2012年11月22日

下半身の冷えを中医学でどう考えるか

 寒くなってくると、女性を中心に体の冷えを主訴に来られる患者さんが増えます。冷えの改善には、日本でも漢方薬が活用されますが、こちら中国の中医学でも同じです。ただ、冷えで困っている患者さんの数は、どうも日本人の方が多いような気がします。(あくまでも、私の感覚ですが。。。)

 一言に冷えといっても、強烈な冷えの人は本当につらくて、幾ら衣類を重ねても効果がないことが多く、とくに腰から下が冷たいだけでなく、場合によっては痛みも伴うことがありますし、冬だけでなく年中冷たいという場合も少なくありません。そして、冷えとともに風邪を引きやすいといった体質もともなっている症例も多いように思います。

 それでは、中医学や漢方ではどう考えるか?

 「冷えているから、温めたら良い」という発想は容易にできるかと思いますが、それこそ暖かい靴下を履いたり、お灸や薬用足浴の活用ということになります。内服する場合だったら、体を温める生薬を使えば?ということになりますが、残念ながらそれぐらいでは頑固な冷えの効果は高まりません。

 例えば、上海エリアの場合、この冷えは単なる寒さだけではありません。「陰冷」と呼ばれるように、必ず湿の存在があります。つまり、寒湿になっているのです。また、寒邪に体が襲われた場合、それが経絡の流れを阻害し、気血が滞り、瘀血が形成されることも忘れてはいけません。やはり、単なる脾腎陽虚だけでなく、瘀血や気血両虚、さらに肝が筋脈を主るという理論からも、考えるべき問題は広範囲になると思います。(冷えすぎたら、足の痙攣がおきる場合がありますが、まさに肝主筋脈と関係があります。)

 そうなると、単に温めるだけでは足りないことになります。やはり、ちょっと汗をかけるような太極拳やウオーキングなど運動は、気血の巡りには欠かせないことが分かるかと思います。

 では、生薬ではやはり活血養血の処方に、温陽や補肝腎を足すというのがよく使われます。また、場合によっては四逆散のように、疏肝理脾することもあります。四逆散の四逆とは、そもそも手足が冷える、少陰病ことを意味すると言われています。また、こうした患者さんの多くは、下半身に症状をもっていることが多いので、下向きに生薬の効能が高まるように、川牛膝や独活(うど)を使うこともあります。

 いずれにしろ、冷え対策は単に温めるだけでなく、広範囲で考える必要があります。




甘霖・我が愛しの上海へ

posted by 藤田 康介 at 17:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 脈案考察
この記事へのコメント
こんにちは。一週間ほど前に出産したのですが、ここ3日ほど下痢が続いています。出産前はこのようなことが無かったので、授乳の時に冷えたのか、それとも出産が関係あるのか悩んでいます。
ちなみに、悪露を早く出すという漢方薬を処方してもらい、3日ほど前から飲んでいます。これの副作用だったりするのでしょうか?
Posted by ひな at 2012年11月23日 15:11
 こんにちは。
 一般的に、中国で産後に処方されるお薬は大体見当がつきますが、漢方薬を一度止めてみることをお勧めします。下痢の回復をまってからにしてください。
Posted by 山之内 淳 at 2012年11月23日 16:11
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