2011年01月15日

中医骨傷科(整形外科)の骨折で使う挟板

 中医学では、それぞれの科に細かく分かれていますが、上海で有名な分野に整形外科にあたる中医骨傷科があり、石氏傷科や魏氏傷科などが今でも伝えられています。私が以前いた上海中医薬大学付属竜華医院では、石氏傷科が有名です。

 そこで、先日、うちの中医クリニックに石氏傷科の先生をお招きして勉強会を開きました。テーマは、中医学の骨折の時に使う挟板(きょうばん)です。我々内科系の医師からすると馴染みが薄いですが、中医学の特色でもあります。

 現代の若い世代の中医学の医師は、骨折の時に西洋医学同様に石膏を使うことが多く、なかなか使うチャンスがない挟板で、技術継承のピンチにもなっています。ただ、石膏で固定するのと比べると、メリットも多いため、今後の活用が期待されるはずなのですが。

 まず、挟板ですが、写真のようなものです。大きさが色々あり、患部によって使い分けます。

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 晋の時代から、このような竹などで作られた挟板は骨折の治療で使われていて書物にも記録が残っています。高齢者によく見られる手首の近くの橈骨(とうこつ)骨折、すなわちコーレス骨折を例に挟板を使って固定してみると、写真のようになります。

jiaban-2.jpg

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 この写真をみて分かるように、石膏を使って固定するのと違って、上下の関節は固定しません。腕の周りに4本の挟板を使い、その周りをヒモで縛ります。また、骨折によるずれが発生体場合も、挟板は有効で、先端部分に綿などを使って患部を押さえて固定します。

 挟板を使うメリットとしては、しっかりと固定ができるので治癒するまでにかかる時間的負担が短くすみ、筋肉の衰えや関節の強ばりを防ぐことができ、費用も安いなどがありますが、医師の技術的なトレーニングがかなり必要なため、一定の経験が必要です。また、関節部や湾曲している部分には使えないという欠点もあります。

 一方で、挟板では石膏と違って完全に密封されているわけではないため、中医薬の生薬外用薬も使え、治療効果を高めますし、理気や活血系の生薬の内服薬を活用して内外から治療します。ポイントは、骨の問題だからということで、あまり早くから補腎を使わないことです。一般に、2-3ヶ月してから補腎系の内服薬を処方します。

 また、骨折時に石膏ギブスを使った場合でも、中医薬との併用は十分考えられます。中医学の世界では、石膏は体を強力に冷やす生薬と考えられてるため、長期間患部に接することは血行などを妨げてしまいます。そこで、中医薬(漢方薬)を使うときは、温経通経・祛寒系の生薬を使って、寒邪が経絡の奥に入り込まないように気をつける必要があります。
posted by 藤田 康介 at 13:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力
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