2012年12月26日

張仲景と餃子

 今年は12月22日が冬至でした。日本では柚子風呂にはいったり、南瓜をたべたりしますが、中国ではあまり見かけません。我が家では、農家からもらった柚子には農薬がついていないので、皮をめくってお風呂にいれてみましたが、こちらの柚子は、日本で言う文旦なので、とにかくでかい。それでも、いい香りに楽しめました。

122601.jpg

 冬至をきっかけにして、ますます寒くなってくるわけですが、やはり体を温めることは非常に大切です。上海の街をすこし歩いてみると、山羊肉を使った料理をいろいろ見つけられます。ラーメンのトッピングに山羊肉をつかったりするのは、このあたりの特徴です。これがおいしい!

122605.jpg
(野菜たっぷり)

122603.jpg
(紅焼羊肉)

122602.jpg
(白切羊肉、こちらは特製のタレで食べることが多い)

 

 一方で、中国の北方エリアでは犬の肉も食べます。犬の肉も、山羊肉にも負けない、体を温める食材です。



 さて、中国の北方ではよく食べられる餃子。我が家では、むしろワンタンのほうが多いのですが、たまに餃子を作ることもあります。



 中医学や漢方を勉強している人なら必ず一度は読む「傷寒雑病論」の作者、張仲景にも餃子にまつわるエピソードがあります。さすがに、名医の誉れが高い(医聖)の張仲景です。医食同源に関しては心得たものです。



 張仲景が長沙で役人をしていたころ、故郷南陽の白河沿岸では粉雪が舞って、身を切るような寒さに見舞われました。故郷の人たちの耳がしもやけで爛れている様子をみて、どうにかならないかと炊き出しを思いつきます。



 これは、羊肉や唐辛子などのほかに、体を温める働きのある生薬をいれて一旦煮だし、そのあとそれらを切り刻んで、小麦粉の皮で耳のようにまるめて再度鍋に煮詰めるというもの。「駆寒矯耳湯」として、人々に食べてもらいました。その結果、耳の爛れが治ったと言うことです。これが餃子として現在にも伝わっているという説もあるぐらいですから、名医の影響力というのは大きい。でも、たしかに焼き餃子を食べるよりも、こうした煮詰めた餃子の方が体が温もりますよね。



 餃子やワンタンをつかって薬膳的な試みを行うことは、わりとよく行われていて、2011年に出かけた安徽省黄山市でも胡氏高湯餛飩(ワンタン)のような老舗のワンタンの屋台がありました。

122604.jpg
(焼きワンタンも上海地元料理の一つです)

 ちなみに、上海では冬至にお団子をたべる習慣があります。胡麻ペーストや小豆の入ったお団子です。お団子は、縁起物の食材の一つですので、よく上海の年中行事で登場しますね。




posted by 藤田 康介 at 08:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2012年12月21日

冬至〜三九貼と膏方〜

122102.jpg

2012年12月21日は冬至。正確には、北京時間で12月21日19時12分が冬至となります。今日は朝までは空気の汚染度は悪くなかったのですが、風が強くなってきて、寒波がやってくると途端に汚染度は上昇。午後からの運動は控えたほうが良さそうです。
 冬至と中医学は大変密接な関係があります。

 まずは、夏の三伏貼に続き、三九貼の季節になります。三九とは、冬至から9日目を初九、さらに9日後を二九、さらに9日後を三九とし、一年のうちで冷えてくる時期でもあります。そこで、期間中にお灸をしたり、経穴に辛温作用のある膏薬を貼ったりすることもあります。目的は、体の陰陽のバランスを調え、免疫力なども含まれる正気を高めます。おもに、喘息やアレルギー性鼻炎、慢性の胃腸炎、肩こり、関節痛、虚弱体質などに適用されます。

 また、上海など江南エリアでは、膏方の服用が始まります。今年は、私も自分自身で膏方を作ってみました。冬至以降、陽気が徐々にあがってくるのですが、順調に陽気があがるために膏方の助けを借りることもあります。

 食べ物に関しても、冬至ならではの特徴があります。

 代表的なのは、山羊肉。体を温めてくれる羊肉を、一年のうちで一番よく食べるのがまさにこの時期です。山羊肉は意外と臭みがなくて、美味しいです。

 冬至になって、中医学的に体を補うと言うことは、中国では一般人もよく知っています。すなわち、「冬令進補」と言われています。

 食材でいうと、気を補ってくれる餅米、米、落花生、山芋、大根、豆乳などや、血を補ってくれる龍眼、黒木クラゲ、ほうれん草、なまこ、魚類、陰を補ってくれる白菜、梨、葡萄、牛乳、白色キクラゲ、陽を補う胡桃、ニラ、山羊肉、狗肉などなどがお勧めです。

 適度な運動が大事ですが、運動のしすぎには気をつけてください。また、寒いので風に体を曝しすぎないようにし、朝の運動はできたら太陽が出て来てからにしたいところです。(それにしても中国のお年寄りは朝がはやい。。。)

posted by 藤田 康介 at 15:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年12月20日

江蘇省鳳凰鎮永慶寺の鑑真和上伝説

 「日中友好」に貢献した偉人と言えば、中国人からも普通に名前があがってくるのが唐代の鑑真和上。私の地元、奈良にもあの唐招提寺がありますし、鑑真和上ゆかりの大明寺は今でもそのお寺があります。中国伝統医学(中医学)の医師をしている私にとっても、そして日本漢方(和漢)にとっても、中医学を日本に伝えた鑑真和上の功績には非常に大きいです。
 先日、ミニトリップの温泉旅行としていってきた江蘇省張家港エリアにある鳳凰鎮ですが、実はここに鑑真和上ゆかりの永慶寺というお寺があります。ここに伝わっている伝説というのが興味深いのです。


 鳳凰鎮という街には、鳳凰山という山があります。山というより丘ですが、付近に山がないので、高速道路からもよく目立ちます。いかにも風水の良さそうな場所ですが、鑑真和上が、5度目の日本行きに失敗し、再び江南地方に戻るときにここの永慶寺に立ち寄ったという伝説があります。

IMG_2531.jpg

IMG_2537.jpg

 この5回目の失敗で、目が見えなくなった鑑真和上ですが、さらに道中潮風にあおられて寒性の関節痛をおこしてしまいました。永慶寺で読経しながら過ごしていたある日、鳳凰山を散策していると、偶然にも泉を発見。地元の人に聞くと、鳳凰が水遊びをしていたので鳳凰泉と呼ばれていたそうです。

 これは縁起がいいということで、鑑真和上はこの泉の水を使ってお風呂を沸かして入ってみると、なんと体がすっきりした感じがするというのです。さらに、半年間泉の水を使って風呂に入ると、関節痛はなくなり、見えなかった目にも薄明かりがさすようになったと言われています。

IMG_2541.jpg
(山の上からの景色)

 そして、6回目の日本行きでは、ここの泉の水を船に積み込み、無事日本に到着。さらに、弟子達がまとめた『鑑上人秘方』には、鳳凰泉が関節痛にいいという記載があるが、この鳳凰泉というのが、まさにここの泉だということです。

 実は、先日私が宿泊した温泉ホテルも、源泉から50℃のお湯が出て来ていますが、温泉ホテルから鳳凰山まではクルマで5分ほどの距離。きっと、鑑真和上が傷を癒した泉も、そうした成分があったのか、とにかく体が非常にポカポカしました。ちなみに、宿泊したホテルの温泉の成分はナトリウム炭酸水素泉でした。れっきとした温泉で、いまでも入浴できます。残念ながら、鑑真和上がみつけた鳳凰泉は今はありませんが、その山とお寺の面影は残っています。山の上にあるお寺からは、村全体が見渡せるようになっていて、立派な仏様がおられます。

 奈良にもゆかりの深い、鑑真和上の伝説が、こういったところで耳できることに、鳳凰鎮にはすごく縁を感じてしまいました。

IMG_2534.jpg
(一気に寒くなって氷が)

 しかし、6回目で日本渡航に成功した鑑真和上。命を犯してまでも日本に行こうとしたそのモチベーションは何だったのか。伝統医学を中国でほそぼそとやっている自分にとって、ぜひ知りたいテーマでもあります。


posted by 藤田 康介 at 07:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年12月18日

大気汚染に上海市教育委員会も動き出した

IMG_2598.jpg
(今朝の世紀公園)

 今朝、上海のマスコミでも報道されたので、ご存じの方も多いかと思いますが、ついに上海市教育委員会と上海市環境保護局が、大気汚染時の市内幼稚園・小中学校への対応についての規程を定めました。
 AQI指数がすでに対外的に発表されていることは、上海大気汚染の新指標「AQI」の見方でもお知らせしていますが、それ以外にも大気汚染が基準値を大きく超えたとき(警報レベル)には、SMS方式で学校に伝えるという仕組みです。通知を受け取った学校は、屋外での運動を控えたり、体育の授業を他の授業に切り替えたりするように対応します。

 また、大気汚染の状況が改善された場合(警報解除)も通知が出されるようです。

 上海の大気汚染度に関しては、今や公式情報でも様々なサイトが登場しています。

 HPでは、上海空気質量実時発布系統 http://www.semc.gov.cn/aqi
 新浪Weiboでは、上海環境というのもあります。http://weibo.com/shhjbh
 
 ちなみに新浪Weiboは私もやっています。藤田康介で検索(中国語でも日本語でもOK)していただければ、見つかると思います。

posted by 藤田 康介 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年12月07日

2013年度、中医関連の国研究予算は4億6千万円

 中国科技部が主催する、農業・林業・工業・医学・薬学などを含めた中国国家重点基礎研究発展計画のことを、一般的に973計画と呼びますが、2013年度の予算として29.93億元つくことが発表されました。日本円にすると400億円の規模ですが、この184の研究項目の中にちゃんと中医学の研究予算もついていました。その額は、3535万元で日本円にすると4億6千万円程度になります。

 具体的に、どのようなテーマで予算がついたか。

 中医学関係で、もっとも高額な研究費がついたのが、北京中医薬大学の「肝蔵血、主疏泄の臓象理論の研究」で、1267万元(約1億6千万円)になりました。また、中国中医科学院の鍼灸研究所による「針治療における機能性胃腸障害の双方向調節効果とそのしくみ」が、711万元の予算を獲得していました。

 一方で、973計画の中で、最も高額な研究費がついたのは、中国科学院物理研究所の「高温超伝導材料と物理研究」で、5508万元の予算がついています。日本円にすると、7億円を越える予算です。こうした最先端の研究の多くには、1000万元〜2000万元の研究予算がついているのだそうです。

 中医学に関しては、研究予算全体のウエイトは少ないです。でも、伝統的な中医学の研究に、しっかりと国から予算がつくのはやっぱり素晴らしいことです。もちろん、これ以外にも省や市クラスの研究テーマもあり、予算がつけられています。





甘霖・我が愛しの上海へ
posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年12月02日

上海地区で近年急増している大腸癌

  上海エリアで癌の発生率で一番多いのが肺癌で、近年も増加傾向です。大気汚染との関係も指摘されており、「肺癌と中国の大気汚染問題」にも記事を書きました。

 さて、その次に多い癌が大腸癌であることをご存じでしょうか?とくに、この50年間で上海エリアでの大腸癌の発病率がなんと5倍にも増えています。1962年の大腸癌の発病率は10万人に8.7人だったのが、2008年には10万人に48.4人にまで増えました。



 復旦大学附属腫瘤病院のデータによると、この大腸癌のうち、結腸癌が全体の4割を占め、直腸癌が全体の6割ということです。また、発病年齢は年々高齢化し、中位年齢はいまでは70歳に届こうとしている一方で、発見される時期が遅く、50%が発見段階で肝臓に移転しているということでした。また、ステージ1で発見された人は、11.8%しかおらず、まだまだ低い状態です。



 中国では、とくに上海など大都市では、飲食の変化が顕著です。以前はあまり口にできなかった肉料理が、もの凄い勢いで増えてきていますし、食生活の乱れも問題になっています。伝統的な中華料理(上海料理)はまだヘルシーなのに、いったいどこにいってしまったのかと思いますね。

 なお、大腸癌の予防としては、歩くことも有効です。以前に1日30分歩くことと大腸癌のリスクというような記事も紹介しました。

 適度に動くこと。ぜひ実践したいですね!




甘霖・我が愛しの上海へ
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年12月01日

上海の子供は成人病予備軍

 私もこれまでに上海の日本人学校に呼ばれて講演したこともありますが、日本人に限らず、上海人の家庭でも、子供の食育問題は極めて深刻な状態ではないかと思っています。

 特に、上海人の家庭の場合、食生活がますます豊かになり、選択肢が増えすぎていることとも関係があります。また、子供の学校給食も日本のようにきっちりと栄養を考えたものになっているわけではなく、嗜好任せというのが現実らしい。そもそも、40代前後の親の世代で、食育に対する正しい認識が非常に低いのが問題と思います。ぶくぶくに太った子供たちを上海でよく見かけますよね。

 そこで、上海市衛生局では、子供の栄養状態を管理するために、市内17箇所の小中学校を対象に、栄養を考えた給食など食生活のあり方の改善を行っています。

 上海仁済医院の調査では、市内6箇所の小中学生3000人のうち、体重オーバーもしくは肥満と認められた子供の割合は24.6%で、このうち脂肪肝は体重が正常グループでは0.2%しかいなかったのに、肥満グループでは36.9%もいました。また、高血圧も正常グループでは5.8%だったのに、肥満グループでは21.7%いました。つまり、上海の子供たちの多くは、幼少期から成人病の脅威に曝されているというわけなのです。

 また、栄養士による学校給食の調査も行われました。この結果、子供たちの好む揚げ物が多い傾向にあり、緑黄色野菜や大豆製品が少ない傾向にあることも分かってきました。私のところに来ている上海人の子供の患者さんも、まずい給食は残飯に直行のようなことを平気で言っていました。また、インターなどでは、ピザとか高カロリーのメニューがしょっちゅう出てくるのだそうです。

 そこで、上海市の金山小学校では、学校給食のメーニューに1年間にわたって栄養士を介入させると、脂肪肝・高血圧・体重に関しては大変な効果があったようです。また、肥満対策として食事内容を日記として書かせたり、今後のフオローも行うようです。ただ、まだ一部の学校で始まったばかりなので、広く普及することが望まれますね。

 上海の場合、共働きが多いからか、外食する子供たちが多い傾向にもありますし、朝食を抜いたり、歩きながらお菓子を食べて済ませる子供もよく見かけます。親からして、十分な食育をうけていないので、それを子供に伝えること自体が難しいかと思いますが、我々も臨床を通じて地道な努力をしていくしかないのです。




甘霖・我が愛しの上海へ
posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国の健康事情