2012年02月04日

生薬(漢方薬)を使った乳牛の乳房炎の予防対策

 生薬(漢方薬)を農業分野で活用する動きは、中国で以前からありましたが、上海では乳牛の乳房炎の予防に、抗生物質の代わりに中医薬を使う研究が行われていて、実用化のメドがついたようです。

 中国では、牛乳に対する安全性の問題が相変わらずくすぶっていて、消毒や殺菌のために、ヨードや抗生物質を使いすぎて残留量が基準値を超えてしまったケースが毎年発生しています。安全な牛乳を生産するためには、抗生物質を極力使わないようにすることが必要です。そこで、中医学で使われる生薬を活用しようというわけです。 
 
 中国の酪農の中で、乳牛が発症する病気のなかで最も多いのが乳房炎で、万が一発病すると牛乳の質が低下します。そのため、酪農家は飼料のなかに抗生物質をいれたりして対策をすることが多いようです。そこで上海大学と徳諾公司では生薬のなかから抗菌作用の強い物を選び出し、蛇床子・青蒿・金銀花・柴胡などの生薬から有効成分を抽出してA液とB液の2種類の消毒液を開発しました。A液は採乳前の消毒に、B液は採乳後のケアに使うとのこと。これにより、殺菌消毒効果は8時間に達し、採乳前の感染を防ぐことができたということです。

 こちらの報道では、すでに上海市内の酪農場で乳牛200頭に実験されていて、生薬を使ったグループとヨードをつかったグループにわけて対照実験をしたところ、搾乳前後の原乳の体細胞の比較で、4週間後には正常値になったということです。中薬による消毒が、ヨードの代わりになるかは今後の研究成果をみてみないといけないですが、ヨードは牧場付近の水汚染リスクもあるため、生薬を使った消毒に期待が高まっています。
posted by 藤田 康介 at 08:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2012年01月28日

生薬のビニール袋

 中医薬(漢方薬)を処方するときに避けて通ることができないのが生薬を処方箋にあわせて分配する作業です。今までは、天秤を使ってそれぞれ単味の生薬を日数分に掛け合わせて量り、それを薬剤師さんの目分量とカンで分配していました。しかし、全くの手作業なので、時間がかかります。また、調剤しているときにボロボロとこぼれている生薬も少なく無く、効率がよくありませんでした。

 そこで、近年、上海の病院などで導入されているのがビニール袋に小分けにして調剤する方法です。あらかじめグラム単位で袋詰めされていて、それを処方箋にあわせて組み合わせるというものです。上海中医薬大学附属竜華医院など中医系の大病院では導入されていて、比較的先進的な方法として当時は評価はされていました。2008年8月には中国国家中医薬管理局からその方法が制度化され、2009年4月には市内8箇所の医療機関で実施されてきました。しかし、これも近年問題が指摘されています。

 まず、患者さんが持ち帰った生薬の袋を全部開けてからではないと煎じることができません。仮に、1日分で15種類の生薬を処方したのなら、最低でも15種類の生薬袋を破らなければいけませんし、中医薬局でも生薬を密閉した袋にいれて保管することは品質を保つという観点からも思わしくありません。また、ビニール袋削減に取り組んでいるさなか、買い物袋も中国では有料になっているのに、生薬のビニール袋が増えることは望ましいこととは言えません。

 中医医院にいく患者数が増える中、伝統的な方法では時間もコストもかかってしまいます。何らかの改良が必要なのでしょうが、とくに生薬の調剤に関しては、まだまだ工夫が必要のようです。
posted by 藤田 康介 at 20:32| Comment(1) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年12月17日

中医学の冬令進補・膏方の作り方

 慢性疾患や虚弱体質、さらに日頃漢方薬や中医薬を服用して、それをフオローする形で毎年冬場に処方されるのが膏方です。上海江南エリアの特徴で、私も大学院時代はよく師匠の膏方外来のお手伝いを毎年していました。

 膏方は飲みやすく、さらに効果が比較的マイルドなので、子供から高齢者まで重宝されています。一通り、中医学を使って症状が改善され、処方が固まっている状態にも使えますし、上海の人たちの間では、冬だけ処方にこられるかたも多いです。私達の中医クリニックでも、この膏方の処方で忙しくなします。

 膏方は1ヶ月〜2ヶ月程度と比較的長期にわたって服用するものですので、まずは開路方から入ります。これは、その現在の症状にあわせ、膏方を導入するにあたって身体に合っているかどうかを再検討するための処方(煎じ薬)で、1〜2週間服用するのが一般的です。もちろん、今まで継続的に漢方薬を服用している場合は、そちらを参考にして検討します。こうすることで、膏方が身体にあわないようなことを極力避けることができます。

 そのあと、膏方の処方箋を考えます。

 膏方に使う生薬は、一般的に30種類以上。医師の考え方で決まってきます。ただ、私はあまり生薬量が多すぎる膏方は好きではありません。ある程度、目的がしっかりした膏方が処方できるように30種類程度で納めるように心がけています。(中国の患者さんの中では、多ければ多い方がいいという人もいますが。。)

P1000605.jpg

 膏方の処方箋(写真)は、患者さんに渡します。そこには、なぜこの膏方が作られたのか、どういう弁証になっているのか、そして簡単な生薬の加工方法などの指示が記されていて、患者さんはまたつぎの年に膏方を処方するときの参考にします。有名な先生の膏方の処方箋は、毛筆で、さらに達筆でもあり、文化遺産として額に入ることもあるぐらいです。中医学の文化の一つだと思います。

 さて、この膏方ですが、通常の煎じ薬とはまったく違った煎じ方がされます。すこし前の上海地元の人たちなら、自分たちで膏方を作っていました。それぐらいメジャーなもので、上海エリア(江南エリア)の中医文化の特徴の一つです。私の妻の実家でも作っていました。

 まず、生薬を1日しっかりと水につけます。しっかりと水分を吸収させます。多少水を足した後、沸騰するまで強火で、水加減に気をつけながら、弱火で2-3時間煮込みます。銅の鍋(写真)をつかうのがよいとされています。

000000-2-6.jpg

 煮出した物を濾しながら別の容器に入れ、再度水を足して煮詰めます。これを4-5回繰り返すと、だんだんと煮出す物がなくなってきて色が薄くなってきます。

 煮詰めた生薬をしっかりと絞り出し、上記で煮出した煎じ汁を混ぜ、再び濾します。煎じ汁のなかに生薬の糟が完全になくなるまで濾し続けます。

 次に、濃縮の作業にはいります。強火で沸騰させたあと、しっかりと混ぜながら(焦がさないように)ドロドロになるまで煮詰めます。とろみが出てくるまで煮詰めるのがポイントで、以前見学にいった薬局では、人力でやっていました。今はかなり機械化されているようです。

 膏方には氷砂糖を使うことが多いです。私も処方するときに使っています。

 氷砂糖や黒砂糖を焦げないようにしっかりと撹拌しながら加熱し、上記の濃縮液と混ぜます。再び弱火でしっかりと煮詰めていきます。

 0012456.jpg

 以前、膏方は上記のようなツボにはいっていました。中医薬局にいくと、ツボが並べられていて、なかなか見応えがありました。ただ、それでは保管が不便なので、うちの中医クリニックもそうしていますが、下記のようなパックに詰められています。

000000-1-9.jpg

 これで、膏方の持ち運びや携帯がかなりラクになりました。

 私も、毎年自分の処方した膏方を味見しています。好みの違いもあるかもしれませんが、私は自分の処方に関しては比較的服用しやすいと思っています。

 服用方法は1日2回朝晩が一般的です。食前でも服用できますが、馴れるまではまずは食後から試してみる方がいいと思います。
posted by 藤田 康介 at 11:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年08月17日

生薬「六月雪」

0000.jpg

 「六月雪」」もしくは「六月霜」と呼ばれる生薬「劉寄奴」。美しい別名を持っていますね。

 夏に白い花を咲かせ、上海・浙江省・江蘇省など江南エリアで収穫される薬草で、破瘀通経・止血消腫・消食化積といった作用があり、走散止痛の性質から、中医学の婦人科でよく使われます。私の師匠も、生理痛や生理不順、さらに打ち身などの外傷でもよく使っていました。また、『本草綱目』にあるように、子供の血尿にも使えるので、腎臓内科ではよく登場します。さらに、前立腺肥大や泌尿器の結石による排尿障害にも使うこともありました。

 先日、浙江省を旅したときに、ある食堂で出されたお茶がまさに、「六月雪」でした。地元の人も、そう読んでいます。そのとき、なぜここの人たちがお茶代わりにこれを飲むのか、直ぐには反応できませんでした。実は、生薬、もう一つ忘れられやすい性質がありました。

 食積瀉痢・脘腹脹痛に対して、消食化積という効能。 

00012.jpg

 なるほど!食堂のおばちゃんに劉寄奴の乾燥した薬草を見せてもらったのですが、結構いい香りがするのです。いわゆる、醒脾開胃作用ですね。夏場の食欲増進に使えるわけです。いろいろ調べてみると、山査子や麦芽、青皮などと一緒に、もしくは単味でも使えることが分かりました。

 なかなか興味深い劉寄奴。

 こんなところで出会うとは思いもしませんでした。
posted by 藤田 康介 at 07:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年06月21日

単なるゴキブリと呼ばないで

00000-1-10.jpg

 薬草程度なら普通に受け入れられる漢方薬(中医薬)でも、昆虫となると一歩引かれてしまうことはよくあります。そのなかでも、ゴキブリも生薬になるというと、ますます「え〜!」といった感じになりますが、意外と使われていたりもします。

 例えば『金匱要略』に出てくる大黄䗪虫丸。ここに使われている䗪虫(しゃちゅう)とは、地鼈虫とも呼ばれ、シナゴキブリやサツマゴキブリのことを指します。(写真)

 非常に強い活血作用があり、中医学では「破血」ともいいます。瘀血が原因の生理痛や、産後の腹痛などにも使われるほか、あまり知られていないが整形外科の分野で使われる骨折による痛みの治療です。

 私も、頑固な偏頭痛の治療で、瘀血が原因と思われるケースには使うことがあり、なかなか良好な成果が出ています。ただし、妊婦さんには使えませんので要注意です。

 そのほか、肝硬変や心筋梗塞の治療にも使うことがありますが、日本ではなかなか手に入らない生薬だけに、日の目をみることはなかなかないでしょうね。私もいろいろな使い方を研究してみたいと思います。

 ちなみに破血作用のある生薬といえば、腎臓内科では欠かせない水蛭もよく使います。

 虫たち、ガンバレ!
posted by 藤田 康介 at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年06月20日

桑の葉

 我が家のベランダに、桑の木の鉢植えを置いてあります。

 0000-1-57.jpg

 はじめは1本の木の枝が立っている状態で、その後どうなるかと思いましたが、順調に葉っぱも出てきて、いま青々としてきました。

 桑の葉っぱは、生薬でもよく使います。

 代表的な処方では、風邪薬にも使う桑菊飲があり、発熱や頭痛、咳き、喉の痛みで使えます。さらに熱が原因の空咳や喉の乾燥にも効果的です。そのほか、肝陽上亢が原因の頭痛や眩暈(めまい)、頭のだるさなどにも使われ意外と活躍できる生薬だと思います。

 『本草綱目』では、毛が生えてくるという記載もあるのですが、これは本当かどうか。

 最近では、血糖値を下げる作用が注目されています。有効成分にある1-デオキシノジリマイシンの作用は日本でも知られています。肺系の薬草なので、消渇に効くというのはまさにその通りでしょうね。

 0000-2-1.jpg

 我が家では、喉の調子が悪かったりすると、コップにお湯を入れて写真のように飲みます。まあ、あまり美味しいものではありませんが。。。。
posted by 藤田 康介 at 12:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年06月05日

今更ながらヨモギのお話

0000-1-50.jpg 
(艾と菖蒲)

 2011年6月6日は中国では端午の節句。この時期、よく登場するのがヨモギ(艾・艾葉)です。キク科の植物で、葉っぱを生薬として使います。
 上海の街を歩いていても、菖蒲やヨモギを市場で買って帰っている人たちをよく見かけます。あの強烈な香りから、ジメジメした時期に邪気を飛ばす薬草として重宝されてきたのです。

 中医学的な効能は、消寒除湿・温経止血・止痒などが有名で、お灸の原料にもなります。中国の中医学や日本の漢方の世界では内服でよく使いますが、それ以外にも外用でも重宝します。私も臨床で、湿疹や皮膚の痒み、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹の外用薬を作るときに欠かすことができない生薬の一つになっておりますし、皮膚疾患の入浴剤としても非常にお勧めです。

 韓国の韓医などで「蓬蒸し」が一時期流行っていましたが、特に足浴には効果的で、疲労回復や不眠などのほかにも、殺菌作用が強いことから水虫や足のにおいの予防などにも使えます。婦人科では、冷え性の方の生理痛や月経過多などにも使えます。

 精油が有効成分で、その50%以上がシネオールと呼ばれる精油です。こうした精油が香りとして鼻から入ってくると、殺菌作用も期待され、特に子供の皮膚などにも優しく作用してくれます。

 中国では、今から3000年ぐらい前の殷の時代から艾葉は薬浴として使われてきました。湖北省では、子供が生まれたら3日間は艾風呂に入れる習慣もあるそうです。端午の節句の艾風呂である「蘭湯沐浴」の習慣だけではなかったのですね。

 日本ならどこにでも生えているヨモギですが、残念ながら上海ではあまり見かけません。こういった薬草もうまく活用したいところです。
posted by 藤田 康介 at 06:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年06月02日

人工栽培の冬虫夏草を使った研究

 上海市の農業科学院が研究を行っている、冬虫夏草の仲間である北冬虫夏草に関して、濃縮精油を抽出することに成功し、近い将来に製品化される可能性が出てきました。今年5月24日に上海市から発表された結果です。

 冬虫夏草を慢性腎不全や肝硬変の治療に使うことは、1980年代から中国ではよく行われていきました。論文も多数発表されてますが、冬虫夏草は高価な生薬であるため、また環境破壊に問題もあり普及には問題がありました。その後の研究で、癌の予防や治療、脂質異常、喘息などの改善にも使えることが分かってきています。

 いわゆる西蔵や四川省で収穫される真菌と昆虫が合体した冬虫夏草の栽培は成功していません。しかし、北冬虫夏草の研究では、上海市農業科学院が栽培に人工成功しており、さらに両者の有効成分がほぼ同じであることも分かってきて、より使いやすくなる可能性が出てきました。

 さらに、ステロール化合物や不飽和脂肪酸、アデノシン、ビタミンEなどの活性有効成分を抽出する技術に関しても、産業化できるメドがたったということです。今後は、医薬品としての研究開発が進められると思います。
posted by 藤田 康介 at 07:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年05月09日

「のぼせ」の中医学的なある考え方

 この時期の上海は、温度の浮き沈みが激しく、30℃を超えるような日もあれば、20℃前後というようなことも多々あります。それとともに、もともと冷え性であるのに、天気が暑いときに体がのぼせるような症状を訴える患者さんが少なくありません。

 「のぼせ」について、中医学・漢方では歴代からいろいろな処方があります。陰を補ったり、虚熱をとったりする方法以外にも、李東垣の「火鬱発之」というのも検討してみる必要がありそうです。とくに、昨今の現代人の冷えと関係のある夏の「のぼせ」の症状には使えそうな気がします。

 この「火鬱発之」というのは、陽気を発散させることによって、体の熱(火)を取り払おうという考え方です。主に、四肢に疲れがあり、体がだるく、皮膚の表面や筋・骨も熱く感じ、体を触ってみても、実際熱い、といったパターンです。外からの邪気が体を襲うパターンとことなり、体の中が不足している状態、すなわち虚であるときに発症するわけです。主に、夏前後のジメジメした暑い季節によくみられます。

 では、原因はなにか?ということになります。李東垣は消化器にあたる脾胃を重視した医学者であり、たとえば胃腸の働きが弱っているときに、冷たい食べ物や胃にもたれるような食べ物を食べたときに、脾の陽気が妨げられ、それが中で滞ってしまったときが考えられます。陽気が妨げられると、それが火となって「のぼせ」の症状を作り出すわけです。同様に、体内に「冷え」の状態があるときも、陽気の動きが妨げられます。

 陽気が妨げられると、気も妨げられるので、その結果血の生成に障害が出てきます。これが血虚につながり、これがまた虚熱の原因になったりします。

 李東垣といえば、代表的な処方に補中益気湯があります。これは脾胃の気を補って、気虚の状態を改善しようというものです。一方で、『各家学説』の教科書にも登場する昇陽散火湯という処方もあります。(升麻・葛根・独活・羌活・白芍・人参・生甘草・炙甘草・柴胡・防風)処方からみて明らかなように、補中益気湯とひかくしても、処方全体が軽い性質の生薬で構成されていて、陽気の上昇に重きを置いていることがわかります。一方で、人参で気を補い、さらに白芍で陰をおさえ、さらに生甘草で虚の火をさげます。そのため、皮膚表面の熱さやのぼせには有効的であるというわけです。

 小さな処方かもしれませんが、いろいろ考えられていることが分かりますね。これぞ、中医学の醍醐味だと私は思います。
posted by 藤田 康介 at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年05月01日

金銀花が咲いていました

 植木を買いに、浦東新区孫橋にある花木市場までいったのですが、そこで立派な金銀花の鉢植えがありました。

104929392090-1.jpg

 金銀花(きんぎんか)はスイカズラ科(Caprifoliaceae)のスイカズラで、花が咲ききる前のものを使います。中医薬だけでなく、日本でも漢方薬として重宝されています。

104929392090-2.jpg

 主な効能は、清熱解毒作用で、炎症を抑制する作用や、黄色ブドウ球菌や肺炎双球菌、大腸菌、赤痢菌、コレラ菌、インフルエンザウイルスなどを抑制する働きがあることが知られています。熱が出たときなど、お茶としても使えます。有名な処方では、銀翹散と呼ばれる温病学の処方があります。

 金銀花の茎・枝は忍冬藤(にんとうふじ)と呼ばれ、皮膚の痒みや、関節リウマチなどの熱性の痛みの治療に使います。

 しかし、白いきれいな花を咲かせますね。
posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年03月23日

安宮牛黄丸と1993年の謎

 中医学の世界にいると、結構色々不思議な現象を耳にすることがあります。その中でも、特に多いのが「安宮牛黄丸」という丸薬。中医学の方剤学の教科書にも載っている処方なのですが、色々と秘話が多いのもまた事実です。

 成分は、牛黄(牛の胆嚢の結石)、鬱金(ウコン)、犀角(クロサイの角)、黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)、山梔子(クチナシの実)、朱砂(硫化水銀)、梅、麝香(ジャコウジカの分泌物)、真珠、金箔などが含まれています。

 先日も、上海中医薬大学附属竜華病院の腫瘤科の主任から、その昔、臨床で安宮牛黄丸を実際につかったときのエピソードを伺いましたが、脳梗塞で意識を失ったり、高熱で意識がもうろうとしているときなど、服用させると意識が戻るといったことをよく聞きます。(私自身はまだそういった臨床経験はありません。)

 古い薬局には、そうした丸薬が残されていることもあり、この主任のお話を伺ったときも、丸薬を探しに中医薬局を問い合わせたそうです。

 この安宮牛黄丸ですが、中身の生薬がまたすごい。昔は天然産のものが使われた麝香や犀角、牛黄などが含まれていました。ところが、生薬資源保護のため、中国では1993年からこうした生薬の使用が禁止になりました。そのため、今では投資の標的になってしまったという皮肉な話。

 今の処方では、麝香が人工合成されたものとなり、犀角は水牛の角にかわり、牛黄は体外で培養された結石になってしまいました。はたして、これが本当に薬効があるのか?というのがこの投資話の理由です。

 中国衛生部では、人工のものも天然のものも薬効に大きな変化はないと言っていますが、それでも1993年以前に生産された安宮牛黄丸は、大変重宝されています。実際、1粒で1万元というとんでもない価格がついているのもあるようです。人工で作られた物は、1粒100元前後で手に入ります。

 いずれにしろ、こういった高価な薬は、決して不老長寿の薬ではなく、いざというときのためも緊急時の薬です。鍼灸の世界でも「醒脳開竅法」がありますが、脳をはっとさせる(覚醒させる)開竅の働きがあるものなのです。

 ちなみに、方剤学では安宮牛黄丸と紫雪、さらに至宝丹をあわせて「三宝」と呼びます。いずれも、高価な生薬を使い、いざというときに力を発揮する丸薬として、伝統的な中医薬局では大切に保存されています。
posted by 藤田 康介 at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年02月26日

六味地黄丸と精子の質・男性不妊の治療で

 中医学を知らない方でも、六味地黄丸なら知っているという方は少なくないかと思います。元々は、小児科の専門書『小児薬証直訣』(銭乙)に記載されている処方で、子供の肝腎不陰虚の症候で使われました。ただ、近年では、大人に使われることが多くなりました。

 オリジナルの処方は丸薬です。蜂蜜で固めるいわゆる蜜丸でしたが、現代ではエキス剤やカプセルなどでもあります。主成分は乾地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮です。肝腎陰虚と呼ばれる腰痛や耳鳴り、盗汗、のぼせ、喉の渇き、腰のだるさ、夢精、陰虚が原因の歯の痛みなどの症状で非常によく使われます。

 2011年第2期の『中華中医薬雑誌』で、山東中医薬大学の研究グループが、六味地黄カプセルをつかって、肝腎陰虚タイプでの男性不妊症の精子の運動率を高め、精子の奇形率を改善し、DNA損傷を防ぐ働きがあることを発表していました。

 現代医学では、六味地黄丸の処方の抗酸化作用やフリーラジカル除去、免疫力強化などの働きが分かっています。こうした作用が、曲精細管にある精子形成細胞など関連細胞に作用して、精子のDNAの保護に役立っているようです。

 男性不妊症の治療において、中医学の腎の考え方は非常に大切ですが、こうした精液の各検査指標の改善からも、腎を補う薬の役割を裏付けられることになります。

 一方で、ニュージーランド・オークランド大学の研究では、男性がビタミンEや亜鉛などの抗酸化物質を服用すると、生殖能力を高めることができるという臨床結果を発表していました。不妊症治療のうち、その40%以上で男性に問題があるといわれているなか、その80%で精子が酸化されてしまったり、数が減少してしまったことにその原因があります。そこで、抗酸化物質が注目されたわけですが、実験では抗酸化物質の活用で、男性の生殖能力が4倍に高まったとして一定の成果があるとしています。

 いずれにしろ、補腎系の生薬が男性不妊の治療になんらか役立つことは確かなようです。
posted by 藤田 康介 at 09:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年02月13日

フウセイの魚脳石(魚耳石)

 ちょっと変わった生薬です。

 先日、晩ご飯で黄魚(フウセイ ニベ科)を食べたときに、身をほじくりながらついに「魚脳石」を見つけました。
 これは、魚の頭部に左右一対あり、平衡感覚をとる働きがあります。魚の大きさによって魚脳石の大きさも違うわけですが、中医学の生薬の世界で使うのは、この黄魚のものを使うことが多いです。

0000.jpg

 確かに小さいですね。

 主成分は炭酸カルシウムです。中医学の世界では、昔から内服では粉末にして腎臓結石の治療、外用では中耳炎や鼻炎・副鼻腔炎の治療などに使われました。『本草綱目』や『日華子本草』などに記載があります。

 ただ、生薬として使う場合は、そのまま使うのではなく、修治・炮製します。

 というわけで、写真に記録しておきました。
posted by 藤田 康介 at 09:01| Comment(0) | TrackBack(1) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2011年01月19日

日本での生薬水耕栽培成功した甘草

 植物を多く使う生薬の供給は、中国だけでなく漢方薬の生産を行っている日本でも多きな問題です。最近の中国における生薬原料の根上がりも、臨床をしているものからすると、非常に頭が痛いのですが、そんななか、「AERA」がご縁でお知り合いになった奈良の大峰堂薬品工業株式会社の研究スタッフの方から、日本で実用化されつつある生薬の水耕栽培について情報をいただきました。画期的な仕組みだと思います。

 水耕栽培といえば、上海でも安全野菜を生産されている「ベジタベ」の工藤さんがレタスなどで研究されていましたが、考えてみれば生薬も同じ植物ですし、実現が可能なわけです。

 甘草の水耕栽培の研究を行ったのは鹿島建設株式会社。プレス発表によると、千葉大学との共同研究だそうで、日本ではじめて甘草の水耕栽培に成功したということです。

kanzou-2.jpg

(こちらは修治したあとの中医薬の炙甘草)

kanzou-1.jpg

(こちらは中医薬で使われる生甘草)

 水耕栽培と言えば、根っこがひょろひょろになるというイメージを持っていたのですが、植物にストレスを与えることで、根っこを太くすることに成功、さらに4年かかる収穫周期をなんと1〜1年半にできるという画期的な研究でした。

 甘草は文字通り甘い味がします。近年では漢方薬だけでなく、甘味料としての需要も高まっていますが、日本は100%輸入に頼っています。しかも、輸出している中国では殆どが天然物で、資源の枯渇が心配されています。今回の水耕栽培は、漢方薬の安定供給の意味でも非常に大きな意味があります。今後、黄連などの生薬でも実験が続けられるということです。

 ちなみに、中医薬の世界では甘草を胃腸の虚弱体質や動悸の治療に使いますし、肺を潤して咳止め・喉の痛みにも使われます。こむら返りの治療で有名な芍薬甘草湯にも甘草は使われます。また、昔から農薬や食べ物による中毒の毒消し作用にも使われます。

 日本の漢方製剤でも70%以上の処方で使われる甘草。安定供給が実現すれば、これは非常にすばらしいことです。
posted by 藤田 康介 at 11:13| Comment(2) | TrackBack(1) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月23日

中医学での石榴(ザクロ)と前立腺癌

 秋に、上海でもよく食べられる果物にザクロがあります。中国語でも石榴(ザクロ)です。我が家でもよく食べますが、種の大きさの割には実が少ないけど、甘酸っぱくて結構くせになる味だと私も思います。

 日本でもかなり前から話題になっているのが、ザクロの前立腺癌に対する効果で、いろいろな研究結果が発表されています。カリフオルニア大学の研究では、男性ホルモンであるテストステロンを抑制させる方法で効果のない前立腺癌の治療で、ザクロの汁(ザクロジュース)が効果があるという研究結果を発表しています。

 これによると、ザクロの汁によって、癌細胞の死亡率を増加させ、死亡した癌細胞の粘着率も下げるようです。さらにザクロに含まれる抗癌作用のあるといわれているフラボノイドやフェニルプロパノイドなどの有効成分の分析ができているということなので、今後新たな薬が誕生する可能性が十分にあります。

 ちなみに、石榴は中医薬でも生薬として使います。生薬では、中の実を使わずに皮(カラ)を使います。主な効能は下痢止めと殺虫作用で、胃・大腸経に属します。性質が、酸・温なので、慢性の下痢や、蛔虫やアメーバ赤痢のような疾患にも以前は使われたようです。そのほか、外用薬として脱肛の治療にも使いました。さらに、殺菌作用があるので、体外実験では、インフルエンザウイルスに対しても効果があるようです。

 
posted by 藤田 康介 at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月21日

美容と健康に「松の実」

0000-1-6.jpg

「松の実」食べたことありますか?

 小さいながらも、非常に香ばしく美味だと思います。韓国料理なんかにもよく登場しますが、中国でもよく食べられます。ちょっとしたお菓子みたいな感覚です。お肌の美容や、老化予防のある薬膳の食材としても重宝します。

中医学では、松仁(松子仁)と呼びます。中国では東北エリアが産地で、大興安嶺地区が有名です。上海でも手に入りますが、決して安いモノではありません。(でも、日本よりかなり安いですが。。。。)

 松の実の栄養分の約15%がタンパク質で、脂肪分が6割以上を占めています。その大部分が不飽和脂肪酸なので、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロール(LDL)対策や、心臓病の予防にもなります。

 中医学では、肺に効果があるといわれています。一般的に咳を止めたり、肺を潤す作用があります。『本草綱目』では、結核による咳にも良いと書かれていました。松の実の陰を補う性質と関係がありますね。

 さらに、中医学において、肺と皮膚とは密接に関係があるので、皮膚病や美容によいともされています。その証拠に、松の実には美容によいとされているピノレン酸やリノール酸などが豊富に含まれているので、皮膚に潤いを与える助けをしてくれます。

 松の実にはいろいろな食べ方があります。生で食べても十分おいしいですし、お粥にいれてもいいでしょう。サラダなんかにもまぶしてみると結構あいます。

 ちょっとした薬膳ですね。
posted by 藤田 康介 at 17:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月14日

2010年12月9日より、上海市の中医薬(生薬)が一斉値上げ

 日本の漢方薬(生薬)と比較すると、まだまだ割安感のある中国の中医薬(生薬)ですが、2010年12月9日に、上海市の生薬薬価が一斉に値上がりすることになりました。

 詳細は上海市中薬行業協会のサイトで確認できますが、今回値上げが決まったのは494種類の中医薬で、値上げ幅は平均で44.06%というとこです。

 びっくりしたのが、今まで非常に安かった太子参が、15gあたり0.88元から15gあたり3.33元にまで上昇、なんと4倍近くですね。太子参は重宝する生薬なので、残念です。そのほかに、板蘭根や甘草、枸杞子、黄耆、何首烏、半夏など常用薬も値上げしてしまいました。

 上海市の薬局では、200種類の生薬に関して、すでに仕入れ値よりも売値のほうが安い状態が続いていて、生薬薬価の改定の声が高かったのです。

 自然環境の悪化などが関係しているのなら、仕方がないことですが、一部報道にあるように、投機マネーが流れ込んでいるのなら、断固として取り締まっていただきたいところです。

 中国のレアアース問題で、日本へもかなり激震が走りましたが、80%以上を中国からの輸入に頼っている日本の漢方薬に関しても同じでしょう。

 やっと、漢方原料「甘草」も脱中国…国内栽培開始へのような動きがあるようですが、正直言って遅すぎる!!!

 それでも、値上げしてしまったものは仕方がありません。
 しばらく、薬価をしっかりと計算しながらの処方になりそうです。
posted by 藤田 康介 at 07:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月09日

高熱による乾き・嘔吐止めの芦根(ロコン)

 上海の大きな病院の周りを歩くと、道ばたで芦根をうっている行商人の姿をよく見かけます。とくに、秋から冬にかけて売られていることが多いのですが、早速私も見つけたので買ってきました。

0000-1-2.jpg

 上海は三方を海に囲まれている地形もあり、芦が結構生えています。写真は、上海崇明島東灘のものですが、彼方水平線まで芦が続いている風景はかなり壮観です。

000lg-2.jpg

 その芦の根っこ、いわゆる地下茎が芦根です。肺・胃経に属し、高熱による喉の渇き、胃酸がこみ上げてくるような嘔吐・悪心などにも使います。そのほか、二日酔いのムカムカにも使うことができます。

 昔の文献を見てみると、『日用本草』に、フグの毒の解毒に使えるという記載があるのですが、う〜ん、おそらく軽度の場合だけではないでしょうか。

 家庭で芦根を使う場合、一番簡単なのは写真のように煮出すことです。

 000lg-1.jpg

 そんなに味のするものではないですが、ただ性質的にどちらかというとカラダを冷やすものなので、そのあたりが注意ですね。
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月07日

生薬・馬銭子(マチンシ)の可能性

0000-1-1.jpg

 知り合いの薬剤師さんから、珍しい生薬を分けてもらいました。

 私もまずお目にかかることがありません。
 
 それは「馬銭子(マチンシ)」と呼ばれる植物マチンの種で、猛毒を持っています。臨床で使うことは滅多にないのですが、優れた痛み止め作用があるため、外用薬では今でも使われることがあります。

 過去の文献などをみてみると、四肢の痺れや痙攣、リウマチなどの痛みの治療に使われたようです。狂犬病や筋無力症の治療でも使ったような記録がありますが、現在では殆ど使われることはないと思います。内服する場合の量は、炮製しても0.3〜0.6グラムとほんのわずか。

 ただ、毒性が強いこういった生薬も、中医学では「毒で以て毒を制する」的な考え方が昔からありました。その中でも有名なのが、砒素を含む中医薬で急性前骨髄性白血病(APL)を治療したという例です。今では、このメカニズムが上海交通大学付属瑞金医院のグループで研究され、その論文を『サイエンス』に発表、一躍有名になりました。将来、ヒ素を使った癌治療の分野でも新しい発見があるかもしれません。

 とすると、こうした毒のある生薬の中に、将来、なにか大きな成果に繋がる作用が発見される可能性が十分にあります。ただ、そうした生薬を使いこなせる医師が減ってきていることは残念なことです。
posted by 藤田 康介 at 18:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月03日

益母草と脳梗塞

 復旦大学薬学院の朱依諄教授らのグループが、生薬(漢方薬)でもよく使われる益母草(ヤクモソウ)という生薬から、SCM-198と呼ばれる、将来脳梗塞の治療薬にも使うことが可能かもしれない物質を発見し、結構大きなニュースになっていました。

 益母草は、中医学の臨床でも婦人科を中心に応用範囲が広く、生薬の中では血の巡りをよくする活血作用と利尿作用を両方もち、あまり知られていないのですが、外用で使うと皮膚の痒みなどにも使われます。一般に、生理不順や高血圧、心臓病や腎炎による浮腫などにも使い、さらにこの益母草の種子である充蔚子(ジュウイシ)も、生薬として使われ、生理不順や月経痛、産後の腹痛、偏頭痛、目の腫れなどに使います。

 こういった観点からも、益母草が、血液循環に何らかの作用があることが分かりますが、ここから有効成分を抽出することが難しく、研究が続けられていました。

 今回発見されたSCM-198と呼ばれる物質は、病理状態における脳の酸素消費量を減らし、ミトコンドリアの酸化によるアポトーシス誘導を抑制し、ATPを活性させるさようがあるということです。こうして、脳細胞の死亡を食い止め、脳梗塞の治療に使える可能性が出てきました。

 このように、生薬全体での効能が分かっていても、その各々でははっきり分かっていない有効物質がまだまだあります。今後の研究が楽しみです。
posted by 藤田 康介 at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬