2013年11月12日

立冬すぎての中医学的養生

 四季の移り変わりは、中医学では24節気を重視するわけですが、11月7日に立冬がやってきて、上海も徐々にそれらしき寒さになってきました。

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中国では、北方と南方では明らかに気温の下がり方が違ってきますが、いずれにしろこれまで夏にかけて溜めてきた陽気を徐々に潜らせる一方で、陰気が盛んになって、植物にも落ち葉が増え、動物たちは冬眠の準備を始めます。同時に、活動を小休止するのにあたり、身体を蓄えるようになるのです。それが「冬令進補」になるのです。

 最近、朝が起きづらいという声も聞かれるようになりました。自然の流れにあわせて身体を調節する考えからすると、陰をしっかりと身体に蓄えるためにも、夜は早めに就寝し、朝は遅めに起きるということになっています。陽気を守り、陰を蓄えるという発想からですが、気温の低い朝は身体も交感神経が興奮しやすく、血管が収縮し、心臓にも負担がかかるようになります。脳卒中や心筋梗塞のリスクをさげるためにも、朝は夏よりもゆっくり目に起床し、太陽が出て来て身体がウオーミングアップされてから運動するのが望ましいとされています。また、大汗をかくような激しい運動は、陰を傷つけるので避けなければいけません。

 情緒的にも、立冬以降は落ち込みやすいといわれています。冬空が増えてくると、なんとなく身体が重く感じるのもそのためです。なるべく部屋を明るくしてみたり、身体の気が固まってしまわないように理気作用のある柚子などの柑橘類も食べたいところです。この時期、上海では大きくて立派な柚子が美味しいですよね。また、陽気を守るためにも背中や足先は冷やさないように注意していください。

 立冬を過ぎた頃になると、上海の巷でも栗が売られます。栗は、寒さによる慢性の下痢や、腎虚や冷えによる腰痛や四肢の痺れ、頻尿などにも使われます。ただし、外で甘栗を買うときは、割れてない栗を買うように。特に、甘栗で割れているものは、焦げた糖分が中の実につきやすく、身体に良くないからです。

 さて、冬になると、お鍋などで身体を温める肉類を食べるチャンスが増えます。そんなときにぜひ一緒に食べたいのが大根です。コッテリとした食材に対して、動きを与えてくれるのが大根なのです。中医学では、大根は気血の流れを整える、理気作用のある食材で、背中や手足の冷えが著しいときに使います。一般に、味がピリピリする大根は加熱し、甘い大根は生で食べるのがよいと中国ではいわれています。呼吸器疾患の治療として、肺や気管に溜まった痰を除去したり、消化器系では食欲増進や大腸の働きを改善させる働きがあります。生の大根には、腹部の膨満感を改善する働きがあるといわれています。ただし、生の大根と一緒に服用すると効能が落ちる生薬があるので、医師と確認して下さい。



posted by 藤田 康介 at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2013年11月08日

連載 Look上海 2013年11月号 「無駄のないみかん」

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 秋も深まり、すっかりミカンの季節になりました。中医学でもミカンは生薬としてあらゆる部位を使います。ミカンの身は食べてしまうとして、ミカンの皮、種、スジ、葉っぱまでどれも重要な効能があります。

 上海はミカンの産地でもあります。

 ぜひ食べてみたいものですね。

posted by 藤田 康介 at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2013年11月03日

上海市でネットを活用した市民の健康情報管理システム

   2013年10月31日から公開がはじまった上海信息網は、今後の上海市の医療ネットワークの構築の上でも、なかなか興味深いシステムになっています。

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 これは、上海市内の公立病院500箇所を対象にネットワーク化を進め、患者データを共有し、さらに患者自身も閲覧できるデーターベースにするというもの。とくに、患者自身が自分の健康管理のために、様々な検査データを一括して閲覧できるというシステムは画期的だと思います。

 登録される市民一人一人の健康データーベースのなかには、出生時の状況から、予防接種の接種状況や診察状況、薬の使用状況なども登録されるということで、すでにデーターベースには38億件の日々の診察記録が登録されたそうです。さらに、日々1600万件の診療データが追加されていいます。現在では、どこの病院でも電子カルテ化が進んでいて、ネットワーク化された公立病院では、どの病院からも医師が検査結果やカルテを確認出来るシステムができあがったのだそうです。中医学の煎じ生薬でも、かなり前から電子カルテ化が進んでいました。

 同時に上海市民のほぼ全員が公的医療保険に加入しており、保険証カードの番号をもとにインターネットで自分の状況を検索できますが、プライバシーの保護のため、初回は近所の社区衛生服務中心にいって実名登録します。すでに松江区では登録作業が始まっているということです。

 最近、うちの中医クリニックにこられる上海人の患者さんをみても、自分でインターネットから検査結果をダウンロードしてきて持ってこられる方が多いです。今までは病院まで取りに行っていましたから、便利になったと思います。有名な教授の診察も、ネットを通じて予約するシステムを作っているようですが、実際はそう簡単ではないと思います。患者数と比較して、絶対的に医者の数が不足しています。

 なにかと批判の多い中国の医療システムですが、出来るところからいろいろ実践しているみたいですね。

 日本の国民健康保険も保険料を支払って終わりではなく、インターネットなども活用して自分の健康情報を共有できるシステムがあってもいいのではないかと思います。保険料、決して安くないのですから。

 
posted by 藤田 康介 at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情