
11月初旬に、学術大会の関係もあり、鹿児島を訪問していたのですが、そこで教えていただいた葛の専門店「天野屋」を訪れてきました。鹿児島県垂水市の名産物で、この薩摩の国の周辺で自生する葛根を原料にしていて、いま日本では殆ど手に入れることが難しい珍しい本葛です。
「天野屋」さんのお話では、最近、日本ではインチキ葛粉が多く、ジャガイモやサツマイモのデンプンを混ぜたりしていることが多いのだそうです。白い粉を作り出すには、良質な水も必要で、この垂水市付近には名水も多く、精製するのには好都合だということでした。

中国の中医薬局でよく使われている葛根はこんな感じです。精製する前ですから、現物がはっきりと分かりますね。中医学では発熱のある風邪や頭痛、下痢、解熱、麻疹の初期などにも使われるのですが、こうした効能からも、日本で葛根湯が使われる守備範囲が広いことが分かります。
葛自体だと、カゼや下痢、食あたり、肩こり、中耳炎、神経痛、扁桃腺炎、最近では糖尿病の治療、アレルギー関係、アトピーなどでも使われます。高血圧が原因の頭痛や、耳鳴り、突発性難聴などでも処方されることがあります。ただ、一般的には他の生薬と配合することが多いです。

いずれにしろ、こうした天然の食材が鹿児島で手に入るのは結構なことです。薬草にはまだまだ秘められた力が沢山ありますからね。
ちなみに、中医学での葛の花は、お酒の飲み過ぎに、腹部膨満感や食欲不振などで処方します。
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