2012年04月22日

上海市科技奨の1等奨を獲得した、中医薬による肝硬変の治療

 2011年度の上海市科学技術奨の中で、上海中医薬大学附属曙光医院肝臓病研究所が長年研究を続けている肝炎後の肝硬変の中医学的治療の研究が1等奨を受賞しました。中医学系の研究で、1等奨を受賞したのは、かなりの快挙だと思います。

  上海中医薬大学の劉平教授らのグループが行った研究では、肝硬変の病因病機を「虚損生積」ととらえ、益気生精・補益虚損法による治療を考え出しました。今まで、中医内科の分野では、肝硬変が「本虚標実」であることは言われていましたが、この研究では、虚損と癥積との関係を古代の文献から分析し、慢性B型肝炎と肝硬変の証候タイプと、肝臓組織の病理学変化の相関点を分析し、肝線維化と肝硬変の中医学的な特徴をとらえていきました。

 私が興味深いと思ったのは、効能の違う方剤に対して、中医学の証の違いを組み合わせて治療すると、その働きも違ってくると言う点です。肝炎後の肝硬変では、気虚・血瘀がベースにあり、さらに肝腎陰虚・湿熱内蘊の証がよくでてくることを突き止め、肝臓病でよく使われる小柴胡湯と、伝統的な処方の中から、益気の黄耆湯・養陰の一貫煎・祛瘀の下瘀血湯・清熱利湿の茵陳蒿湯を比較し、その違いを炎症の抑制、ECM(細胞外マトリスク)への働き、肝シヌソイドへの作用を分析していました。

 さらに、ランダム化比較試験など現代医学の手法を使っての112例の肝硬変(ステージ4)患者を48周にわたって観察した結果、益気黄耆湯で肝機能を改善することもわかったようです。そこから、益気補虚作用のある生薬に、効能を高める組み合わせがあることも突き止めたようです。

 今回の研究成果のうち、肝硬変における「益気化瘀法」の治療方法は、すでに中医内科の治療ガイドラインに採用され、特許も6項目取得したとか。中国はB型肝炎の患者数やキャリア数が非常に多い国です。そのため、肝臓病にたいしても、かなり以前から中医学を科学的手段をつかっての検証がされてきています。今回の研究成果もその一環です。

 私も大学院に在籍していたころ、劉平教授の「科研思想と方法」という講座の講義を聴きました。日本留学の経験がある先生で、現代の科学的見地から中医学理論に切り込みをいれる様々な方法を提起されています。
posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察
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