2012年09月02日

進む中医治療ガイドラインの標準化体系

 TCMNのシンポジウムでもご紹介しましたが、2012年7月14日、北京で中華中医薬学会がこれまでの中医内科・糖尿病・悪性腫瘍の中医治療のガイドラインに続いて、新たに中医外科・中医婦人科・中医小児科・中医眼科・中医耳鼻咽喉科・中医皮膚科・中医肛門科・中医骨傷科(整形外科)の治療ガイドラインを発表しています。2005年から中国の国家中医薬管理局が管轄し、進めてきた標準化作業のうち、基本的な分野に関してはその体系が見えてきたような感じですね。中華中医医薬学会の分科会が具体的な作業を行ってきました。

 上海市でも、上海市衛生局により「上海市中医病証治療常規」が定められていて、中医病名や処方の基準となっています。とくに、中医病名と西洋医学との疾患名との関係は、衛生監督部門によるカルテ検査の際の基準にもなっていて、我々臨床医とは深い関係にあります。形式的すぎるという声もありますが、医療としては必要な作業かと思います。

 標準化のガイドラインが作られたことで、日頃の臨床の治療レベルを高めるだけでなく、実験などで中医学の研究を深めるのに大いに役立ちます。標準治療が作られて、初めて討論できる基盤ができ、その上から新しい治療手段が創出されてくると思います。
 
 今回は、同時に「中医古籍整理規範」の10項目も定められました。

 中国では、こうしたガイドラインを定めることで、養生・看護・治療・保健の3分野での中医学治療の体系を作ることを目指しています。






【連絡】・日本温泉学会参加のため、9月6日(木)〜13日(木)まで休診します。 
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2012年08月17日

上海での民間治療の発掘作業

 中医学歴史というのは、そもそもは一般庶民の健康をどうやって守ってくるか、というのが原点でした。それは、歴史上の医学者や専門家も沢山登場してきますが、そのヒントとなっているのは庶民の間で脈々と受け継がれてきた民間治療がベースにあるということも忘れてはなりません。それは、エビデンスの研究を必要とするものもあるでしょうが、でも効果があることを実感できるものが殆どです。さもなければ、現在まで残ってこないからです。

 上海市では、そうした民間治療法の発掘作業を行っています。今までは非合法なので摘発の対象になっていたような治療法も、発掘することでその有効性を確かめ、実際に臨床現場で活用使用というやり方は我々臨床家にとっても大変参考になると思います。今回、研究対象となった30あまりの治療法のうちの一部は下記の通りです。

王根発 針灸治療の代わりに膏薬を貼ることで便秘などを治療
姚忠元 掌の経穴で、気功循経診脈法による疾患の治療・診断
銭元祥 掌紋による疾患の診断
呉厚余 生薬「羅勒子」を使ったドライアイなどの眼科疾患の治療
柳国斌 「経絡功」による下肢静脈疾患の治療
趙春英 「六歩奶結疏通法」による乳腺炎の治療
施青春 外用「炎痛霊散」による外傷性感染の治療
王珠山 声顫法や竹筒法などで頚椎症や心房細動の治療
段晏明 「補化湯」による血小板容積異常や脳梗塞の治療

なにか宝探しをするようでワクワクしてきますね。


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2012年08月07日

日中の方剤に関する考え方の違い

 今年は、東洋医学学会にも顔を出させてもらって、日本の漢方や中医学をやっておられる先生方との交流も少しずつ増えてきました。中国で、中国のやり方で伝統医学を勉強し、中国のライセンスで、中国で医療活動をしている私にとっては、日本のやり方というのが興味深く、大変参考になりましたし、私も自分の臨床でさっそく活用させてもらっています。良い物は貪欲に採り入れたいと思っています。

 色々な考え方があるかもしれませんが、日本でよく使われている漢方医学というのは、例えば、「傷寒論」のようにある決まった伝統的な処方があって、それをいかに活用するかということでエビデンスなどを考察しながら決めていくやり方。そのため、その処方が作られた歴史的背景や、文献などの考察なども含め、かなり緻密に討論されているような印象です。もし歴史的におかしい問題がみつかると、それを是正していく根拠を見つけていくような感じ。中国で言うと、中医薬大学の文献系の先生方がやられていることに近いような印象です。

 一方で、中国はというと、病院で使われる処方というのは、伝統的な処方ももちろんありますが、それぞれの専門家が得意とする疾患があり、古典的な流儀にあまりとらわれることなく、かなり自由に処方の思考方法を発揮しているような感じをうけます。つまり、いろいろな新しい処方や考え方があって、今でも作られているのです。そのため、古典的な処方に加えて、様々な新しい処方が発見されています。このことに対して、新しい処方が中医学や漢方のルールに正しいか、正しくないかという議論は置いておき、まずは如何に効果を出せるかということに重点を置いている、ある意味、実績重視の中国的なやり方ではないかと思います。そして、単に新しい処方を発見するだけでなく、研究者や大学院生がその処方に関してのエビデンスを、西洋医学的な立場から見つけてくる。これが今の流れのように思います。

 そのため、ある処方の使い方について、日中間では決定的な違いがあるように思います。日本では、たとえば五苓散だったらこういうケースでもつかえるぞ、など一つの処方に対する応用方法やエビデンスがいろいろ討論されますが、中国では古典処方に基づいても、結果的には臨床経験の基づいて新しい処方が作られるわけなのです。ところが、その効果が明らかになっても、具体的な処方の中身はなかなか表に出てこない。中医学の世界では、伝統的に昔から門外不出の「秘方」などが多いのも、そうした発想の違いと関係があるように思います。私の師匠が、膜性腎症の治療において、生薬蝉花の特許をもっているように、中医学に絶えず新しいページが足されていくようなイメージがあります。その全貌は、なかなかよく分からない、ある意味閉鎖的なところが多々見受けられます。

 どっちがいいかというと、私はどっちもどっちだと思います。ただ、東洋医学として伝統医学を発展させるには、両方のやり方をミックスさせないと時代に取り残されてしまうように思います。即ち、過去の伝統に基づいた処方も大切にしながら、さらに新しい処方を作り出し、効果を高め、できたら新しい生薬も発見したい。中医学には、そんなダイナミズムがあるように私は思います。

 中国の場合、新しい処方を発見できる土壌はあると思います。伝統医学の法制度も、世界的にかなり有利です。すでにいろいろな病院が様々な研究をしています。最近、成都中医薬大学で、2000床規模の中医学を活用した糖尿病の臨床基地が国主導で設立されたのもそうした一環だと思います。その新しい処方を作るときに大切なのが、中医学的な理論と医者のひらめきで、それがある程度公認されてくると、西洋医学的なエビデンスを求めるように研究が進められていきます。中医学の本当の意味での発揮は、これから様々な経験が整理されて、どんどんと表に出てくるのではないかと期待しています。

 とにかく「効果を出すこと!」

 これに尽きます。

【連絡】 ・8月19日(日)は東京でのTCMN15周年夏大会での発表のため、休診します。
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2012年08月04日

生薬のいい香りを楽しむ香療法

aromatopia(フレグランスジャーナル社)の7月25日号にも書きましたが、中医のアロマテラピーとか色々言われる前に、中医学ではとっくに伝統医学としての香療法をもっていました。 

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 やり方はとくに難しいわけではなく、香りの高い生薬をブレンドして粉末にして燃やすわけです。我が家では、写真のような道具を使っています。お風呂場に少し香りを漂わせるだけで、なんかちょっとリラックスした気分になります。精神的に忙しいときなどには、私も使うようにしています。

 よく使われる生薬は、藿香、甘松、白芷、艾、蒼朮などさまざま。そういった生薬のなかで、自分が一番気に入った生薬を使えばいいのです。

【連絡】 ・8月19日(日)は東京でのTCMN15周年夏大会での発表のため、休診します。

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2012年07月19日

オーストラリアで合法化された中医学

 オーストラリアの衛生当局が、2012年7月1日から、中医学を合法的に認め、登録制度を実施したというニュース。中国では、各メディアが大きく報道しています。中医学に関して、国が制度化したのは、欧米の国の中では初めてではないかと思います。ニュースとしてはかなり画期的です。

 オーストラリアというと、中国人が移民先として選ぶ国の中では、圧倒的な人気を誇っています。我が家の隣りもオーストラリアへの移民に成功して上海をあとにしました。ただ、こうした人たちが増えてくると言うことは、必然的に、民間医療の一つとして放っておくことができないことになります。そのためには、中医学の医療現場における地位をはっきりとさせ、政府がしっかりと管理する必要があるのです。

 オーストラリアには現在、5000軒の中医学や鍼灸の診療所があるのだそうです。制度化されることにより、様々なハードルが課されます。私は、しっかりと厳しいハードルを課すべきだし、そうすることで中医学の地位がより確立されたものになると信じています。

 今回の制度化で、オーストラリアの中医師に対して、英語の要求も突きつけられました。もし英語ができないのなら、通訳を導入しなさいという規程。結構なことです。そうすることで、中医学の外国語での標準化の話もどんどん進むことでしょう。実践されるものほど強いことはありません。

 日本も漢方医学を世界に広げようと力をいれています。前回の京都での東洋医学学会でもその意気込みは伝わりました。では、世界の中で、中医学(TCM)という巨人がゴソゴソと動き出している中、漢方(Kanpo)はどう切り込んでいくのか。日本の国としての戦略を期待しています。
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2012年07月10日

汗疹対策

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 今週に入って、上海の暑さはパワーアップしています。天気予報によると、今週の最高気温は37℃の予報。私の朝の運動も、5時過ぎからスタート。それでも、空気が重くて、湿気ているのがよく分かります。こう暑くなると、クルマでの移動が増えてくるので、なんとか朝の時間を確保して運動するように心がけています。あと、十分な睡眠も大切。夜更かしをせずに、さっさと寝るようにしています。

 しかし、子供は元気なもので、暑さももろともせず遊んでいます。相変わらず、すごいなあ〜と思います。いつも中医クリニックの患者さんにもお話していますが、我が家では冷蔵庫に飲み物を入れていませんし、氷も作っていません。べつになくてもどうにかなるというのを、自分たちで実践したいと思って、数年前からやっているのですが、おかげで娘は冷たいモノを摂取する習慣はまったくありません。冷やさないことを親子共々今後も重点的に行っていきたいと思っています。もちろん、ここでいう冷やさないというのは、決して熱いモノばかりを摂取するという意味ではなくて、常温以上のモノにするということで、それでも十分に冷たく感じるようにするのがポイントです。

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 子供と言えば、汗疹の問題がどうしても出て来ます。皆さんのご家庭でもいろいろな対策を講じておられるかと思いますが、我が家での対策は、やはり薬浴です。決して熱くないお湯に、地膚子や馬歯莧、薄荷、忍冬根などを煎じてお湯に入れます。お風呂が写真のような色になりますが、汗による皮膚の痒みにはなかなか有効です。中医学的には、清熱や祛湿、袪風などの効能がある生薬を使います。さらに、症状によっては軟膏も併用したりします。内服では、六一散などが有名。

 軟膏では、最近、紫雲膏を作ってみました。しみ・くすみ・肌荒れなどで、日本で一時期流行した紫根(むらさき)を使う伝統的な処方です。日本東洋医学学会でも、皮膚科の分野で使っておられる先生が多いように思いました。

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 昔から、この暑い時期をどのように過ごすか、医学者達はいろいろ智恵を絞っています。そうした智恵を拝借したいところです。
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2012年07月07日

7月1日半夏生から7月7日小暑へ

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(今朝の世紀公園)

 ブログでも紹介しましたが、7月1日は雑節のひとつで半夏生でした。梅雨の末期で、中医薬や漢方薬で使う生薬半夏(カラスビシャク)が生えてくる、高温多湿な時期をいいます。私の実家が近い、奈良県香芝市エリアでは、半夏生を「はげっしょ」といい、玄米の餅を食べる習慣があるらしい。上海でも、ちょうど7月4日に梅雨が明けていますから、いい感じに季節が進んでいることになりますが、いかんせん、蒸し暑い!!

 先日、京都国際会館で開催された東洋医学学会に参加したとき、名古屋市立大学の牧野先生のご厚意で実現した、有志達による京都薬用植物園(武田薬品工業株式会社)の見学は、時間を忘れるほど熱中してしまいましたが、さすが日本!といった感じの、非常に手入れの行き届いた薬草園に感動しました。おもわず、上海中医薬大学付属の薬草園も気合いを入れないと!と言いたくなりました。(^_^)

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(半夏生です)

さて、その薬草園を歩いていると、季節の生薬が色々と花を咲かせていました。半夏生もきれいな花を咲かせていましたが、雑節の半夏生ははたして生薬半夏(カラスビシャク)なのか、それとも半夏生(カタシログサ)なのか、地域によっていろいろな言い方があるようです。いずれにしろ夏の植物がいい感じに育ってきています。

 7月7日とえば、日本では七夕かもしれませんが、中国ではむしろ小暑のほうが有名。七夕はもっと夏が本格的になってからです。暑さはどんどん本格化していくわけで、7月7日〜8月7日の立秋までの期間を日本では暑中といいますが、中国ではすこし時期的にずれますが、最も暑い時期を三伏といって2012年は7月18日〜8月16日を指します。中医学の夏の養生である「三伏貼」はまさにこの時期のことなのです。

 7月6日は上海で最高気温38℃を記録し、この夏一番の暑さになりましたが、上海市郊外の奉賢区では、熱中症による死者もでています。42歳の男性で、7月2日に道路脇に倒れ、病院に搬送されたときの体温は42℃で、心拍数は130。すでに意識はなく、亡くなりました。

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(はとむぎです)

 暑くなってくると、上海の市場は季節の野菜が増えてきます。とくに、緑豆湯に入れる百合根は人気なのですが、今年は安徽省や湖南省の天気が不良で、値上がり傾向のことです。また、清熱解毒の作用がある菊花や金銀花、夏定番の大麦や決明子、楓斗などがお茶として人気です。特に、決明子は大人気でダイエットでもよく飲まれます。

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(スーパーに売られている涼茶です)

 夏と言えば、涼茶も。基本的に金銀花や夏枯草、菊花、荷葉、桑叶、黄芩、竹葉など清熱解毒・清肝瀉火作用のあるものが多いので、体を冷やす性質のものを使います。逆に言うと、冷やした涼茶は胃腸にキツイので、お腹が弱い子供たちは要注意です。最近では、スーパーにも赤い缶に入った涼茶が売られていますが、味も甘いので飲み過ぎには注意です。
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2012年06月03日

中医薬用語の英訳の標準化の動き

 5月24日に上海師範大学が記者会見を開き、外国語学院の副委員長の李照国教授が、中国国家中医薬管理局の委託をうけて英語翻訳を進めてきた中国の1995年度版、1997年度版中医学用語の英語の国家基準が定まり、WHOに提出するための国際標準化の準備が整ったことを発表しました。

 中医学の国際化と標準化は、中国が国を挙げて取り組んでいるプロジェクトですが、その最大の障壁となるのが、やはり言葉の問題。特に、英語と中国語との翻訳は確かに難しい問題がいっぱいです。そこで、ISNTCM(International Standard Nomenclature of Traditional Chinese Medicine)という標準化のためのたたき台を作り、研究が進められてきました。

 以下は、上海の夕刊紙『新聞晩報』の記事からですが、今回の翻訳作業ではいくつかの点で工夫されたようです。

 まずは、すでに定番となっている訳については、従来の言い方を使うというもの。たとえば、五行の場合、英訳はfive elements、瀉法はpurgationとする翻訳です。混乱を避けるため、今まで通りそのまま使うことに。

 また、中医学が独特にもつ言葉に関しては中国語の発音をそのまま使うことになりました。代表的なのが「気」ですが、vital energyと訳さずに、そのまま「qi」とすることになりました。この「ちー」という中国語読みは、欧米では近年よく耳にするようになりました。

 一方で、難解な中医学の病名に関しては、そのまま西洋医学の名前を当てはめることに。たとえば、中医眼科で登場する「烏鳳内障」は、緑内障のことですが、そのままglaucomaと訳すことになりました。

 また弁証論治などを考えるときに使う専門用語に関しては、ネイティブが呼んでも違和感がない訳し方になりました。例えば、急性結膜炎の病名でもある風火眼は、wind-fire eyeと訳すと違和感があるもののacute conjunctivitisとするとその本来の語意が伝わりづらいので、結局wind-fire eyeの言葉が採用されることになりました。

 さらに、李照国教授は、1985年より進めてきた『黄帝内経』の英語訳がついに完成し、中国大陸では初めての訳本として出版されることになりました。今後、最も権威のある英訳本として活用されることが期待されています。これも、実は中国の『大中華文庫』プロジェクトの一環で、『素問』が3巻、『霊枢』が3巻の翻訳本となり、近々出版されます。

 日本も中国の中医学標準化に対抗するのなら、日本漢方の英訳について、真剣に考える時期に来ているのかもしれません。
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2012年05月11日

国医大師、故裘沛然伝承工作室のHPが公開されました

 高齢化が進む老中医達の臨床経験を伝承するために、中国では国家中医薬管理局などが中心になって、さまざまな取り組みが行われています。中医学のベテラン医師を老中医といいますが、弟子達がつながっていて、先生の学説を継承していくのが慣例です。 そこで、中医学を管轄する国家中医薬管理局名中医工作室プロジェクトの一環として、2005年8月から上海中医薬大学に「名師伝承研究工程」が作られ、裘沛然先生など9人の老中医の工作室が設置されました。

 工作室では、専任のスタッフが配属され、裘沛然先生の医案や講義案に論文、さらに著作や詩なども収集され、学術思想や臨床経験の整理などが行われています。そして、2012年4月にはその成果を対外的に発信する「国医大師裘沛然伝承工作室」のHPがOPENしました。(URL:http://www.chinaqpr.com/


 中医学の医師というのは、単に病気を診察できるだけでなく、人間的にも、人文的にも魅力があり、多くの人たちを惹きつけてきました。このサイトをみると、医案だけでなく、生前の講義などの動画もアップされています。こういった試みは、これからもぜひ継続してほしいと思います。中国の中医学の裾野が広いのは、こうした地道な努力とも関係があるのでしょう。

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2012年05月10日

中医学によるダイエットの問題

 これから暑い季節になってくると、だんだんと薄着になってきますが、冬に蓄えすぎた「肉」を、少しでも減らそうというわけで、ダイエット(減量)を目的に、うちの中医クリニックに来られる方が少なくありません。

 中医学では、肥満治療に関して一定の認識があります。よくそのガイドラインとして使われているのが、2002年に中国で発表された『中薬新薬治療肥胖病的臨床研究指導原則』で、単純性肥満を5つのタイプに分類しています。すなわち、胃熱湿阻型・脾虚湿阻型・肝欝気滞型・陰虚内熱型・脾腎陽虚型の5つになります。

 上海の巷では、鍼灸による美容やダイエットが人気のようですが、これも中医学による減量手段の一つです。鍼灸によるダイエットは果たして本当に効果があるのか?臨床では確かにいろいろな実績があるようですが、実はその科学性に関しては色々な意見があるのもまた事実です。ただ、一般には鍼灸によって中枢神経から食欲を抑制し、内分泌の働きを調節し、胃腸の消化吸収を抑えるという考え方は一般的です。中医学的には、さしずめ、鍼灸によって気血のバランスをとり、経絡の流れを整えるといった感じでしょうか。


 その観点から行くと、耳ツボや灸や抜罐も使えそうですし、もちろん生薬も併用することも可能です。ただ、はっきりと言えることは、無理に排便を促したり、極端に食べるものを減らしたりするのが目的ではなく、中医学ならではの体のバランスをとることが大切だと思います。そのためには、最低でも、前述した5つのタイプのうち、せめて実証と虚証の区別ぐらいはしっかりとつけておく必要があると思います。

 また、ダイエット(減量)の治療を行う時、まずは肥満の原因をしっかりと見極める必要があります。中医学のうち、とくに鍼灸などの経穴での刺激が有効なのは単純性肥満で、その他の疾患が原因での肥満では、まずその疾患の治療を行わないといけません。

 では、減量のスピードとしてはどれぐらいが理想なのでしょうか?WHOの情報と、私自身の経験からも1週間に1.5〜2キロぐらいが理想とされ、これを越えると健康的なダイエットとは言えません。リバウンドのリスクも高まります。

 ちなみに、WHOの、Dietのページを色々見てみたら、トップの写真で登場しているのが、ジャンクフードではなく、どうみても我々がよく食べる中華料理のような気がします。こうみると、不健康そうな感じがしますよね。(でも、実際の家庭料理はそうでもないです。)

 減量に関しては、もちろん中医学の様々な治療法も有効ですが、まずは、自分自身の体重をしっかりと認識し、食べている量を把握すること、そして運動していることを実感することが大切だと思います。そして、リバウンドをしないためにも、継続ができる必要があり、極端に食べる量を減らさないことがポイントです。特に、日本でも問題になっている、日本人の晩ご飯の時間が遅い問題は、健康のためにも早急に解決すべきで、寝る3〜4時間前には何も食べないと言うことをぜひ実践したいところですよね。
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2012年04月05日

中国語でよく耳にする「上火」という言葉

 中国での日常生活で、何気なく使われている中医学の用語に、「上火」という言葉があります。一般的に、天気が暑くなってくると、喉が渇いたり、口の中が苦く感じたり、口が臭く感じたり、さらに口内炎なんかの症状もこの言葉の中に含まれます。そのほか、気候と関係がなくても、若者は「上火」になりやすいですし、女性と男性なら、やはり男性のほうが「上火」になりやすい傾向にあります。そして、それの対応策として、「清火」という言葉もあります。食べ物で火を冷ます方法や、場合によっては生薬を使ったりします。

 五臓六腑の観点から行くと、よく「上火」が出てくる臓腑というのがあります。

 例えば、胃だったら、お酒の飲み過ぎ、甘いものや味の濃いもの、辛いもののの食べ過ぎは上火となり、便秘や口の渇き、腹痛や歯茎の痛みになどになります。この場合、牛肉や羊肉など熱性が強い食材はさけ、野菜中心にして、薬膳なら緑豆などを食材として使いますし、生薬では石膏や黄連といった胃の火を取り去るモノを使います。イライラしたときに出やすい肝の火は、情緒と密接に関係がありますし、それは頭痛や目の腫れなどとも関係があります。中医学では、菊花や夏枯草なんかも使います。不眠や舌の先の痛み、色の濃い尿などの症状は、心火となるので、蓮子芯や黄連を使います。乾燥した気候とも関係ある肺火の場合なら、喉の痛みや咳、高熱、血の混じる痰などの症状がみられ、やはり冷やし系の生薬・食べ物を使います。白キクラゲ・大根・梨・リンゴ・百合根なんかが代表選手です。生薬では桑白皮やドクダミ、黄芩なんかをよく使います。

 ここから分かることは、「上火」とは、決して実際の火が出ているわけではなく、ある種の症状を、体内に火が出ている状態だとまとめて解釈している点です。日常生活の中でも、比較的実感できやすい現象ではないかと思います。

 中医学(漢方でも)では、複雑な症状を分かりやすく分析するために、様々な分類がされていて、そこから治療のプロセスが考え出されるのです。
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2011年10月12日

「電脳中医学」実用化へチャレンジ

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 2010年に開催された上海万博で一般公開された「中医四診儀」が話題を集めましたが、上海市浦東新区の上鋼社区衛生サービスセンター(末端医療を担当する病院)に導入され、地域の患者を対象に使用がはじまっています。10月11日付けの上海紙『東方早報』が報道しています。

 この「中医四診儀」は、上海中医薬大学と上海道生医療科技有限公司が共同開発してもので、中医学の専門家たちの経験を集め、脈診・舌診・問診・面診などのデーターが整理されていて、パソコンを使って分析する仕組みです。その後、中医弁証や中医学的な体質の分析などが行われ、臨床医に対して参考情報を提供するということです。舌や顔色はデジタル技術を応用した画像診断で、また脈診はセンサーを使って患者の情報を収集します。脈診だけでも、浮、中、沈など20種類を弁別できるということです。

 問診なども含めると、1人の患者に費やす時間は約20分程度。最後に、患者に体質の状況や、養生方法などがプリントアウトされます。

 上鋼社区衛生サービスセンターでは、この器機をつかって、管轄地区2万人の65歳以上の高齢者の健康診断に使いたいと考えており、将来は年1回の中医学的健康診断の中核になるようです。ただ、今のところ1台しかなく、1人20分では年間4000人ほどしか検査を受けることができないため、他地区の住民は受け入れていないということです。

 上海浦東新区衛生局中医科教処では今後浦東新区でこの「中医四診儀」を普及させていきたい考えで、中医学の新しい活用方法として注目が集まっています。

 ただ、器械で1人20分かかるのなら、実際に医師が診察しても同程度の時間がかかると思いますが、より誤差の少ない中医学的データを取るのには、便利かもしれません。
posted by 藤田 康介 at 06:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2011年01月17日

外治法、針灸治療の色々

 中医学の特徴として、生薬(漢方薬)などの飲み薬だけでなく、鍼灸なども活用することはよくあります。

 鍼灸にも色々な方法があって、一般的な針やお灸、電気針のほかにも、耳ツボを使う耳針や頭部に刺す頭針、皮膚疾患に使う梅花針、埋針とも呼ばれる皮内針なんかも使います。チャンスがあれば追々ご紹介します。お灸なんかも婦人科系の疾患にはやさしいです。

 うちの中医クリニックの場合、日本人は保険の関係で難しいのですが、特に台湾人など華人系の患者さんは外と内から治療することを好まれることが多く、治療費も比較的割安なので鍼灸は大活躍です。
 
 鍼治療のあとは、一般的に吸い玉(抜罐法)を使います。抜罐法も走缶(スライドカッピング)には多少技術が必要なので、うちの看護師にもやり方を指導してあります。
 特に機械式のバンキーなどは、中国人の患者さんの間でも人気が出てきました。従来の抜罐法よりも火を使わない分安全で、手動ポンプ式よりも確実、さらに持続的に一定の圧力をコントロールをできるというメリットもあります。抜罐法の現代的な発展系と言えるでしょう。(この機械はなんと、日本で開発されたものです!さすがですね。)

 最近、時々上海の街角で見かける刮痧(グワシャー)も、中医学の治療法の一つです。この治療法はかなり一般的で、上海人の家庭でも家族同士で刮痧をしているところも多く、うちの妻なんかも時々やっています。特に、頭部を刮痧してもらうと、すっきりしますね。疲労回復で刮痧をしにうちに来られる台湾人の患者さんも多いです。

 中国も、医師たちのアシスタントとして中医病院で仕事ができる中医学の技術をもつ看護師の育成に力をいれていますが、まだまだ不足しているので、人材のトレーニングには力を入れなければいけません。

 こう挙げてみると、中医学には本当にいろいろな治療法がありますよね。
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2011年01月15日

中医骨傷科(整形外科)の骨折で使う挟板

 中医学では、それぞれの科に細かく分かれていますが、上海で有名な分野に整形外科にあたる中医骨傷科があり、石氏傷科や魏氏傷科などが今でも伝えられています。私が以前いた上海中医薬大学付属竜華医院では、石氏傷科が有名です。

 そこで、先日、うちの中医クリニックに石氏傷科の先生をお招きして勉強会を開きました。テーマは、中医学の骨折の時に使う挟板(きょうばん)です。我々内科系の医師からすると馴染みが薄いですが、中医学の特色でもあります。

 現代の若い世代の中医学の医師は、骨折の時に西洋医学同様に石膏を使うことが多く、なかなか使うチャンスがない挟板で、技術継承のピンチにもなっています。ただ、石膏で固定するのと比べると、メリットも多いため、今後の活用が期待されるはずなのですが。

 まず、挟板ですが、写真のようなものです。大きさが色々あり、患部によって使い分けます。

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 晋の時代から、このような竹などで作られた挟板は骨折の治療で使われていて書物にも記録が残っています。高齢者によく見られる手首の近くの橈骨(とうこつ)骨折、すなわちコーレス骨折を例に挟板を使って固定してみると、写真のようになります。

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 この写真をみて分かるように、石膏を使って固定するのと違って、上下の関節は固定しません。腕の周りに4本の挟板を使い、その周りをヒモで縛ります。また、骨折によるずれが発生体場合も、挟板は有効で、先端部分に綿などを使って患部を押さえて固定します。

 挟板を使うメリットとしては、しっかりと固定ができるので治癒するまでにかかる時間的負担が短くすみ、筋肉の衰えや関節の強ばりを防ぐことができ、費用も安いなどがありますが、医師の技術的なトレーニングがかなり必要なため、一定の経験が必要です。また、関節部や湾曲している部分には使えないという欠点もあります。

 一方で、挟板では石膏と違って完全に密封されているわけではないため、中医薬の生薬外用薬も使え、治療効果を高めますし、理気や活血系の生薬の内服薬を活用して内外から治療します。ポイントは、骨の問題だからということで、あまり早くから補腎を使わないことです。一般に、2-3ヶ月してから補腎系の内服薬を処方します。

 また、骨折時に石膏ギブスを使った場合でも、中医薬との併用は十分考えられます。中医学の世界では、石膏は体を強力に冷やす生薬と考えられてるため、長期間患部に接することは血行などを妨げてしまいます。そこで、中医薬(漢方薬)を使うときは、温経通経・祛寒系の生薬を使って、寒邪が経絡の奥に入り込まないように気をつける必要があります。
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2010年11月23日

浙江省杭州の胡慶余堂中医薬局

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  中医学で診察している我々医師にとって、非常に大きなポイントとなるのが、質の良い中医薬局と、うでのいい薬剤師の存在です。うちの中医クリニックでも、もちろんエキス剤を出すことはできますが、でもエキス剤だけでは中医学の力をすべて発揮することは難しいと私は考えています。幸い、うちの院長も台湾の実家が伝統的な中医薬局を持っており、そうしてノウハウはこの上海でも実現できる条件にありました。そうしたバックグランドは、我々医師にとっても、さらに患者さんにとっても非常に大きなメリットだと思います。

 いくら立派な腕を持っていても、生薬が出せなければ、力を発揮しようがないのです。

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 先日、浙江省杭州にある胡慶余堂に行ってきました。

 おそらく、中国国内では最も完全に保存された、そして今でも使われている最大規模の中医薬局だと思います。こうした薬局が、中国各地にあったからこそ、中医学が現在まで残ることができました。古い薬局といえば、北京同仁堂なども有名ですが、建物自体はもう取り壊されて残っていません。そういった意味でも、1874年に建設されたこの胡慶余堂は貴重なのです。
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 建物をみると、中国の古民家に興味のある方なら、安徽省の徽式の商家の作りと気がつくことでしょう。ものすごく背の高い土塀にぐるりと囲まれていて、正門から中にはいると、吹き抜けがある構造など、特徴的です。その造作は非常に細かく、彫刻などが美しい。中医学が、中国の文化の一部であることがよく分かります。

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 中医薬局のもう一つの大きな役割は、様々な処方を代々伝承していくという点です。我々が毎年冬に処方している膏方や、また患者さんの症状にあわして製作する丸薬や散剤など、これらは中医学を専門とする薬剤師さんたちが継承してきたものなのです。そうした技術は、中医薬局があるからこそいままで受け継がれていて、我々もいまこの場所で使っています。工業化されたエキス剤では、実現できない中医学の魅力でもあります。

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 胡慶余堂では、宋代の薬典『太平恵民和済薬局方』をベースにした処方を収集して製剤してきたと言われています。この本は、中医学史ではじめて国が定めた薬剤の書物で、中には297種類もの処方が掲載されています。今でも私も非常によく使う四君子湯や二陳湯、活絡丹や藿香正気散や失笑散などもこの本の出典です。 

 そんなことを色々思いながら、あらためてこの薬局の展示物をみると、なかなか興味深いです。薬局の2階には博物館もあるので、この胡慶余堂の歴史なども知ることができます。
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 21世紀になって、世の中は変化してきていますが、私も師匠から継承された中医学の知識をしっかりと育み、その足跡をまた次の代に残していけるよう、日々の臨床をがんばりたいと改めて思ったのでした。

 杭州にいかれたら、ぜひ寄ってみてください。

【データ】胡慶余堂 
住所:杭州市大井巷95号(呉山広場近く)
電話:0571-87027507
 
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2010年10月11日

上海でも増える精神疾患と中医薬(漢方薬)

 10月10日は世界メンタルヘルス・デー です。

 経済の発展の発展により、上海の人々の生活は物質的にも豊かになりましたが、精神疾患を患う市民が増えているのもまた事実です。上海市衛生局が行った上海市民2万人を対象とした調査では、なんとその五分の一で何らかの心理的障害があるということが分かっています。

 私も、臨床でストレス障害、うつ病、パニック障害、睡眠障害などの患者さんを診察してきました。上海市の調査にもあるように、罹患するのは女性よりも男性のほうが多く、とくに男性の場合は、アルコール依存症などお酒と関係のあるケースが少なくありません。もちろん、中には全くアルコールを飲まない人でも精神疾患を煩っている場合もあります。一方で、うつ病や心の焦りなどを感じて、精神的につらいと感じるのは、女性に多いと上海市のデータではありますが、臨床の現場では男女ともにみられます。

 さらに、慢性的な疾患を持っていて、それにこうした精神疾患とが合併してしまったケースも多く、そうなると発生リスクが2倍以上になるということも分かっています。

 精神疾患の分野でも、昔から中医薬(漢方薬)は広く使われています。そもそも鬱証という言葉は、中医学から来ているもので、気血が滞ってしまって、通じなくなってしまっているということを指します。生薬でも、精神を落ち着ける「安神」系の漢方薬として、珍珠母や磁石、生鉄落のほかに、様々な鬱証に対応する越鞠丸や四磨湯、さらに有名なところでは柴胡疏肝散といった処方もあります。そういったところからも、昔から人々を悩ませてきた症状であることには間違いありません。

 季節的な要因も多いと思います。秋口から冬にかけては、精神的に不安定になりやすく、コントロールが難しくなります。西洋医学の薬とも併用するケースもありますが、それでもなんとか精神的に安定した毎日をおくれるようにしたいものですね。
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2010年10月08日

中医学的ドライアイ対策

 秋が深まるに従って、乾燥を感じることが多いかと思います。皮膚の乾燥や、鼻の乾燥、さらに喉が渇きやすかったり、咳をしやすくなったりします。

 その中で、眼の乾き、すなわちドライアイの症状を訴える患者さんも少なくありません。特に、眼をパソコンなどでよく使うサラリーマンやOLなどにも多いわけで、中医学では津液の不足と関係があると考えます。アレルギー結膜炎など慢性的な結膜炎やウイルス性結膜炎などの原因が排除されるのなら、季節的な影響でドライアイになることは十分に考えられます。

 となると、この秋の「燥邪」対策として、中医学的な治療も効果を発揮できます。例えば、梨やブドウなどの果物の摂取も、陰を補うという観点から効果がありますし、ビタミンAやビタミンEの摂取も効果的でしょう。中医薬(漢方薬)では、白菊花や決明子、麦冬などを使いますが、lこういう場合は煎じるよりも、むしろお茶パックにしてしまうのもいいと思います。

 こうしたお茶パックは、もちろん症状にあわせて処方されていくのですが、いずれも、眼の疲れやドライアイにいいとされています。

 もう一つ、うちのクリニックなどでもやっているのが温めたタオルで、眼を温めてあげるという方法です。血液の循環を促進し、眼の周りのむくみや充血を改善させることができます。また、涙の分泌を促進できますので、眼の乾燥や不快感に有効です。自宅でも、寝る前に足湯と一緒にすれば気持ちいいと思います。ちなみに、このタオルは熱すぎないこと。40〜50℃が理想です。

 ちょっとしたことですが、工夫次第でいろいろ改善されると思います。
posted by 藤田 康介 at 07:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2010年08月21日

上海の中医学の婦人科

 上海の中医学にも様々な特徴がありますが、そこには流派が形成されたものも少なくありません。
 今でも、100年以上の歴史を持つ中医学の婦人科の流派は残っており、ざっと挙げてみても朱氏・蔡氏・陳氏・何氏など10あまりの流派が上海にあります。それだけ、昔から婦人科と中医学との関係は密接です。

 私も、日頃の診察で感じているのは、日本人・中国人に限らず、女性の生理に関する問題を抱えている方が増えているという点です。とくに、学歴が高くて収入が高く、仕事をバリバリとこなす女性に多く、調査では上海の女性の場合、生理不順のほか、生理痛を含む月経困難症などの諸症状を抱えている人の割合が、7割程度にも及ぶということです。背景には、様々な影響による卵巣の機能低下とも関わりがあるとも言われています。
 そうした中、ストレスが大きな原因だとも考えらていますが、流産の経験があったり、ダイエットをやったことがあったりすることとも関係があったりします。

 婦人科では、中医学や漢方医学の活用が有効なことが多いですが、十分な睡眠と、飲食のコントロール、心理的な安定など薬以上に気をつけないといけないことが多いことも忘れてはいけません。

 男性と比較して、体に対して様々な警鐘を感じやすいのが女性の体です。女性の方が寿命が長いのも、そうしたことと関係があるのかもしれません。
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2010年07月21日

中医学流の車酔い対策

 面積の広い中国で生活していると乗り物による移動は欠かせません。長距離でバスに乗ったり、数時間も電車に揺られるということも多く、乗り物に弱い人にとってはものすごく苦痛です。旅行に限らず、出勤するときの移動にも体の不具合を感じる人もおられました。狭い空間に押し込まれて、渋滞に遭ってしまうと、体の調子が悪くなるというケースです。先日も、そういった症状でうちのクリニックにこられ、比較的うまくいった症例もありました。

 しかし、2〜12歳ぐらいの子どもでよく発生する車酔いに対して、抜本的な解決法があるかというと、西洋医学でもまだ完全とは言えません。一般的に、ニオイや情緒、睡眠不足に疲労、食べ過ぎや飲み過ぎ、過度な空腹なども関係があります。中国人の皆さんと車に乗ったとき、真冬でもよく窓を開ける人がいますが、これは車内の換気をよくして、車酔いを防ぎたいという観点からの行動が多いようです。
 そもそも、中国が車社会になったのはここ数年の話で、多くの大人は小さい頃に乗り物にのるチャンスが多くありませんでした。そのため、酔いやすい傾向にあるように私は思います。

 西洋医学の酔い止め以外に、中医学的な車酔い対策はないものでしょうか?

 一番メジャーな酔い止め(嘔吐止め)は、やはり生姜です。予防としては、中医整形外科でつかう様々な軟膏(上海では普通に薬局で市販されています)に生姜を一切れ貼り付け、さらにおへそに当てます。そして、腕にあるツボでもある内関穴にも軟膏を貼っておき、手で押さえます。もうだめだ!というときには、生姜を口に含むのもいいです。生姜は、中医薬のなかでも嘔吐を止める作用が最も強い生薬の一つなのです。

 もう一つの方法。これは、私の義母から教わったのですが、ミカンの皮を使います。車に乗る30分から1時間前から、ミカンの皮を外側が外にでるように折り曲げ、鼻にその香りをかかせます。ミカンの皮である陳皮は、薬膳でも使われる漢方薬・生薬ですが、お腹の気の巡りを整えてくれる作用があります。そういったことを含めて、鼻につけて香りを感じることは効果的だと思います。

 上海の著名な医学者である秦伯未先生が書かれた『中医臨証備要』という本は、私の愛読書の一つなのですが、ここにも、車酔いの処方があるのですが、そこには人丹が紹介されていました。(仁丹ではありません。。。)中には、丁香や小茴香、乾姜、陳皮、肉桂などが十数種類の生薬が使われています。

 そのほか、すっとするメンソレータムのような軟膏を使って、こめかみにある太陽穴、首にある風池穴などのツボに薄く塗り、頭をすっきりさせるのも車酔いの予防に効果があるといわれています。

 いろいろな方法があると思いますが、それなりの効果が期待されていますので、ぜひお試しを。
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2010年06月30日

上海市が発表した中医学が優勢とみられる17の科

 上海市内の各病院では、様々な特色のある科があります。その中で、どういった特色があり、どういう専門家がいるのか、といった情報が不足しており、上海市衛生局で整備していました。

 判断基準として、40年以上のキャリアのあるベテランの中医師と呼ばれる老中医がおり、さらに治療技術が確立されていて、特色有る診療技術が2種類以上もしくは特色ある処方が1種類以上あるような医療機関が指定されました。

 病院別にみてみると、なんと私が所属していた上海中医薬大学付属竜華病院の腎臓内科が指定病院に入っていました。(少し嬉しかったです!)そのほか、竜華医院では、中医リウマチ科・中医潰瘍性大腸炎科が特色ある科に指定されていました。

 上海中医薬大学付属曙光病院では、糖尿病専科・針刺麻酔、額用病院では脳血管病科、痛風、逆流性食道炎が入っていました。上海市中医院では、睡眠外来が特徴有るといわれていますし、喘息治療も有名です。上海市第六人民病院では、電気針を使った椎間板ヘルニアの治療、第九人民病院では、中医学を使った傷口の治療、腫瘍病院では中医学と西洋医学を使った膵臓癌の治療が有名です。

 また、華山医院では、こちらも西洋医学と中医学をつかった喘息の治療、さらに中医学を使った脳卒中の治療では、中山病院も有名です。普陀区中心医院では、悪性腫瘍の患部にカテーテルを入れ、その管を使って生薬を注入する治療法も特色有る治療法として紹介されています。

 私の中医学の師匠でもある竜華医院腎臓内科の陳以平教授は、冬虫夏草とその菌糸を使った慢性腎不全の研究を1980年代に行い、今では中国の臨床で広く活用されています。

 逆にいうと、こうした疾患は中医学の力を発揮できる分野でもあり、これからさらに研究が進むものと期待されます。地道ですが、探求をすすめていくしかありません。でも、こうして治療効果が整理されていくことは、我々臨床家にとっても非常に嬉しいことでもあります。
posted by 藤田 康介 at 17:54| Comment(2) | TrackBack(1) | 中医学の魅力