オリジナルの処方は丸薬です。蜂蜜で固めるいわゆる蜜丸でしたが、現代ではエキス剤やカプセルなどでもあります。主成分は乾地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮です。肝腎陰虚と呼ばれる腰痛や耳鳴り、盗汗、のぼせ、喉の渇き、腰のだるさ、夢精、陰虚が原因の歯の痛みなどの症状で非常によく使われます。
2011年第2期の『中華中医薬雑誌』で、山東中医薬大学の研究グループが、六味地黄カプセルをつかって、肝腎陰虚タイプでの男性不妊症の精子の運動率を高め、精子の奇形率を改善し、DNA損傷を防ぐ働きがあることを発表していました。
現代医学では、六味地黄丸の処方の抗酸化作用やフリーラジカル除去、免疫力強化などの働きが分かっています。こうした作用が、曲精細管にある精子形成細胞など関連細胞に作用して、精子のDNAの保護に役立っているようです。
男性不妊症の治療において、中医学の腎の考え方は非常に大切ですが、こうした精液の各検査指標の改善からも、腎を補う薬の役割を裏付けられることになります。
一方で、ニュージーランド・オークランド大学の研究では、男性がビタミンEや亜鉛などの抗酸化物質を服用すると、生殖能力を高めることができるという臨床結果を発表していました。不妊症治療のうち、その40%以上で男性に問題があるといわれているなか、その80%で精子が酸化されてしまったり、数が減少してしまったことにその原因があります。そこで、抗酸化物質が注目されたわけですが、実験では抗酸化物質の活用で、男性の生殖能力が4倍に高まったとして一定の成果があるとしています。
いずれにしろ、補腎系の生薬が男性不妊の治療になんらか役立つことは確かなようです。
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