中医学に携わっているものからすると、毎日のように使う生薬の一つに、当帰(とうき)が入ってくるのではないでしょうか。
奈良県各地では当帰が栽培されていて、大和当帰(ヤマトオウキ)として徐々に盛り上がってきています。地元今井町でも、田原本の大成漢方薬局さんが薬膳料理のお食事処「やくぜん」を今井町4丁目でやっておられ、当帰料理をいただくこともできます。
今日はここで当帰酒作りの実演があったので、聞きに行きました。
当帰酒というのは、薬味酒と呼ばれるジャンルに属し、家庭では消費分に限って製造が許されているそうです。「酒」という字が付くと、いろいろ規制がうるさくなるのですね。中国では伝統的に米酒を自宅で作ってしまうところもあったりします。
さて、当帰の場合は7ヶ月浸けておくようです。もちろん程度をみて飲んでみても構いませんが、ただ、当帰そのものの味に好みが分かれるかも知れません。
一方で、生姜は橿原エリアで古くから栽培されていたようです。地元橿原市でも生姜の普及に力を入れていて、メニュー開発もされているとか。詳しくはこちらから。
藤原京の木簡からも生姜に関する記載が出土しており、橿原エリアでも栽培されていました。今日は試食で大和生姜の天麩羅を頂きましたが、ちょっとピリ辛で良い風味を出していました。中華料理では生姜を使うレシピがとても多いので、そのあたりを研究してみるのも良いかも知れません。うちの妻も家庭料理には生姜は必需品で、効能云々以前の問題ですね。
さて、漢方をやっている方なら大和当帰と大和生姜とくれば、『傷寒雑病論』の当帰生姜羊肉湯を思い出しますが、これはちょっと薬臭くて、味が今ひとつだと思います。でも2000年前からこうして使われています。
中国本場の中華料理でしたら、一般に当帰とニンニクを組み合わせることが多いです。当帰特有の臭みが取れるからですね。当帰・ニンニクと鶏肉なんかも美味しいと思います。日本では法律の関係上、葉っぱしか食材として使えませんが、中国では本来は根っこを使います。
当帰は一般に、中医学では補血薬に入りますが、その他に血虚系の便秘や咳喘など呼吸器疾患でも使われます。伝統的には、当帰の頭・身・尾で効能が違うと言われていますが、ただ現代医学の研究では違いがなかったようです。何れも子宮の平滑筋を収縮させる働きが確認されています。
一方で、生姜はあらゆる料理で日常的に使います。残念ながら、日本ではここまで使いませんよね。豚生姜焼きや中国でも有名ですし、家鴨の臭みをとるのにも生姜は便利です。それ以外にも、かぜ薬やムカつきなんかでも重宝します。
色々新しいメニューを開発することも大切ですが、こういう伝統的な食材には、古くからのレシピがなんらかの形で残っているはずですし、それらを発掘してみたいですね。
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