
上海地区の子供の肥満の問題は、上海ではかなり前から問題になっています。最近、上海で7〜16歳の子供たち9,000人を対象にした調査では、体重が正常だった人が72.1%、やせ気味だった人が6.9%であったのに対して、肥満もしくは体重超過気味だった人の割合は21%にもなっていました。肥満の原因はいろいろ考えられますが、これまでの研究では、遺伝的要素は30%にすぎず、環境的な要素が大きいという結論になっていました。さらに最近の研究では、環境的要因に抗生物質が関わっていることが分かってきました。(関連記事は2014年にも
中国のもう一つの抗生物質濫用問題
で書いています。)
復旦大学公共衛生安全教育部重点実験室と復旦大学公共衛生学院の共同研究が、『Environment International』に投稿され、上海で大きな話題を呼んでいます。
その結論は、
「子供の尿を調べると、家畜向けの抗生物質は動物用の抗生物質暴露が、子供の肥満や体重増加に明かな相関性があり、食品による抗生物質の暴露と子供の肥満リスクの間には正の相関関係があり、こうした抗生物質の源は汚染水と食物から体内に入っているとみられている」
ということででした。
この研究では、2010年から2014年にかけて上海・浙江省・江蘇省の子供たち1,500人分の尿を集めたほか、さらに2013年には上海地区の8歳から11歳の586名に対して尿中に含まれる抗生物質を分析しました。このなかで、79.6%の尿中に21種類の抗生物質が発見されました。そのうち、マクロライド系が5種類、βーラクタム系が2種類、テトラサイクリン系が3種類、キノロン系が4種、サルフア系類が4種類、クロロマイセチン系類が3種類とのこと。
さらに、尿中に含まれていた抗生物質の濃度を高・中・低に分類し、年齢・性別・収入・喫煙状況などの要素を加味して分析したところ、高濃度の子供が肥満になるリスクは、低濃度の子供と比較してリスクが1.99〜3倍になるとしています。おそらく、抗生物質が脂肪の生成と関連しているのではないかということです。
実際、家畜と抗生物質は、切っても切っても切り離せない問題だと思います。特に鶏の飼育は、アヒルに比べて難易度が高く、病気がきっかけで全滅してしまうことも珍しくない。これは農民達ならよく知っている事実です。だけど、そうした食材への需要は高いわけで、本来は十分に気をつけて育てないといけなく、手間暇とコストがかかるわけです。湖南省で有機農法を頑張っている農民達も、水が農薬や抗生物質に汚染されないように細心の注意を払っていました。それぐらい敏感な問題なんです。
ちなみに2013年のデータでは全世界の抗生物質の半分にあたる16.2万トンが中国で消費され、このうち52%が動物用で、48%が人間用。人間用は高濃度であっても使用期間は短期間ですが、問題は自然環境に低濃度で存在する抗生物質。長期にわたって暴露されると、何らかの影響が懸念されます。
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