2010年12月12日

1g約1万円、生薬・冬虫夏草はどこへ行く

 正直、最近の生薬価格の上昇には、中医学や漢方をやっている関係者からするとかなり頭が痛い。もちろん、中国全体の中医学に関係する産業に影響を与えているのですが、例えば、風邪薬でお馴染みの板蘭根(バンランコン)の場合、10月ごろは10gで0.38元程度だったのが、12月に入って、0.63元ぐらいにまで値上がりしました。

 こちらはメデイアでも報道されましたが、子供の食欲不振や咳、不眠などにも使う太子参が、高騰し、今では10gで1.5元近くします。さらに、品切れということも。太子参などは、栽培もされているので影響は少ないように私も思っていたのですが、どうやら中国内陸部の気候不順で、それが影響を与えているらしい。そして、さらに投機マネーも生薬市場に流れ込んでいるというのだから、これは困ったものです。

 値段の問題でいると、高いと1gで1万円(約700〜800元程度)することもある冬虫夏草の問題は、もっと深刻です。黄金よりも高いですね!
 臨床では、私自身滅多に処方することはありませんが、それでも肺がんであったり、喘息であったり、肺疾患では使うことがあります。冬虫夏草自体、性質が穏やかなので、咳止めや免疫力を高める作用は注目されていますし、今では肝硬変、慢性腎不全やネフローゼの治療でも使います。

 冬虫夏草は昔から野生の人参や鹿茸(ロクジョウ)などとともに高価な薬として重用されていましたが、なんせ、標高3000メートルという高原に生息するため、手に入れるのが難しい生薬でもあります。そのため、冬虫夏草の乱獲が進むと、生態系への影響が懸念されています。

 冬虫夏草というのは、鞘翅目昆虫の幼虫に真菌が寄生し、春になると、真菌の部分が地面から顔を出します。そして、草のように地面に生えてくるわけですが、これを収穫するためには、地面を掘り出す必要があり、これが環境破壊につながるというわけです。

 冬虫夏草の中でも、一般的に青海省玉樹や果陽のものが品質的にもよいとされていますが、このエリアは黄河の大切な水源でもあります。過去、2回にわたって黄河の流れが止まってしまったのも、こうした環境破壊と関係あるとも言われているのです。

 皮肉なことに、人々の健康への意識が高まるにつれて、冬虫夏草のような高価な生薬が好まれ、さらに投機マネーの対象となってしまいました。商売人からすると、いいもうけ話かもしれませんが、患者さんや我々医療関係者からすると本当に頭の痛い話です。
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/42084387
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック