっても美味しいのです。

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 さて、毎年のこの時期我々中医学に携わっている医師は「冬令進補」膏方の処方箋書きに忙しいです。上海地方では、この時期に身体を補う生薬を煮詰めて服用する習慣があり、これを膏方と呼びます。春にむけて身体を整え、さらに春節前の1年の締めくくりとして健康を総括する意味合いもあります。特に、毎年この時期だけに中医医院にこられる中国人の患者さんもおられるぐらいで、それぐらいポピュラーな習慣でもあります。

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 膏方の処方は、いつもの処方とは違っていて、生薬の数が多いだけに思考方法がすこし変わるのです。私も学生時代の数年間は師匠の外来について教わりました。

 その他、冬至の習慣は上海でもいろいろあります。

 代表的なのは、「冬至には鬼がでるから外出しない」なんかもそうですね。また、冬至はお墓参りのシーズンになります。春の清明節と冬至というと上海での2大お墓参りシーズンで郊外に向かう高速道路が混雑します。

 上海では冬至にお団子を食べますが、中国北方エリアでは、冬至に餃子を食べる習慣もあるとか。場所が変われば習慣が変わるのも中国の楽しみの一つです。


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2013年11月12日

立冬すぎての中医学的養生

 四季の移り変わりは、中医学では24節気を重視するわけですが、11月7日に立冬がやってきて、上海も徐々にそれらしき寒さになってきました。

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中国では、北方と南方では明らかに気温の下がり方が違ってきますが、いずれにしろこれまで夏にかけて溜めてきた陽気を徐々に潜らせる一方で、陰気が盛んになって、植物にも落ち葉が増え、動物たちは冬眠の準備を始めます。同時に、活動を小休止するのにあたり、身体を蓄えるようになるのです。それが「冬令進補」になるのです。

 最近、朝が起きづらいという声も聞かれるようになりました。自然の流れにあわせて身体を調節する考えからすると、陰をしっかりと身体に蓄えるためにも、夜は早めに就寝し、朝は遅めに起きるということになっています。陽気を守り、陰を蓄えるという発想からですが、気温の低い朝は身体も交感神経が興奮しやすく、血管が収縮し、心臓にも負担がかかるようになります。脳卒中や心筋梗塞のリスクをさげるためにも、朝は夏よりもゆっくり目に起床し、太陽が出て来て身体がウオーミングアップされてから運動するのが望ましいとされています。また、大汗をかくような激しい運動は、陰を傷つけるので避けなければいけません。

 情緒的にも、立冬以降は落ち込みやすいといわれています。冬空が増えてくると、なんとなく身体が重く感じるのもそのためです。なるべく部屋を明るくしてみたり、身体の気が固まってしまわないように理気作用のある柚子などの柑橘類も食べたいところです。この時期、上海では大きくて立派な柚子が美味しいですよね。また、陽気を守るためにも背中や足先は冷やさないように注意していください。

 立冬を過ぎた頃になると、上海の巷でも栗が売られます。栗は、寒さによる慢性の下痢や、腎虚や冷えによる腰痛や四肢の痺れ、頻尿などにも使われます。ただし、外で甘栗を買うときは、割れてない栗を買うように。特に、甘栗で割れているものは、焦げた糖分が中の実につきやすく、身体に良くないからです。

 さて、冬になると、お鍋などで身体を温める肉類を食べるチャンスが増えます。そんなときにぜひ一緒に食べたいのが大根です。コッテリとした食材に対して、動きを与えてくれるのが大根なのです。中医学では、大根は気血の流れを整える、理気作用のある食材で、背中や手足の冷えが著しいときに使います。一般に、味がピリピリする大根は加熱し、甘い大根は生で食べるのがよいと中国ではいわれています。呼吸器疾患の治療として、肺や気管に溜まった痰を除去したり、消化器系では食欲増進や大腸の働きを改善させる働きがあります。生の大根には、腹部の膨満感を改善する働きがあるといわれています。ただし、生の大根と一緒に服用すると効能が落ちる生薬があるので、医師と確認して下さい。



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2013年10月20日

秋・冬の感冒予防のために

 上海も日に日に気温が下がってきました。先日、紹興からは早速H7N9型鳥インフルエンザ感染者のニュースが飛び込んできましたが、中医学の養生的にも、今からの感冒対策がとても重要かと思います。

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 まず身体を冷やさないこと。これは大抵皆さん気づいておられるのですが、そのなかでも足腰を冷やさないことが中医学ではとても大切です。昔から、中国では「寒さは足からやってくる」ということで、足が冷えると反射的に鼻・喉・気管など上気道の粘膜の血管が収縮し、繊毛の働きが弱まって、身体が菌やウイルスを除去する力が弱まるといわれています。また、高齢者はとくに身体の体温調節がうまくいかないだけでなく、下半身の脂肪そのものが少なかったりして、寒さへの対応がうまく行かないことが多いのです。そんなとき、寒さに乗じて寒邪や風邪(ふうじゃ)が身体を襲い、感冒の症状を引き起こすことになります。

 しかし、残念ながら快適な現代人の生活で、足腰の冷えに注意している人は意外と少ないのが現状です。とくに足の冷えに関しては、男性も女性もかなり無謀な人が多い。「寒さに身体を鍛える(秋凍)」というのと「寒さから身体を守る(御寒)」とはまったく異なる概念なので、とにかく誰でも薄着にしていたらいいというわけではないのです。

 中医学の養生では、食生活についての注意事項がいろいろあります。とても有名なのが、『傷寒論』に書かれている桂枝湯を服用したあとの注意事項で、生ものや味の濃い刺激物、酒類や乳製品、麺類やヌルヌルした食品を摂取しないようにと書いてあります。昔の人は、生活の中で気づいていたわけです。
 現代医学でも肉類や乳製品の過剰摂取は、体内の免疫細胞の抗ウイルス作用に不利だといわれていますし、塩の過剰摂取は唾液の分泌を抑えてしまい、口腔内の酵素の働きを弱めてしまいますし、甘い物の摂取しすぎも体内の水分を消耗して喉の渇きをひきおこし、免疫力を下げてしまうといわれています。

 また、中医学では初期の感冒として体表の栄気と体内の営気がうまく機能しない営衛不和というメカニズムがありますが、これを整えるのにはやはり睡眠がとても大切です。さらに、こうした気は人の情緒とも関係があります。気は、人の免疫力と関係がありますが、情緒が不安定だと各種免疫力が低下してしまうことはとても有名な話です。そうすると、一時的にも呼吸器の防御システムが弱まり、そのスキをついて感冒となってしまいます。

 運動もやはり大切です。中医学では気血の動きを大切にしますが、これを最大のパフオーマンスで発揮できるようにするには、やはり運動しかないと思います。それには、太陽の光も必要ですし、新鮮な空気も必要です。「時間がない」というのが運動をしない理由としてよく挙げられていますが、病気になったときにリスクと時間の浪費を考えると、早いうちに運動をするほうがメリットが大きいように思います。

 さらに、大陸的な気候の場合、冬の寒さ以外にも干燥対策も重要です。そのためには、適度な加湿が必要だといわれていますが、ただ加湿しすぎるとダニやカビの問題も出てきますので、それを防ぐためにも窓をあけて空気の入れ換えをすることがポイントになります。人が多い中国では日常的に冬でも窓を開ける習慣がありますが、日本でももっと注目されていいと思います。


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2013年10月01日

秋の養生、まずは涼燥に注意

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(市場は秋の食材でいっぱいです)

最近の患者さんの傾向を見ていると、「ああ、秋が来たな〜」と感じることが多くあります。代表的なのが、咳や鼻のグズグズ、皮膚の痒みや干燥などです。気温が寒くなると喘息の発作が出てくる人も多いです。


 湿度が比較的高い上海エリアに住んでいる私たちからすると、秋の始まりは干燥よりも寒気による身体の変化が大きいように思います。その代表的な症状が鼻水ではないでしょうか。この秋口の鼻水を中医学ではこのように説明します。夏ばてや体調の不良で肺の気が傷つき、体表にある衛気が消耗し、秋の寒さに乗って寒邪が身体の中に入ってくると、まず鼻の痒みや寒さが出て来ます。邪気が入ってきたことで、身体のなかの正気との衝突が起こり、邪気を追い出そうと人はクシャミをすることになります。
 肺が気の流れを整える通調作用を減退させると、気は津液をコントロールできなくなり、肺と繋がりの深い鼻から鼻水が出るようになります。肺気が弱まると、汗が出やすくなったり、寒がりになったり、といった症状も出て来ます。

 寒さが来だしたら、次は晩秋の干燥が身体に忍び寄ってきます。干燥は、身体の表面から身体の中へ順々に影響を及ぼしていきます。初めは咳や喉の痒み、口の干燥など呼吸器官系の症状が中心だったのが、次第に身体のだるさ、便秘、消化不良、睡眠障害、鬱病などの症状へと繋がっていきます。

 以上から分かるように、中医学では秋の養生のキーワードとして、燥邪の入り口となる肺対策をどうするかを考えることになります。

 まずは肺の気を充実させます。それには、まず新鮮な空気(清気)が必要ですし、食べ物からの気として、脾・胃の充実は欠かせません。代表的なのは、棗・山芋・葛根・茯苓・シイタケなのがそうです。これらは脾・胃の他にも、肺に対しても気を補う特徴があります。また、肺の干燥対策では、梨・百合根・レンコン・キクラゲ・豆乳などが潤しとして使われます。野菜では、ミカン・キーウイ・大根・白菜・リンゴ・文旦などがよいとされます。大抵、この秋に出てくる食べ物ですね、

 ただし、気をつけないといけないのは、肺に対しては陰や気を補うだけではダメという点です。特に、陰は溜めすぎると痰の生成を助長させることになります。そのため、肺の動きを広めることができる袪痰宣肺作用のある食材も適度に使います。代表的なのには、紫蘇・葱・薄荷などがそうです。

 これ以外にも、適度に水分を摂取する、辛いモノを食べないようにする、睡眠をしっかり取るなど陰を守ることに気を遣う必要があります。まず、秋の養生には干燥と肺に気をつけたいところですね。


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2013年06月29日

湿気の季節はどう過ごすか

 今年の上海の梅雨は、ジメジメしますよね。気温が高い日はまだそれほど多くないのですが、なかなか太陽が顔を見せない。そして雨も多い。

 こんなとき、体調の不良を訴える方も増えます。特に、脳血管系に持病を持っている人は、気圧の変化で交感神経優位な状態が続き、血圧や心拍数が上昇したりするものです。また、ジメジメ感に負けてしまって、ついついエアコンの温度が低すぎるのも問題で、特にもともと身体を動かして汗をかくことが少ない人は要注意。逆に運動して大汗をかいて、エアコンの効いた部屋に急に入ったりするのもよくない。こうした現象は、中医学では六淫の一つである、湿邪が体内に入ってくることと絡めて考えます。

 さらに、最近の傾向として、食欲不振や下痢、眠い、だるいといった症状を訴える方も少なくありません。下痢までいかなくても、大便が粘っこい、あまり水を飲みたくないなどといった症状も湿邪と関係があります。また、湿邪が体表を攻めると皮膚疾患も増えてくる。アトピー性皮膚炎や湿疹など日頃抱えていた症状が悪化したり、蕁麻疹や神経性皮膚炎、水虫などの真菌感染などがそうです。湿邪が経絡に入ってしまうと、肩こり腰痛、関節痛などの症状が出て来ます。関節リウマチや偏頭痛を持病に持っている人が、この時期に痛みを感じるのはそのためとも考えられます。

 では、この湿邪に対してどのように身体を対応させるべきか。近年、伝統医学のブームも手伝って、色々なところでも記事が出ていますが、少し整理してみます。

 まずは、なるべく湿気を感じる場所には行かないと言うこと。エアコンをうまく活用して、大雨の時は窓を開けすぎない、またエアコンのフィルターはまめに掃除する(出来たら月に1回)、外に出たときは雨に濡れないようにして、あまりジメジメした場所には居続けない、衣類の調節はこまめにといった点です。とくに、若い女性にみられますが、冷たい雨の中サンダルで走り回っている人がいます。これは、まともに湿気を呼び込むので注意です。

 この時期、私が中医学を勉強した上海を含めた、江南エリアでは、湿に対する様々な地元の生薬を使い、中国北方エリアの中医学とはまたちょっと違うのです。例えば、上海の田舎にいけば、フジバカマがはえているのをよくみかけますが、これもこの時期によく使います。

 原則は、生もの・冷たいもの・油っぽいものは湿を呼び込みやすいので食べないようにする。湿気対策以外にも食中毒予防のために重要です。暑い時期に、辛いものを食べて汗をかきたいという人もいますが、これは場合によって陽過剰状態を引き起こしてニキビなど皮膚疾患や腫れ物を悪化させると考えます。一方で、熱冷ましの冷たいビールや飲み物は、陽気を損傷させてしまう。このあたりのバランスが難しいかもしれません。

 ということで、やっぱり消化機能を整える健脾化湿系のものが重要となってきます。代表的なのは、ハトムギ・山芋・冬瓜・フジマメ(白扁豆・ビャクヘンズ)・緑豆・小豆など。さらに、ハスの実・椎茸・白キクラゲ・カリフラワー・セロリ・キュウリ・空心菜
・ニンジン・南瓜・モヤシなんかがお薦め。上海の市場にいけば、これからの時期増えてくるものばかりですよね。

 それと、湿邪を追い出すには、運動はとっても大切です。最近、日本のCMでも見かける「気血」という言葉ですが、この気血を循環させ、滞りをなくすことが実は湿気対策には大切です。適度に汗をかくこともそうです。そういった意味では、サウナでダラダラ汗をかくよりも日本式にぬるめのお湯に浸かることに方が中医学的にも理にかなっていると私は考えます。


 
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2013年02月21日

「雨水」過ぎたら中医学の「湿寒」に注意

今年は2月18日が二四節気の中の雨水でした。天気が温かくなるにつれて、雨が増えてきて、寒暖の差が大きくなってきます。一方で、上海エリアでの気候では、中医学的に寒邪と湿邪が入り交じりやすくなるため、湿寒対策をすることになります。

 湿邪の関係する症候で、代表的なのが湿熱と湿寒です。葉桂(1667-1746)の温病学などで湿熱は取り扱われますが、現代病には湿寒が多いように感じます。一般に、寒邪や湿邪によって体の陽気が妨げられ、体の浮腫や冷え、食欲の低下、腹部膨満館、嘔吐・下痢などの症状があります。現代医学では消化器系の疾患や腎臓病、関節炎、メニエール病、坐骨神経痛、肩こり、偏頭痛なども湿寒証に含まれる場合があります。

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(台湾人からいただいた雑穀饅頭。カボチャの種、ヒマワリの種、枸杞、ゴマ、干し葡萄入り。)

 さらに、湿寒の特徴として、脾・胃を直撃することが多いです。脾・胃がダメージをうけると、清陽が上に向かえず、濁陰が下に降りることが困難になります。その結果、頭がだるく感じ、喉が詰まった感じがしたり、肩こり、咳や痰が発生したりします。さらに、脾・胃の陽が傷つけられると食欲不振、下痢など胃腸炎に近い症状がでてきます。また、湿寒と風邪つながると、気血の流れを妨げるため、関節に痛みを発生します。

 対策として、春先はまずは脾・胃の働きをしっかりと高めておく必要があります。とすると、食べ物との関係が重要です。この時期、まだ寒いので辛いモノを食べたくなりますが、極力控えましょう。そして、生ものを避け、新鮮な野菜や果物の摂取も忘れずに。脾の陽気を守るために、山芋や人参、粟などが良いとされています。寒邪から体を守るためにも、暖かくなったからといってすぐには衣類を脱がないようにすることも大切です。

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2012年12月21日

冬至〜三九貼と膏方〜

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2012年12月21日は冬至。正確には、北京時間で12月21日19時12分が冬至となります。今日は朝までは空気の汚染度は悪くなかったのですが、風が強くなってきて、寒波がやってくると途端に汚染度は上昇。午後からの運動は控えたほうが良さそうです。
 冬至と中医学は大変密接な関係があります。

 まずは、夏の三伏貼に続き、三九貼の季節になります。三九とは、冬至から9日目を初九、さらに9日後を二九、さらに9日後を三九とし、一年のうちで冷えてくる時期でもあります。そこで、期間中にお灸をしたり、経穴に辛温作用のある膏薬を貼ったりすることもあります。目的は、体の陰陽のバランスを調え、免疫力なども含まれる正気を高めます。おもに、喘息やアレルギー性鼻炎、慢性の胃腸炎、肩こり、関節痛、虚弱体質などに適用されます。

 また、上海など江南エリアでは、膏方の服用が始まります。今年は、私も自分自身で膏方を作ってみました。冬至以降、陽気が徐々にあがってくるのですが、順調に陽気があがるために膏方の助けを借りることもあります。

 食べ物に関しても、冬至ならではの特徴があります。

 代表的なのは、山羊肉。体を温めてくれる羊肉を、一年のうちで一番よく食べるのがまさにこの時期です。山羊肉は意外と臭みがなくて、美味しいです。

 冬至になって、中医学的に体を補うと言うことは、中国では一般人もよく知っています。すなわち、「冬令進補」と言われています。

 食材でいうと、気を補ってくれる餅米、米、落花生、山芋、大根、豆乳などや、血を補ってくれる龍眼、黒木クラゲ、ほうれん草、なまこ、魚類、陰を補ってくれる白菜、梨、葡萄、牛乳、白色キクラゲ、陽を補う胡桃、ニラ、山羊肉、狗肉などなどがお勧めです。

 適度な運動が大事ですが、運動のしすぎには気をつけてください。また、寒いので風に体を曝しすぎないようにし、朝の運動はできたら太陽が出て来てからにしたいところです。(それにしても中国のお年寄りは朝がはやい。。。)

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2012年11月07日

立冬と中医学の「秋凍」

 2012年は11月7日が立冬です。中医学では、そろそろ膏方の処方シーズンに入ってきました。冷え性や虚弱体質、なんとなく体がしんどいという方に処方される、中医学の智恵です。膏方だと味も量も煎じ薬と違って服用しやすいので、毎年この時期だけ処方に来られる患者さんもおられます。

 暦の上では、立冬、立春、立夏、立秋など「立」がつく日が少なくありませんが、「立」とは古代中国語では何かが始まるという意味。まさしく、冬がはじまるわけで、農作物の収穫を終え、動物も冬支度をはじめます。



 中医学の養生の世界では、冬は「閉蔵」の季節と呼ばれ、陰を溜めて、陽を護る、いわゆる「斂陰護陽」の考え方を重視します。単に体に溜めたらいいというわけではなく、いつもよりちょっと早寝遅起して、陽を静めて陰を蓄え、陽気を傷つけないように部屋を適度に暖め、急に厚着をして腠理(いわゆる毛穴)から陽気が逃げてしまわないようにするのもポイントです。そのため、これぐらいの時期を中心に重視される鍛錬方法に「秋凍」というのがあります。日本的にいうと、「寒いのに薄着をして頑張ろう!」的なニュアンスもあるかと思いますが、すこし違います。



 中医学の養生で言う「秋凍」とは、中国は国土が広いので一概に統一した時期を言えませんが、上海エリアでは、まさに今ぐらいの温度が適当なのかもしれません。多少肌寒くなっても、すぐに服を着込まずに、熱くなりすぎて発生する過剰な熱や汗から体を守り、陰陽をコントロールするというものです。じゃあ、薄着をすればいいのだ?といえば、実はそう単純ではなく、中医学的にも冷やしてはいけない部位が決まっています。



 例えば、臍・頭・足・関節などがそうです。とくに、臍は寒邪の刺激が敏感で、寒さに曝されると、腹痛や下痢をおこすだけでなく、女性なら生理痛の原因にもなったり、不妊とも関係があります。頭は、帽子をかぶれば良いですし、足は靴下をはいたり、足浴などをすればいいでしょう。関節は、冷えによって血液の循環が悪くなると、関節炎にもなりやすくなります。ポイントは、体の表面は鍛えても、体の中、つまり五臓六腑を冷やしてはいけないということです。従って、運動して汗をかいたら、しっかりと拭くだけでなく、冷たいものを摂取して人為的に冷やさないようにすることも大切です。



 最低気温が常時10℃を割るようになってきたら、秋凍はおしまい。いよいよ本格的な冬に向けて、体の調子を整えて行く必要があります。




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2012年09月19日

秋のだるさ、眠さ

 世の中でちょっとしたガタガタがあると、あっという間に時間が過ぎてしまいますね。9月7日の白露も過ぎてしまい、9月22日は秋分。というわけで、上海でも秋本番となりつつあります。

 この時期、非常に多い患者さんが、「だるさ」や「眠さ」を訴えるケース。もちろん、調べてみると他の疾患との関係がある場合もあるのですが、もう一つ忘れてはならないのは季節の変化との関係です。



 秋の体のだるさは、「秋乏」と呼ばれています。中医学的には、気虚や脾虚と関係があるとされていますが、例えば、夏場に汗をかきすぎて、体の津液が欠乏して体がだるく感じるケースや、夏にジメジメとした湿邪や冷えなどに体を冒され、気を製造する脾がやられると眠たさやだるさの原因になります。



 秋のこの時期、もう一つ忘れてはらなないのは「秋凍」とよばれる寒さに体をならすことです。例えば、冷たい水で顔を洗ってみたり、感冒の予防のためにも、ちょっと薄着で運動をしてみたりなどがそうです。ただし、体を邪気から守るためにも、汗をかいたら、しっかりと拭いて、寒さが体の中に入り込まないようにしてください。



 眠気対策は、基本的に軽く運動することで改善されると思います。私のところでも、話を聞いてみると、日頃全然運動できていない人が少なくありません。こういうときは、刮痧もお勧めです。経絡を通すために、皮膚を人為的に赤く内出血させて治療する中医学的な方法です。ただし、女性の場合は、妊娠している場合や、生理のときは控えて下さい。



 また、あっさりとした食べ物を摂取することも大切です。ここで注意したいのは、毎年この時期に増えてきて、秋分以降に下痢の症状を訴えるケースです。水様便の方もおられましたが、秋は下痢になりやすいのです。中医学・漢方的には、脾胃のはたらきの衰えと関係があるとされていますが、この時期の果物類の食べ過ぎにも注意していください。それでも、梨・ミカン・リンゴ・葡萄・サトウキビなどこの時期ならではの食材はぜひ食べましょう。



 しかし、今年だけはとくに体がつらいとか、何かいつもと違うと感じた場合は、病院に行かれてチェックされることをお勧めします。





【連絡】・東京での温泉気候物理医学会講演のため、10月7日(日)は休診します。
・リニューアル!甘霖・我が愛しの上海へ
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2012年08月11日

立秋すぎたら西瓜は食べないという発想

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(朝の公園は、お年寄りの運動パラダイス)

 今年は8月7日が立秋でした。そのあと、上海では台風11号がやってくるなど、天気は結構荒れましたが、再び蒸し暑さが戻ってきています。考えてみれば、旧暦の七夕は今年は8月23日で、本来は立秋のあとにくるものなのですね。梅雨が終わるか終わらないかという時期よりも、こっちのほうが天気も安定していますし、実感がわいてくると思います。
 立秋以降、上海エリアでよく言われるのが、瓜類を食べるのを控えるように、ということです。西瓜を初めとした瓜類は、夏場には欠かせないものですが、立秋以降は生で食べることを控えるようにといいます。確かに、生で食べる瓜類は胃腸を冷やしますから、そろそろ予防線を張る必要があるということです。秋以降の下痢予防のためにも必要です。

 さらに、徐々に朝夕が涼しく感じられるようになってくると、陰を補うことが大切になってきます。今までのように、キュウリ・トマト・セロリなど生で食べて、熱をとるようなものから、徐々に滋陰できるものを採り入れるようにします。8月になると美味しくなるレンコンなんかもお勧めで、滋陰養血・清燥潤肺などの働きがあります。また、レンコンは鉄分が多く、鉄分の吸収を助けるビタミンCが多いのも特徴。上海では、生で食べることも多いです。
 
 そのほか、滋陰系の食べ物というと、苦みが少しありますが潤肺系の百合根やキクラゲ、山芋、クコの実などがそうです。また、夏の疲れを補うためには、カボチャ・ナツメ・蓮の実・胡桃なんかがよいとされます。このあたりは、色々な伝統食が重宝されます。

 夏場にエアコンなどで体を長期間冷やしてしまった場合、秋以降になると関節などに不快感が出やすくなります。肩こりや腰痛、関節の痛みなどを再発しやすくなるので、いつまでも夏と同じような体制で寝ているとよくありません。上海の街では、まだまだ上半身裸で歩いている人や、短いズボンやスカートを履いている女性を見かけますが、そろそろ控える必要があります。特に、寒さに冒されやすい足の裏や、背中には注意です。エアコンの温度も、外の気温と連動させながら、徐々に調節していかなければいけません。私も毎朝世紀公園へ運動に出ていますが、早朝外は涼しいのに室外機がまだ動いているお宅を見かけます。これはさすがに避けたいところ。

 また、今年はオリンピックの関係で、寝不足の患者さんが多かったのですが、秋にかけて、徐々に睡眠時間を確保するようにしましょう。夏と同じ睡眠時間では、陰を養うと言った観点でもよくなく、陽が盛んになりすぎて、ニキビや口内炎など上火になりやすいと考えます。

 季節の変わり目をいかに上手く乗り切るかは、早め早めの対策が大切だと思います。

【連絡】 ・8月19日(日)は東京でのTCMN15周年夏大会での発表のため、休診します。
・リニューアル!甘霖・我が愛しの上海へ
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2012年07月18日

今日から「三伏天」です

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(浦東の世紀公園にて)
 
 毎年、7月中旬の小暑から8月中旬の立秋にかけての時期にやってくる「三伏天」のシーズンになりました。暦の上から決められる「三伏天」ですが、2012年の今年は、7月18日が初伏、7月28日が中伏、8月7日が末伏になります。

 一年の内で、最も暑い時期で、体調管理が難しいのですが、中医学ではこの暑さを利用して、「冬病夏治」という伝統があり、陽気が盛んな時期に、冬の寒さと関係のある疾患の予防をしておこうということです。喘息や気管支炎、アレルギー性鼻炎などのほかに、関節痛や虚弱体質など冬から春にかけて多い疾患予防のポイントは、夏からというわけです。その代表的なのが、「三伏貼」で膏薬を疾患にあわせた経穴に貼ります。

 「冬病夏治」に関しては、各地で様々な習慣がのこっています。上海の郊外の奉賢区では、羊肉を夏に食べる習慣もありますが、これも広義では「冬病夏治」になると思います。こういう文化が残っているのが、中国伝統医学の大きな特徴なのです。

 中医学や漢方に携わっているものからすると、まさに夏本番といった実感がわいてくる時期です。鍼灸科も大忙しになります。日本では各地で記録的な猛暑になっているとニュースでみました。ある意味、昔の人の観察と一致しているのかもしれません。
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2012年07月06日

糖尿病予防のためにも歩こう!

こう暑くなってくると、外で歩くことがかなり苦痛になりますが、かといって運動しないわけにはいきません。今の上海の状況では、朝では7時前までに運動を始めないと、気温的には結構きついようです。

 歩くことの有効性はいろいろ指摘されていますが、米国ワシントン大学の最近の研究で、糖尿病リスクが高く、かつスポーツをする習慣がない人の場合、毎日歩くことでそのリスクを下げることができるとしています。

 研究によると、1800人の糖尿病ではないが、日頃から運動をしていない人を追跡調査すると、5年後に243人が糖尿病になりました。このうち、毎日3500歩も歩かない人の場合、糖尿病の発病率は17%であったのに対して、3500歩以上あるいた人の場合、発病率は12%だったとのこと。分析の結果、歩く歩数が最も少ない人と、最も多い人を比較すると、歩くことによって糖尿病の発病リスクを29%減少できるということです。

 結論として、日頃運動をする習慣がない人は、1日1万歩をあるく習慣を保つことが必要だとしていますが、10000歩というのは、結構なハードルです。運動をしない人は、もともと歩くことも好きでないことが多いですから。でも、西洋薬はもちろんのこと、漢方薬や中医薬も含めて、薬の服用を少しでも減らすためにも、やはりこうした努力は必要です。
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2012年06月21日

夏至がすぎると陰にも注意を

 今年は6月21日が夏至でした。

 夏至とは、中医学の世界では陽気が最も盛んになる季節です。と同時に、この日から陰気が徐々に増えてきます。陰陽のバランスの中では、非常に大切な節目でもあります。興味深いのは、夏至を境にして、陰を好む植物が徐々に出てくるのです。代表的なのは、7月1日の「半夏生」で、漢方薬や中医薬でよく使われる半夏は沼地や湿地帯の日陰を好むのですが、暑い中でもそうした陰を好む植物が生えてくるのもこの時期です。

 夏至は五行説では「火」にあたります。これまで盛んだった肝気が徐々に弱まり、心気が盛んになってきます。そのため、睡眠が相対的に短くなったり、イライラしたりすることが多いのも理解できます。肝から心に変わったことで、食べ物も、酸っぱいものから苦いものに移ってきます。代表的なのは瓜類。我が家でも食卓にいろいろな瓜類が出てくるようになりました。代表的なのは、ゴーヤやヘチマ、ヒョウタン、冬瓜、西瓜類ですが、そのほかにも日本ではあまりみかけない瓜類が市場に沢山並んでいます。

 さらに中国では、「冬には餃子をたべて、夏には麺を食べる」という言葉もあります。夏至に麺を食べると言うことは、麦の収穫が終わり、美味しい麺が食べられるということを意味しています。新米ならぬ、新麦ですよね。

 汗がかきやすくなると、体の疲れも増してきます。汗が出るときは、体の毛細血管が拡張し、血液の分布が変わってきます。そのため、もともと血圧が低い人は、さらに体の不調を訴えるようになります。また、水分の流出により循環血液量が減少し、これもまた体調不調の原因になりますが、中医学では一般的に、「虚」の状態になるといわれます。

 そういうときは、上海近郊の奉賢や金山ではあっさりと調理した羊肉を食べる習慣があります。これが非常に美味しいのです。また、浙江省では立夏を過ぎたら、補う習慣があるのもそのためで、特にトマトや鶏、ネギうあ瓜類をつかったスープを作ったりします。何れも「清補」とよばれるような、軽く補うことを指します。もちろん、中医薬や漢方薬をつかって、夏の体調のバランスを整えることもできます。

 これからやってくる、恐怖の上海の夏。なんとか元気に乗り越えたいものですね。
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2012年05月27日

小満すぎて、マンゴーや生姜はほどほどに

 5月21日は小満でした。朝夕はまだまだ涼しい上海ですが、もう少ししたら猛暑がやってきます。
 小満から次にやってくる二十四節気の芒種までの期間に、上海など長江デルタエリアでは夏らしい天気が本格化します。

 この時期、湿気が徐々に盛んになってきます。アトピー性皮膚炎など皮膚が弱い人は、徐々に痒みを増すようになります。そのため、食べものは熱をもつものを少なめに摂取することが必要です。代表的なのが、羊肉や牛肉類。また、アレルギーも出やすく、この時期よく出てくるマンゴーなどは食べ過ぎないように。うるし科のマンゴーは、接触性皮膚炎を起こしやすいので要注意です。中医学でのマンゴーの性質は、中性からやや冷やすぐらいですので決してきつい食べ物ではないのですが、アレルギーが心配なのです。

 また、冬場はあれほど重宝された生姜もこの時期はすこし控えめに。生姜は温める性質がありますが、燥性も強いので、夏の中医学の養生では食べ過ぎないようにと言われます。とくに、内熱が過剰になりすぎると、高血圧の人にはあまりよくありませんし、ニキビや痔の原因になったりします。

 一方で、これからあっさりとした野菜類が増えてきます。緑豆やヘチマ、冬瓜、西瓜、トマト、ニンジン、レンコン、ハトムギ、小豆、キュウリ、ヘチマなどです。これらの野菜には、清熱利湿作用があるので、ジメジメとした季節にはぴったりです。

 そして、うちの中医クリニックにこられる子供たちに再三注意しているのは、冷たいモノや生ものを食べ過ぎないこと。子供や高齢者は、消化器の働きがまだ弱いので、食欲不振や下痢の原因になります。それでも、私の目の前で氷をたっぷりといれた水筒をもってきた子供がいたのにはビックリ。(^_^)

 また、気温の差がまだまだあるので、朝夕は風邪引かないように、特に寝るときはまだまだ夏モードは早いです。夏の五臓は心です。精神的に不安定にないやすいので、ストレス発散も兼ねて適度に散歩などをして体を動かすことが必要です。
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2012年05月25日

上海の末端医療機関で推進されることになる中医治療

 上海市衛生局のHPによると、5月14日に市内の末端医療機関(社区衛生服務中心)で普及が考えられている中医学の治療方法12種類が公開されました。その内容は以下の通りです。

・ 経穴敷貼による慢性呼吸器疾患の予防と治療
・ 棍棒体操による中風後の肩関節活動障害の予防と治療
・ 督脈灸と耳穴貼法を使った不眠治療
・ 五行健骨体操
・ 「六歩奶結疏通法」による乳汁欝滞の治療
・ 中薬処方腸痺方と推拿と竜形六式体操を使った慢性便秘の治療
・ 艾灸を使った膝の骨関節炎の治療
・ 「項八針」による頸椎病の予防と治療
・ 「陽明法」による高齢者の咳喘症の予防と治療
・ 電針浅刺法による顔面神経麻痺の治療
・ 腕踝針
・ 中薬を使った糖尿病による足部神経障害の早期治療

 上海市衛生局には、合わせて98種類の中医学を使った特色ある治療方法が提案されたそうですが、その中から専門家の討論をへて、上記の12種類が決まりました。末端医療では、全科医師と呼ばれる主治医の国家資格を取得した医師がGPとして治療にあたります。近年、中国の医療制度も様々な資格が作られ、徐々にですが整備がすすめられています。私の妻も、全科医師の主治医の資格以外に、最近は鍼灸医師の主治医の資格も受けてきました。合格結果はまだですが。。。。

 中医学は、医師がそれぞれ特有の治療経験をもっています。それらの勉強と普及が今後益々必要となってきています。
posted by 藤田 康介 at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想