2011年03月23日

安宮牛黄丸と1993年の謎

 中医学の世界にいると、結構色々不思議な現象を耳にすることがあります。その中でも、特に多いのが「安宮牛黄丸」という丸薬。中医学の方剤学の教科書にも載っている処方なのですが、色々と秘話が多いのもまた事実です。

 成分は、牛黄(牛の胆嚢の結石)、鬱金(ウコン)、犀角(クロサイの角)、黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)、山梔子(クチナシの実)、朱砂(硫化水銀)、梅、麝香(ジャコウジカの分泌物)、真珠、金箔などが含まれています。

 先日も、上海中医薬大学附属竜華病院の腫瘤科の主任から、その昔、臨床で安宮牛黄丸を実際につかったときのエピソードを伺いましたが、脳梗塞で意識を失ったり、高熱で意識がもうろうとしているときなど、服用させると意識が戻るといったことをよく聞きます。(私自身はまだそういった臨床経験はありません。)

 古い薬局には、そうした丸薬が残されていることもあり、この主任のお話を伺ったときも、丸薬を探しに中医薬局を問い合わせたそうです。

 この安宮牛黄丸ですが、中身の生薬がまたすごい。昔は天然産のものが使われた麝香や犀角、牛黄などが含まれていました。ところが、生薬資源保護のため、中国では1993年からこうした生薬の使用が禁止になりました。そのため、今では投資の標的になってしまったという皮肉な話。

 今の処方では、麝香が人工合成されたものとなり、犀角は水牛の角にかわり、牛黄は体外で培養された結石になってしまいました。はたして、これが本当に薬効があるのか?というのがこの投資話の理由です。

 中国衛生部では、人工のものも天然のものも薬効に大きな変化はないと言っていますが、それでも1993年以前に生産された安宮牛黄丸は、大変重宝されています。実際、1粒で1万元というとんでもない価格がついているのもあるようです。人工で作られた物は、1粒100元前後で手に入ります。

 いずれにしろ、こういった高価な薬は、決して不老長寿の薬ではなく、いざというときのためも緊急時の薬です。鍼灸の世界でも「醒脳開竅法」がありますが、脳をはっとさせる(覚醒させる)開竅の働きがあるものなのです。

 ちなみに、方剤学では安宮牛黄丸と紫雪、さらに至宝丹をあわせて「三宝」と呼びます。いずれも、高価な生薬を使い、いざというときに力を発揮する丸薬として、伝統的な中医薬局では大切に保存されています。
posted by 藤田 康介 at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬
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