2013年10月31日

『週刊朝日』9月20日号 中国の食の安全について

 私自身も上海生活が長いこともあり、世間で中国の食の安全が騒がれるかなり前から、中国の食の安全問題についてブログなどで書いてきました。現地の新聞ではかなり以前から取り扱われていて、現地生活者は注意してきました。近年は中国ニュースを飜訳して掲載するサイトも増えたおかげで、日本のニュースでも広く取り扱われるようになったと思います。

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 そんななか、『週刊朝日』の9月20日号の「中国猛毒食品事件 ワースト50」と題した記事で、ライターさんからのインタビューを受け、私自身のコメントが少し掲載されていました。

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 日本にいる日本人からみると、日本へ輸入されてくる中国産食材の不安感はとっても大きく、絶対買わないと言う人も多いはず。そりゃそうだと思います。

 まず日本の基準を満たして農作物を作るというのは大変なことで、我々が中国の市場で買うような不格好で虫食いの野菜ではまずムリでしょう。そうした本来の農産物との矛盾とコストと大量生産への圧力が高まると、少しでも見栄え良く、高く売れるようにいろいろ小細工することになってしまうようにも思います。

 結局、どこにいても他人に食べるものを頼っている限り、様々な問題を回避することは難しい。となると、中国のように食に対するリスクがある国で暮らしている以上、出来るだけシンプルで新鮮な食材で、シンプルな料理を食べることが大前提になります。さらに、なるべく地元産やその近郊で、生産者の顔が見えるような食材を買うことが大切です。私自身、中国の農家のお宅によくお邪魔しますが、大抵出荷用と自宅用を分けています。そこからも、出荷されている野菜がどういう状態になっているかが分かるかと思います。

 もっと簡単な対策は、コンビニやスーパーなどのいわゆる「お総菜」を食べないようにし、外食は極力しないようにすること。ペットボトルに入っている飲み物もお茶やお水を含めてなるべく飲まないようにする。マイボトルを携帯しましょう。お菓子類や加工食品はなるべく買わない。これは大前提です。そして、野菜などは素材そのものの味が美味しいモノを買うことだと思います。中国の一般的なスーパーで売られている普通の野菜は、はっきりいって美味しくないです。一方で、上海でも市場にいくと、農家直送の地産地消コーナーもあり、そうしたところの野菜も利用することがあります。鮮度が大切ですからね。(中国人は結構拘っていると思います。)

 ちなみに肉類は、例えば豚肉だったらすくなくとも「精気神」や「愛森」のように大手スーパーのブランド肉を買うようにする。間違っても市場では豚肉を買わない方が無難だと思います。最近では、カルフールで売られているブランド肉でも美味しいものは手に入ります。また、地元上海の人たちがあまり食べない牛肉などは私はなるべく食べないようにはしています。代わりに上海の特産の一つである山羊などは食べることはありますが。結局は、色々な食材を少量で多種多様に活用しリスクを分散させることが大切です。

 冗談のような話ですが、最近、地方都市では豚肉の値段が上がっていて、宴会などで大量に必要なときは、上海まで買いに来る人もいるという話を聞きました。地方では、農家が飼育している豚もあるのですが、コスト的には割が合わなくなっているのだそうです。

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 上海にきてから、上海人の妻も含めて、貝類は食べなくなりましたね。15年ほど前、生牡蠣で食あたりになったこともあります。なにかと問題の指摘されているエビも頻度が減りました。最近は、知り合いが淡水魚や海水魚を養殖しだし、そこから魚が来ることも増えました。また、市場では鮮度の良い魚が手に入れば買うこともあります。でもタイミングが大切です。

 話のレベルは違っても、ちょうど日本でも関西の某有名ホテルで食品偽装問題が明るみになったりと、外食産業や食材に対する消費者の目は日に日に厳しくなってくるのではないでしょうか。これまでは言葉のカラクリでなんとかなるという問題もあったと思います。逆に、日本だから安心というのもまたおかしい話しだと思います。

 中国では、自分たち自身で注意することで、日本に居るとき以上に少しでも安全で美味しい食材を手に入れる努力をしたいところですね。相手が大量生産でやってくる限り、消費者の地道な努力しかないと思います。やっぱりラクは出来ないんです。

posted by 藤田 康介 at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2013年10月21日

中国の高齢化問題へ次の一手は

いまさらといったテーマなのですが、でもやはり触れないわけにはいけません。

 1999年にすでに高齢化社会に突入した中国で、すでに60歳以上人口が1.94億人になり、さらに80歳以上人口も2200万人にまで増えています。とくに、上海は高齢化のスピードがもっとも速い都市となっています。

 ただ、日本と違って厄介なのは、高齢者が決して経済的に豊かではないという点です。貧困や低所得者に属する高齢者は2300万人いるだけでなく、2000年のデータでは、60歳以上人口のGDPは3976米ドルに過ぎず、これは日本の1970年の60歳以上人口のGDP11579米ドルにも全然届きません。
 一方で核家族化のスピードも速く、中国の世帯人口は1982年の平均4.4人から2005年は平均3.3人となっており、政府が目指す家庭での老後が実質不可能な状態になりつつあります。
 では、老人ホームなどの施設が増えたかというと、中国全国では2012年現在で4万4000箇所ほどしかなく、利用している高齢者の数は293.6万人で老人人口の1.5%ほどにすぎません。上海でもまだまだ不足状態で、第12次五カ年計画で大型総合病院30箇所に相当する2.5万床の老人養護施設を作る計画ですが、そう簡単なことではないでしょう。しかも施設があっても、サービスがまだまだ追いついていないだけでなく、関連する人材の育成も追いついておらず、例えば養老看護員の資格を取得できているスタッフの数も全体の三分の一にも満たないのだそうです。ましてや、医師や看護師などの医療関係者の配属となるともっと困難となるでしょう。


 というのも、実は今年から上海でシニアケアサービスの会社で中医学に関する顧問として関わり、上海地元の高齢化社会の問題を研究するようになりました。今回、私が関わっているのは中国語で夕悦頤養服務機構(JOYWAY SENIOR CARE SERVICE)と呼ばれる中国系の会社で、主に富裕層を対象としたケアサービスを行っています。

 最近、中国企業でこうしたサービスに進出・投資するところが増えてきています。政府が後押ししているのも関係がありますが、ある程度業績をあげた会社が、今度は単なる金儲けではなく、社会貢献できることを探し始めているようです。

 この会社でもすでにいろいろ取り組みを行っていて、たとえば安全で健康的なケータリングサービスもその一環です。
 食材を吟味するだけでなく、栄養学的にも中医学の薬膳的にもかなったメニューの開発を行っていました。しかも、アツアツにこだわった宅配サービスまで行っています。様々なニーズに答えられるようなサービスも今求められているのです。

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 これからも、日本人として上海の社会に貢献できる何かを常に探し出したいと思っています。


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2013年10月20日

秋・冬の感冒予防のために

 上海も日に日に気温が下がってきました。先日、紹興からは早速H7N9型鳥インフルエンザ感染者のニュースが飛び込んできましたが、中医学の養生的にも、今からの感冒対策がとても重要かと思います。

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 まず身体を冷やさないこと。これは大抵皆さん気づいておられるのですが、そのなかでも足腰を冷やさないことが中医学ではとても大切です。昔から、中国では「寒さは足からやってくる」ということで、足が冷えると反射的に鼻・喉・気管など上気道の粘膜の血管が収縮し、繊毛の働きが弱まって、身体が菌やウイルスを除去する力が弱まるといわれています。また、高齢者はとくに身体の体温調節がうまくいかないだけでなく、下半身の脂肪そのものが少なかったりして、寒さへの対応がうまく行かないことが多いのです。そんなとき、寒さに乗じて寒邪や風邪(ふうじゃ)が身体を襲い、感冒の症状を引き起こすことになります。

 しかし、残念ながら快適な現代人の生活で、足腰の冷えに注意している人は意外と少ないのが現状です。とくに足の冷えに関しては、男性も女性もかなり無謀な人が多い。「寒さに身体を鍛える(秋凍)」というのと「寒さから身体を守る(御寒)」とはまったく異なる概念なので、とにかく誰でも薄着にしていたらいいというわけではないのです。

 中医学の養生では、食生活についての注意事項がいろいろあります。とても有名なのが、『傷寒論』に書かれている桂枝湯を服用したあとの注意事項で、生ものや味の濃い刺激物、酒類や乳製品、麺類やヌルヌルした食品を摂取しないようにと書いてあります。昔の人は、生活の中で気づいていたわけです。
 現代医学でも肉類や乳製品の過剰摂取は、体内の免疫細胞の抗ウイルス作用に不利だといわれていますし、塩の過剰摂取は唾液の分泌を抑えてしまい、口腔内の酵素の働きを弱めてしまいますし、甘い物の摂取しすぎも体内の水分を消耗して喉の渇きをひきおこし、免疫力を下げてしまうといわれています。

 また、中医学では初期の感冒として体表の栄気と体内の営気がうまく機能しない営衛不和というメカニズムがありますが、これを整えるのにはやはり睡眠がとても大切です。さらに、こうした気は人の情緒とも関係があります。気は、人の免疫力と関係がありますが、情緒が不安定だと各種免疫力が低下してしまうことはとても有名な話です。そうすると、一時的にも呼吸器の防御システムが弱まり、そのスキをついて感冒となってしまいます。

 運動もやはり大切です。中医学では気血の動きを大切にしますが、これを最大のパフオーマンスで発揮できるようにするには、やはり運動しかないと思います。それには、太陽の光も必要ですし、新鮮な空気も必要です。「時間がない」というのが運動をしない理由としてよく挙げられていますが、病気になったときにリスクと時間の浪費を考えると、早いうちに運動をするほうがメリットが大きいように思います。

 さらに、大陸的な気候の場合、冬の寒さ以外にも干燥対策も重要です。そのためには、適度な加湿が必要だといわれていますが、ただ加湿しすぎるとダニやカビの問題も出てきますので、それを防ぐためにも窓をあけて空気の入れ換えをすることがポイントになります。人が多い中国では日常的に冬でも窓を開ける習慣がありますが、日本でももっと注目されていいと思います。


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2013年10月19日

やっぱり歩こうではないか!

 上海もすっかりと気候がよくなって、過ごしやすくなってきました。朝晩となると、少し寒いぐらいです。上海マラソンも近づいてきて、我が家の近くにある世紀公園の周りをランニングする人は日に日に増えてきている感じです。1周5キロある公園ですから、走るのにはもってこいですね。

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(ただ、上海の徒歩通勤で一番困るのは歩きタバコの煙)

 最近、中国人は明らかに運動しなくなっています。アメリカの運動医学科学院が行った調査では、1991年と比較したときの中国人の運動量は45%も減少しているのだそうです。2030年になるとさらに減少し、51%になるのだそうです。
 成人病大国となりつつある中国では、毎年530万人が運動不足と関係がある疾患で死亡し、タバコが原因で死亡したとみられる500万人よりもさらに多いことになります。これは今後間違いなく中国の医療費を圧迫することになるのではないでしょうか。その予防には、子供のころからの鍛練が必要なのですが、中国の親御さんは殆ど関心無いのが実情なのです。

 運動することのメリットはいろいろ報告されています。
 
 Imperial College LondonとUniversity of Londonの研究では、2万人のイギリス人を対象にアンケート調査を行い、公共の交通機関や歩いたり自転車を利用して通勤する人は、クルマやタクシー通勤をする人と比較して肥満になるリスクが下がり、さらに高血圧の罹患率は、歩いている人のほうがクルマを運転して通勤する人より17%低いのだそうです。

 さらに、米国のAmerican Cancer Societyの研究では、1992年〜2009年にかけて73615名の閉経後の50〜74歳の女性に対して調査を行ったところ、毎週7時間以上歩いた人が乳癌になる割合は、毎週3時間未満歩く人よりも14%低くなり、さらに毎日1時間歩いてさらに水泳やマラソンなど強度のある運動をすれば25%低くなるのだそうです。


 イギリスの研究では、もしイングランドで人々がしっかり運動する習慣があれば、毎年7000人の乳癌患者、5000例の大腸癌患者を減らすことができ、1.2万人の心臓病患者が救急治療を受ける必要がなくなるともいわれています。また、運動不足によって寿命が3〜5年縮まるという報告もありました。

 それではどれぐらい運動するのが理想なのか。イギリスのMacmillan Cancer Support によると、毎週2時間半は早歩きや自転車などの中程度の運動を行うべきだということです。これにより、ストレスを発散できますし、睡眠もよくなり、さらに鬱病など精神疾患にかかるリスクを30%以上下げることができるだそうです。



 私本人も毎日1万歩を目指しています。世紀公園で走る時間が足りないときはなるべく地下鉄駅まで2キロの道のりを歩くようにして出勤し(往復だと4キロ)、雨の日以外出勤時は極力クルマを運転しないようにしました。とはいえ、なかなか毎日1万歩歩き続けることは大変ですね。


 上海は典型的な都市生活の街です。歩くように努力しなければ、なかなか歩くチャンスがないのもまた現実だと思います。






posted by 藤田 康介 at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2013年10月17日

上海の秋はダニの季節

 上海ではスギ・ヒノキの花粉症はなくても、春は全体的に鼻炎のシーズンですが、同様に秋になると鼻がムズムズしてきたり、クシャミがとまらなかったり、蕁麻疹が出てきたりする人が毎年確実に増えます。原因は色々考えられますが、そのなかでやはり気をつけておきたいのはダニの存在です。アレルギーのIgE抗体の血液検査をしても、ダニだけダントツに反応が出てくる人も少なくありません。

 脚が8本あるダニは、とても小さな節足動物でクモなどの仲間です。(ちなみにノミは脚が6本で昆虫になります。)大きさは170〜500ミクロンほどなので肉眼で見つけるのは至難の業です。また寿命は2〜4ヶ月ほどと言われています。上海エリアでは、秋のアレルギー反応のうち、もっともよく見かけるのがダニによるものです。さらに、小児喘息の8割以上はダニと関係があるともいわれています。

 問題となっているダニアレルギーの最大の原因は、ダニの死体と排泄物の存在です。とくに、毎日使う布団や枕、さらにソフアーや絨毯などが格好のすみかになっています。また、秋〜冬にかけて、中国では大気汚染も悪化するため、窓を開けないという人も少なくありません。ましてや、布団を外に干すというチャンスも減ってしまうので、マットレスや枕に湿気がたまったままというのは極めてよくありません。(よく知られていますが、布団を外に干して太陽光や紫外線などでダニを直接退治することに関してはまず無理といわれています。)やはり、大気汚染の情報には注意して、空気がよい日にはしっかりと窓を開ける必要があります。

 ダニたちにとって、気温25度前後、湿度70〜80%というのは、格好の生息環境。従って、部屋の中の通気性を高めることと、適度な干燥はダニ対策には欠かせません。例えば、湿度が50%以下だったら、ダニは脱水症状を起こし死んでしまいます。また高温も苦手で、55℃以上で10分間熱を加えるだけで死んでしまいます。ダニアレルギーと関係があるとされている各種タンパク質も100℃以上の温度で変成してしまいます。

 逆に、これからの季節では加湿器を使う時の注意が必要で、一般に40〜50%前後に湿度を抑えておくことがよいとされています。また、加湿器の水タンクは週に1回はしっかりと洗浄したいところですよね。アトピー性皮膚炎などの症状があるときは、外と中との湿度差を縮めることが、外での皮膚の乾燥予防に役立ちますので、部屋の中の湿度をあげすぎないように注意したいところですね。

 対策としては、ダニを直接捕獲できる無害なキットも上海では東急ハンズなどで売られていますし、日本だったらダニが入ってこられないような高密度なシーツやベッドカバーなどもあります。大掃除をするときはマスクをするだけでもかなりラクでしょう。中国ではよく殺虫剤や消毒剤を使う人もいますが、逆にこれら化学物質が身体に及ぼす害のほうが心配ですのでやめておいた方が無難です。

 上海の秋のダニシーズン、なんとか乗り切りたいところです。

posted by 藤田 康介 at 14:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2013年10月16日

上海市の公的医療保険(医保)に加入

 2013年の私にとってのビッグイベントは、日本人としての中国でグリーンカードの取得だったのですが、せっかく全世界で5000人程度しかいない中国のグリーンカード(永久居住証)を所得できたので、次はこれを使って上海市の基本医療保険加入の手続きを進めていました。

 2009年頃から上海市でも規定が出来ていて、詳しい状況はこちらにありますが、実際加入したという人は殆ど聞きませんし、どういった待遇を受けられるかということもよく分からないのが実情ではないでしょうか。

 ただ、企業サイドからすると、この医療保険は会社側の負担が大きく、そのわりには利用者が使いにくいというデメリットもあります。しかし、中国語が堪能で、ある程度医療に対する知識が有り、ローカル病院でも全然問題ないという人なら、あっても便利かもしれません。上海人とほぼ同じの公的医療保険待遇となります。

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 私も、管轄している区の保険事務所にいって手続きをしました。ただ、日本と違って手続きしたらすぐ加入できるのではなく、手続き後4ヶ月の保険料納付の実績が必要です。

 そして、さらに私が興味深いと思ったのは、病院にかかったときに自己負担の計算です。

 基本的に上海の公的医療保険では、完全に保険から給付される部分(A)と、完全自己負担になる(B)、そして40〜50%自己負担となる(C)の3つの部分から構成されています。

 (A)の部分は、掛け金から決まります。ここは自分の銀行口座のようになっていて、毎月の掛け金の額から完全に100%支払われる毎月の限度額が決まります。もし1ヶ月使い切ることがなかったら、次の月に繰り越されていき、どんどん貯まっていく仕組みです。

 しかし、(A)を使い切ってしまったら(B)の部分に移行します。すなわち医療費が(B)の額を超えるまでは、完全に自己負担になります。この(B)の額は、年齢とも関係があって、年齢があがるに従って(B)の完全自己負担の限度額が下がることになります。うちの義母などは完全自己負担の分は300元程度でした。

 そして、(B)の額を超えると、今度は自己負担率40〜50%の(C)の部分になります。具体的にどれぐらいの自己負担率になるかは様々なケースで変わってくるようですが、だいたいその程度だそうです。

 ただ、これらはあくまでも上海市が運営している「基本医療保険」の分です。さらに企業によっては、保険でまかないきれなかった医療費を、福利厚生の一環として会社負担してくれるところもあり、またそうした負担は医療領収書からの税控除もうけられるということです。

 保険加入の手続きが完了すると、社会保障カードと自己管理用の記録ノートが配付されます。

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 上海市内の公立病院はネットワーク化されていて、今後は診察券ではなく、どの病院でも社会保障カードをつかって診察を受けることになります。また、カルテは記録ノートに書いていきます。もちろん、病院にも電子カルテシステムがあり、この記録ノートにもカルテ内容が印刷される仕組みです。もちろん、糖尿病や高血圧など慢性疾患も問題有りません。公立病院だったら中医学に関係する鍼灸・生薬(煎じ薬・エキス剤)・推拿・気功などでも使えます。

 中国は市・省によって医療保険の制度が全く違います。また異なった市・省間での医療保険の相互利用もまだまだ未整備の状態で、たとえば広州で上海の公的保険を使うということもまだ実現していません。それでも、上海市に関して言えば、公的健康保険の加入者はほぼ100%の状態にまで増えました。

 いずれにしろ今後、さらにめまぐるしく制度が変化していくのではないでしょうか。

 でもやっぱり、改めて適用範囲の広い日本の国民健康保険の制度はすごいと思うわけです。ただ、病気にほとんどならない人も保険料を納めているわけで、上海みたいに使わなかった分の一定額がプールできる仕組みは、健康増進と意識改善のためにいいのではないかと思いました。

*参考情報*上海医保


posted by 藤田 康介 at 12:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2013年10月15日

蘇州蔵書の羊肉麺

 上海エリアでは、夏に山羊肉を食べる習慣があることは以前もここで紹介しました。猛暑の今年も、夏の一番暑い三伏の時期に食べに行きました。奉賢区には山羊肉節もあったりします。詳しくはこちらから。

 そして、やっぱり山羊肉は秋から冬にかけてふと食べたくなるもの。その山羊肉で、中国全国でも有名な一大ブランドとなっているのが蘇州市の蔵書の山羊肉で、商標も登録されているそうです。
 
 先日、閔行区の清水路を歩いている時にたまたま見つけたお店でいただいたのが、蘇州人が経営している蔵書山羊肉の麺専門食堂。とても小さな店なのですが、味はなかなかでした。

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 私が注文したのは湯麺ではなくて、拌麺。山羊肉スープがべつについてきて、醤油ベースのつけ麺みたいな食感です。中身はとってもシンプルで、薬味として使われているのが大蒜の葉っぱ。

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 そのほか、山羊肉でもっとも典型的な食べ方である白切羊肉と、羊雑と言われる山羊の肝臓、肺、胃などの内臓をスライスしたものもいただく。食べるときは甘い甜麺醤を使ってもいいし、お醤油でもいいです。まさに、江南エリアならではの食べ方です。

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 山羊肉は中医学でも薬膳として使われる食材です。虚弱体質や身体の冷えなどに対して有効とされ、とてもマイルドな食感が美味しいです。あまり臭みもありません。上海エリアではぜひ一度食べてみたいところです。山羊は上海の郊外で、いまでもよく飼育されている動物です。山羊は草食で、飼料を食べさせないので、比較的安全な肉だと言われています。


posted by 藤田 康介 at 09:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2013年10月11日

食品言葉のカラクリ〜非油炸・零脂肪

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 メタボの人が増えてきて、中国の人たちの間でも健康志向は徐々に強まってきている感じはします。ただ、それに便乗して「垃圾食品(ゴミ食品)」とレッテルが貼られている食品にも、消費者を誘惑するような様々な広告文字が溢れています。消費者側の我々としては、ある程度的確に判断できるよう、また惑わされないように注意する必要があるように思います。今回は、中国のパッケージでよく見かける「非油炸」と「零脂肪」についてです。

 最近、チップスや即席麺などでよく見かける「非油炸」の文字。こうみると、油で揚げていないのでとても健康的な印象を受けるのですが、食べてみるとやっぱり油が多いような気がしませんか?実は、確かに油で揚げていないのですが、その代わりに高温で、しかも油を使って焼いていることが多い。もちろん、揚げているときよりも油の量は少ないのですが、熱するときの温度が160℃以上になっているため、やっぱり発がん性のあるアクリルアミドが生成されやすくなるということですね。

 一方で、乳酸菌飲料といえば、日本人の我々からするとヤクルトのあの小さな容器が印象的なのですが、中国では巨大なボトルに入っている「味全」や「光明」、「伊益」など様々なメーカーのものをよく見かけます。そこによく書かれているのが「零脂肪」という言葉。これはちょっと惑わされますね。以前、上海地下鉄の広告にも、ちょっと太ったおじさんが出て来て、食後に味全の乳酸飲料を飲めば、消化がよくなるといったイメージのが出ていました。私は思わず、そんなの飲んでいるから太っているんだよ〜!と言いたくなっていまいました。
 ここでのポイントは、確かに乳酸菌飲料は零脂肪かも知れないが、決してカロリーゼロではないということ。あの甘さからも容易に想像がつきますよね。たとえば、光明が出しているある乳酸菌飲料のカロリーは100ccあたり230キロカロリー前後。これは、同量のペプシが190キロカロリーよりも多いことになります。
 確かに、乳酸菌飲料のなかに多量の乳酸菌が入っているのには間違いないのですが、しかし糖分とカロリーを考えると、炭酸飲料水よりもはるかに多いことになります。よく朝のコンビニで巨大乳酸菌飲料とパンを朝食に買っているOLとかを見かけますが、「ちょっとまって!」と声をかけたくなります。やはり飲む量はしっかりと考えるべきです。

 結局、こういった広告文句のウラには、ある一つの項目が確かにそうであっても、もう一つ項目がそうではないということがよくあります。結果的にその項目を強調するあまり、我々消費者はうっかりと「健康的!」と思ってしまうということなのでしょうね。


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2013年10月04日

連載 Look上海 2013年10月号 レンコンの季節

 10月8日は寒露、10月23日は霜降です。霜降は、秋で最後の節気になりいよいよ冬に突入していきます。
 今回は秋の食材として、上海エリアでお馴染みのレンコンについて、中医学的な観点から書いてみました。

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 レンコンは蓮の根っこのわけですが、植物全体としてもとても重宝な生薬です。身の回りの植物が薬材として頻繁に使われるのが中医学の特徴でもあります。


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2013年10月01日

秋の養生、まずは涼燥に注意

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(市場は秋の食材でいっぱいです)

最近の患者さんの傾向を見ていると、「ああ、秋が来たな〜」と感じることが多くあります。代表的なのが、咳や鼻のグズグズ、皮膚の痒みや干燥などです。気温が寒くなると喘息の発作が出てくる人も多いです。


 湿度が比較的高い上海エリアに住んでいる私たちからすると、秋の始まりは干燥よりも寒気による身体の変化が大きいように思います。その代表的な症状が鼻水ではないでしょうか。この秋口の鼻水を中医学ではこのように説明します。夏ばてや体調の不良で肺の気が傷つき、体表にある衛気が消耗し、秋の寒さに乗って寒邪が身体の中に入ってくると、まず鼻の痒みや寒さが出て来ます。邪気が入ってきたことで、身体のなかの正気との衝突が起こり、邪気を追い出そうと人はクシャミをすることになります。
 肺が気の流れを整える通調作用を減退させると、気は津液をコントロールできなくなり、肺と繋がりの深い鼻から鼻水が出るようになります。肺気が弱まると、汗が出やすくなったり、寒がりになったり、といった症状も出て来ます。

 寒さが来だしたら、次は晩秋の干燥が身体に忍び寄ってきます。干燥は、身体の表面から身体の中へ順々に影響を及ぼしていきます。初めは咳や喉の痒み、口の干燥など呼吸器官系の症状が中心だったのが、次第に身体のだるさ、便秘、消化不良、睡眠障害、鬱病などの症状へと繋がっていきます。

 以上から分かるように、中医学では秋の養生のキーワードとして、燥邪の入り口となる肺対策をどうするかを考えることになります。

 まずは肺の気を充実させます。それには、まず新鮮な空気(清気)が必要ですし、食べ物からの気として、脾・胃の充実は欠かせません。代表的なのは、棗・山芋・葛根・茯苓・シイタケなのがそうです。これらは脾・胃の他にも、肺に対しても気を補う特徴があります。また、肺の干燥対策では、梨・百合根・レンコン・キクラゲ・豆乳などが潤しとして使われます。野菜では、ミカン・キーウイ・大根・白菜・リンゴ・文旦などがよいとされます。大抵、この秋に出てくる食べ物ですね、

 ただし、気をつけないといけないのは、肺に対しては陰や気を補うだけではダメという点です。特に、陰は溜めすぎると痰の生成を助長させることになります。そのため、肺の動きを広めることができる袪痰宣肺作用のある食材も適度に使います。代表的なのには、紫蘇・葱・薄荷などがそうです。

 これ以外にも、適度に水分を摂取する、辛いモノを食べないようにする、睡眠をしっかり取るなど陰を守ることに気を遣う必要があります。まず、秋の養生には干燥と肺に気をつけたいところですね。


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