2014年05月28日

上海・東和クリニックで新スタート

 久しぶりのブログ更新です。
 日本にすこし戻ったりとバタバタしておりました。

 5月27日に衛生局から登録医ライセンスの更新が完了し、いよいよ東和クリニック・中医科での仕事が本格的にスタートすることになりました。

IMG_1475.jpg

 東和クリニック総院長の唐堂先生とは、上海日本人医師会を通じて、かなり前からお世話になっておりました。以前から声をかけてくださっていたのですが、中国の制度上の問題でなかなか実現しませんでした。中国人と同じ中医師ライセンスを持っている数少ない日本人医師の一人として、上海在住の日本人や中国人の患者さんへのサポートを続けていきたいと思っております。

towa.jpg
 
 ちなみに、私の上海人の妻ですが、上海中医薬大学時代の同級生で、中医全科(ホームドクター)・鍼灸科の主治医ライセンスを持っており、彼女の日本語研修の目的も兼ねて、これから東和クリニックでアシスタントとして私の診察のサポートします。

古北クリニック院内写真.jpg

 まだまだいろいろと未熟なところもあるかと思いますが、これからは夫婦二人三脚でどうかよろしくお願い申しあげます。

 担当スケジュールは以下の通りです。

浦西 東和クリニック(浦西古北) 
所 在 地:上海市長寧区栄華東道88号3F(華一銀行上)
診察日:木・金・日
診察時間:9:00〜19:00
予約電話:021-52046123


浦東 東和クリニック(浦東日本人学校隣)
所 在 地:上海市浦東新区錦康路5号
診察日:水・土(月・火は要電話問い合わせ)
診察時間:9:00〜18:00
予約電話:021-50179407

初診・お問い合わせホットライン:13901981788(藤田)
お問い合わせメール:info@mdfujita.jp(藤田)

私の担当スケジュールはこちらからも確認できます。

posted by 藤田 康介 at 10:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2014年05月14日

上海の小児科名処方、温下清上湯

 IMG_0883.jpg


 先日行われた上海市の医師免許更新試験の練習問題でふと思い出しました。

【問題】患儿,2岁。时值夏季,发热持续1个月余,朝盛暮衰,口渴多饮,尿多清长,无汗,面色苍 白,下肢欠温,大便溏薄,舌淡苔薄。治疗应首选
A.白虎汤
B.新加香薷饮
C.温下清上汤
D.竹叶石膏汤
E.王氏清暑益气汤


 この問題の答えは、紛れもなくCなのですが、この処方は実は近代の上海で登場した名処方で、今では中医小児科の教科書にも出て来ます。夏の発熱だからと言ってくれぐれも新加香薷飲を選んでしまわないように。


 温下清上湯は、中国南方でよく発生する子供発熱、所謂「疰夏」で使う代表処方で、頭や上半身が熱いのに、足が冷えている、口渇があり、水もよく飲むのだけど小便の色は濃くないという症状で使われます。病邪が体の上にいるのに、下半身は陽虚というもの。処方の成分は、黄連・附子・磁石・竜歯・菟絲子・覆盆子・桑螵蛸・天花粉・縮泉丸(烏薬・益智仁各等分)となっています。

 処方を考えたのは、上海出身の中医小児科の大家徐小圃先生。この処方が生まれたのは、1930年代に上海エリアを含む中国南方で流行した夏の発熱で、もの凄い数の患者が病院を訪れたのだそうです。この発熱の特徴として、頭が熱いのに手足が冷たいというのがあり、徐小圃先生が病機として上実下虚に着目、この温下清上湯のベースとなる連附竜磁湯を思いつかれました。通常はこの処方だけでなく、弱った胃腸の調子を整えるために棗・蚕で作ったお茶も飲ませたそうです。その劇的な効果から、処方は今でも伝わり、こうやってテストにまで出題されるようになっています。

 ちなみに、上海における徐小圃先生の小児科の流れは、今も脈々と受け継がれています。私が上海中医薬大学で医学生をしていたころ、内科学を教えてくださった徐蓉娟教授はまさにこの徐小圃先生がお父様になります。徐蓉娟教授との思い出はいろいろとあって、とにかく厳しい先生でした。講義中も学生を無作為に指名され、答えられなかったら爆弾が飛んでくるともありました。ただ、臨床はものすごく丁寧で、沢山のことを勉強させていただきました。

 中医学の特徴の一つに、処方の創造があります。患者さんの病態を観察し、それにふさわしい処方をいかに組み立てるかが大切で、その基礎として先人達の経験の積み重ねがあるわけです。上海で活動する私達にとって、上海に伝わるこうした伝統的なやり方は大切に継承したいと思いました。地域色の豊かさが中医学の魅力でもありますから。


おしらせ

posted by 藤田 康介 at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2014年05月09日

中国のもう一つの抗生物質濫用問題

 中国で抗生物質がよく使われているというのは、医療関係者ならよく知っている事実。以前も抗生物質や点滴使いすぎ!中国の医療の現実で少し紹介しております。

IMG_6892.jpg

 ただ、それが人間だけでなく、家畜や水産物にも多く使われているという情報は、以前から中国でも騒がれていました。それを裏付ける研究結果が華東理工大学・同済大学・精華大学などの研究チームが中国国内の雑誌『科学通報』に発表しています。メディアにも紹介されました。

 これによると、中国の地表水からは薬品や化粧品などの成分158種類が検出され、このうち最も多い物質のトップ10はいずれも抗生物質であり、全体では68種類の抗生物質が検出されたということです。しかも、濃度や検出頻度が高く、上海にも流れている黄浦江や広東省の珠江に関しては検出率は100%だったそうです。確かに、これら川の流域は、人の生産活動が盛んであり、汚染問題も深刻なのは紛れもない事実ですよね。

 論文によると、中国で毎年生産されている化学薬品や化粧品の原料は1300種類にものぼります。このうち、医薬品・化粧品などパーソナルケア製品に含まれる化学物質の年間生産量は3.3万トン。このうち70%は抗生物質だそうで、抗生物質の生産量がいかに多いかが分かります。この比率は、欧米なら30%ぐらいなのだそうです。

 こうした物質は、生産工場から排出されるだけでなく、医薬品や化粧品が日常生活の中から生活排水として流されることもあります。さらに、中国の場合、農業・家畜・水産養殖などで直接的に使われ、それらが土壌や水を汚染している可能性も指摘されています。特に、一般的に中国でも認識されているのが水産養殖での濫用問題で、成長を促進するためにホルモン剤を使ったり、病気の予防のために抗生物質を使ったりしていることがあるということ。特に、中国の農村エリアでの汚染では、養殖業がもたらす影響がとても大きいことも認識されています。そもそも、農民達のそういった安全とモラルに対する知識の欠乏も問題だと思います。

 これら物質が、人体にどれほどの影響をもたらすかは、はっきりとしたデータはまだ出ていません。しかし、何らかの影響があることは十分に考えられます。

(すこし古いですが、参考記事:環境中に存在する医薬品や化粧品等のパーソナルケア製品(PPCPs) について

おしらせ

posted by 藤田 康介 at 07:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国での食の安全を考える

2014年05月06日

尿道結石予防のために、散歩も大切

IMG_0515.jpg

 今朝の上海も良いお天気です。PM2.5も30㎍/㎥前後と良好。
 ぜひ屋外で運動したいところですね。 

 健康診断の結果などを見せてもらうと、意外と石を持っている方がおられます。これから暑くなると、何かと厄介な結石の問題。日常生活からどんな注意ができるか、また中医学や漢方ではどこまで対応出来るか、考えてみたいと思います。

 一般的に、尿道結石は30〜60歳の男性によくみられます。腎臓や尿道、膀胱にできる結石の成分は1種類だけではありません。一番多いのがシュウ酸カルシウムによるもので、全体の8割を占めます。シュウ酸は中国語では草酸。尿に含まれるシュウ酸の半分は飲食と関係があるといわれており、トマト・ほうれん草・セロリ・紅茶・豆腐・チョコレートなどに多く含まれています。これら食品を食べるときはしっかりと熱するだけでなく、カルシウムを多く含む食品と一緒に食べないことも大切です。いわゆる、食べ合わせの問題ですよね。

 ただ、カルシウムの摂取量を減らしたらよいかと言えば、むしろ逆です。もしカルシウムの摂取量がすくなすぎると、腸でシュウ酸塩の吸収が促進され、逆に骨からカルシウムが流失し、結石ができやすくなってしまいます。よって、一定量以上のカルシウムの摂取は結石予防に関しては必要といわれています。適度にチーズやヨーグルト、小魚を摂取することが必要です。

 そのほか、尿酸結石で関係してくるのがプリン体の問題。ビールなどのアルコール類や、濃いお茶・コーヒーなども注意する必要がありますし、動物の内臓や、とくに中国での飲食では火鍋などスープ類には要注意。また豆類や菌類にもプリン体を多く含む物があります。一般に、肉類を多く摂取すると尿が酸性に傾きやすくなるため、野菜などアルカリ食品を食べることが大切です。

 塩分についても注意が必要。尿中のナトリウムが増加することで、カルシウムの排出量も増えるからです。

 ただ、なんといっても水分は特に汗が多くなる夏場はしっかりと摂取したいことろです。一般に、1日の尿の量が1リットル以下だったら結石のリスクが高まり、逆に2リットル以上だったら下がります。そうなると、1日2リットルぐらいの水は必要になります。ただし、甘い飲用水は糖分の影響で尿中のカルシウムの量を増やしてしまいますのでダメです。お茶類では麦茶、もしくは普通の水でいいと思います。また、夜中トイレに行くことがある場合は、尿が濃縮されるのを防ぐためにこまめに水分をとる必要があります。

 さて、中医学・漢方などで保守的な治療法をする場合、一般に結石の大きさが8〜10ミリ以下で、尿管などを塞いでいなければ適応症で、生薬だけで対応出来ることが多いです。結石の排出を促進する方向で処方します。もちろん、食生活の見直しも大切で、繊維質のものを食べることで腸でのカルシウムの吸収を抑制します。また、マグネシウムを含む食材を食べることで、シュウ酸とマグネシウムを結合させて腸からの吸収を減らすことも必要です。また、柑橘類も結石予防にはよいとされています。そのほか、中医学では山査子などもよく使います。

 一方で、近年の米国・ワシントン大学の研究で、閉経後の女性8.4万人を対象としたデータでは、家事を含めた運動が腎臓結石予防に有効であると発表しています。たとえば、毎週1時間ジョギングをするか、毎週3時間散歩をするだけでも、腎臓結石のリスクを31%も減らすことができるようです。

 結石の予防のためには、飲食の問題と運動、そして水分摂取が大切ですね。


おしらせ

posted by 藤田 康介 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2014年05月05日

産後の冷え

 IMG_0494.jpg(上海市高橋鎮にて)

 不妊治療で中医学・漢方や鍼灸を使う人が、以前と比較して明らかに増えてきたと思います。これは母体の負担を軽減するのにも結構な事だと思いますが、残念ながら相変わらず当帰芍薬散を不妊治療の目的で延々と飲み続けている人が多いのもまた事実。本当はもっと体調にあわせて変化が必要なのです。

 しかし、意外に知られていないのが産後の体調管理に中医学・漢方を使うということ。
 中国では極めて一般的な習慣でもあります。

 産後1ヶ月間は「坐月子」といって、中国ではすべての活動をストップさせ、身体を休めます。(テレビすら見ないという人もいます)そのための専用の家政婦さんを雇うぐらいですから。このとき万が一女性が家事などで休めなく、しかも体調不良になったりしたら、すべて旦那さんの責任!と一生言われ続けられることになります。そのほかにも、乳腺炎になってしまったとき、おっぱいの出がよくないとき、詰まってしまったとき、そして逆に母乳をとめるときなども使えます。

 さて、産後の体調管理で、ときどき私も診ることがあるのが産後の身体の冷えです。これは正常に出産したとき以外にも、流産をした後も含みます。とくに、寒い季節の冬や、エアコンをよく使う夏場なんかも要注意です。関節の冷え以外にも、四肢の冷えや痺れ、腰や背中の怠さも伴います。これが、産後から数ヶ月、場合によっては数年間続くこともあります。

 基本的に、産後は身体が弱ります。中医学的には、出産により母体が元気を損ない、気血が損傷されると、様々な外邪が侵入する腠理という体表の穴が緩くなり、気血がさらに不調になります。そして様々な症状を引き起こすわけです。

 このうち、季節柄よくみられる外邪が風邪・寒湿邪で、これらが腠理から体内に入り込むと冷えや痛みを引き起こしやすくなります。そこで、気血を補い、それをベースにして血の巡りを整え、温めてあげることが必要です。こういう場面では、やはり中医薬(漢方薬)は力を発揮できるわけです。産後のケアで、黄耆・白朮などの益気健脾系、杜仲・続断・巴戟天などの補腎助陽系の生薬が使われやすいのもそのためです。
 

おしらせ

posted by 藤田 康介 at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2014年05月02日

九州から鍼灸師の先生が上海ご訪問

 日頃は上海で活動している私にとって、日本の漢方や鍼灸を専門とされる先生方との交流は、とても貴重なものです。中医学と同じ東洋医学の範疇に入りますが、微妙に違うのもまた事実で、お互いの長所を勉強できたらと思っています。

IMG_0440.jpg
 
 5月2日に、九州大分から真央クリニック附属鍼灸室の成田響太先生がご訪問くださいました。成田先生とは、2013年6月に鹿児島で開催された東洋医学学会で偶然お会いし、いつか上海でお会いできたらと約束して別れたのですが、さっそく今回の再会が実現しました。先生は、私の大好きな大分県の長湯温泉にも治療院をもっておられ、九州や沖縄を飛び回っておられます。

 中医学の内治法の代表は、何といっても中医薬(漢方薬)ですが、外治法の代表は鍼灸・推拿になるのではないかと思います。私も、日頃から生薬と鍼灸のメリットを活かす治療法を考えているのですが、鍼灸の即効性はいつもすごいなと思っています。中医学の鍼は、太くて長いものが多いですが、これも特徴の一つです。中国の現状も踏まえ2〜3時間はお話したのではないでしょうか。

 成田先生とは、今度はまた九州でお会いできたらと思っています。

 先生も記事にしてくださいました。
 今年はガンガン色々なところに顔を出して、勉強していきたいと思っています。


おしらせ

posted by 藤田 康介 at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動