(上海にて)
2018年3月23日に上海市科学技術奨励大会が開催され、2017年度に上海市で大きな功績のあった研究プロジェクトに関して、表彰が行われました。西洋医学や中医学に関係なく、科学技術全体に関する成果の表彰であり、いま上海でどういう最先端の研究が行われているかを垣間見ることができます。
2017年度の受賞は272項目、このうち21項目は自然科学奨、31項目は科学技術発明奨、216項目が科学技術進歩奨となり、このうち上海中医薬大学が行った中医学に関係する研究テーマ3項目が1等奨を受賞しました。一度に1つの中医大学から3項目というのはかなり異例ですし、過去に例がなかったと思います。また、上海中医薬大学以外では、5項目で3等奨を受賞しています。ではどういう研究テーマだったか、いずれ詳しく紹介しますが、今回はまず簡単に見ておきます。
まず、中医整形外科の専門家、王擁軍教授らのグループが研究した「腎精虧虚型慢性病の共通する治療・予防規則と応用の普及」で、腎精虧虚型慢性病の病因病機、臨床証型、病理変化など共通した変化規則を捉え、補腎填精法による治療から、その科学的なメカニズムを解析した研究となっています。
また、中医鍼灸科の専門家、呉焕淦教授らの研究グループが研究した「灸法による免疫機制におる作用と臨床特色技術の応用」に関しては、艾灸による温補補腎・調和陰陽の治療観点から、艾灸温脾補腎・蠲痺通絡・調和陰陽の治療方法をベースに、関節リウマチ(RA)の治療など特色ある治療法を提案しました。特に、艾灸を活用した温脾補腎理論は新しい考え方として注目されています。
上海中医薬大学の基礎医学院、中医診断学研究室の何建成教授らのグループが研究した「複雑性科学理論に基づいた鬱血心不全(CHF)の中医弁証系列研究と応用」では、まず病証結合を原則からCHFの中医症候の動態変化理論体系と中医症候の計量化診断基準を定めました。さらに、西洋医学の遺伝子・タンパク質・心筋のエネルギー代謝などの多方面から考察し、CHFの中医症候の科学的な内面を示し、「舌体液の変化」という従来無かった中医症候の新しい診断指標を示しました。さらに、CHF治療のための複方心複康口服液を開発し、益気養陰タイプの心不全に対して、広く臨床で使われるようになりました。
このように、中国の中医学は、年々新しいテーマを捉え、様々な研究成果を出してきています。積み上げられた中医学の伝統的な経験を、現代の研究手段でさらに磨きをかけたものにする試みが、今まさに行われているのです。
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