2013年05月11日

反佐・尿蛋白・升麻(メモ)

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世界中医薬学会聯合会(WFCMS)の第7回国際腎臓病学術大会で南京に来ていますが、今日は1日講演会場で発表を聞いていました。中国中から中医学の腎臓病の専門家が集まっているだけあって、非常に中身が濃いです。印象に残ったことをブログにメモしておきます。

1.南京の鄒燕勤(すうえんきん)教授の経験

 江蘇省の名中医で、医療活動50周年を迎えた鄒燕勤教授は、今回の学会でも中心的存在の専門家の一人です。夜に、50周年記念の宴が製薬会社主催で開かれたぐらいです。1933年生まれですので、80歳ですが、まだまだお元気でした。江蘇省中医医院では、70年代から中医腎科があり、その設立に尽力されました。

 今回話されたテーマは、鄒氏中医学における反佐療法の研究です。これは、身体が熱いのに、単純に身体を冷やすのではなく、少し温める生薬を加えたり、身体が冷えているのに、身体を温めるだけでなく、少し冷やす生薬を加えるという治療法です。とくに、慢性腎不全の患者の中医学治療では、脾腎陽虚や気血両虚であることが多く、陽系の生薬を使うことが多いですが、そこにあえて黄連を反佐として加えることで、温めすぎるのを防ぐということです。ポイントは、反佐の生薬はあくまでも少なく。黄連なら2〜3グラムで十分です。また、毒素を出すために、内服のほかに灌腸法を使いますが、この中には普通大黄や蒲公英を使いますが、反佐として熟附子を使うことで寒性が行きすぎるのを防ぐことができます。

2.天津の張大寧教授の経験

 CKD治療において、大切なのは尿蛋白をいかに抑えるか、またGFRをどこまで改善できるか、ということですが、この先生は生薬・升麻の使い方を紹介されていました。

 張教授は、升麻を10〜30グラム使われます。この薬の量は、おそらく北方の人の体質にあったものかと思います。

 升麻は、補中益気湯や普済消毒飲に入っていますが、どちらも李東垣の処方です。しかも、どちらも柴胡とペアで使われているのがポイントです。前者での升麻+柴胡は、上向きのベクトルに薬効を向かわせるために、後者は大頭瘟(おたふく風邪)の治療で使う代表処方ですが、清熱解毒の効能の中に、升麻と柴胡を加えて方向性を与えるものとして使われると考えられています。

 現代医学で、尿蛋白の治療といえばステロイドを使うのが常套ですが、なんとかその使用量を減らしたいと普通は考えます。そこで、中医学が活用されるわけですが、張教授の場合、尿蛋白を抑える働きのある生薬(たとえば蝉脱や萕菜花)+補気+活血+固摂させるのが定石ですが、これに升麻を使うことにより、補気の力を強めます。また、補気には尿蛋白を抑えるために生黄耆を90〜120gも使うと言うことですから、すごい量です。黄耆が尿蛋白を抑えることは、もう様々な実験で明らかになっていますが、一般に生黄耆を使います。活血には、川芎を使います。同様に、慢性腎不全であれば、補腎+健脾+活血+排毒を考え、排毒には灌腸として大黄と大黄炭を使うようですね。また、厄介な顕微鏡的血尿の場合、補気+少量の活血+止血+升提を治則とされているようですが、ここでも升麻を使うことで、統血と補気の力を補うと考えられていました。
 その他、CKD治療においては、湯液に含まれるカリウムの問題が出て来ますが、こちらはイオン交換法を活用して克服しているみたいです。患者の血液カリウム量を測定しながら、投与量を計算していました。これは、実際にみてみたいですね。(つづく)


posted by 藤田 康介 at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察
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