2014年02月19日

進化する中国の中薬単味エキス剤

 安全で品質の安定した生薬をどうやって活用するか?というのは日本でも中国でも我々のように生薬を扱う医療関係者からすると切実な問題です。そんななかで、以前から私も自分の診察で使ってきている単味エキス剤の活用は、今後の流れではないかと思います。よく質問を受けるので、今日は少し紹介します。

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 単味エキス剤とは調薬ひとつひとつをエキス剤にして、分量を加減しながら調剤して服用するというやりかたで、日本にはないシステムです。日本漢方では、ツムラでお馴染みの葛根湯など複合処方のエキス剤がメインですが、逆に、中国では単味エキス剤しか認可されていません。

 おそらくですが、中国には製薬会社が非常に多く、複方エキス剤を認めてしまうとこうした中小企業が潰れてしまう可能性があり、利権が絡んでいるのかと思います。近い将来には複合エキス剤の製品も登場するはずです。

 中国では現在合法な6社が単味エキス剤を製造しています。それぞれが中国政府のGMP基準に基づいてエキス剤を提供していて、ISOの標準化問題でも討論されている分野でもあります。

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 単味エキス剤の最大のメリットは、やはり煎じ薬とは違う品質の安定性です。農薬が重金属の検査も非常にやりやすくなります。(煎じ薬のときは大変でした。)調剤場所を見ても分かりますが、300〜400種類の単味生薬が棚にぎっしりと並んでいて、とても清潔です。欧米の検査機関に持ち込んでも、単味顆粒エキス剤では残留農薬や重金属は検出されておらず、実際にオーストラリアなどにも輸出されています。

 いままで手作業で手間がかかっていた先煎じに関しても、エキス剤なら数時間単位でコントロールが可能になったほか、後入に関しても、揮発油成分の抽出で有効成分の保持が実現しています。さらに、有効成分の確認では、TCMF法(traditional chinese medicines fingerprints、フィンガープリント技術)や中国で過去20年間に蓄積された600あまりの生薬成分研究データが『中薬配方顆粒質量標準』として制定され、中国食品薬品監督管理局で登録されています。これらはエキス剤の品質管理の上で活用されています。

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 おそらく、中国は今後、単味エキス剤のISO標準化に関して、自国の基準を持ち出すことになるかと思いますが、日本とは違う観点でまた摩擦問題になるかもしれません。

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 薬剤師の先生による分包に関しても大きな変化です。ひとつひとつのカートリッジに生薬エキスが入っていて、このカートリッジをあるバーコードを機械に読み取らせ、自動的に分包するシステムがすでに導入されています。処方をパソコンから入力するので、調合ミスも防げます。

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 カートリッジ式のメリットは、在庫管理がラクなのと、粉末の生薬が湿気るのを最大限に防止できます。また、同じ単味でも、患者さん自身が小袋を沢山混ぜて服用するエキス剤を使っているメーカーもあるようですが、ひとつひとつの袋を破るのが大変で、しかも水に溶けにくかったり、医師も微妙な量調整が難しいといったデメリットがありましたが、このシステムを活用するとその心配がありません。密封されたカートリッジから、直接分包されるようになり、空気に触れる機械が明らかに減ります。

 顆粒剤の賞味期限は2年となっています。煎じ薬より明らかに長いですし、運ぶのも楽で、郵送もできます。出張するときの携帯も便利になりました。

 顆粒剤の製造では、さまざまな技術が活用されています。生薬によって、有効成分の抽出方法が違うからです。しかし、有効成分を抽出するからこそ、服用量を減らすことができます。従来の薬草では100g必要だった生薬が、5〜10gにまで減らすことが可能になりました。中成薬として市販されている糖分や澱粉まみれの甘ったるい顆粒剤と比較しても明らかに服用量が減ります。よく、私も患者さんから感冒の薬で有名な市販の板藍根冲剤が甘すぎると指摘されるのですが、板藍根のエキス剤は甘くありません。

 お湯に溶かして服用する単味エキス剤は、直接袋をあけて液体を服用する煎じ薬と比較して一手間増えますが、こうやって様々な最新技術が盛り込まれた、未来の中医学の方向性を考えさせる薬剤となってきています。

posted by 藤田 康介 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬
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