豊かな自然環境ののなかで栽培される生薬は、地域性がとても強いのが特徴です。我々、中国で生薬を処方するときも、茯苓なら雲南産の雲茯苓など生薬の前に地名をつける習慣があります。実は、私の故郷でもある奈良県は、歴史的にも生薬栽培で有名なエリアでもあり、そのなかでもこの奈良県五條市深谷町あたりで栽培されていたのが大和(大深)当帰と呼ばれていました。
一般に、当帰といっても、私達が中国の中医学で使っている当帰は唐当帰といって、日本国内で生産されている北海当帰とは品種が違うものとされています。一方で、生産量は多くありませんが、奈良で栽培されている大和当帰は、北海当帰よりも品質が優れているということです。私もぜひ臨床で使ってみたいですね。
当帰の効能は様々で、中医学では補血・活血・止痛・潤腸がよく言われていて、生理不順や生理痛関係の疾患、便秘などに使われます。お酒を活用して修治することで、活血作用を強めることができます。韓国料理では、参鶏湯でも使われていますね。
奈良県では、明治あたりから盛んに栽培されていて、盆地特有の昼と夜の寒暖の差や山間部の傾斜地でも栽培できるというメリットが好都合だったようです。ただ、薬として使うには手間がかかるため、出荷量が激減してしまったのが残念だったのですが、近年、奈良県が生薬栽培に力を入れているそうで、その結果生産農家も増えてきたそうです。
さて、そうした大和当帰の栽培にも関わっておられる王隠堂さんでは、まず奈良県での当帰栽培に関わっておられる奈良県農業研究開発センターで薬草科長も兼ねておられる浅尾浩史先生から大和当帰についてのお話を伺いました。さらに、実際に芽が出ていまに大きくなろうとしている栽培1年目の大和当帰や、2年間栽培された立派な大和当帰の根っこを見せていただきました。とても当帰のいい香りでした。
もちろん、中国ではまず使わない当帰の葉っぱを使ったお茶も。この葉っぱの香りも、根っこに負けていません。ティーパックもすでに出ているようでした。残念ながら当帰の根っこは医薬品になってしまうので、日本の法制度上、素人が自由に使えません。中国では普通にスーパーで売っているのですがね。
大和当帰を色々つかった王隠堂さんのお料理も色々な工夫があって良かったです。中国の薬膳では、どうも中華料理の制限のなかに入ってしまって、「大和当帰入りスパゲティーの豆乳スープ」なんかはちょっと登場しづらい。当帰の天麩羅も美味しかったです。
良質の生薬を使うことは、効能にも直接的に影響してきます。日本でも漢方に携わる医療関係者がそういうこだわりの目を持つようになってこれば、きっと大和当帰の知名度ももっと上がるのではないかと密かに期待するのでした。
奈良県人の一人として、これからも大和当帰を応援していきたいと思っています。
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私も奈良県出身なので勝手に親近感を抱いております笑
現在は上海のお隣杭州在住です
1年半前にがんになり日本の西洋医療ではもう治療ができないと言われ 嫁いだ杭州の地に戻り毎日楽しく過ごしています 今は現地の中医先生から漢方を処方してもらい飲んでいます
漢方は奥が深く私もとりこになりつつあります(^^) これからもお仕事頑張って下さいね。先生も体調にお気をつけて!