2015年01月08日

日本漢方の桂皮と中医学の桂皮・桂枝・肉桂

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 まったくもって生薬の名前というのはややこしい。そもそも日本と中国とで同じ漢字を使っているから、混乱が生じてしまうのでしょうね。

 たとえば、日本漢方でも中医学でもよく使う桂枝。
 
『傷寒論』の桂枝湯にも使われますが、発汗解表・温経通陽の効能で、性味は辛・甘・温となっています。非常に使用頻度の高い生薬でもあります。

 日本の場合は、桂枝湯で使われる桂枝は、桂皮と呼ばれています。難波恒夫先生の『生薬学概論』をみても浙江省を含む、中国南部に生息しているCinnamomum cassia BLUMEの木の皮と言うことですので、中国ではおそらく肉桂と呼ばれているものに相当すると考えられます。山田光胤先生の『くらしの生薬』にも、日本ではニッケイと呼ばれる近縁種があり、その根皮はニッキと呼ばれ、採取して桂皮として使っていたらしいとあります。桂皮がニッキ(肉桂)となってしまったのもなんとなく検討がつきます。ただ、今では日本の肉桂は専ら調味料として使われていますよね。あめ玉とかにも入っていますし。

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 では中国での桂皮がなにかというと、これは上海市内のスーパーにも調味料として売られていて、天竺桂(Cinnamomum japonicum Sieb)もしくは陰香(Cinnamomum burmannii(Nees)Bl.)の木の皮で、俗称を「土肉桂」と呼んでいます。我が家でも中華風の煮込み卵を作るときは桂皮を使っても、肉桂はつかいません。桂皮と肉桂は区別されていますし、味も違います。

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(左が桂皮、右が桂枝)

 じゃあ、現代中国の場合の桂枝はクスノキ科の肉桂(Cinnamonmum cassia Presl.)の若い枝となっています。こちらの大学の教科書にもそう書かれていますし、薬局にある煎じ薬の生薬を取り出してきても、やっぱり「枝」です。しかも細い木の枝ですが、これがもし生薬「肉桂」となると、薬棚からは当然木の皮が出て来ます。以上の違いがあっても、もともとは同じ植物なので中国では桂枝(肉桂)と書かれることが多いです。

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 ただ、桂枝に関しては、中国でも時代によってその形態が違うことが分かります。『中華本草』には、唐宋以前の桂枝は細い木の枝の皮であったものの、宋代の『本草別説』によると、柳枝といって枝そのものを使っていたことがあるようです。清代になって、この柳枝が今のような桂枝の使い方になったという説になっています。ただここで言えるのは、あくまでも桂枝は細い木の枝が使われていて、木の幹の部分の皮をつかう肉桂とは区別されていたということです。

 一方で、中国における肉桂と桂皮の香りの違いは結構はっきりとしていて、桂皮は肉桂と比較してももう少しキツイというか濃い香りがし、肉桂は比較的すっとした香りがしました。当然、肉桂と桂枝の香りは似ていますし、肉桂や桂枝を口に含んでみると、ほのかに甘みを感じます。

 このように桂枝と肉桂は同じ植物であるのですが、中医学上ではその効能が微妙に違っています。いずれも体を温める働きがあり、陽を高めてくれますが、桂枝は辛温で上に行くことを好み、四肢の冷えを改善してくれます。一方で、肉桂は辛熱で下半身を温めるときに使います。作用する場所がちょっと違いますね。

 いやいや、こんなことを考えていると、私の書斎にはサンプルとして買って来た桂枝、肉桂、桂皮の香りがプンプンしてきました。生薬の世界は複雑怪奇ですがとても魅力的ですね。

 ちなみに、我が家の台所には、調味料として桂皮を常備していますが、肉桂は薬として使っても中華料理の調味料として登場することは少なそう。

東和クリニック・中医科での担当スケジュール
posted by 藤田 康介 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬
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