
知り合いの薬剤師さんから、珍しい生薬を分けてもらいました。
私もまずお目にかかることがありません。
それは「馬銭子(マチンシ)」と呼ばれる植物マチンの種で、猛毒を持っています。臨床で使うことは滅多にないのですが、優れた痛み止め作用があるため、外用薬では今でも使われることがあります。
過去の文献などをみてみると、四肢の痺れや痙攣、リウマチなどの痛みの治療に使われたようです。狂犬病や筋無力症の治療でも使ったような記録がありますが、現在では殆ど使われることはないと思います。内服する場合の量は、炮製しても0.3〜0.6グラムとほんのわずか。
ただ、毒性が強いこういった生薬も、中医学では「毒で以て毒を制する」的な考え方が昔からありました。その中でも有名なのが、砒素を含む中医薬で急性前骨髄性白血病(APL)を治療したという例です。今では、このメカニズムが上海交通大学付属瑞金医院のグループで研究され、その論文を『サイエンス』に発表、一躍有名になりました。将来、ヒ素を使った癌治療の分野でも新しい発見があるかもしれません。
とすると、こうした毒のある生薬の中に、将来、なにか大きな成果に繋がる作用が発見される可能性が十分にあります。ただ、そうした生薬を使いこなせる医師が減ってきていることは残念なことです。
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中国には、日本で聞き慣れない生薬の多さにびっくりしています。
伝統ある生薬から難病をなおすことのできる可能性があることにわくわくしてきました。
今後が楽しみですね。
天津におられるのですね。上海はすっかり寒くなりましたが、そちらではこの比ではないでしょうね。
生薬は本当に様々なバリエーションがあり、今でも日々発見の連続です。生薬薬局の棚を覗くのは楽しいものです。