2014年02月23日

浙江省でノロウイルスの原因はガロンタンクの水だった

  浙江省の海寧市や海塩県で小中学校・幼稚園などで20日12時までにあわせて511人が腹痛・下痢・発熱などを訴えた事件で、疾病予防コントロールセンターが疫学調査をしたところ、飲み水用ガロンタンクの水によるノロウイルス感染と断定されました。

 水道水が直接飲めない中国では、水道水を生活用水として使う一方で、ウオーターサーバー+ガロンタンクという組み合わせで飲み水を準備することが多いです。ただ様々な業者が製造しているガロンタンクの水質については、以前からいろいろ問題があったのも事実。とくに、今回のケースでは学校施設に設置されたタンクでノロウイルス感染が発生し感染者を増やしてしまいました。幸いにも重症者は出なかったようです。

 しかし、最近は学校でもタンクの水を飲むようになったのですね。私が上海中医薬大学にいたころは、水道水を湧かして飲むことが多かったです。そのため、夜の自習の時間になると、魔法瓶を片手にお湯を持ちながら教室にやってくる学生達ばかりでした。最近、母校を訪れてみるとお湯を提供する装置が各階に設置されていました。そもそも、こちらの水(水道水)が信用できないという不信感もみんなありましたからね。とくに、長江の水が海水の影響を受けやすい時期は水質が劣化しやすく、最近でも上海市崇明島で問題になっていました。

 家庭でガロンタンクを使うときは、なるべく早く使い切ってしまうことが大切です。また、ウーターサーバーは汚染されやすいので定期的に洗浄することも必要で、特に夏場は水の劣化が進みやすいので注意して下さい。


posted by 藤田 康介 at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2014年02月20日

薬膳とシンプルな本場の中華料理

 中華料理というと、脂っこいとか不健康とかのイメージがありますが、それを打ち消しているのがある意味、薬膳の世界ではないかと思います。でも、そもそも中国で食べる中華料理と日本で食べる中華料理が全然違うものであるというのは紛れもない事実。つまり、日本食のなかに中華料理というジャンルがあって、それが独自の変化をしていると考えたほうが良さそうです。

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(日本の王将の麻婆豆腐)

 ちなみに、我の上海人の妻は大学時代の同級生。浦東の東和クリニックで中医学の医師をしていて、そんな関係で私とは同業です。だから、食には結構うるさく、上海料理に関しては私も妻からいろいろ勉強しました。私自身も、20年近い上海生活の中で、日本人が如何に安全な食生活をおくれるか、上海の食材のなかで色々研究してきました。

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 その結果、たどり着いたのが如何にシンプルな料理を楽しめるか?ということ。つまり、外食やお総菜に頼らず、自分の納得できる食材でシンプルに食べるというのが、一番大切ではないかと思うようになりました。

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 事実、上海料理というのはとってもシンプルでしかも油を使うのが非常に少ない。こう書くと、信用してもらえないのですが、妻が私の日本の実家で披露した中華料理にもうちの父母は喜んで食べていました。

 いくら上海人でも毎日コテコテのものを食べるほど胃が丈夫なハズがありません。彼らの食文化は、やはりよく観察してみると非常に面白いのです。上海人に聞いてみるのが一番です。

 さらに、昨今では上海の外食産業の値上がりも尋常ではなく、その分を自分たちの食材に使った方がより納得いくものが食べられるのではないかと思います。

 そういえば、元宵節が過ぎて、うちの家の家政婦さんも田舎から戻ってきました。今回、お願いしていたしていたのがこの写真の中国ベーコン。いわゆる腊肉です。中国の田舎では、冬に欠かせない保存のきく食材です。

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 うちの家政婦さんの実家では、自宅で豚も飼育して、1年かけて育てた体重150キロもある豚を春節前に処理して、2〜3ヶ月かけて腊肉を作ります。これが絶妙に美味しく、さっそく浙江省の桐廬で分けてもらった農家自家製の豆板醤とあわせて一品作りました。

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 食の安全が色々いわれるのも、そもそも消費者である我々が自分で作ることを怠り、他人に頼るようになってきたからというのが最大の原因ではないかと思います。良い物を安くというのは、そういつもあるわけではありません。

 でも、本場の中華料理のシンプルさは、食材そのものの味を生かしたメニューと組み合わせの法則でまとめられています。これは実際に食べてみないと見当がつかないと思います。



posted by 藤田 康介 at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2014年02月19日

進化する中国の中薬単味エキス剤

 安全で品質の安定した生薬をどうやって活用するか?というのは日本でも中国でも我々のように生薬を扱う医療関係者からすると切実な問題です。そんななかで、以前から私も自分の診察で使ってきている単味エキス剤の活用は、今後の流れではないかと思います。よく質問を受けるので、今日は少し紹介します。

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 単味エキス剤とは調薬ひとつひとつをエキス剤にして、分量を加減しながら調剤して服用するというやりかたで、日本にはないシステムです。日本漢方では、ツムラでお馴染みの葛根湯など複合処方のエキス剤がメインですが、逆に、中国では単味エキス剤しか認可されていません。

 おそらくですが、中国には製薬会社が非常に多く、複方エキス剤を認めてしまうとこうした中小企業が潰れてしまう可能性があり、利権が絡んでいるのかと思います。近い将来には複合エキス剤の製品も登場するはずです。

 中国では現在合法な6社が単味エキス剤を製造しています。それぞれが中国政府のGMP基準に基づいてエキス剤を提供していて、ISOの標準化問題でも討論されている分野でもあります。

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 単味エキス剤の最大のメリットは、やはり煎じ薬とは違う品質の安定性です。農薬が重金属の検査も非常にやりやすくなります。(煎じ薬のときは大変でした。)調剤場所を見ても分かりますが、300〜400種類の単味生薬が棚にぎっしりと並んでいて、とても清潔です。欧米の検査機関に持ち込んでも、単味顆粒エキス剤では残留農薬や重金属は検出されておらず、実際にオーストラリアなどにも輸出されています。

 いままで手作業で手間がかかっていた先煎じに関しても、エキス剤なら数時間単位でコントロールが可能になったほか、後入に関しても、揮発油成分の抽出で有効成分の保持が実現しています。さらに、有効成分の確認では、TCMF法(traditional chinese medicines fingerprints、フィンガープリント技術)や中国で過去20年間に蓄積された600あまりの生薬成分研究データが『中薬配方顆粒質量標準』として制定され、中国食品薬品監督管理局で登録されています。これらはエキス剤の品質管理の上で活用されています。

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 おそらく、中国は今後、単味エキス剤のISO標準化に関して、自国の基準を持ち出すことになるかと思いますが、日本とは違う観点でまた摩擦問題になるかもしれません。

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 薬剤師の先生による分包に関しても大きな変化です。ひとつひとつのカートリッジに生薬エキスが入っていて、このカートリッジをあるバーコードを機械に読み取らせ、自動的に分包するシステムがすでに導入されています。処方をパソコンから入力するので、調合ミスも防げます。

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 カートリッジ式のメリットは、在庫管理がラクなのと、粉末の生薬が湿気るのを最大限に防止できます。また、同じ単味でも、患者さん自身が小袋を沢山混ぜて服用するエキス剤を使っているメーカーもあるようですが、ひとつひとつの袋を破るのが大変で、しかも水に溶けにくかったり、医師も微妙な量調整が難しいといったデメリットがありましたが、このシステムを活用するとその心配がありません。密封されたカートリッジから、直接分包されるようになり、空気に触れる機械が明らかに減ります。

 顆粒剤の賞味期限は2年となっています。煎じ薬より明らかに長いですし、運ぶのも楽で、郵送もできます。出張するときの携帯も便利になりました。

 顆粒剤の製造では、さまざまな技術が活用されています。生薬によって、有効成分の抽出方法が違うからです。しかし、有効成分を抽出するからこそ、服用量を減らすことができます。従来の薬草では100g必要だった生薬が、5〜10gにまで減らすことが可能になりました。中成薬として市販されている糖分や澱粉まみれの甘ったるい顆粒剤と比較しても明らかに服用量が減ります。よく、私も患者さんから感冒の薬で有名な市販の板藍根冲剤が甘すぎると指摘されるのですが、板藍根のエキス剤は甘くありません。

 お湯に溶かして服用する単味エキス剤は、直接袋をあけて液体を服用する煎じ薬と比較して一手間増えますが、こうやって様々な最新技術が盛り込まれた、未来の中医学の方向性を考えさせる薬剤となってきています。

posted by 藤田 康介 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2014年02月14日

上海人の癌疾患、男性は肺癌・女性は乳癌がトップ

 上海市疾病予防コントロールセンターが発表した、上海市の癌疾患の統計をみてみると、男性の場合は肺・大腸・胃・肝臓・前立腺・膵臓・食道・膀胱・腎臓・脳と中枢神経系と続き、女性は乳腺・大腸・肺・胃・甲状腺・肝臓・膵臓・脳と中枢神経・胆嚢・卵巣と続くようです。また、上海人100人中1.7人が癌に罹患していて、男性では100人中1.5人、女性では100人中2人ということで、毎日150人癌患者が増え、毎日100人が癌で死亡しているという計算になっています。
 
 癌患者を世代別にみると、70歳以上が全体の45%を占め、続いて50〜69歳が42%、50歳以下が13%となっていました。

 また、タバコを吸っている人は、吸っていない人よりも肺がんリスクが10倍高まるとか、夜勤が多い女性は乳癌になりやすいとかそういった傾向も上海でみられますが、なんといっても日常生活での問題点は多い。

 たとえば、カビの生えたトウモロコシや落花生に含まれるアフラトキシン問題は中国で暮らしている人なら一度は耳にしたことがあるはず。「地溝油」と呼ばれている不良リサイクル油もこのアフラトキシンを含んでいて、肝臓癌の原因にもなります。また、冷蔵庫に食材を詰め込むことも実は癌の発生にも深い関係があります。食材は新鮮な物を買い、使い切るようにしたいところです。

 癌予防に関しての運動の重要性については、このブログでも何度も取りあげていますが、それでも運動不足の人が相変わらず多い。毎日最低30分は歩かないといけないし、出来ることなら1時間は確保したいところ。その他、塩分の取りすぎ、果物の摂取不足、糖分のとりすぎ、肉類の食べ過ぎなどなど挙げるとキリがないですが、基本はバランスの良い生活をすることです。

 上海市の女性に多い乳癌に関して、興味深い試算が紹介されていました。

 もし早期で発見され、患部の外科手術だけで治療が行われた場合、放射線治療も抗癌治療も必要なく、6000〜7000元程度で治療は完了します。しかし、手術範囲が広まれば、放射線治療や抗癌治療も必要となり、その費用は20000〜30000元にもなるとのこと。(上海市での場合)

 また、上海市癌康復倶楽部の統計でも、癌治療にかかる費用のうち、40%は最後の1年に費やされ、このうち40%は亡くなる最後の1ヶ月に費やされることになるという調査結果を出しています。早期発見と早期治療が経済的な負担に関しても如何に大切かがよく分かります。

 最近、日本人の間でも癌治療に関して、中医学(漢方医学)の活用を考えられる方も増えてきていますが、残念なのは末期になってから来られる方が多いということ。西洋医学の標準治療法や検査はもちろん大切ですが、我々東洋医学をやっているものからすると、少しでも早く活用してもらえたらと思うのです。最近は、中国でも煎じ薬だけでなく、エキス剤の活用が便利になってきて、患者さんの負担も軽くなってきています。

 今後も様々な研究が行われていくことかと思いますが、西洋医学同様に東洋医学でも早く手を打つことが大切だと思います。


posted by 藤田 康介 at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情