2011年05月09日

「のぼせ」の中医学的なある考え方

 この時期の上海は、温度の浮き沈みが激しく、30℃を超えるような日もあれば、20℃前後というようなことも多々あります。それとともに、もともと冷え性であるのに、天気が暑いときに体がのぼせるような症状を訴える患者さんが少なくありません。

 「のぼせ」について、中医学・漢方では歴代からいろいろな処方があります。陰を補ったり、虚熱をとったりする方法以外にも、李東垣の「火鬱発之」というのも検討してみる必要がありそうです。とくに、昨今の現代人の冷えと関係のある夏の「のぼせ」の症状には使えそうな気がします。

 この「火鬱発之」というのは、陽気を発散させることによって、体の熱(火)を取り払おうという考え方です。主に、四肢に疲れがあり、体がだるく、皮膚の表面や筋・骨も熱く感じ、体を触ってみても、実際熱い、といったパターンです。外からの邪気が体を襲うパターンとことなり、体の中が不足している状態、すなわち虚であるときに発症するわけです。主に、夏前後のジメジメした暑い季節によくみられます。

 では、原因はなにか?ということになります。李東垣は消化器にあたる脾胃を重視した医学者であり、たとえば胃腸の働きが弱っているときに、冷たい食べ物や胃にもたれるような食べ物を食べたときに、脾の陽気が妨げられ、それが中で滞ってしまったときが考えられます。陽気が妨げられると、それが火となって「のぼせ」の症状を作り出すわけです。同様に、体内に「冷え」の状態があるときも、陽気の動きが妨げられます。

 陽気が妨げられると、気も妨げられるので、その結果血の生成に障害が出てきます。これが血虚につながり、これがまた虚熱の原因になったりします。

 李東垣といえば、代表的な処方に補中益気湯があります。これは脾胃の気を補って、気虚の状態を改善しようというものです。一方で、『各家学説』の教科書にも登場する昇陽散火湯という処方もあります。(升麻・葛根・独活・羌活・白芍・人参・生甘草・炙甘草・柴胡・防風)処方からみて明らかなように、補中益気湯とひかくしても、処方全体が軽い性質の生薬で構成されていて、陽気の上昇に重きを置いていることがわかります。一方で、人参で気を補い、さらに白芍で陰をおさえ、さらに生甘草で虚の火をさげます。そのため、皮膚表面の熱さやのぼせには有効的であるというわけです。

 小さな処方かもしれませんが、いろいろ考えられていることが分かりますね。これぞ、中医学の醍醐味だと私は思います。
posted by 藤田 康介 at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬
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