2012年11月02日

頸部リンパ節炎に著効した牛蒡解肌湯

 中医外科で必ず勉強する『瘍科心得集』という清代の書物があります。中医外科では心得派に属する、高錦庭が書いた本ですが、温病学の影響を強く受けいます。ここに出てくる有名な処方に牛蒡解肌湯というのがあります。構成は、牛房子(牛蒡のタネ)・薄荷・荊芥・連翹・山梔子・丹皮・石斛・玄参・夏枯草(カゴソウ)で、原書にはグラム数が書かれていませんので、患者さんの症状にあわせて加減することになります。病因病機は、外感の風熱が、陽明の痰熱を導き、顔面部の風熱、頸部の痰毒、風熱の歯の痛みを発生させるというものです。そのため、全体の処方構成は疏風清熱・涼血消腫となっていますが、玄参・石斛など滋陰もフオローされています。

 さて、今回の患者さんは今週水曜日に来られた40代の女性。去年の秋頃から頸部リンパ節の腫脹があり、一旦西洋医学で抑えられたものの完治せず、2012年9月に頸部の違和感と腫れ、臼歯の痛みを訴えました。痛みはかなりひどく仕事での集中力を欠くほどで、来院。エコーでは左頸部リンパ節腫大を確認。甲状腺は異常なしでした。まさしく、「風熱痰皆発於頸項間」の症状に一致します。そこで、夏枯草どんと30gにして、この牛蒡解肌湯を2週間分処方しました。すると、服用中に大量に粘っこい黄色い塊のような痰が出て来て、あれほど苦しかった痛みがすっかりと軽快しました。

 このように、中医学・漢方の処方にはあっという間に効果が出てしまうものが結構あります。今後は、正気を補って、再発しないように処方を調節しています。参考までに。


posted by 藤田 康介 at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察
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