生薬・淫羊藿は、またの名を仙霊脾と呼びます。その性質は辛温ですが、比較的性質が穏やかなため、中医学の教科書では補腎壮陽・袪風除湿となっていますが、そほかにも強筋健骨や止咳平喘などの作用があると言われています。
淫羊藿は、不妊症の治療や、手足の冷え、インポテツ、腰痛、頻尿などの処方によく使いますが、そのほかにも関節の痛みやしびれのうち、特に寒湿と呼ばれる冷えやだるさを伴うものにふさわしいとされています。
この淫羊藿という字をみると、なんとも不思議な名称だとは思いませんか?
これには有名なエピソードがあって、中国南北朝時代の医学者、陶弘景(456〜536)がこの名前をつけたと言われています。当時の遊牧民によると、羊が発情期この薬草をよく食べ、さらにオスはしっかりと勃起し、メスとの交配する回数や時間が増えるのだとか。その後、陶弘景がその草を現地で観察し、確かにその作用があると言うことで、「淫羊藿」という名前をつけたのだそうです。
このように、動物たちへの効果の観察から人間にも応用された生薬というのは少なくありません。現在の薬理学の動物研究でも、男性ホルモンの働きを強める作用があったり、免疫力を高めたりすることがあるといわれています。
その他、淫羊藿の強筋健骨作用では骨粗鬆症に、止咳平喘作用では抗菌や抗ウイルス作用、袪痰や咳止めや喘息を抑える働きが研究されています。特に、これらの中でも、陽虚の症状を伴うものには、もってこいということになります。
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