
今回、ノーベル生理医学賞を受賞した屠呦呦先生の研究で、一躍脚光を浴びている青蒿。そこから抽出されるアーテミシニン(青蒿素)が研究の発端になっているのですが、そのまえにこの青蒿とはどんな薬草なのか?
中医学の世界では、結構日常的に使われる薬草です。分類的には清虚熱に属し、主な効能は虚熱をとり、涼血と解暑、載瘧などが中国の教科書に書かれています。
有名な処方では、温病学で使われる青高鼈甲湯やマラリアの症状とも考えられている瘧疾で使われる蒿芩清胆湯などがあります。古典の文献で瘧疾の治療で青蒿が使われたという記録は晋代の『肘後備急方』にあり、大量の新鮮な青蒿の汁を使っていたようです。これは、伝統的な煎じ方では、加熱するのでアーテミシニンが破壊されてしまうという現代の研究にも一致していることが分かります。しかし、昔の人はどうやって気がついたのでしょうか?
問題は、青蒿の中には多くの種類の植物が含まれているというところです。代表的なのには青緑色している青蒿(Artemisia apiacea Hance)と黄色している黄花蒿(Artemisia annua Linn)、牡蒿(artemisia japonica Thunb. オトコヨモギ)があります。さらに黄花蒿は別名で臭蒿と呼ばれたりしており、地域によって様々な名称があるのです。このうち、マラリアに効果があるのは黄花蒿であり、青蒿(Artemisia apiacea Hance)にはアーテミシニンは含有されていないということ。それでも青蒿のグループに整理されていますので、青蒿には変わりなく、この薬草名と学名の関係は、中医学が抱える大きな問題の一つでもあります。屠呦呦先生はそういった青黛の品種の研究もされていました。
日本語でも生薬名は漢字を使うため、同名でも日本と中国で果たし同じ薬草を使っているのか?ということを確認する必要があります。オトコヨモギもその典型ではないでしょうか。
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