2010年12月01日

羚羊角

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 動物の角は、立派な生薬でして、鹿の角などは非常によく使われます。そんな中、上海ではまず手に入らない羚羊角(レイヨウカク)が、杭州の胡慶余堂にありました。

 羚羊角は、羚羊と呼ばれる牛科の動物の角なのですが、新疆ウイグル地区や甘粛省、青海省に生息していて、この角をスライスしたものです。生薬として使うときは、粉にして直接頓服(0.3-0.5g程度)することもあります。私も、水牛の角は時々使いましたが、羚羊角はなかなか使えません。

 羚羊角は、身体を冷やす力が強く、解熱や解毒の作用があり、高熱による痙攣や意識障害が出てきたときに使いました。以前は、白虎湯に羚羊角を入れることで、温病(熱性の伝染病)での高熱や意識障害の治療で使ったようですが、最近では羚羊角自体が手に入りにくく、そういう使い方はしなくなりました。

 ただ、肝陽上亢系の高血圧や、不眠症、眩暈(めまい)や目の腫れや痛みにも効果があり、黄芩や決明子、竜胆草など肝系の生薬と併用します。また、妊娠高血圧症候群(中医学では子癇といいます。)や癲癇(てんかん)の治療にも使われました。結局、肝に関係する証では、非常に大切な生薬だったようですが、上海では殆ど手に入らないので、実際に使うことは難しいです。
 こういった使えない生薬は最近増えていて、犀角(サイカク クロサイの角)なんかもそうです。動物の保護と、生薬の薬効の問題の解決は、永遠の課題でもあるのです。
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2010年11月20日

桔梗と人参

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 うちの中医クリニックの薬局のスタッフに、中国の東北地方出身のがいるのですが、先日、お土産に生薬でつかう人参を買ってきてくれました。この時期、私も処方で使うことがありますが、肺や脾を補い、喉の渇きを抑え、精神を落ち着かせてくれるなどの作用があり、体を元気にしてくれます。ただ、決して安いものではないので、野山参となると、数千元〜数万元するようなものもあります。

 そこで、巷などでは人参を模して、桔梗の根っこを並べているところもあります。生薬の知識がなければ、いとも簡単にだまされてしまいます。

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 これが桔梗の根っこです。韓国料理などでもキムチで桔梗の根っこを使ったりしますが、じつはこれも立派な生薬です。喉の痛みや咳にも使いますし、上に向かう性質を利用して、桔梗をすこし処方に加えることで、薬効が体の上部にも行き渡るようにします。(中医用語で、「引薬上行」といいます。)

 さらに、肺と大腸は表裏の関係でつながっているので、慢性や急性の胃腸炎や下痢の治療でも使います。肺と膀胱との関係から、尿の出が悪いときにも使います。

 でも、人参のように体を元気にするパワーは、桔梗にはあまりありません。値段も全然違いますしね。

 生薬は普通の人が外観をいただけで区別できないものが少なくないので、注意が必要です。
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2010年11月17日

鹿児島天野屋さんの葛

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 11月初旬に、学術大会の関係もあり、鹿児島を訪問していたのですが、そこで教えていただいた葛の専門店「天野屋」を訪れてきました。鹿児島県垂水市の名産物で、この薩摩の国の周辺で自生する葛根を原料にしていて、いま日本では殆ど手に入れることが難しい珍しい本葛です。
 「天野屋」さんのお話では、最近、日本ではインチキ葛粉が多く、ジャガイモやサツマイモのデンプンを混ぜたりしていることが多いのだそうです。白い粉を作り出すには、良質な水も必要で、この垂水市付近には名水も多く、精製するのには好都合だということでした。

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 中国の中医薬局でよく使われている葛根はこんな感じです。精製する前ですから、現物がはっきりと分かりますね。中医学では発熱のある風邪や頭痛、下痢、解熱、麻疹の初期などにも使われるのですが、こうした効能からも、日本で葛根湯が使われる守備範囲が広いことが分かります。

 葛自体だと、カゼや下痢、食あたり、肩こり、中耳炎、神経痛、扁桃腺炎、最近では糖尿病の治療、アレルギー関係、アトピーなどでも使われます。高血圧が原因の頭痛や、耳鳴り、突発性難聴などでも処方されることがあります。ただ、一般的には他の生薬と配合することが多いです。

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 いずれにしろ、こうした天然の食材が鹿児島で手に入るのは結構なことです。薬草にはまだまだ秘められた力が沢山ありますからね。

 ちなみに、中医学での葛の花は、お酒の飲み過ぎに、腹部膨満感や食欲不振などで処方します。
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2010年10月23日

骨粗鬆症に山査子

 中国上海の華東師範大学で、山査子やオリーブに含まれるマスリン酸(Maslinic acid)は、癌を抑える作用があるとして有名ですが、この成分が骨粗鬆症の抑制に効果があることが分かり、2010年9月の『Journal of Bone and Mineral Research』で発表されています。

 山査子は、私もよく処方する生薬(漢方薬)ですが、非常に酸っぱい味がします。リンゴのような歯ごたえもありますが、私も山査子を想像するだけで、口の中の唾液が出てきそうです。

 主な効能は、胃の酵素の働きを高め、肉類など脂っぽいものの食べ過ぎ時の消化吸収を高める作用や、腹部膨満感、下痢の治療にも使います。また、赤い実から想像できるように、中医学の「血」と非常に関係があり、子宮を収縮させる作用があることから、産後の腹痛や月経痛などの治療にも使います。近年では、高血圧や高脂血症や高尿酸症の治療でも威力を発揮しています。とくに、メタボの治療には欠かせません。

 研究では、閉経後など更年期の女性に多い骨粗忽症での破骨細胞の活動の活発化に対して抑制する働きがあるとしています。骨粗鬆症を治療する西洋薬には副作用も多いため、こうした生薬の活用が期待されています。

 中医学(漢方)の世界では、極めてよく使う生薬の一つだけに、食用や飲用されることも多く、今後の研究成果が期待されます。
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2010年08月19日

生薬の流通と価格の問題

 中医学をやっていて、何かと気になるのが中医薬とも呼ばれる生薬の流通と価格の問題です。都市化してしまった上海エリアは残念ながら豊富な生薬資源があるわけでもなく、また、地域によって生薬の特産が異なるため、中国各地から輸送されてきます。私たちのクリニックにとっても、生薬の動向はやはり気になります。
 
 たとえば、上海周辺では杭州周辺で収穫される杭菊花なんかが有名ですね。風邪の初期や頭痛、目の充血や解毒、皮膚炎などの治療に使うのですが、こういった生薬は農作物であるだけに、天候や市場の動向に値段が大きく影響をうけます。

 最近では、太子参の値段の動向が大きい。不眠症や虚弱体質、食欲不振、健忘症、夏ばて対策などに使われることが多く、中医学的には気や陰を補う作用があることから、子どもの疾患にも便利で、長引く咳の治療にも使えるのですが、これがいま値上がりしています。太子参自体、保存が難しい生薬の一つだけに、影響を受けやすい。

 太子参の産地は福建省柘栄や貴州省施秉などなのですが、干ばつと大雨の影響で50%近く減産となり、根ぐさりしてしまったものも出始めてしまっています。天候の影響というのは恐ろしいもので、予想がつきにくいだけにある程度覚悟はしておく必要があります。少なく見積もっても、中国全国で30%程度の減産となり、2010年の収穫高は3500トン前後になりそう。

 一方で、雲南省・四川省・貴州省などの山地が産地で、「金不換」という異名をもつ貴重な生薬の一つでもある田七。痛み止めや血の巡りをよくする活血の作用があり、重宝します。三七とも呼ばれますが、3〜7年間栽培されたものが良いとされているため、長いスパンでの栽培となります。ところが、全国で97%の三七を栽培している雲南省で大干ばつ、こちらも価格が上昇しており、在庫もだんだんと底をつき始めています。となると、必然的に値上げです。

 さらに、最近心配されているのが余った資金が生薬市場に流れ込み、投機的な値段変動を起こすのではないか、という点です。そうなると、金儲け目的の値段変動となり、ますます頭が痛い。

 大都市・上海で生活していると、こうした自然の変化に対して鈍感になってしまいますが、中医学や漢方そのものは、自然と密接な関係があるため、私もある日、この地球の変化にはっと気がつかされる思いをします。
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2010年07月08日

シコン(紫根)の写真

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 なぜか日本で話題になっているシコン(紫根)のお話の続きです。昨日のお話は、こちらからご覧ください。 

 お約束通り、シコン(紫根・中医学や漢方では紫草・紫草根)をうちの上海鼎瀚(ていかん)クリニックの生薬薬局から分けてもらいました。

 色は、非常に濃い紫。あまり香りはしません。
 ところが、少しお湯に溶かしてみると。。。

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 このように、しっかりと色が出てきます。茶色と紫を混ぜたような感じです。予想通り味は苦くありませんが、まさに生薬の味でした。お湯に溶かしただけででもこれだけ色が出るわけですから、煎じるともっと出てくることでしょう。

 この色からも「血」に効能が入り込むことが分かります。
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2010年07月07日

シコン(紫根)

 今日のクリニックで、3人もの患者さんにシコン(紫草)について聞かれました。えらい専門的な質問だと思ったら、どうやらテレビで紹介されたようです。

 せっかくなので、皆さんにお見せしようと思い、うちの薬局にお願いして中医学としてのシコンの写真を後ほど掲載しますね。日本名ではムラサキともいいます。

 シコンは、中医学・漢方の世界では紫草根もしくは紫草といいます。なんてことない、うちの皮膚疾患の患者さんにはよく使わせてもらっています。とくに、アトピー性皮膚炎や湿疹の皮膚が多少赤みがかった場合、皮膚の痒みや解毒などに一定の効果があり、うちの薬局でも外用薬や内服薬によく使います。

 外用薬の代表的な薬としては、紫雲膏があります。皮膚の潤しにも使える、中医学・漢方の世界では常用される外用薬の一つです。

 中医学的な効能は、涼血活血透疹・解毒療瘡です。外用にする場合は、ごま油やワセリンを使ってつくります。内服では、はしかの治療にも使ったりしますし、泌尿器関係では、血尿の治療に白茅根などと一緒につかいます。

 ただし、性質が甘・寒ので、胃腸が弱い方は内服時は要注意。とくに下痢気味の方は注意が必要です。
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2010年07月03日

補陽還五湯と脳梗塞(脳卒中)

  清代に王清任(おうせいれん)という著名な中医学者がいるのですが、中医学や漢方の世界では、益気活血という血の巡りや気の巡りをよくする治療法の研究で大きな成果をあげています。

 その王清任が作った有名な処方に「補陽還五湯」というのがあります。中風(いわゆる脳梗塞)の後遺症に使うのですが、この方剤の組み方には非常に大きな特徴があります。気を補う黄耆(オウギ)という生薬を120gも使い、当尾(当帰の先の部分)が6g、赤芍(セキシャク)が6g 地龍(ミミズです)が3g、桃仁(トウニン)が3g、紅花が3gとなっています。黄耆(オウギ)の使用量が、他の5つの使用量総和の5倍という構造です。
 
 気や血を補う代表処方に当帰補血湯という処方もあるのですが、こちらは黄耆(オウギ):当帰が5:1で、黄耆を使う量が30g程度なので、補陽還五湯における黄耆の量の多さは際立っています。

 ここには、「気」をしっかりと補うことで、血の流れを促進させるという王清任の思想があると思います。単に血の流れを促進させるだけでは、意味がないわけで、血の滞りを通すには、まずは血の問題を解決するべきであるということです。

 この処方の適用範囲としては、半身不随や手足のしびれ、言語障害、口角からよだれが流れる、半身不随、頻尿や失禁の治療に使います。

 前置きが長くなりました。

 実は、上海市でこの補陽還五湯を使った処方で、初回の脳卒中の予防に対して、西洋医学で広く使われているアスピリンよりも効果が高いというデータが発表されていました。その結果、補陽還五湯が脳梗塞の発生率を50%さげることができるとし、The Cochrane Libraryの電子版に紹介された模様。

 上海市では、1999年〜2001年にかけて市内南匯区の70万人の住民を対処に実験を行ったところ補陽還五湯が脳梗塞に効果があることが分かり、さらに2003年〜2006年にかけて上海脳血管病防治研究所と復旦大学と共同でRCTを行い、その効果を再確認したようです。

 補陽還五湯は、EBM(Evidence-Based Medicine)によって、脳梗塞の予防が可能であると証明された初めての処方とも言われています。

 名処方だけに、今後もいろいろな研究成果が期待されると思います。
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2010年07月01日

忍冬藤

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 7月に入りました。7月こそ、『我が愛しの上海へ・2』の毎日更新がんばります!書きたい中医学や漢方のネタは沢山あるのですが、なんせ原稿の締め切りに追われていて。。。。

 私も、日頃の臨床で補助的治療の目的で、様々な生薬茶の飲み方をお勧めしていますが、私自身も夏に入ると、色々なお茶を試しています。この時期、我が家で登場するのが「忍冬藤」です。早速、うちの薬局から分けてもらいました。

 忍冬藤(にんとうとう)は、金銀花(スイカズラ)の茎・葉っぱで、日本では忍冬(にんとう)とも呼ばれています。金銀花は、最近、値段が高騰している生薬の一つなのですが、清熱解毒作用のある生薬で、各種皮膚疾患の腫れや解毒、急性の下痢、インフルエンザの治療などでも使います。忍冬藤の成分は、金銀花とほぼ同じなのですが、茎類の特徴として、関節リウマチや膠原病の「熱性」の痛みなどにも使います。
 あまり知られていませんが、実は皮膚の痒みをとる作用もあり、汗疹やアトピー性皮膚炎の治療などにも私は使うこともあります。

 苦い、苦いといわれる生薬ですが、この忍冬藤は、決して苦すぎることはなく、ほのかな苦みとちょっとした甘みがあり、夏にはぴったりの味だと思います。
 
 もちろん、冷蔵庫に入れずに常温で飲んでいます。 
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2010年06月20日

棗(ナツメ)の花

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 6月22日〜23日と江蘇省揚州市に往診に行ったのですが、そのときに宿泊したホテルで見つけた棗の木。

 季節柄、棗の木にしっかりと花が咲いていました。

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 棗の実は、中医学や漢方の生薬の中でも最もよく使う生薬の一つで、処方しない日はないぐらいです。胃腸が弱いとき、倦怠感があるとき、顔色が良くないとき、特に女性にはお勧めで、生理の量が極端に少なかったり、生理が遅れたりするときに私はよく使います。

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 これに、生竜骨や生牡蠣(貝殻)を組み合わせて、精神を安定させ、イライラを解消させたりする作用もあり、更年期障害にも使います。

 さらに、忘れてはならないのが生姜との組み合わせ。胃腸の働きを整え、食欲を増進してくれるはずです。

 中医学や漢方医学には欠かせない生薬なのです。

 将来、田舎に家を建てたら、庭に絶対植えたり木の一つですね。
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2010年04月27日

干ばつの影響

 雲南省や四川省で深刻な干ばつになっていることは、ニュースでも話題になっていますが、上海で生活している限り、あまり気がつきません。しかし、中医学や漢方の世界では、じわじわと影響が出始めています。農作物でもある生薬の値段が、明らかに上昇し始めているのです。

 中医薬の値段の変動は、伝染病の流行などとも関係があり、例えば新型インフルエンザの流行のときもそうでした。抗ウイルス作用があるといわれている清熱解毒系の生薬が高騰、金銀花が4倍以上に、板蘭根も4倍以上に値上がりしました。しかし、今年は流行が落ち着いたあとも値上がりが落ち着きません。

 その最大の理由が、干ばつによる天候不順です。今では、山査子なども値上がりしています。

 とくに、四川省や雲南省が特産地である天麻・田七・紅花の値上がりが顕著です。田七は2年かけて収穫されるので、深刻な影響が出てくるのには、もう少し時間がかかりそうですが、それでも5倍に値上がりしています。
 田七は臨床ではあまり使わないかもしれませんが、紅花はそうは行きません。活血化瘀作用のある生薬として日々よく使うだけに、紅花が倍以上に値あがるのはきついです。こちらは、雲南省の干ばつの問題以外にも、新疆エリアの大雪の影響もでています。

 生薬を取り扱っている以上、天候との駆け引きは致し方ありませんが、生薬市場の動向が気になる今日この頃です。
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2010年03月21日

私の今年の花粉症対策

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 私の場合、20代〜30代にかけて殆ど上海で生活しておりますので、日本のいわゆるスギ花粉症とはほぼ無縁な状態なのですが、でも春先は学会が多く、日本に戻ることが少なくありません。日本に戻った時用に、いろいろ花粉症対策を考えております。

 私は子どもの頃は全く花粉症はありませんでしたが、30代に入ってからひどくなってきました。日本に戻ると、関西空港の連絡橋を渡る時から、主な症状は、鼻づまり、鼻水、くしゃみが出てきます。たまに眼が痒くなってくることもあります。奈良の実家に戻ると、全面発症になります。

 というわけで、春先に日本に戻るときには、私も自分自身で様々な中医薬を処方しております。出張で移動することが多いので、煎じ薬は何かと不便ですので、前回の日本帰国時は錠剤を処方してみました。

 鼻づまりに効くと言われる生薬は色々あります。モクレンやコブシの蕾の辛夷、白芷(ヨロイクサ)、蒼耳子(ソウジシ)なんかがそうです。これら生薬は、副鼻腔炎、蓄膿症などにもよく使われ、中医学の耳鼻咽喉科ではよく登場します。

 上海で売られている錠剤や顆粒では、辛芩顆粒が代表選手です。成分は、細辛・黄芩・蒼耳子・白芷・防風・菖蒲・白朮・桂枝・黄耆・荊芥です。鼻水が出やすい人、くしゃみが出やすい人、特に透明な鼻水の場合はお勧めです。黄色い鼻水は適応症ではありません。

 あと私の場合は藿(カク)胆丸を組み合わせています。藿(カク)香と豚胆粉が主成分です。こちらはどちらかというと、ねっとりとした鼻水の場合に使います。暑がりの熱系の場合で、胆経に熱が貯まっている場合が適応症です。

 そのほか、鼻詰まり時の応急処置用として、鼻淵膏(鼻淵とは中医学では副鼻腔炎、蓄膿症のことを指します)、鼻炎貼を使います。寝る前に、ツボに鼻炎貼をはると鼻の通りは良くなります。

 これで、今年の3月中旬の日本行きは乗り切れました。今年は、3月下旬にもまた日本に飛びますので、私の鼻炎セットをもって行こうと思っております。

 いずれの薬も、根本的な治療ではなく、症状を緩和するためのものですので、長期の服用はお勧めしませんので、ご注意ください。中国におられる方は、かかりつけの先生とご相談ください。

 花粉症には、やはり日ごろの体質改善も大切です。運動・ストレス・食生活がキーワードです。特に、食生活が乱れている人、肥満体質の人はそのあたりから調節していきましょう。太っている人は、水の代謝がよくなく、痰湿が発生しやすい体質のことが多いですので、鼻炎の症状が発生しやすくなります。
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2010年03月06日

ワレモコウ(地楡・チユ)

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 今日はあいにくの雨の上海でしたが、スーパーにいくと、珍しい薬草を見つけたので、思わず買ってしまいました。薬草といっても、中医学や漢方の世界ではよく使うのですが、まさかスーパーに売っているとは。。。

 今日見つけたのはワレモコウで、生薬名では地楡といいます。日本でも道草に生えていることがあります。臨床では一般に15g〜30gの量で使います。ヨーロッパではハーブとしても使われ、紫色の特徴的は花を咲かせます。生で食べても、すこし苦いぐらいで、食べられない味ではありません。

 中医・漢方での効能は、涼血・止血、解毒などがあります。止血でよく使われ、喀血や赤痢(血痢)、血尿、鼻血、月経過多、痔による出血にも使えます。これらの出血に共通しているのは、色の鮮やかな血です。しかも、どちらかというと下焦(下半身)の出血に効果があります。

 そのほか、解毒瀉熱作用としては、湿疹やアトピー性皮膚炎などで、特に皮膚の赤みが強く、浸出液が多い場合などによく使います。この場合は、外用でも使います。隋〜唐代に孫思邈(ソンシバク)によって書かれた『備急千金要方』に、子どもの湿疹を治す処方として、外用の地楡が紹介されていました。現在では、苦参と地楡を煮詰めてそのエキスをガーゼにしみこませて、患部に貼る方法もあります。

 地楡はさらに面積が小さいやけどの治療にも使います。(やけどの面積が広い場合は使えません)ごま油に地楡の粉を混ぜ、患部に塗ると浸出液を減らし、患部の痛みを和らげることができます。いずれも昔の人たちの経験です。

 さて、我が家でもこの地楡を料理に使おうと思っていますが、味を確かめていると確かにサラダにあいそう。香菜と混ぜてもいいと思います。いざ、医食同源!!
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2010年01月27日

蕺(ドクダミ)魚腥草

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 先日、上海浦東新区陸家嘴にある正大広場のLotusへ行ったとき、たまたま見つけた蕺(ドクダミ)の根っこです。思わず買ってしまいました。
 中国語では、「魚腥草」といいますが、「蕺菜」で通じることもあります。野菜として根っこを使いますが、(場合によっては葉っぱを生で食べることも)中医学や漢方の世界では、生薬としてドクダミ全体を使います。

 その独特なニオイから、魚腥草ともいわれていますが、決して臭いわけではなく、私はむしろ好きです。葉っぱに関しては、紅茶のようなニオイがするという人もいるぐらいです。

 臨床では肺の疾患で使うことが多いです。最近、あまり見かけませんが、もともとは肺膿瘍の治療で使われました。そのため、効能には清熱解毒のほかに、排膿というのもあります。ただ、清熱解毒といっても決して苦寒系の生薬のように体を冷やし過ぎることもなく、適度に辛系であることは特徴でもあると思います。ある意味、使いやすい生薬ですので、生薬茶などにも私はよく使います。

 さらに、忘れてはならないのは利尿作用と通淋作用です。腎臓結石などの治療にも使え、金銭草や石韋、海金沙ともよく組み合わせます。

 こうしたニオイの強い生薬は、有効成分に揮発油が含まれているので、あまり煎じすぎないこともポイントです。だから、お茶方式で服用するのが効果的なのです。

 最近では、肺炎や急性気管支炎・慢性気管支炎でも使われています。結石などの治療にも使えるので、尿路感染などにも使います。抗菌作用の範囲が広いので、感染症に一定の効果があるだけでなく、免疫力も高めてくれるところはいいですね。

 腫れ物の治療には、野菊・蒲公英などと組み合わせて、外用することもあります。

 ドクダミですが、いろいろと便利に使える生薬の一つですね。
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2009年12月27日

風邪かなと思ったら。。。。

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 どうでしょう?皆さん風邪かなと思ったら、ご自宅にどのような常備薬をお持ちでしょうか。

 私も患者さんといろいろ交流していると、日本人の場合、圧倒的に多いのが葛根湯(葛根5.0;麻黄・大棗各4.0;桂枝・芍薬・生姜各3.0;甘草2.0)。これは完全に日本漢方と中医学との違いともいえる発想と思うのです。
 もちろん中医学でも葛根湯は使いますが、日本のようにガンガン使うことはありません。
 その証拠に、中医学の本場の上海に来られても、葛根湯は自分で処方でもしない限り簡単に手に入りません。

 では、中国人の患者さんに同じような質問をすると、よく聞かれるのが「午時茶」。あ、某飲料メーカーが作っている「午後ティー」じゃあありませんよ。

 ティーパック型の中成薬として売られていることが多いですが、中身は蒼朮・柴胡・羌活・防風・白芷(ビャクシ)・川芎(センキュウ)・藿香(カツコウ)・前胡・連翹・陳皮・山査子・枳実・麦芽・甘草・六神曲・桔梗・紫蘇・厚朴・紅茶となっています。

 紅茶もちゃんと入っているんですが、生薬がこれだけ入っているとさすがにおいしいものではありません。

 効能は解表和中で、主に風邪のなかでも寒系の風邪に使うことが多いです。風邪で下痢など胃腸の調子が悪いときも使えます。解表なので、どちらかというと風邪の引きはじめが良さそう。

 市内の薬局で普通に売っていますので、自宅に一つ常備しておくと便利です。私は自分の体質的に午時茶派ですね。
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2009年12月10日

生の当帰

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 上海聯洋住宅地にある我が家の近くに、知らない間にCity-Shopが出来ておりました。最近、上海の町歩きどころか近所歩きもあまり出来ていないので、全然気がついていなかったのですが、早速探索に出かけました。この日、そこの野菜売り場で珍しいモノを発見しました。

 そうです。「生の当帰」です。「当帰(トウキ)」は、中医学だけでなく、日本の漢方薬の世界でも非常になじみの深い生薬で、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などの名前でご存じの方も多いはず。

 薬用酒などにも使いますし、薬膳の食材としても欠かすことができません。揮発性の油脂分も含み、独特の香りがありますが、この香りの好き嫌いでは、意見が分かれると思います。

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 さて、野菜売り場に当帰が売られていたということは、そうした需要があるからというわけですが、生薬で使う当帰は乾燥した薬材が中心ですので、こうして生でお目にかかることは滅多にありません。しかも、ご丁寧に当帰の根っこの頭の部分、体の部分、しっぽの部分まで3カ所に分けてパックに詰められています。なかなかやるな、と思いました。

 『本草綱目』の当帰の項目に記載があるのですが、頭は止血作用があり、薬効は上方向のベクトルですが、体の部分は養血作用があり、血を補って養う一方、しっぽの部分は血の巡りをよくする活血作用が強く、下向きのベクトルに作用するといわれています。ただ、臨床では全当帰と書いて、当帰全体を使うことが多くなりました。

 当帰は女性の疾患によく使います。補血や活血止痛、さらに潤腸などが主な効能なので、生理不順や月経困難症、便秘にもいけます。
 
 この場合の便秘への作用ですが、下剤として使うのではなく、あくまでも潤しです。特に、高齢者に多い腎虚や血虚による便秘では、使うことが多いです。とすると、この「潤し」がある種の皮膚問題にもいいことがわかります。そうです。美容の世界でもよく使う生薬の一つでもあるのです。

 当帰と黄耆(オウギ)という生薬はよく一緒に使うのですが、そうすると血と気を両方補うことができるので、鬼に金棒ですね。

 血の巡りをよくする、いわゆる活血の観点から、当帰は整形外科の分野でも使います。たとえば、骨折やねんざ、鬱血、うちみなど活用範囲が広く、中医学では「続筋接骨」の作用があるとも言われています。

 ということは、外用にも使えると言うことです。
 アトピー性皮膚炎の治療でよく使われる紫雲膏(ゴマ油・蜜蝋・当帰・紫根・豚脂)なんかにもしっかりと当帰が入っています。アトピー治療に使う生薬膏薬は、私自身もいろいろ調合を検討しているのですが、やはり当帰は欠かせない薬材の一つです。

 当帰の薬膳と言えば、『金匱要略』に掲載されている当帰生姜羊肉湯が思いついてしまうのですが、名前をみるだけで温もりそうですね。「血虚内寒証」で使うのですが、今度ブログの薬膳のコーナーででもご紹介します。
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