2014年03月05日

納豆と生薬「淡豆チ(豆豉)」

 先日、うちの家政婦さんが四川省の田舎で作った自家製の豆チ(豆豉)を持ってきてくれました。中華料理では欠かせない調味料ですし、うまみを引き出してくる秘密でもあります。蓋をあけてみると、香りはまさしく納豆と同じ。

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 作り方を聞いてみると、納豆のように菌を添加するのではなく、大豆を蒸籠で蒸して、容器にいれておくとそのエリアの気候では自然に発酵してきて糸を引くようになってくるのだそうです。ただ、日本の納豆と違って、最後は粘り気をとるために乾してしまいます。 さらに、塩や唐辛子をつけて味付けされるので、結構しっかりとした味がついていました。結果的には納豆とは違う代物になってしまうのですが、源流は非常に似ているように感じました。

 中医学では、この豆チの仲間の淡豆チを生薬として使います。調味料で使う豆チとは若干作り方が異なっていて、桑葉や青蒿の煎じ液に黒豆を入れて発酵させる方法をとります。(『中華本草』より)

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 生薬としての淡豆チは歴史的にかなり古く、後漢頃に書かれた『傷寒雑病』の中で香豉としてすでに登場しています。有名な処方では、『傷寒論』の太陽病脈証屏併治にある梔子豉湯・梔子甘草豉湯・梔子生姜豉湯など、また『金匱要略』の黄疸病脈証併治にある湿熱が心中にたまったときに使う梔子大黄湯のなどがあります。いずれも胸のなかに悶々と感じる熱をとる働きです。

 さらに時代下って清代・呉鞠通の『温病条辨』に登場する銀翹散では解表作用のある生薬として使われます。例えば淡豆チと葱の白いところを使う葱白を組み合わせると風寒による発熱・悪寒・頭痛に、薄荷・金銀花・連翹と組み合わせると風熱による症状に使えます。
 淡豆チによって表邪を除くための方向性を示すことになります。このように淡豆チは他の生薬と組み合わせることで外邪を発散させ、外感表証の風熱、風寒にも使うことができ、なかなか便利な生薬です。

 ちなみに、こうした自然に発酵させるのは、泡菜と呼ばれる中国式の漬け物も同じ。塩と砂糖、白酒少々と煮沸した水を壺に入れると出来てしまいます。我が家でも作っていますが、これがとっても美味しい。大根や白菜を入れて漬けています。



 
posted by 藤田 康介 at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬