2013年06月24日

汗の観察

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 暑くなってくると、私達の生活の中で、汗を意識しない日はないと思います。ただ、空調が普及してきて、以前と比べて現代人の発汗チャンスは減ったのではないかと思います。その結果、夏に蓄えるべき陽気が不足し、汗を出すパワーが無かったり、汗を出す腠理の調節が旨くいかなかったり、そもそも汗を出すための陰液が不足していたりとというケースも見受けられます。その観点からも、夏にかける汗は大切にしたいところです。

 中医学でも、昔から汗に対しては様々な考察が加えられてきました。単なる体温調節だけで捉えていないところに醍醐味があり、自汗・盗汗といった言葉もあります。こういった言葉は、中医用語と言うよりもむしろ一般の中国人もよく知っています。


 例えば、『傷寒論』の桂枝湯(桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草)では、衛気と営気のバランスが崩れることで汗がでると考えます。
  衛気とは体表に近いところに位置する気で、一方で内側には営気と呼ばれる気があり、この両者がバランスをとることで汗がコントロールされるいます。例えば衛気が弱かったりしても、中の営気が飛び出してきて汗は出てしまいます。これは、発熱は無いけど、汗が多いと言うときの動きになります。
 逆に病気の原因となる邪気に対抗するために衛気が強くなりすぎると、営気もそれとともに体表に引き出され汗が出てしまうと言うパターンもあります。これは発熱のときの汗に多いと考えられました。ちなみに、衛気という気は、一日のうちでも昼間と夜とで動くパターンがあります。こうした変化は、『黄帝内経』にも記載されています。

 その他、陰と陽のバランスが崩れての発汗というのもあります。寝汗が多いとか、手足が熱く感じるとか、顔が赤くなる(火照る)といったパターンです。当帰六黄湯(当帰・乾地黄・熟地黄・黄芩・黄耆・黄柏・黄連)を使うことが多いです。教科書にはあと麦味地黄丸(麦門冬・牡丹皮・茯苓・澤瀉・五味子・熟地黄・山茱萸・山薬)もよく登場します。

 身体の中の熱、つまり裏熱の強さによっても処方を使い分けれます。たとえば、熱が高く、全身で汗が多く、喉の乾きがひどい場合は陽明気分熱証となり、白虎湯がよく使われました。熱が多少収まっても、熱により陰が傷つき、それでも汗がまだ収まらない場合は竹葉石膏湯を使ったりします。

 さて、この湿気の多い上海で、ジメジメを感じることが多いわけですが、その場合は湿邪との関わりが多くなります。汗が粘っこく感じ、首から上によく汗をかき、腹部膨満感などが見られる場合は、湿熱対策として竜胆潟肝湯(木通・地黄・当帰・沢瀉・車前子・黄芩・竜胆・梔子・甘草)、一方で熱の症状が強くなく、湿熱が身体に滞っている場合は四妙散(黄檗・蒼朮・牛膝・薏苡仁)を使いました。

 不眠を伴い、身体が疲れやすく、悩み事があったりしたときに出てくる、気持ち悪い汗に対しては、健脾養心の帰脾湯(黄耆・人参・白朮・茯苓・酸棗仁・竜眼肉・当帰・遠志・大棗・乾生姜・甘草・木香)を使います。先日、不眠・身体の不快感・気持ち悪い汗を主訴に来られた方(女性)は、この帰脾湯の加減を1週間服用だけですっきりとされました。このようにあっという間に効いてしまう場合もあります。

 私が思うに、意外と見落としてしまうのが瘀血による汗。これは、血の巡りが悪くなり、そこから熱が発生して汗がでるというもの。特徴は、全体に汗がでるというのではなく、局部的に出てくるというもの。もしくは、午後や夜間に熱く感じ、不眠やイライラなどを伴うこともあります。よく使うのは、血府逐瘀湯(生地黄・桃仁・当帰・紅花・川芎・赤芍・牛膝・柴胡・枳殼・桔梗・甘草)です。

 いずれにしろ、汗をかきやすいシーズンですので、一度、自分の汗を観察してみるのもよいかもしれません。
posted by 藤田 康介 at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察