2012年06月27日

中薬注射剤の副作用問題

 大部分の中医薬や漢方薬は比較的副作用が少なく、また抗生物質と比較しても抗ウイルスや抗炎症作用は強く、耐薬性が出にくいというのが一般的な評価ですが、それでも一部の製剤で副作用報告が出ているので注意が必要です。

 それが、今回問題となっている中薬注射剤です。

 中国国家食品薬品監督管理局が6月26日に発表した通知では、喜炎平注射剤では2011年1年間で1476例の副作用報告があり、14歳以下の子供の副作用報告が1048例あったということです。また、脈絡寧では、年間1500例の副作用報告があり、重篤な症例は189例あったということです。主な症状は、呼吸器系・循環器系への影響ということです。いずれも、アレルギー反応が根底にあり、投与量が規定通りに守られていない、点滴処方の組み合わせに問題があったという問題が指摘されています。

 中医薬や漢方薬が経口では副作用が少ないというのはその通りですが、点滴で注射剤として使う場合は、アレルギーのリスクが当然高まります。2011年に副作用報告が多かった中医薬系の注射剤は、清開霊注射剤、双黄連注射剤、参麦注射剤でした。こうした問題に対応するため、2009年より中国では中医薬注射剤の安全性の再評価を行っているようですが、副作用問題は未だに発生しています。

 この中には、いくつかの問題も考えられています。まずは、他の注射剤を併用して中医薬注射剤を使っているケースで発生した副作用が全体の25%もあり、さらに中医学の知識の少ないこちらの西洋医師が、中医薬注射剤を処方して問題となったケースもあったようです。

 私自身は、中薬注射剤の一定の効能は認めますが、中医薬は伝統的な使い方を重視すべきだと思います。それが歴史的にみても安全であり、やはり血管に直接中医薬を点滴することには抵抗がありますし、私は使いません。

 これは個々の医師の考え方とも関係があるでしょうけど、やはり安全を第一に処方を考えるべきだと思います。しかし、中国の患者さんは点滴が大好きです。これにはちょっと困りますね。

【連絡】・6月28日〜7月1日まで日本東洋医学学会のため休診します。
    ・7月17日に上海で一般向け講演会を開催します。テーマは「中国伝統医学からみた上海の最新アレルギー事情」です。

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2012年05月07日

上海市の予防接種スケジュール

 中国では1978年よりワクチンプログラムを実施しています。これにあわせて、上海市も色々なワクチン強化プログラムも実施していて、2010年からは麻疹ワクチン強化プログラム、同年には上海に居住している18歳以上の人全員を対象に、希望者にはB型肝炎の予防接種を無料で行っています。上海市衛生局の発表では、麻疹の発症例はこの強化プログラムの結果、2010年と比較して73.5%減少したということです。

 B型肝炎大国の中国では、うちの娘が生まれたときもそうでしたが、生まれたすぐにB型肝炎とBCGワクチンの予防接種をすることになっています。そのあと、『上海市予防接種証』が発行され、満1ヶ月になったら、子供をつれて近くの社区衛生サービスセンターにいって予防接種の手続きを行い、2回目のB型肝炎の接種を受けます。『上海市予防接種証』は非常に大切な冊子で、幼稚園や小学校に入るときに必要ですし、引っ越ししたときなども予防接種を受けてきたことを証明する基礎となります。また、外から転入してきたときも通常は1週間以内に社区衛生サービスセンターで手続きを行います。

 中国全国のB型肝炎に関しては、表面抗原キャリアーは1992年の9.75%から、2006年の7.18%にまで減少し、5歳以下の子供に関しては0.96%にまで減少して一定の効果をあげています。ポリオ(小児麻痺)に関しては、中国では2000年に撲滅を達成しています。(と書いたのですが、実は2011年に感染が確認されております。ご指摘いただき、ありがとうございます。野生型ポリオへの感染が中国で確認されました。

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 2007年に中国では予防接種スケジュールを拡大し、上海市では11種類の予防接種を受けることになっています。詳細は以下のようになっています。

・B型肝炎・・・・出生後24時間以内、1ヶ月、6ヶ月の3回(注射)
・BCG・・・・・出生後24時間〜1ヶ月以内(注射)
・ポリオ・・・・2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月+4歳(経口)
・百日咳・ジフテリア・新生児破傷風・・・3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月+18ヶ月(注射)
・流行性髄膜炎A群・・・6ヶ月、9ヶ月(注射)
・麻疹・・・・8ヶ月+18ヶ月、4歳(注射)(注:18ヶ月と4歳は 麻疹・風疹・流行性耳下腺炎で)
・日本脳炎・・・・8ヶ月+2歳(注射)
・麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・・・・18ヶ月+4歳(注射)
・A型肝炎・・・・18ヶ月+2歳(注射)
・流行性髄膜炎AC群・・・3歳+6歳(注射)
・ジフテリア・破傷風・・・・6歳+16歳(注射)

(2012年現在 「+」は追加接種の意味です)

 
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2012年03月26日

上海で末期癌患者への緩和ケア病棟設立へ

 中国語の「舒缓疗护」という言葉。

 日本語で言うホスピス(緩和)ケアのことです。患者さん自身の選択で、最期の時を少しでも快適に過ごすためにサポートすることなのですが、やっと上海でも本格的に取り組むことになりました。それも、大学の付属病院など大病院ではなく、プライマリーケアを目的とする、社区衛生サービスセンターに設置されるというのは、かなり本格的な取り組みの始まりと言えるでしょう。

 上海では、年間3.6万人が癌で亡くなっています。このうち、70%が自宅での養療を必要としているなか、そうした末期癌患者への在宅サポートが必要とされています。

 社区衛生サービスセンターは、日本で言うと町医者的な存在で、各地区に設定されていて、ちょっとした疾患の診察をしてもらうのには便利です。今回、上海市内18箇所の社区衛生サービスセンターに緩和ケア病棟を設置して、末期癌患者のケアにあたるというものです。上海では、すでに17年前から閘北区や楊浦区で試験的に設置されていて、様々な試みが行われてきました。例えば、自宅にいる末期癌患者に対しての訪問診療は無料で設定されていて、鎮痛剤も無料です。こうしたサポートを受けながら、2008年から2011年にかけて、925人が在宅での緩和ケアを受けることができたとしています。

 新たに設置される緩和ケア病棟は、1施設あたり10床で、上海市内で18箇所設置される予定です。上海市政府・区政府のほかに、上海市自然基金会や赤十字からの財政的援助もあり、緩和ケア病棟に入院した患者には赤十字から月2000元の補助、在宅治療を行っている場合は、月1000元の補助が出され、鎮痛剤は無料という仕組みが導入されます。また、そのための病院の改装や人員のトレーニングも行われ、2012年度中には患者を受け入れられるようにするということです。

 中国の場合、西洋医学と対等の地位に伝統医学である中医学もあります。病院にはごく普通に中医科があるので、おそらく緩和ケアでもごく普通に中医学が受け入れられると思います。なにか中国ならではのやり方が生まれるのではないかと、少し期待したいと思っています。
posted by 藤田 康介 at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年08月05日

上海で脳梗塞で運ばれる患者が増えています

台風の影響で、今日あたりから気温が下がると見られている上海ですが、それでも気温の高い日が続いています。

 上海疾病予防コントロールセンターによると、脳梗塞で市内の病院に運び込まれる救急患者は前年比20%の増加で、1日のべ300人に達しているとのことです。

 市当局では高齢者を中心に、エアコンの温度調節に十分気をつけるように呼びかけており、設定温度は外との温度差が7℃以上にならないようにと注意を呼びかけています。

 いまさらながですが、暑さで発汗量が多く、血液が濃縮され、血流がゆっくりになり、身体の組織が獲得できる酸素や栄養素が減少、さらにエアコンなどによる外気の温度差で、血管の収縮が過度にすすむと、血栓も出来やすくなります。
 
 三伏もやっと中日を越え、上海の暑さももう少しの我慢です。元気に乗り越えたいものですね。
posted by 藤田 康介 at 06:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年05月05日

上海で年々増え始めている癌患者

 経済の発展とともに、人々の食生活や生活リズムが変わり、上海市でも癌患者が増える傾向にあることが、上海市疾病予防コントロールセンターの発表で明らかになっています。

 現在、毎年上海市民10000人に3人に新たに癌が発見されており、癌患者の数は累計で21万人。結果、人口100人につき1人は癌であるという割合になっています。年間3万人が癌で死亡し、死因としては循環器疾患に次いで、第2位。割合では、新たに発見された癌患者の55%が男性で、45%が女性、癌で亡くなった人の割合でも、61%が男性で39%が女性ということです。やはり、男性の方が癌リスクが高いようです。

 2007年のデータでは、上海市で新たに発見された癌の部位では、男性が肺癌・胃癌・大腸癌・肝臓癌・前立腺癌となり、女性では乳癌・大腸癌・肺癌・胃癌・肝臓癌となります。とくに乳がんに関しては、女性で新たに発見された癌の17%を占めています。

 また、2007年になくなった癌患者3万人のうち、最も多かったのが、男女ともに肺癌でした。男性の場合、そのあとに胃癌・肝臓癌・大腸癌・食道癌と続き、女性の場合は大腸癌・胃癌・肝臓癌・乳癌と続くようです。

 また、上海市では現在21万人が癌をかかえながら生活していますが、こうした人たちのうち、癌の種類では乳癌が最も多く、全体の16%を占め、続いて大腸癌・胃癌・肺癌・甲状腺癌と続きます。
 しかし、癌患者の5年間生存率は、35.54%で、10年前より8ポイント上昇したものの、先進国と比較して20ポイントの開きがあるということでした。

 いずれにしろ、先進国(特に欧米)と同じような癌患者の傾向に、ここ数年での上海での食生活の変化、高齢化などが関係していると考えられています。特に致命的なのは、中医学や西洋医学に関しても、健康に関する知識が一般市民の間で大きく欠乏し、もう少し飲食や運動に関する教育ができておれば、上海市だけでも年間1.5万人の市民が癌の発生を遅らせたり、予防できたりできるとしています。

 中国全体でみても、癌患者の発生が多い上海。まだまだ我々が日ごと気を付けないといけないことがたくさんあるように思います。
posted by 藤田 康介 at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年03月01日

不足する中国の小児科医

 上海中医薬大学の大学院で博士課程での研究をしていたとき、研究テーマが小児ネフローゼと関係があったため、一時復旦大学附属児科医院に通っていた時期がありました。

 その当時、師事させていただいた院長の徐虹教授が小児腎臓病のご専門で、臨床を半年ほどご一緒させていただいたことがあります。西洋医学の病院ですので、中医学とはつながりがないと思いきや、意外にも中医学に大きな関心を持っておられ、私の研究にいろいろご指導してくださいました。

 児科医院は、上海でも有数の小児科専門総合病院で、中国全国からも患者が訪れます。折しも手足口病が大流行し、外来の行列が入り口の外まで続いておりました。

 充実しているように見えている中国の小児科ですが、やはり人材不足が深刻化しているようです。こちらでは有名な話ですが、最近15年間で小児科専門医の増加はたった5000人で、実に20万人は不足しているというのです。

 大病院では、かなりの科で医師のボーナス支給などにおいて独立採算制が採用されているところが多いのですが、小児科は薬を使用する量も相対的に大人よりは少ないため収入が少なめというのがこちらでは常識になっていて、さらに一人っ子政策の影響で、父兄の小児科に対する要求が非常に高く、リスクが高いという原因で敬遠されているようです。

 検査一つにしても、子供はなかなか言うことが聞かないだけでなく、採血一つにしても拒否する親もいたりして、大変だという現実もあります。

 ただ、一方で小児科疾患は回復するのも早いことが多く、一度元気になれば素直にそのパワーを見せてくれます。医者をしていて、これほど嬉しいことはありません。

 中国の小児科の権威、上海交通大学附属新華医院の郭迪教授が、「小児科医の多くは長寿である。なぜなら、子供の天真爛漫な姿に、医師たちが影響を受けるからである」というようなことをおっしゃっていました。

 責任が重い分、達成感や充実感があるのだと思います。
posted by 藤田 康介 at 08:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年02月12日

喘息の発作と抗生物質の関係

 抗生物質信仰の非常に強い中国では、抗生物質の濫用問題が昨今大きく取りあげられてきています。でも、実際に臨床現場を診てみると、患者さんの抗生物質処方への要望が強く、なかなか旨くコントロールできていないのも現実です。

 胎児や出生間もない新生児への抗生物質の使用に関して、ノルウェーのNorwegian University of Science and Technology, Trondheimが興味深い研究結果を紹介していました。

 妊娠してから子供が6歳になるまでの1400人のノルウェー人の子供やその親御さんを中心に聞き取り調査を行ったところ、妊娠中のお母さんや、出生間もない新生児のころに抗生物質に服用したことがある場合、服用しなかったケースと比較して、子供が6歳になったときの喘息の発生率が50%高まるということが分かったということです。

 研究者の分析では、子供があまり早い段階で抗生物質に接すると、腸の中にある身体に有益に働く最近、すなわち有益菌が破壊され、身体の免疫システムに影響を及ぼし、アレルギー反応を引き起こして、喘息が発生するリスクが高まるのではないか、と考えていました。

 もちろん、抗生物質は必要なときには使われなくてはいけませんが、現在の中国のように、予防的にまで使われてしまうと、それはちょっと違うと思います。せっかく、中医学の中医薬(漢方薬)があるのに、旨く活用されていないことも非常に残念です。
posted by 藤田 康介 at 08:26| Comment(1) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年01月22日

16歳以下にはキノロン系合成抗菌薬を使わないようにと通知

 上海薬品不良反応観測センターからの通知で、16歳以下の子供にはキノロン系合成抗菌薬を使わないようにということです。以前から、キノロン系合成抗菌薬は、子供や妊婦には使わないことにはなっていたと思うのですが、改めて強調された形になっています。理由は、子供の骨格の成長に影響を与えるからということです。

 キノロン系合成抗菌薬には、レボフロキサシン(クラビット)や、ガチフロキサシン などがあり、抗菌スペクトラムが幅広いため、中国でも大いに用いられています。

 上海市当局の統計でも、抗菌薬や抗生剤と言われる薬の中で、キノロン系合成抗菌薬の副作用は、セファロスポリン系やペニシリン系に次いで、第3位に副作用報告件数が多く、中国全土では2004年〜2009年10月までに8万例の報告があり、このうち全体の3.6%に及ぶ3500例は重篤だったようです。

 副作用としては、神経系・精神系の障害や、皮膚などに関係のあるものが中心で、消化器系や泌尿器・呼吸器系のものも少なくないようです。

 そこで、改めて妊婦やアレルギー体質の人、妊娠中や授乳期、16歳以下の未成年は使わないようにし、腎機能に問題があったり高齢者も量を加減するように衛生当局呼びかけています。
posted by 藤田 康介 at 14:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年01月20日

上海で働く外国人医師の数

 上海で働く外国人医師の数が年々増えているようです。

 上海衛生監督のサイトで紹介されていたのですが、2010年は336名の外国人医師が上海で医療活動を行うための「執業許可」を取得したということです。

 考えてみれば、上海の日本人医師会のメンバーも多少の出入りはあるものの、毎回少しずつ新しい先生が参加されておられます。

 最も、上海で働く外国人医師の大部分は民間病院や合資病院で働いていて、その割合は93.2%。そのほかに、公立の3級総合病院では22人、2級総合病院では8人が属しているということです。

 科目別では、歯科医が最も多く115人に及び、つぎに内科医が89人、全科(ホームドクター)が61人、外科が40人、小児科・産婦人科が39人となっています。そのほか我が中医学科や美容整形科、眼科、リハビリ科、放射線科、麻酔科、耳鼻咽喉科などは数人程度のようです。

 このうちのべ198人が初めて上海で医療行為を行った医師で純粋に増加した数になります。その他ののべ269人は元々、上海で働いていて継続的に医療行為を行っている医師ということでした。

 また、上海の総合病院で外科手術などのデモストレーションを行ったのはのべ16人。上海の医療の発展に、海外からの医師は大きく貢献していると言うことです。 

 ちなみに、上海で合法的に医療行為をするには、衛生局に登録する必要があります。それを確認できるページが、こちらにあります。私の名前、「藤田康介」を入力してもらうと、登録場所などの情報が出てくると思います。
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2011年01月03日

抗生物質や点滴使いすぎ!中国の医療の現実

 中国にはせっかく中医学のようなすばらしい医療体系があるのに、相変わらず抗生物質など点滴剤への信仰が強いのが中国。

 中国政府の発表でも、2009年に中国で消費された点滴瓶の数は109億本で、人口13億人で平均して、一人あたり8瓶が消費されたことになり、世界平均の3本前後の数字と比較しても飛び抜けているということが明らかにされました。

 病院に行ったことがない人もこのなかに含まれていますから、中国の医療機関で、点滴漬けになっている現状が分かります。

 特に、抗生物質・ステロイド剤・ビタミン剤・点滴剤の濫用は、私が大学病院にいた頃から言われていた問題だったのですが、今でもあまり改善が進んでいないようです。特に、市民の生活に近い末端医療での濫用が目立っているということです。

 そこで、中国では末端医療で使える医薬品の種類を拡充し、今では西洋薬のほかにも、中医薬(中成薬)の使えるようになり、その比率は西洋薬:中医薬=2:1までに引き上げられました。医療費削減の意味からも、結構なことだと思います。
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2010年12月22日

6500人

 なんの人数だと思います?

 実は、上海で働いている中医執業医師(中医師)と中医執業助理医師の数です。2010年12月現在で、6511人いるそうです。私も妻ももちろんこの中の1人です。人口2000万人の都市からすると、決して多い数ではないと思います。

 中国では、厳密には医師と医士の2種類の医師がいます。医師とは大学を卒業して、資格をとった医師のことで、医士は専門学校卒業の場合です。つまり、中医執業助理医師のことを指します。西洋医学でも同様で、執業医師と執業助理医師に分かれています。

 上海でも、1級医院(社区衛生服務中心)には、まだ執業助理医師がいますが、試験を受けることで、執業医師になれるようにしています。大学医学部だけでは中国全国の医師の数を補うことができず、医療に対しても地域によって様々なニーズがあるので、こうした分け方をしているのだと考えられます。上海など都市エリアでは、今後執業助理医師は減ってくるはずです。

 ところで、中医に携わっている中医執業医師(中医師)と中医執業助理医師の割合は、上海の医師の数の13.41%で、やはり圧倒的に西洋医が多いことになります。ベッド数からでも明らかで、上海の総合病院のうち、中医系もしくは中西医結合系医院のベッド数は8486床あり、ベッド総数の10.29%あります。  

 上海は全国の中でも中医学関係の医療システム整備に力を入れているところの一つです。上海市内のは中医系・中西医結合系の総合病院は24箇所有り、このうち民間の総合病院が1箇所あります。また、うちのように外来だけのクリニック形式の医院は市内に259箇所あります。

 これ以外にも、公立病院のすべての中医科や中西医結合科が設置されているので、その数は膨大です。それほどまで、上海では中医学に対するニーズがあるということです。
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2010年12月16日

中医学ができる看護師のトレーニング

 う〜ん、おかしい。書いたブログがどこかに消えてしまった。ということで、再度書きます。

 2010年3月に、中国国家中医薬管理局が、中国全国の中医医院に勤めている看護師に対して、全体の7割を、中医学の知識や技術のトレーニングを受けた看護師にするように通達を出しました。

 実は、上海中医薬大学など中医学系の大学では、付属の看護学校もあり、ここで一般的な西洋医学の看護師以外にも、中医学にも従事できる看護師のトレーニングを行っています。具体的には、中医学の基礎的理論の習得や、中医薬(漢方薬)の外用薬や膏薬などを使った処置、中医学の医療器具の取り扱いなど、中医学の医療現場ではあたりまえだけど、西洋医学ではあまり使わないスキルのトレーニングです。この中には、日常の看護活動の中で、患者の舌を観察したりすることも含まれていました。特に、中医学では中医薬(漢方薬)の服用方法にも特徴があるため、『中医護理常規技術操作規程』といった規範も定められています。

 また、西洋医学の看護学校を卒業して、中医医院で仕事をした場合、3年以内に100時間の中医学に関するトレーニングを受けないといけない、ともしています。

 うちのクリニックのように、中医学がメインの場合は、そうした人材も育成する必要があり、我々にとっても大きな課題でもあります。

 ただ、近年は中国でも看護師不足で、人を集めてくるのが大変ですが。。。
posted by 藤田 康介 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2010年11月19日

インフルエンザと生薬の値上がり

 最近、いろいろな病院をまわられて、治療や検査をしてきたのだけど、なかなか収まらない咳や鼻水、喉の痛みなのでうちの中医クリニックに来られる患者さんが少なくありません。
 上海のローカル病院で医師をしている妻から話を聞いても、カゼとみられる症状の患者さんが増えているようで、少し要注意なのかもしれません。

 去年は、H1N1インフルエンザの影響もあり、インフルエンザ予防接種の意識が高かった上海ですが、今年は今ひとつで、市衛生当局も、医療関係者など感染リスクの高い人に対しては、接種するように呼びかけていました。もちろん、私も接種を済ませました。この冬、インフルエンザ対策として予防接種を受けられる方は、時期的にも今がラストチャンスです。接種をしても抗体ができるまで1ヶ月程度の時間を要しますので。

 もともと、中国の人たち予防接種に対する意識が低く、高齢者にいたってはインフルエンザの予防接種摂取率は5%未満というデータもあります。

 上海市では毎年、11月15日〜4月1日までを呼吸器疾患を重点的に警戒する時期と位置づけていて、インフルエンザや麻疹、流行性脳炎が発生しやすくなっています。今年は今のところ大きな流行は出てないようですが、衛生局では市内160箇所の病院を原因不明の肺炎の観測点とし、重点的にチェックしているほか、インフルエンザに関しても、市内43箇所で重点的に観測しています。

 ところで、毎年この時期になると問題になるのがカゼなどの治療でよく使われる生薬の値上がりや品不足です。一般の人にも広く知られている板蘭根(バンランコン)は、顆粒剤として売られていますが、多くの薬局で品不足になります。もちろん、板蘭根といっても、すべての人が服用していいわけではなく、熱性のカゼなどに限られていて、それでいて3日程度服用すれば十分なのですが、なぜか予防に使っている市民もいるようで、非常にナンセンスです。

 ただ、一部生薬の販売価格が安すぎて、製薬メーカーの利益が上がらないという理由で、生産量が落ちてしまっているという現状もあります。生薬の販売価格は、日本同様、中国でも統制されているので、原材料のコストがあがっても、なかなか価格に反映されないといった実情があるみたいです。

 でも、生薬処方する我々中医学の医師からすると、品不足というのは結構厄介な問題でして、毎年この時期は気をもみます。
posted by 藤田 康介 at 13:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2010年10月25日

上海人で5人に1人が脂肪肝という事実

 日頃うちの中医クリニックで診察していて、日本人で脂肪肝の患者さんに巡り会うことはまだ少ないのですが、これが台湾人や上海人となると、かなり多いのです。飲食や健康管理のやり方に違いがあるのかもしれませんが、華人の間で脂肪肝が多いことは、我々中国にいる日本人にとっても要注意です。

 上海を例にとった場合、5人に1人は脂肪肝だと言われています。脂肪肝は、肝臓だけでなく、血糖値や血圧にも大きな影響を与え、最悪肝硬変になることもあります。

 B型肝炎を含む、ウイルス性肝炎が非常に多い中国で、今や脂肪肝が肝臓病の第2位になっています。いまの中華料理の食べ方が改善されない限り、あと20年もすれば脂肪肝が第1位になることは間違いないとも言われています。

 脂肪肝は、栄養過多でもありえますし、無理なダイエットや栄養不良でもなります。決して、太っている人だけの病気ではなく、急にダイエットをすることで、脂肪から分解された遊離脂肪酸が飢餓状態に急上昇することで、脂肪肝になることもあります。そのため、朝ご飯を抜くとか、良くない食習慣がもたらす影響も忘れてはなりません。

 中国の統計では、50歳以下で脂肪肝が発見されたら、寿命が10年縮まるそうで、また50歳以上での脂肪肝でも、寿命が4年縮まるとか。そういった意味で、30〜40代での脂肪肝の体への影響は大きいですね。

 一番よく見かける単純性脂肪肝の場合、5-10年以内に17%の脂肪肝患者が脂肪性肝炎になり、そのうち20%が10-15年以内に肝硬変となるというデータも。もちろん、糖尿病や高血圧になるリスクも高まります。

 上海で働く日本人の皆さんでも、日本では問題なかったのに、こちらに来て悪玉コレステロールや中性脂肪が急に高くなってきた人が少なくありません。こういった変化には、やはり要注意です。「忙しい」を理由にせず、しっかりと運動したいものですね。

 脂肪肝に有効と言われる生薬(漢方薬)も少なくありません。そのあたりと併用するのも一つの作戦だと思います。
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2010年10月16日

盲人按摩の資格制度が上海で始まる

 上海市内でよく見かける「盲人按摩」の看板。行かれた方も多いかと思います。
 上海市内には、公式発表として127カ所の盲人按摩の施設が登録されているようですが、ここに1000人あまりの盲人マッサージ師が働いています。

 しかし、上海全体で、視覚障害者は15.8万人おり、彼らの就職と自活の問題がネックになっていました。

 中国では、視力に障害があれば、医師国家試験を受けることができないため、こうした視覚障害者に、いかに合法的な按摩の免許を与えるかが検討されていました。
 そこで、2009年に『盲人医療按摩管理弁法』が制定され、視覚障害者を対象とした資格試験が実施されることになりました。それが、10月16日から行われた試験となるわけです。

 受験資格者は、盲学校で中医推拿を専攻したり、すでに2〜15年程度実際に按摩の仕事に従事している人たちを対象としています。

 こうした視覚障害者が、医療の現場だけでなく、様々な分野で技術が発揮できるチャンスが生まれるとして、今後の発展が期待されています。
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2010年10月15日

広がる上海の公的医療保険のネットワーク

 上海や広州、北京などの大都市では、早くから公的医療保険制度、いわゆる「医保」が実施されていて、多くの市民が恩恵を受けています。ただ、この制度は各省・市など限定的にしか使えないので、たとえば上海の公的医療保険に加入している人が、北京などにいっても医療機関で保険適用されません。その逆もまた然りです。

 しかし、これだけ人口の移動が激しい中国では不便です。そこで、各地の市・省がお互いに公的保険が使えるように協力関係を結んでいます。

 その結果、上海でも浙江省杭州・嘉興・湖州・寧波・安吉・江蘇省鎮江・常州・南通・揚州・大豊・安徽省の馬鞍山・河南省洛陽などの地区で相互に公的保険が使えるようになりました。

 そのほか、青海省や貴州省貴陽市でも上海市の公的保険が使えるようになっています。青海省は、省単位としてははじめて上海市と公的保険が相互に使えるところになりました。

 中国では、日本全国どこでも使える日本の健康保険とは制度がまったく違いますが、中国でも大都市の公的医療保険を中心にネットワークが広がってきます。

 この上海市の「医保」ですが、今では外国人も加入できるようになりました。まだ任意の状態ですが、制限が一部緩和されています。
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2010年10月14日

上海で低年齢化している乳がんの実体

 今年9月、上海中医薬大学付属岳陽病院で行われた研修会でテーマとなった乳がんの問題について、私も学生時代に指導を受けたことがある、中医外科の陸徳銘教授のお話を伺いました。

 この中で、上海地区での乳がん発症について、発病率の上昇と低年齢化、そして発病ピークとなる年齢幅の広がりが大きな特徴となっていることが指摘されていました。

 さらに、中国全体的に経済的に豊かになっている沿岸エリアでの発症も増えており、農村エリアより都市部で、さらに学歴が高くキャリアでばりばり働いている女性にも増えているというようなことも紹介されていました。

 これは、中国だけでなく、日本でも同様の傾向があるのではないかと思われます。

 また、乳がんと女性ホルモンとの関係も深いため、中国ではスッポンやタウナギ、ツバメの巣や一部の鶏肉類は食べ過ぎないようにということも以前から言われています。

 最近の上海の報告を見てみても、どうやら上海エリアでの乳がん発症患者の低年齢化が進んでいて、黄浦区中心医院が行った最近3年間の乳がん患者3000人の年齢分布を見てみると、30歳以下の患者が43例もあり、中には19歳で乳がんを発症したという例も出ているようです。まだ大学生だとか。40歳以下まで範囲を広げると、全体の3割以上になるのだそうです。

 乳がんの発症率の増加が著しいのは、北京・上海・広州・深センなどの大都市。毎年、3.97%の割合で増加しています。

 生活環境の改善により、初潮が早まったり、更年期が遅れたり、独身であったり、初産が30歳を越えてしまったりすると、やはり乳がんリスクは高まります。また、上海でここ近年多い、高タンパク・高カロリーの飲食も、乳がん増加と深く関係があります。そして、意外に忘れられているのが、美容や化粧品などで女性ホルモンを含む製品が増えており、これも大きな問題です。また、中国に少なくない避妊薬の濫用も関係があります。

 中国都市部での現代人の生活は、精神的・肉体的にも負担が非常に大きく、内分泌のトラブルを容易に引き起こします。大気汚染や水質汚濁、騒音もそうです。

 では、中医学ではなにが出来るか?という点ですが、上海では広く一般的に西洋医学の治療と共同で治療にあたっています。特に、放射線治療が原因となる肺炎や口内炎、肝臓や肺への転移、骨への転移などがあったときに、生薬(漢方薬)と組み合わせることが多く行われます。

 とはいえ、一番いいのは薬に頼ることなく、食事などできっちりと乳がんを予防することです。精神的な問題を抱えず、肥満など体重の増加を極力抑え、植物繊維をしっかりととって、動物性脂肪の摂取を抑えることは、皆さんもご存じだと思います。とくに、穀物や豆類の摂取は大切です。
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2010年10月12日

戸籍医師制度

 上海で新しい末端医療をサポートする制度が始まります。ある意味、社会主義であるからこそできる医療サービスであるかもしれません。

 あたらしい医療サービスは、「戸籍医師制度」と呼ばれています。すでに、長寧区で行われていたようで、今回、上海市中心部の浦東新区・閔行区・閘北区でも実施されるようになります。

 末端医療として、「ホームドクター制度」となにが違うのか?ということになりますが、ホームドクターは、医師とその家庭が契約する必要がありますが、「戸籍医師制度」は、契約する必要がなく、一定の範囲の住民に対して、決められた医師が健康管理を行うというものです。社区衛生センターの医師がこの任務にあたります。

 中医学・西洋医学の医師にかかわらず、これまでも高齢者を対処に「戸籍医師制度」は行われていましたが、今回はその範囲を広めたように思われます。そして、住宅地単位で市民の慢性病や伝染病の管理、妊娠時のサポート、中医学なら未病を治す知識の普及などを行い、医師だけでなく、いわゆる民生委員のような任務を行う人たちと共同で医療活動を行っていくという仕組みになっています。

 慢性的に老人ホームが不足している上海では、むしろ家庭で介護をする方針をすすめており、高齢化のはげしいエリアでは、「戸籍医師制度」が一定の役割を果たすに違いありません。

 ちなみに、2010年10月16日は重陽節(菊の節句)で、上海市では敬老の日として、高齢者を敬う日として指定されていますが、2010年からは10月全体を「敬老月」と指定して、市民の高齢者への関心を高めようという取り組みを行っています。
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2010年10月09日

10月8日は中国の高血圧予防デー

 10月8日は、暦の上では「寒露」になります。秋が深まり、中医学的にはますます「陰」を補うことが大切になります。昔の人は、蜂蜜水などで体を潤し、昼間もしっかりと水分を摂取し、辛い刺激物を避けました。

 また、10月8日は、中国では高血圧予防デーでもあります。ニュースなのでも報道されていましたが、上海市の18歳以上の成人で、高血圧をもっている人は23.6%に達し、なんと4人に一人が高血圧であるということが上海市衛生局から発表されています。

 この原因に、このブログでもたびたび紹介していますが、中華料理の塩分の取りすぎ、運動不足に栄養過剰、タバコにお酒などお馴染みの問題が考えられますが、実際には食生活全般を変える必要があるため、対策が難しいのも事実です。

 一般的に、血圧の高い患者さんは、降圧剤を服用して140/90mmHgの血圧をキープする必要があり、もしこれに糖尿病や腎臓疾患などの合併症がある場合、130/80mmHg程度にまで血圧をコントロールする必要があります。しかし、実際にはなかなか難しく、総合病院で治療を受けている患者さんでも、この数値を達成できている人は中国で30%程度しかいないと言われています。

 高血圧の原因は様々あり、まずはその原因をはっきりとさせる必要があります。

 もちろん、中医薬(漢方薬)も血圧のコントロールには一役買うことが出来ますが、忘れてはならないのは血圧のコントロールには、患者さんご自身の努力も不可欠であり、決して降圧剤を飲んだら大丈夫と言うことではないということです。
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2010年09月08日

上海でも始まるはしか(麻疹)の免疫強化

 国の政策にのっとり、上海でも9月11日〜20日にかけて、市内児童生徒200万人を対象とした麻疹ワクチンの予防接種(生ワクチン)が始まります。対照となるのは、1995年9月1日〜2009年12月に生まれた今年8ヶ月〜14歳となる子供たちです。

 予防接種は、8ヶ月の子供は麻疹ワクチンを、また18ヶ月と4歳の子供は3種混合(はしか・おたふくかぜ・風疹)、それ以外に関しては基本的に麻疹ワクチンとなります。上海市では2008年以降、小中学生には無料で3種混合ワクチンを接種していましたが、それ以前では任意だったため、今回の免疫強化に踏み切ったということです。

 なお、ほかのワクチンの予防接種を受けた場合、1ヶ月以上の間隔をあけるようにし、予防接種直後は30分は体調を観察するようにしなければなりません。

 WHOによると、一度麻疹ワクチンを接種した場合、25年は保持されるといわれています。今回の予防接種で、免疫強化をはかることになります。

 学校・幼稚園などでは、集団で予防接種が行われますが、まだ学校などに通っていない子供たちは、上海市内の各地区に設置されている社区衛生サービスセンターで予防接種を行います。

 今回の予防接種は、中国全体で行われるので、対象となる子供たちは1億人にもなります。もともと、予防接種に対して、抵抗感を感じる父兄が多いため、中国衛生部もメディアを通じてのPRにかなり本腰をいれています。
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