2013年05月12日

三焦理論・腎臓病中医治療の思考法(メモ)

世界中医薬学会聯合会(WFCMS)の第7回国際腎臓病学術大会のメモ

1.天津中医薬大学第一付属医院・黄文政教授

 慢性腎炎の治療を考えるときに、とく病因病機で登場するのが三焦。三焦の焦は、温熱する・火熟物を摂取する…の意味。歴代の文献から、水穀を「焦干」して、清濁に分け、さらに津液を通す働き。特殊な膜状の組織・循環システムが三焦。そこで、気が循環する。五臓六腑に必要な各種栄養物質を吸収し、老廃物を出す。さらに、上焦・中焦・下焦に分かれて活動し、そのエネルギーとなるのは少陽相火。その少陽相火の源は命門(もしくは腎陰)。そこから、三焦と腎の関係は緊密。

 従って、三焦の働きが悪くなると、腹部膨満・下腹部下垂感・小便の出が悪くなり…の症状。結果、気滞・湿聚・血瘀の病理状態になる→湿濁と血積が腎に発生→腎気が衰える→浮腫・淋濁・腎風・腎労。慢性腎炎の症状となる。

 治療法:疏利少陽・斡旋三焦・調理枢機+健脾補腎・清利湿熱・活血化瘀。
 基本処方:黄耆(三焦を補い、衛気を充実)、丹参(活血化瘀)、柴胡+黄芩(疏解少陽)

 たとえは、脾虚だひどい場合は、太子参・党参・茯苓・山薬・蓮子など。
 尿蛋白には芡実・金櫻子・覆盆子など。
 腎陽虚には菟絲子・巴戟天(はげきてん)・淫羊藿・鹿角膠など。
 湿熱内蘊には白花蛇舌草・土茯苓・石韋・萹蓄・萆薢
 瘀血内結には益母草(やくもそう)・桃仁・赤芍・紅花・川芎・山査子・鬼箭羽(筆者注:血糖値を下げる働きに注目)
 血虚には熟地黄・当帰・白芍・鶏血藤。
 血尿には茜草(せんそう)・生地楡・地錦草・仙鶴草・小薊(しょうけい)・苧麻根(ちょまこん)
 
2.蘭州大学第二医院 劉宝厚教授

 中医学と西洋医学の2重診断。(筆者注:これは大事だと思う。CKD治療の場合、予後の推測には西洋医学の病理学的な検討が必要)中医薬を利用した西洋医学のステロイドや免疫抑制剤の副作用の緩和、使用量の抑制が可能。QOL向上。

 慢性腎炎の病因病気の根本にあるのが本虚標実。本虚はともかく、標実となるのは、風邪・湿熱・血瘀・湿濁となる。風邪が出てくるのも、治療で防風や雷公藤などを使うことからも分かる。

 CKDにおいて、血液レオロジーに問題がでてくることは、これまで多くの研究で分かってきているが、さまざまな中医薬の活血系の生薬を使える。代表的なのは、当帰・赤芍・三七・莪朮・沢蘭・水蛭。このうち、劉教授は莪朮の使用にスポットを当てていた。莪朮は、桃仁・紅花よりも効果が高いと。また、水蛭と地龍の組み合わせは、尿蛋白を減らすのとアルブミンを上昇させるのに有効。(筆者注:私も水蛭はよく使います。活血化瘀の働きは素晴らしいと思います。)

 さらに、湿熱に関してはCKD治療において注意しなければならない。とくに、実熱証が発現する割合が多いときで7割以上にもなり、この湿熱を除去することで効能が高まる。とくにネフローゼのときは、附子と肉桂に使用に注意。一方で、陽虚がある場合は巴戟天・肉蓯蓉・鎖陽、陰虚のときは生地・知母(ちも)・血虚のときは当帰・鶏血藤(けいけっとう)を使う。



posted by 藤田 康介 at 20:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察