
江蘇省中医院は、南京市の上海路にあるとても大きな病院で、単独の中医医院としては中国一の規模を持ちます。ここに、腎臓内科の首席主任である孫偉教授を訪れました。孫教授は、中医腎臓病の専門家で、江蘇省の腎臓病の大家である鄒燕勤教授の流れをくみます。私も、上海中医薬大学で腎臓病の研究をしていたときに、研究面でもいろいろお世話になりました。その後は、学会活動などを通じて交流が続いています。

江蘇省中医院の腎臓内科はとても大きく、病棟の中では最も多いベッド数を持っているとか。慢性腎不全となると、透析がどうしても必要となりますが、中国の場合、経済的負担も大きいため、少しでもその導入時期を後ろに伸ばす必要があります。確かに、日本並みに透析をするようになったら、中国の公的保険では負担しきれないのが現状です。
慢性腎不全を中医学で治療する方法は、各地それぞれの特徴がありますが、共通していえることは腎機能そのものの正常化を目指すのではなくて、クレアチニン値をすこしでも下げて、quality of lifeを高めることに重点が置かれています。
さて、その基本的思考法は「腎虚湿(熱)瘀」となります。つまり、腎虚を基礎とした湿熱と瘀血を中心に考えた病因病気は、現代医学における腎疾患とのとらえ方に近いところもあり、参考にできるところも多いです。その中でも、黄耆の使い方に注意されています。それは、先生が書かれる多くの処方箋の1つめの生薬が黄耆で始まっているところからも理解できます。

ところで、孫偉先生は今回訪問した中医学の専門家の中で、唯一の病院系統の専門家で、その多忙さはすさまじいい。朝7時には病院に出勤して仕事を片付けておられるとか。また、週末も各地に飛んで勉強会の講師なども務められます。大学時代は日本語を専攻されていて、さらに東海大学に留学経験をお持ちですが、残念ながら日本語を使う交流があまりないとか。やはり、こうした日本語の背景をもっておられる先生方とも、中医学の学術的に交流するチャンスを作っておかないといけないですね。折角、中国の大学の外国語教育に日本語があるのに、勿体ない限りです。
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