2013年04月30日

中医臨床 Vol.34 2013年3月号「地域医療における中医学の役割」

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 中医臨床の連載で私が書いている「未病を治す智恵」シリーズで、今回は上海などが重点的に取り組んでいる、地域医療における中医学の活用について触れています。一部、条件を満たした老中医に対しては、個人開業を認めるなど、新しい政策が次々と登場しています。また、近年では中医学を活かした街づくりを行う計画も出されています。
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2013年04月29日

中国江蘇省にみる長寿の人たちの生活方式

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 日本同様に、中国でも高齢化が進んでいます。上海市の場合、2012年の平均余命は82.41歳で、2011年の82.51歳と比較すると若干落ちましたが、それでも2005年以降80歳以上をキープしています。

 そんななか、江蘇省が100歳以上の高齢者を対象に調査した、彼らの生活方式について興味深い結果が報告されていました。江蘇省といえば、如皋のような、中国全国でも有名な長寿の街があります。米や野菜が豊富に収穫できるエリアです。

 さて、運動に関してみてみると、大部分はあまり激しい運動をする習慣がないということでした。特に、運動のしすぎは身体によくないと考えている人が多いようで、だけど散歩とかストレッチとか、気分をすっきりさせるような運動をするようです。中医学と関係のある運動も、一般的にはゆっくりした動作が多いですからね。

 また、食べ物に関しては、大豆製品を食べる人が多いという特徴です、毎日大豆製品を食べると言う人は、全体の90%以上だそうです。野菜に関しては、1日2〜3種類食べて居る人が最も多く85%に、その他にも肉や魚、卵もしっかりと食べているようです。

 果物に関しては、毎日食べているという人は25%程度で、偶に食べて居ると言う人も合わせてやっと50%程度。殆ど食べて居ないという人も25%ほどいました。食べ物が比較的豊かに揃う現代では、そこまでして果物を食べる必要はないのかもしれませんが、やはりバランスよく摂取したいところです。

 主食は、米以外にもジャガイモや山芋、落花生や粟など雑穀を食べて居る人が多く、また生野菜の和え物(涼伴菜)として、キュウリや大根、ニンニク、アスパラガスなどもよく食べて居るようです。熱する食べ物が多い中華料理ですが、うまく生野菜も摂取していることが分かります。

 また、食べ物はなるべく地元でとれるものを重視。特に、田舎などにいくと野菜程度は自分で植えてしまう人が多く、食べる直前に収穫して調理しているのだそうです。肉も魚も新鮮にこだわっています。また、栄養価の損失を極力避けるために、1晩たった野菜料理は食べないというのは、中華料理の鉄則でもあります。

 飲み水に関しては、7割の人が、水を飲むことを好み、朝起きたら水を飲む習慣があるそうです。飲むものはお茶よりもむしろ白湯。そして、お粥を食べることが多いという特徴もありました。生姜茶や生姜を食材として使うことも多いようです。

 ちょっとしたことばかりですが、我々もぜひ実践してみたいですね。

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2013年04月28日

5月1日より施行される中国の『精神衛生法』

 私が以前所属していた上海中医薬大学附属竜華病院は、ちょうど上海市の精神病治療の中核となっている上海市精神衛生中心の向かい側にありました。窓に格子が設置されていたりして、結構物々しい様子であったことを憶えています。

 いまだに中国では精神病疾患や障害者への認識が低く、家族からも理解が得られないのも事実です。そのため、「社会の安全のため」を名目に、本人の意志に関わりなく、強制的に施設に入院させるのが常となっていました。報道では、一部の自覚症状を本人が認識していて、自分自身で積極的に治療したいと来院する場合を除いて、8割が意志に関わりなく、精神病院に送り込まれているともいわれています。

 そんななか、5月1日から中国ではじめても『精神衛生法』が制定されることになりました。その特徴は、原則として精神病患者が自らの意志で施設への入院を決めることができるということが明文化されました。また、治療方針も患者自身の権利も尊重されると言うこと。そして、本人の同意なしに家族などが施設に送り込むことは違法行為と見なされると言うことです。一方で、重篤な精神病患者で、自分自身(自殺)や他人に危害を与える場合は、強制的に入院させることもありえるということです。

 ただ、新規定では退院することに関しても、患者の権益が重視され、自由度が増すようですが、この点に関しては、まだ精神病患者の家族からは根強い不安があるのも事実のようです。いずれにしろ、また一歩、国際的な感覚に向けて前進してきたのではないかと思います。

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2013年04月27日

H7N9鳥インフルエンザでの中医学の活用法

 4月26日現在の中国と台湾でのH7N9型鳥インフルエンザ感染者数ですが、25日に江西省で1例、26日に福建省で1例新たにみつかり、累計感染者は115例に。北京・山東・台湾・福建・江西がそれぞれ1例、江蘇24例、上海33例、浙江45例、河南4例、安徽4例。中高年の感染が多く、死亡例は計23例になっています。 

 今晩は夜8時から金茂大厦で、日本領事館主催の医師向けの交流会があり、東北大学の感染症の専門家である賀来教授を囲んでのH5N7鳥インフルエンザに関する情報交換がありました。先生は、明日は蘇州での公演というご多忙の中、日本での取り組みなども含めて、様々な観点でのお話を伺うことができました。

 今回の鳥インフルエンザに関して、2003年に我々も経験したSARSと比較すればまだはるかに対応はしやすく、タミフルやリレンザも有効であるのですが、発熱外来の問題も含めて、日本と中国とではその対応が違うのもまた事実で、医療従事者として注意することはたくさんあります。また、一般的に、インフルエンザにかかって、早期にタミフルやリレンザを使用した場合、治癒しても抗体ができにくいということにも注意が必要です。

 巷では、一時期、板藍根がいいとか言って、薬局から姿を消す騒ぎがありましたが、これはちょっと理性のない行動です。たしかに、板藍根には清熱解毒の作用がありますが、これがインフルエンザウイルスに効果があるという確かな証明があるわけでもなく、ましてやそのメカニズムが分かっていません。我々、中医学を専門とするものは、まずそうした使い方はしません。また、仮に効果があることが分かっても、それを盲目的に服用すること自体が、すでに中医学の本質からずれてしまっていることを認識しなくてはいけません。

 まだあまりまとまったデータは出て来ていませんが、徐々に部分的にはH7N9鳥インフルエンザの治療に中医薬が活用されているような印象です。4月17日に行われた国家中医薬管理局の記者会見でも、当時発生していた77例の症例のうち、24例で中医学が使われたということです。

 先日このブログで紹介した、既に退院した北京の子供の感染者も、タミフルでは15時間発熱が収まらず、中医薬との併用で3時間で発汗して解熱し、すでに軽快しました。

 江蘇省中医医院に入院していた79歳の高齢患者は、内服の麻黄湯・白虎湯で、さらに痰熱清注射液(黄芩、熊胆粉、山羊角、金银花、连翘)・生脈注射液(红参、麦冬、五味子)を静脈点滴し、最終的には気管切開をせずにすみ、既に歩けるようになったということです。

 安徽省の症例では、10日間にわたるステロイドと抗生物質の治療により、腸内細菌のバランスが崩れ、便秘になってしまったところに、三仁湯を介入させて、脾・胃の動きを整えて、既に回復に向かっていると言うことです。

 中医学がどこまで力を発揮できるかは、これからの研究をまたないといけませんが、しかし歴史的に昔から伝染病と闘ってきたのもまた中医学だったので、今後も西洋医学とうまく活用していけたらいいのではないかと思います。

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2013年04月18日

H7N9鳥インフルエンザ、北京で中医学を併用した症例

 4月17日に、北京で初めて確認されたH7N9鳥インフルエンザに感染した7歳の女の子が退院しました。4月11日に肺感染症で入院し、北京地壇医院で治療を受けていました。この患者は、中医学の治療法も導入されたということで、注目を受けています。

 治療を担当した医師が、メディアにコメントを残しています。それによると、4月11日に入院した当初、体温は37.2℃であったが、その日の夜には40.2℃にまで上昇し、タミフルを投与し、物理的方法などで解熱を試みましたが熱は思うように下がりませんでした。12日のお昼頃、体温は引き続き39.8℃あり、当時の症候は高熱にもかかわらず汗がなく、痰や咳も見られず、舌苔は紅絳、脈は浮・滑・数でした。そこで、中医学の「汗出熱退、脈静身涼」の原則に法り、まずは発汗させることと、邪気が衛気にあることから、辛散透邪・解毒清熱の治法で処方を考えたと言うことです。

 中国衛生当局(国家衛計委員会)は中医学治療によるガイドラインを出していますが、その中で銀翹散と白虎湯の基本処方が出されており、これの加減をとる方針とし、さらに舌苔の様子から衛気営血の変化も考慮して青蒿などを使って邪気が営分に入るのを防ぐようにしたとしています。服用後4時間程度で子供は汗をかくようになり、12日の夜8時には体温は37.3℃まで下がりました。

 4月13日には、今度は元の処方から発汗作用のある荊芥穂を抜き、玄参・芦根など益気養陰・清熱解毒とし、温病後期における熱邪による気陰の消耗を防ぐようにしたということです。

 中国衛生当局の処方は、江南エリアで発生したH7N9鳥インフルエンザの症例にあわせて作成されたもので、ある意味非常に実践的な処方です。今回は、温病の「春温」に属し、早くから中医薬を併用する必要性を示した症例であるかと思います。

 今後、色々な症例についての検討が行われることかと思いますので、注目していきたいところです。


posted by 藤田 康介 at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う

2013年04月05日

4月4日現在の上海のH7N9型鳥インフルエンザ感染者情報

 上海で新たに3例のH7N9型鳥インフルエンザ感染者が4日に発生しています。以下は新華社の報道です。

 52歳女性、上海人。退職者。3月27日に微熱、3月29日に長寧区中心医院の救急センターで治療を受ける。重篤化して4月1日に華山医院に、4月2日に再度華山医院に再度行くも、4月3日に救急処置を受けるも死亡。この患者と接触していた1人が発熱・咳の症状を訴え、上海公共衛生臨床中心で隔離治療中。

 67歳女性、上海人。退職者。3月22日に喉の痛み、咳、痰、身震いをともなう発熱。3月24日に東方医院で診察を受け、3月25日〜27日の3日間は仁済医院で診察を受ける。3月27日に瑞金医院の救急で診察を受け、ICUへ。症状は重篤化。

 4歳男男児、上海人・3月31日に発熱39℃・鼻水。4月1日に第六人民病院金山分院で治療を受け、4月2日に児科病院に転院、現在状態は良好。体温は36℃に。

 また、上海市松江区の瀘準卸売市場のハトサンプルからH7N9鳥インフルエンザが検出され、この市場の家禽類がすべて処分され、消毒された模様。また、中国農業部からの緊急通知により、H7型鳥インフルエンザを検出した閔行区景川菜市場、鳳庄市場を一旦閉鎖して消毒したほか、活きた家禽類の交易を中止しました。

 4日現在、中国では14人がH7N9型鳥インフルエンザに感染し、5人が死亡。いずれも長江デルタエリア。このうち6人が上海で、4人死亡しています。また、子供は軽くすんでいるようでしたが、中高年は概ね重篤化しています。今のところ、人から人への感染は確認されておりません。

 ただ、タイミングが悪く、現在は清明節の休みで、地方に出かけている人も多いはず。田舎に行くと、必然的に家禽類に接触するチャンスが増えるし、また上海人は活きた鶏・アヒルなどを料理して食べる食文化。食文化を根本的に変えてしまわないと難しい問題ですね。


posted by 藤田 康介 at 08:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

『人感染H7N9型鳥インフルエンザ治療診療方案』(2013年第1版)から

 中国の衛生当局から中医治療の診療方案が発表されました。参考のためにご紹介します。この診療方案は、西洋医学の部分と中医学の部分の両方から書かれています。以下はその治療方案からの情報です。

 鳥インフルエンザウイルスは寒さには強いが、熱には弱いという特性があります。そのため、65℃以上で30分の加熱、100℃以上で2分間の加熱で対策できるということですが、寒さには強いので、糞便の中では1週間、4℃の水の中では1ヶ月も活きていることが確認されているようです。さらに、PH4.0の酸性の環境でも生存できるとか。

 また、潜伏期間は1週間程度で、発熱・咳・痰・頭痛・筋肉痛・身体のだるさなどをともない、39℃以上の体温となり、呼吸困難・喀血・血痰が確認され、呼吸窮迫症候群となり、縦隔気腫、膿毒証、ショック状態、意識障害、急性腎不全など重篤化します。

 そのため、1.腋窩体温が38℃以上 2.胸部レントゲンで肺炎の特徴 3.早期でWBCが正常もしくは低下、リンパ球が低下、4.症状から通常の肺炎とは診断できない場合など以上の4点が満たされた場合、中国では監測症例となります。

 治療は、西洋医学の部分と中医学の部分に分かれていますが、酸素吸入、隔離を行った後、解熱や咳止めなど対処療法を行い、早めに抗ウイルス剤の使用を行うようにとしています。

 西洋医薬では、H5N1型、H1N1型で有効だったオセルタミビル(奥司他韦・oseltamivir・いわゆるタミフル)、ゼナミビル(扎那米韦・Zanamivir・いわゆるリレンザ)が有効であるとされ、成人の場合のタミフルは75mgを1日2回、重症患者は量を倍増して1クール5〜7日間、リレンザは成人の場合10mgを1日2回吸入するということです。


 ただし、A型インフルエンザの治療に使われることもあるアマンタジン(金刚烷胺)とリマンタジン(金刚乙胺)にかんしては、過去にアメリカのCDCが使用停止を勧告しているように、今回のH7N9型鳥インフルエンザでも耐薬性があるということです。


 一方で、中医学的治療に関しては、2つの証に分けて処方が紹介されています。


1.疫毒犯肺・肺失宣降
  症状:発熱・咳・少量の痰・頭痛・筋肉の痛み
  治法:清熱宣肺
  参考処方:桑叶・金銀花・連翹・炒杏仁・生石膏・知母・芦根・青蒿・黄芩・生甘草
  煎じ薬で1日1〜2回、4〜6時間に1回服用。
  加減:咳がひどい場合は枇杷葉・浙貝母
  中成薬:疏風解毒カプセル、連花清瘟カプセル、清開霊注射剤


2.疫毒壅肺・内閉外脱
  症状:高熱・咳・痰が出せない・息苦しい・息を切らす・喀血・四肢の冷え・冷汗・不安感・意識が確りとせず、ろれつがまわらない
  治法:清肺解毒・扶正固脱
  参考処方:炙麻黄・炒杏仁・生石膏・知母・魚腥草・黄芩・炒梔子・虎杖・山茱萸・太子参
  煎じ薬で1日1〜2回、4〜6時間に1回服用もしくは鼻腔栄養法
  加減:高熱が続き、意識が朦朧とし、ろれつがまわらない場合は安宮牛黄丸、四肢が冷えて汗が大量に出る場合は人参・炮附子・煅竜骨・煅牡蠣、喀血のある場合は、赤芍・仙鶴草・側柏葉、チアノーゼの場合は、三七・益母草・黄耆・当帰尾。
  中成薬:生脈注射剤・参麦注射剤

 参考までに。

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2013年04月04日

浙江省杭州でもH7N9型鳥インフルエンザ2例、など

 4月3日の浙江省衛生庁の発表で、浙江省でも2例のH7N9型鳥インフルエンザ感染例が確認され、このうち1人が死亡したということです。これで、4月3日現在でH7N9型鳥インフルエンザ感染者は中国全国で9例となり、3例が死亡したことになります。

 38歳男性(死亡)、調理師。江蘇省太倉で仕事していたが、3月7日に発病し、3月18日に地元杭州建徳に戻ってきて入院、20日に䔥山で治療をうけたものの、24日に症状が悪化。27日に死亡した。家禽類との接触は明らかではないが、調理師となると何らかの接触があったのではないかとも想像はできます。

 67歳男性(治療中)、退職者。3月25にに発熱・咳で杭州市内の病院に入院、容体が悪化して4月2日に浙江大学の某大学病院に転院、現在治療中。

 この2症例からも分かるように、同じ杭州市内での発生とはいえ、かなり場所が離れているのは明らか。

 また、それまで江蘇省で確認された4例に関しては、以下の通り。

 45歳女性(治療中)、江蘇省南京市江寧区の市場で家禽類の処理に関わる仕事。3月19日に発熱・目眩・身体の痛みを感じて治療を受ける。24日に症状が悪化し、南京市内の病院のICUに転院。

 48歳女性 (治療中)、江蘇省宿遷沭陽で木材加工業、3月19日に発熱、目眩、咳。3月30日に症状が悪化して南京市内の病院のICUに転院。

 83歳男性(治療中)、江蘇省蘇州で職業不詳、3月20日に発熱・咳と胸の痛み、胸痛、息切れなど。3月29日に症状が悪化し、呉江区の病院に転院。

 32歳女性(治療中)、江蘇省常州で無職、3月21日に発熱、咳。3月28日に無錫市内の病院のICUに転院。

 これまでの状況からみると、H7N9型鳥インフルエンザの患者の発生は、長江デルタエリアに集中しているものの、かなり広範囲に散らばっているのが特徴。また、発病して1週間程度で重篤化しているのも分かります。

 ちなみに、上海で先日確認されたH7N9型鳥インフルエンザの死亡患者は、いずれも閔行区であり、同一の病院で治療を受けていました。居住エリアも近いようですが、双方の関連性については現在のところないと当局は発表しています。

 これとは別に、4月3日22日の発表では、湖南省岳陽でH1N1インフルエンザウイルスに感染して死亡しています。58歳で武漢に出張後に3月26日に発熱・高熱・咳などの症状を訴えて入院。その日のうちに呼吸困難となり、4月1日に死亡しています。


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2013年04月03日

Look上海 4月号 連載「中医学探訪」は生姜のお話

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 毎月連載しているLook上海の記事ですが、今月は生姜について書いています。生姜と言っても、修治(加工)することでいろいろな種類があり、ここでは生姜・生姜汁・生姜皮・干姜・炮姜について書いてみました。それぞれの効能と使い方の違いがあったりします。
 この雑誌は、上海市内で無料配付されていますが、うちの診察室にも置いてありますので、ご希望の方はおっしゃってください。

posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2013年04月01日

孟河医派の常州を訪ねて

 4月1日〜2日と江蘇省常州を訪れてきました。

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 妻の親戚が常州にいて、体調がよくないので診てくれないかという要望もあったので、クルマを運転して行ってきました。片道200キロ強の道のりです。さらに、常州といえば、今の上海の中医学を引っ張っているといっても過言ではない孟河医派が誕生した場所でもあります。

 上海からは常州まで高速道路でつながっていて、そこからさらに北上して到着する小さな街が孟河です。4月の初めだけに沿線の菜の花はとってもきれいでした。今では、様々な工場が増えていますが、それでも旧市街は残されています。

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 私自身も恩師から教わった中医学は、先の先をたどっていくと、一応孟河医派の流れをくむことになります。私の恩師の竜華医院腎臓内科の陳以平教授の師匠は、徐嵩年先生となり、その先は丁氏系列にまでつながります。手元に、徐嵩年先生の臨床経験をまとめた本がありますが、恩師がよく使う処方の片鱗が沢山出て来ます。

 そもそも、丁氏系列の中医学が上海の中医学教育に貢献した業績は大きく、孟河医派の4大系列(費氏・馬氏・丁氏・巣氏)のうち最も歴史が最近となる丁氏系列の丁甘仁先生は、1917年に上海で現代中医学としてはじめての上海中医専門学校を開設し、1926年〜1948年にかけては上海中医学院として継続され、ここで教わった人材は、中国各地で中医学の普及に尽力しました。

 近年、孟河医派の研究が進み、その保存への動きも高まりつつあります。常州市には、常州孟河医派伝承学会などもあり、臨床を実践する場所として孟河医派名医堂なども作られました。また、私が訪問した日には閉まっていましたが、常州市非物質文化遺産展示館にも資料が展示されています。

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 孟河医派の中医学的特徴は、なんといっても、内科・婦人科・小児科・外科・整形外科と各分野で系統が存在していて、とても実践的な中医学であるということです。これは、費氏系列の費伯雄の書いた『医醇賸義』などを読んでみてもよく分かります。この序文にも書かれていますが、「世間には秘方は存在せず、平凡な治法があるにすぎないが、その平凡な治法が極まることで、驚くべき効能を発揮する」とあるように、基本に立ち返った治療法の重要性を説いています。

 孟河医派の特徴として、内服も煎じ薬だけでなく、丸薬や散剤などを使いこなし、外用薬も外貼や外敷なども積極的に活用しています。古いものにとらわれず、臨床効果を重んじた理論には、現在の中医学でも十分に活用できます。また、多くの孟河医派の医師たちが、上海にやってきて医院を開き、沢山の患者を診察してその名声を高めました。

 上海を含む、江南エリアでの孟河医派の果たした役割は非常に大きいです。そうした経験をぜひ継承していきたいと思っています。中医学はそもそも地域色が非常に豊かな医学ですから。


posted by 藤田 康介 at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力