2018年02月21日
大和当帰と大和肉鶏と大和生姜の組合せ〜当帰鶏肉湯という中国料理方式での食べ方と乳管開通
奈良県の美味しい特産物がなかなか見つからない、食べ物に関しては「地味」だとよく言われるのですが、実は奈良県では美味しいものが沢山収穫されます。
詳しいことは奈良県特産品振興協会のサイトを見ていただくとして、今回は奈良県人の1人として、ぜひお薦めしたいのが、奈良の食材を使った当帰鶏肉湯という食べ方です。もし当帰の根っこが手には入ったら是非お薦めです。もちろん、当帰の葉っぱでも使いますが、中国では葉っぱはまず食べません。
上海に20年以上暮らしていると、上海人の鶏肉好きはかなりのもので、結婚式などめでたいことがあれば鶏はとく登場します。中国では鶏肉というと野山で走っている地鶏一羽全体を調理するのが最高の贅沢の一つなのですが、実は奈良県もかつては家々で鶏を飼っていました。特に、「大和かしわ」は大正から昭和にかけて近畿圏ではかなり有名なブランドでもあり、京都のかしわ料理でも使われていました。ところがブロイダーが増え「大和かしわ」は一時衰退、それが1970年代から復活に向けて研究が進められ、「大和肉鶏」が生まれました。
「大和肉鶏」には、軍鶏(しゃも)の血統が入っています。そのため、かなり気性の荒い地鶏だそうですが、それがしっかりした歯ごたえを作り出しているのかもしれません。中国でもブロイダーよりも地鶏が好まれるのが、やはりこの肉の歯ごたえの違いです。鶏湯(鶏肉のスープ)にすると、その違いがはっきりと分かると思います。
ちなみに、中国伝統医学(中医学)でも鶏は、甘温性質なので、虚弱体質や栄養不良、病後の回復、食欲不振、下痢に使いますが、もう一つ大事な功能に産後の母乳不足にも食べられます。
有名な組合せに、当帰鶏肉湯というのがあります。実は、これ、我が家では大和当帰が手に入ったときの定番料理です。当帰は葉っぱよりも根っこの方が甘みがあり、スープにいれると美味しいのです。我が家では、鍋の定番です。そこに、味付けとして橿原市も栽培に頑張っている小ぶりな大和生姜のスライスがあればベストですが、大和地元の野菜なども組み合わせると、薬膳なんか難しいこと言わなくても美味しい鍋料理が出来てしまうわけです。これぞ奈良の今井町でも広まって欲しい食べ方です。
当帰は皆さんも聞いたことあるのではないでしょうか?当帰芍薬湯を日本の漢方の婦人科で処方され、何ヶ月も服用していたという患者さんの話はよく聞きますが、その中にも当帰が入っています。当帰については、大和当帰と大和生姜、もっと活用出来ないだろうか?でも触れています。
これに関しては、中国で興味深い論文が発表されています。2017年7月の『中国当代医薬』という雑誌に発表されたものですが、産後直後の乳管開通前に、乳房が腫れたり硬結ができたり、乳汁が十分に出なかったりすることがあり、甚だしい場合は、悪寒発熱や急性化膿性乳腺炎になったりしてしまい、お母さんにとってもかなり厳しい状態になってしまいます。
そこで深セン市南山区婦幼保健院の張医師らのグループは、乳管開通前の乳房の腫れや痛み、硬結があるお母さん400人を200人ずつに分け、当帰頭50g、500gの鶏肉一羽に水1000CC加え、2時間ぐらい800CCになるまで煮込み、上澄みの油を取り除き、生姜と塩を入れて味を調え、1回200CCを1日3〜4回飲むという方法を痛みが解消するまで飲ませました。双方のグループとも乳房のマッサージは同様の方法で受けます。その結果、乳房の張りの解消は、当帰鶏肉湯を飲んだほうが有意義に早く解消し、硬結や痛みの程度も有意義に軽く済み、完全母乳率も有意義に上がったという結果になりました。当帰鶏肉湯もなかなか産後のお母さんには有用のようです。
鶏湯(鶏スープ)や、鶏粥なんかは定番でしょうが、鶏そのものの本来の味を楽しむのなら、私は中国南方エリアでよく食べられる白切鶏が一番ではないかと思います。
これは、鶏を熱湯のなかでぐつぐつ煮て火を通した後、醤油・生姜・ゴマ油などのタレで頂くという極めてシンプルな料理。鶏肉の味をダイレクトに楽しむことができる食べ方で、上海地元のソウルフードの一つだと思います。
せっかく絶品の大和肉鶏が食べられる奈良県で、唐揚げにして食べてしまうのはどう考えても勿体ない。鶏一羽をキレイに食べてしまえる食べ方を、ぜひ研究していきたいものですね。
参考情報:奈良発の食文化
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