2012年11月27日

上海の病院の有力診療科目一覧

 今年も中国で2011年度の病院ランキングが発表されました。

 中国全国の病院ランキングでは、上位100位のなかに、上海の病院19箇所がランクインしました。そのなかで、総合力でトップになったのは今年も北京協和医院でした。順番に、四川大学華西医院、中国人民解放軍総医院、上海交通大学医学院付属瑞金医院と続きます。上海の中山医院は第6位、華山医院は第7位でした。いずれも中国を代表する病院です。

 医療という点に関しては、上海には中国でも有数の総合病院が揃っていることになります。

 では、上海市内の病院に関して、中国国内で評価が高い病院を紹介しておきます。


【内科系】

1.呼吸器科・・・中山医院、瑞金医院、長海医院。中山医院は中国で第2位に。
2.消化器・・仁済医院、長海医院、瑞金医院、中山医院。
3.リウマチ科・・仁済医院、長征病院、崋山病院、長海医院。仁済医院は中国で第2位に。
4.内分泌科・・瑞金医院、第六人民人民医院、崋山医院、中山医院。瑞金医院は、中国で第1位に。
5.循環器系・・中山医院、瑞金医院。中山医院は中国で第3位に。
6.神経内科・・崋山医院、瑞金医院。瑞金医院は中国で第2位に。
7.腎臓内科・・瑞金医院、崋山医院、長征医院、中山医院、仁済医院。
8.腫瘤科(癌科)・・腫瘤医院、東方肝胆外科医院、中山医院。腫瘤医院は中国で第3位。
9.血液学・・瑞金医院、長海医院。瑞金医院は、中国で第2位に。
10.小児内科・・児科医院、上海児童医学中心、新華医院、上海市児童医院。このブログにも時々登場しますが、復旦大学附属児科医院は、中国でトップになっています。
11.感染症科・・・華山医院、瑞金医院、上海市公共衛生臨床中心。華山医院が中国で1位になっています。

【外科系】
1.心臓外科・・中山医院、上海児童医学中心、長海医院。こちらも、中山医院は中国で第3位に。
2.一般外科・・中山医院、瑞金医院、東方肝胆外科医院。中山医院は中国で第2位に。
3.神経外科・・華山医院、仁済医院、長海医院。華山医院は中国で第2位に。
4.泌尿外科・・長海医院、仁済医院、華山医院、中山医院、第一人民医院、瑞金医院。
5.小児外科・・児科医院、新華医院、上海児童医学中心、上海市児童医院。児科医院は、中国で第2位になっています。
6.整形外科・・第9人民医院、長海医院、長征医院。第九人民医院は中国でトップに。
7.骨科・・第六人民医院、長征医院、瑞金医院、第九人民医院、華山医院、長海医院。

【皮膚系】
1.華山医院、瑞金医院、新華医院。皮膚科といえば華山医院というのはだいぶ前から。今回も中国でトップに。

【耳鼻咽喉系】
1.眼耳鼻喉医院、新華医院、第六人民医院、長海医院。

【口腔系】
1.第九人民医院、同済大学附属口腔医院

【産婦人科】
1.婦産科医院、仁済医院。婦産科医院は中国で第2位に。

【眼科系】
1.眼耳鼻喉科医院、第一人民医院、第九人民医院。

【放射線科】
1.華山医院、中山医院、瑞金医院、長征医院。

【病理科】
1.腫瘤医院、長海医院

 今年で、3回目になる中国全国の病院ランキングですが、臨床28分野の2000人の医師から評価された結果です。臨床技術、研究内容などから総合的に判断されたものになっているということです。



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posted by 藤田 康介 at 11:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2012年11月26日

月経期の頻尿と中医学

 日本でも中国でも、漢方や中医学を使って、婦人科の治療を行っている方は多いと思います。とくに、月経痛や月経前症候群(PMS)対策では、東洋医学はかなりの特色を持っています。

 最近、私が見かけた患者さんで、効果が比較的良好だったのが、月経期の頻尿での中医学の活用でした。いずれも、月経がないときは、トイレに行く回数は普通なのに、月経が始まると途端に回数が増え、酷いときには15分に1回の割合でトイレに駆け込むという状況でした。西洋医学の検査では、とくに異常は見つかっていないけど、ただ月経時の腰痛や下腹部の不快感はかなり強いものがありました。日常生活に支障が出ていたので、受診されました。1例は湿熱毒邪+蘊結下焦の実証で、もう一例は、気血不固+腎虚の虚証で弁証すると、症状がおさまりました。

 一般に、月経期はヒトの腠理(いわゆる毛穴のこと)が大きく開き邪気が入りやすくなると同時に、腎虚がすすみ、膀胱の気化がうまくいかなくなります。そのため、補腎と理気を促す生薬が有効で、津液の代謝を整えます。

 今回は、山薬・菟絲子(としし)・覆盆子(ふくぼんし)・黄耆・党参などを使い、症状の変化を見ながら清熱去湿作用のある鳳尾草(ほうびそう)、月経を整えて補腎作用がある鹿含草などを加減させてみました。

 中医学の特徴を利用できる、効果的な治療法だと思います。



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2012年11月23日

中国でもスタチン系製剤による血糖値異常に注意喚起

 コレステロール血症の治療薬として広く使われているスタチン系(中国語では他汀类)製剤の使用に関して、中国国家食品薬品監管局が、血糖値の異常を示す場合があるして、注意喚起を出しています。

この第51期薬品不良反応信息通報の原文はこちらから。

 血糖値異常に関しては、空腹時血糖値の上昇、HbA1cの上昇、糖尿病の発病、糖尿病患者の血糖値コントロールの悪化などが起こりうるとしています。

 スタチン系の製剤は、高脂血症の患者さんを中心に、長期的に服用されることが多いため、とくに肝機能・腎機能に障害があったり、糖尿病の可能性がある場合は注意が必要です。また、スタチン系製剤のうち、中国で血糖値異常の報告が多いのが、アトルバスタチン(Atorvastatin Calcium 阿托伐他汀)と、ロスバスタチン(Rosuvastatin Calcium 瑞舒伐他汀)と報告されていました。




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2012年11月22日

下半身の冷えを中医学でどう考えるか

 寒くなってくると、女性を中心に体の冷えを主訴に来られる患者さんが増えます。冷えの改善には、日本でも漢方薬が活用されますが、こちら中国の中医学でも同じです。ただ、冷えで困っている患者さんの数は、どうも日本人の方が多いような気がします。(あくまでも、私の感覚ですが。。。)

 一言に冷えといっても、強烈な冷えの人は本当につらくて、幾ら衣類を重ねても効果がないことが多く、とくに腰から下が冷たいだけでなく、場合によっては痛みも伴うことがありますし、冬だけでなく年中冷たいという場合も少なくありません。そして、冷えとともに風邪を引きやすいといった体質もともなっている症例も多いように思います。

 それでは、中医学や漢方ではどう考えるか?

 「冷えているから、温めたら良い」という発想は容易にできるかと思いますが、それこそ暖かい靴下を履いたり、お灸や薬用足浴の活用ということになります。内服する場合だったら、体を温める生薬を使えば?ということになりますが、残念ながらそれぐらいでは頑固な冷えの効果は高まりません。

 例えば、上海エリアの場合、この冷えは単なる寒さだけではありません。「陰冷」と呼ばれるように、必ず湿の存在があります。つまり、寒湿になっているのです。また、寒邪に体が襲われた場合、それが経絡の流れを阻害し、気血が滞り、瘀血が形成されることも忘れてはいけません。やはり、単なる脾腎陽虚だけでなく、瘀血や気血両虚、さらに肝が筋脈を主るという理論からも、考えるべき問題は広範囲になると思います。(冷えすぎたら、足の痙攣がおきる場合がありますが、まさに肝主筋脈と関係があります。)

 そうなると、単に温めるだけでは足りないことになります。やはり、ちょっと汗をかけるような太極拳やウオーキングなど運動は、気血の巡りには欠かせないことが分かるかと思います。

 では、生薬ではやはり活血養血の処方に、温陽や補肝腎を足すというのがよく使われます。また、場合によっては四逆散のように、疏肝理脾することもあります。四逆散の四逆とは、そもそも手足が冷える、少陰病ことを意味すると言われています。また、こうした患者さんの多くは、下半身に症状をもっていることが多いので、下向きに生薬の効能が高まるように、川牛膝や独活(うど)を使うこともあります。

 いずれにしろ、冷え対策は単に温めるだけでなく、広範囲で考える必要があります。




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posted by 藤田 康介 at 17:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年11月18日

上海大気汚染の新指標「AQI」の見方

 どうも最近、うちの中医クリニックの臨床でも咳が止まらないという患者さんが多いです。西洋医学の病院で一通りの検査やレントゲンをとって異常は見当たらず、薬を処方されているのでは、効果があまりないというパターンです。咳・痰といえば、昨今の大気汚染の影響も考えられるわけで、全般的な対策が必要になります。

 上海市の大気汚染は季節によってその原因がいろいろ異なりますが、一般的に冬〜春にかけては黄砂が原因のPM10が上昇し、夏はオゾンが、秋冬の今の時期はPM2.5が上昇する傾向にあります。また、地域的にみても、上海の西部・西北部・西南部は空気がよくなく、海に近い東南部は比較的汚染が軽い傾向があります。そのため、これまで空気が良い場所として、モデル地点に指定されていた青浦区淀山湖がモデル地区から外されました。理由は、空気がよい地区の基準のはずなのに、大気汚染が進んでいることが明らかになったからです。今後、奉賢区や浦東新区南東部などに新たな基準地点が設置される予定です。

 そんななか11月16日から、上海市では大気汚染の指標として、あらたにAQIが導入されました。

 さて、このAQI指数に関しては、これまで中国で使われてきたAPI指数と大きな変化があります。中国の大気汚染基準はこれまではおもにPM10・二酸化窒素・二酸化硫黄をベースとしたAPI指数を1日1回発表していました。しかし、市民の間から、体感する汚染度との間に開きがあるという声が出ていました。そこで、AQI指数指数では、APIの指標に加えて、PM2.5・一酸化炭素・オゾンの3項目が追加され、6項目になりました。また、発表ペースも1時間に1回となり、発表するためのShanghai Enviromental Monitoring CenterのHPも作られました。これはかなり画期的なことだと思います。これまでは、アメリカ領事館など一部でしかPM2.5の数字が分かりませんでしたが、やっと政府公式の数値が出されることになったのです。

 さて、そのAQi指数の見方ですが、一応以下のようになっています。

緑色:優秀(1級)・・・・・AQI 0~50 汚染ほぼなし。

黄色:良(2級)・・・・・・AQI 51−100 汚染度可。ごく一部の人たちに汚染物資影響有。

オレンジ色:軽度汚染(3級)AQI 101−150 軽度汚染。健康な人でも刺激症状あり。

赤色:中度汚染(4級)AQI 151−200 弱い人への反応大。健康な人でも心臓・呼吸器に影響の可能性あり。

紫色:重度汚染(5級)AQI 201−300 心臓・呼吸器疾患のある人はさらなる症状悪化に要注意。持久力が低下し、健康な人でも 症状がでる。

茶色:厳重汚染(6級)AQI 300以上 健康な人の持久力は明らかに低下し、強い症状が出て、疾患が出てくる。

 そこで、このブログを書いている11月18日未明のデータをみてみますと、AQI指数は192で、4級の中度汚染レベルであったことが分かります。

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 今回のAQI指数が定められたことで、さらに画期的なことが行われると発表されました。それは、上海市の環境保全部門による、大気汚染警報の発令です。日本でも、光化学スモッグ警報などがありますが、上海ではこれまでありませんでした。そこで、上海市では重度の汚染になったら、教育委員会を通じて屋外での体育などを行わないようにする制度をはじめるようです。これは大きな前身ではないかと思います。

 ただ、学校のある場所で、AQI指数を測定できているわけでもないので、今の段階では、個人での判断も大切で、日々発表されるデータには注意を払うべきだと思います。マラソンなどそとで激しい運動をするときは、ぜひチェックしてみてください。

 ちなみに、同様の制度は、長江デルタエリアでは行われていて、江蘇省の13都市、浙江省の11都市で発表されています。




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2012年11月09日

上海の大気汚染中のPM2.5 が肺に与える影響とその対策(2)

 前回からの続きです。
 では、PM2.5による大気汚染対策で我々がいまできることはなにか?これはかなり難しいと思います。

 活性炭入りのマスクをしたらいいとか、いろいろな情報が流れていますが、たとえば活性炭入りのマスクは、ホルムアルデヒドなどは吸着できても、PM2.5に関しての効果はかなり疑問です。

 海外での報道を見てみるとこんなのもありました。(
The worst air pollution in the nine to five! To eat oranges anti PM2.5
)イギリスでの研究ですが、喫煙していたこともある200人(54歳〜74歳)の喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者を調査し、入院前に住んでいた場所の大気汚染状況との相関関係を調べたところ、自動車が原因とみられる大気汚染濃度が、1立方メートルあたり10㎍増加すると、喘息とCOPD患者の入院する確率は35%増加し、また体内のビタミンC濃度が最も低い患者は、入院率が1.2倍高まるという結果を発表しています。ビタミンCが、フリーラジカルの人体への攻撃を守ったとも考えられますが、同じような理由で、生薬の魚腥草(ドクダミ)がよいという報道もあります。魚腥草は、もともと肺への効果がいい生薬の一つですので、理屈は通っていると思います。

 ビタミンCといえば、キーウィや葡萄、ミカン類に多く含まれていますので、やはり新鮮な果物の摂取は欠かせないと思います。結局、抗酸化作用のある食物を摂取することが大切ということみたいです。そうなると、ビタミンAや、ビタミンEなども大切ですね。野菜や果物はしっかり食べましょう。

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 また、大気汚染の情報は日々刻々と、さらに時間単位で変化しますので、リアルタイムで注意する必要があります。私がよく見ているのが、「China Air Quality」という、iPhoneのアプリです。PM2.5 のほかにも、PM10や二酸化窒素や二酸化硫黄の濃度も出ています。また、Weibo(中国版ミニブログ)にも、ニュースを通じて最新の大気汚染関係の情報が出ていることがあります。

 家でできることとして、空気清浄機も有効です。日本でも光化学スモッグ対策がいろいろ行われてきた経験があるので、それを思い出していただければよいかと思いますが、空気が悪いときは窓を開けないようにし、ぜひ空気清浄機も活用して下さい。そして、なによりも空気がよくないときは、外での激しい運動をしないことです。水分を適度に摂取して喉を守るほか、疲労が溜まりすぎないように注意することも大切です。

 しかし、以前、宮崎駿監督のアニメ「風の谷のナウシカ」であったように、人類も高機能なマスクをしないと健康に生活できない日がくるのでしょうか。

posted by 藤田 康介 at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2012年11月08日

上海の大気汚染中のPM2.5 が肺に与える影響とその対策(1)

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(どんよりとした上海の朝焼け)

 今日は朝から雨ですね!上海では間違いなく空気が浄化されるので、なんとも嬉しいことです。PM2.5 のレベルもとりあえず、Goodレベルに落ち着いています。

 11月5日に書いたブログの続きになります。この時期、上海で深刻化する大気汚染、とくにPM2.5問題が人体に与える影響について、もう少し考えてみたいと思います。


 PM2.5と呼ばれる浮遊粒子状物質は、遷移元素(鉄・クロム・ニッケル・亜鉛などなど)や硝酸塩、硫酸塩などのほかにも病原体なども吸着して浮遊するという特徴を持っています。これが、呼吸器に入ってくるとかなり厄介で、これまでも各国の研究で、大気汚染が悪化すると、肺気腫や気管支炎、さらに肺癌の発病リスクが高まるということが分かっています。

 復旦大学附属中山医院呼吸器科の李教授らの研究グループによると、PM2.5 が呼吸器系に与える影響として、こうした遷移元素がPM2.5に吸着して肺に入ってくると、局部的に高濃度な金属トランスポーターとなり、強力なフリーラジカルを発生させます。酸化作用が働き、炎症反応となり、場合によっては悪性腫瘍にもなっていまいます。すなわち、肺に取り込まれた浮遊粒子状物質は、肺胞にあるマクロファージによって食べられ、サイトカインや前炎症性分子を分泌し、これらが肺胞の上皮細胞や内皮細胞にも影響をあたえ、さらにサイトカインによってマクロファージ・好中性顆粒球・単球などの炎症細胞が集まってきて、炎症反応を促進させるのです。

 こうした肺胞内の変化は、身近なところでは、喫煙でも起こります。喫煙により、浮遊粒子状物質が肺胞に溜まり、その上でPM2.5の影響を受けると、喫煙の有害性がさらに増幅される可能性があると指摘されています。空気の良くない中国の大都会での喫煙はよくないですよ!

 上海市疾病予防コントロールセンター(SCDC)によると、上海市で発生する癌の30%は肺癌で、肺癌の発生率では中国全国でトップになっています。大気汚染が原因と考えられていますが、その中でも発がん性物質とクルマの排ガスの増加とは関係があります。上海では今、130万台の上海ナンバーのクルマと、50万台の地方ナンバーのクルマが走っています。特に、中国ではガソリンなど燃料の質が悪いのも大きな問題です。PM2.5は、そうした燃料に含まれるPAH(多環芳香族炭化水素)を細胞表面に吸着させる働きがあるほか、PM2.5そのものに含まれる遷移元素系の金属やベンゼンなどの有害物質は、DNAに対しても影響を与え、遺伝子の突然変異を誘発し、癌の発生へとつながります。

 そんなことを考えると、とくに空気の悪い日にマラソンなどの持久走をすることはよくないことは明らかですね。残念ながら、今現在では上海では光化学スモッグ警報のような、関連する規程が出ていません。よって、学校関係の方がもしこのブログをお読みでしたら、ぜひ子供たちの健康のためにも、体育の時間とその時の大気汚染の関係をよく調べていただきたいものです。最近、咳や喉の不調を訴える患者さんがうちの中医クリニックで多いのも関係があると思います。

 PM2.5による汚染は、大気全体と関係があるため、なかなか対策が難しいですが、次回ではその対策を考えてみましょう。



posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(1) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年11月07日

立冬と中医学の「秋凍」

 2012年は11月7日が立冬です。中医学では、そろそろ膏方の処方シーズンに入ってきました。冷え性や虚弱体質、なんとなく体がしんどいという方に処方される、中医学の智恵です。膏方だと味も量も煎じ薬と違って服用しやすいので、毎年この時期だけ処方に来られる患者さんもおられます。

 暦の上では、立冬、立春、立夏、立秋など「立」がつく日が少なくありませんが、「立」とは古代中国語では何かが始まるという意味。まさしく、冬がはじまるわけで、農作物の収穫を終え、動物も冬支度をはじめます。



 中医学の養生の世界では、冬は「閉蔵」の季節と呼ばれ、陰を溜めて、陽を護る、いわゆる「斂陰護陽」の考え方を重視します。単に体に溜めたらいいというわけではなく、いつもよりちょっと早寝遅起して、陽を静めて陰を蓄え、陽気を傷つけないように部屋を適度に暖め、急に厚着をして腠理(いわゆる毛穴)から陽気が逃げてしまわないようにするのもポイントです。そのため、これぐらいの時期を中心に重視される鍛錬方法に「秋凍」というのがあります。日本的にいうと、「寒いのに薄着をして頑張ろう!」的なニュアンスもあるかと思いますが、すこし違います。



 中医学の養生で言う「秋凍」とは、中国は国土が広いので一概に統一した時期を言えませんが、上海エリアでは、まさに今ぐらいの温度が適当なのかもしれません。多少肌寒くなっても、すぐに服を着込まずに、熱くなりすぎて発生する過剰な熱や汗から体を守り、陰陽をコントロールするというものです。じゃあ、薄着をすればいいのだ?といえば、実はそう単純ではなく、中医学的にも冷やしてはいけない部位が決まっています。



 例えば、臍・頭・足・関節などがそうです。とくに、臍は寒邪の刺激が敏感で、寒さに曝されると、腹痛や下痢をおこすだけでなく、女性なら生理痛の原因にもなったり、不妊とも関係があります。頭は、帽子をかぶれば良いですし、足は靴下をはいたり、足浴などをすればいいでしょう。関節は、冷えによって血液の循環が悪くなると、関節炎にもなりやすくなります。ポイントは、体の表面は鍛えても、体の中、つまり五臓六腑を冷やしてはいけないということです。従って、運動して汗をかいたら、しっかりと拭くだけでなく、冷たいものを摂取して人為的に冷やさないようにすることも大切です。



 最低気温が常時10℃を割るようになってきたら、秋凍はおしまい。いよいよ本格的な冬に向けて、体の調子を整えて行く必要があります。




posted by 藤田 康介 at 07:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年11月06日

中国で雷公藤製剤の副作用に追加事項

 中国食品薬品監督管理局が、再度雷公藤製剤に対しての副作用警告に追記しました。2012年4月にも中国国家食品薬品監管局による中薬製剤「雷公藤製剤」の副作用警告として本ブログに書きましたが、今回の追加事項は、さらに踏み込んで、雷公藤製剤は消化器系・血液系・泌尿器系に副作用があり、子供・妊婦・授乳期の女性には使用禁止と明言されました。また、使用する場合は、厳格に医師の指示に従うこと、ということです。

 雷公藤製剤は、生薬雷公藤を原料としたもので、中国では慢性関節リュウマチや腎疾患、ネフローゼなどの疾患で免疫抑制剤的に使われることがあります。ただ、副作用に関しては以前から指摘があり、臨床医師の間では、注意が喚起されていました。

posted by 藤田 康介 at 06:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2012年11月05日

秋本場の薬膳弁当「三味南瓜鶏」

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最近、上海にいらっしゃる日本人の間にも、薬膳を勉強されている方が増えてきて、巷の薬膳教室は結構賑わっているようです。中医学をやっている私からしても、これは嬉しいことです。中医学への正しい認識を広めてもらってこそ、治療効果が高まるというものです。

 ところで、例のゴタゴタ騒ぎで結局お流れになってしまったのですが、実は延期して11月3日に開催予定だった、東日本大震災被災地支援イベント「第2回上海秋祭り」のお弁当コンテストに、我が家からも妻の力作を出展していたのですが、古北のヤマトギャラリーでの参加者写真ポスター展示ということになりました。

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 私は、基本的に昼食は妻の弁当を持って行っていますが、完全に中国式の弁当です。すなわち、日本式のようにおかずを一品ずつ分けるのではなく、ご飯のおかずをのっけるタイプ。このやり方だと、とてもシンプルなのと、飾りが一切ないので弁当のゴミがでにくい。合理的と言えば合理的だと思います。


 ただ、弁当コンテストではちょっと不利。さすがに、日本人のお母さんが作られるお弁当の美的センスには妻も驚いたようです。もちろん、妻も中医学の医師だけに、食材にはいろいろ工夫しました。ということで、本場中国の秋の薬膳弁当です。(薬膳といっても、我が家ではよく使う普通の食材なのですが。。。。)


 名前は「三味南瓜鶏」です。秋の食材として、南瓜・鶏肉(手羽・足など)・タマネギ・生姜をミリン・氷砂糖・塩・醤油を使って炒め、ここに鬱金(ウコン)・陳皮(チンピ)・香附子(コウブシ)などの生薬を煮出してからスープとして加えています。味を調えるために、日本のミリンを使うことで、生薬特有の苦みを抑えることができました。


 そのほかにも、秋の食材がテーマとなっていて、秋葵(オクラ)、百合根、南瓜に、秋に収穫される新鮮な蓮の葉も使っています。蓮の葉は、荷葉と言って、生薬としても使います。ご飯には、精神を落ち着かせ、胃を養ってくれる粟もまぜてみました。メインとなる鶏肉には、疲れた体を元気にし、秋の乾燥を潤す効能で、午後も元気に
仕事!という意味が込められています。

 もちろん、腹7分目と安全を意識して、弁当箱は小さめ。これが結構ポイントだったりします。さらに、有害物質が出にくいガラス容器を使っています。ガラス容器は少々重いですが、私は弁当箱として愛用しています。

 いつもここまで凝った弁当が毎日出てくるとは限りませんが(^_^)、それでも栄養には気を遣ってくれているようです。ありがたい。


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posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2012年11月03日

上海でのED(勃起不全)の調査

 中医学(漢方)の分野では、不妊の治療で来られる女性の患者さんは多いのですが、それと比較すると、ED(勃起障害)で来られる患者さんは、意外と少ないように思います。ただ、不妊治療の問題で厄介なのは、やはりセックスレスの問題もあり、そのなかにもEDの問題がちらついていることは否定できません。

 上海市男科学研究所の調査で、上海市の1720人の40〜80歳の男性を無作為に調査したところ、EDの罹患率は49.2%になることが分かりました。人口から推定すると、少なくても230万人の中高年男性がEDである可能性があると指摘しています。

 では、EDとなった原因を検討してみると、高い血糖値がEDリスクのなかで最も高く、一方で中性脂肪に関しては、EDと明らかな相関性はなかったとしています。また、台湾の研究では、腰回りが太くなればなるほど、テストステロン(男性ホルモンの一種)の濃度が下がるという結果もでています。つまり、メタボであると夫婦生活にも影響を与えることになります。

 また40歳以上の中高年男性のうち、56.13%がすでに夫婦生活がないと答え、特に60歳以上ではさらに顕著になっている一方で、これはEDと深く関わりがあると分析されています。しかし、夫婦生活があると答えた698人のうち、39.4%がやはり何らかの勃起障害を抱えているということでした。

 経済的にも豊かになり、食生活にも恵まれている上海。だけど、その影響が様々なところで出始めているのもまた事実。なにが幸せなのか、分かりませんね。


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2012年11月02日

頸部リンパ節炎に著効した牛蒡解肌湯

 中医外科で必ず勉強する『瘍科心得集』という清代の書物があります。中医外科では心得派に属する、高錦庭が書いた本ですが、温病学の影響を強く受けいます。ここに出てくる有名な処方に牛蒡解肌湯というのがあります。構成は、牛房子(牛蒡のタネ)・薄荷・荊芥・連翹・山梔子・丹皮・石斛・玄参・夏枯草(カゴソウ)で、原書にはグラム数が書かれていませんので、患者さんの症状にあわせて加減することになります。病因病機は、外感の風熱が、陽明の痰熱を導き、顔面部の風熱、頸部の痰毒、風熱の歯の痛みを発生させるというものです。そのため、全体の処方構成は疏風清熱・涼血消腫となっていますが、玄参・石斛など滋陰もフオローされています。

 さて、今回の患者さんは今週水曜日に来られた40代の女性。去年の秋頃から頸部リンパ節の腫脹があり、一旦西洋医学で抑えられたものの完治せず、2012年9月に頸部の違和感と腫れ、臼歯の痛みを訴えました。痛みはかなりひどく仕事での集中力を欠くほどで、来院。エコーでは左頸部リンパ節腫大を確認。甲状腺は異常なしでした。まさしく、「風熱痰皆発於頸項間」の症状に一致します。そこで、夏枯草どんと30gにして、この牛蒡解肌湯を2週間分処方しました。すると、服用中に大量に粘っこい黄色い塊のような痰が出て来て、あれほど苦しかった痛みがすっかりと軽快しました。

 このように、中医学・漢方の処方にはあっという間に効果が出てしまうものが結構あります。今後は、正気を補って、再発しないように処方を調節しています。参考までに。


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2012年11月01日

煎じ薬(漢方薬)を飲むタイミング

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 日本で漢方薬を飲んだことのある患者さんの多くは、食前に服用されることが多いのに対して、中国の中医学では食後に服用することが多い傾向にあるように思います。ただ、実際にはそう単純な問題ではありません。本来は症状によって、本来は飲む時間を変える必要があります。
 食後に服用する場合は、一般に食後15〜30分ぐらいが理想です。一般的に中焦以上の部位、たとえば胃脘部や心・肺・脾などを治療目的にする場合は、食後に服用してもらいます。また、刺激のつよい生薬や、毒性のある生薬を使う場合も、食後が良いとされています。よって、煎じ薬のなかでも、飲みにくい味の場合は、私は一般的に食後に服用するようにお願いしています。

 食前に服用するのは、補益系の生薬で多いです。膏方を服用するのも、食前のことが多いです。食事前直前よりも30〜60分が理想です。また、下焦以下の部位や、腸や腎に関係する疾患の場合は、食前がいいといわれています。空腹時に服用した方が、下向きに伝わりやすいという説もあります。また、四肢経絡に薬効を早く届かせたい場合も空腹です。いずれにしろ、食べ物のとの影響が少なくなるので、より直接的に胃腸に伝わるというわけです。

 そのほか、不眠の治療や、睡眠の質を改善する治療の場合は、寝る前に服用してもらうこともあります。養陰系のものも、寝る前がいいとされています。また、瀉下剤の場合は、午前よりも午後の方がよいとも言われていますし、補腎陽の場合は明け方の空腹時などなど様々なきまりがあります。

 煎じ薬の場合、一般に1日2回服用します。午前中に1回、午後に2回目です。ただし、場合によっては1日3回服用する場合もあります。また、温めて飲むのが一般的ですが、清熱系の生薬を使うときは、冷ましてから服用することもあります。ただし、冷蔵庫から出してきてすぐに服用することは避けましょう。また、生薬服用後に、コーヒーや緑茶のほかにも、牛乳、豆乳などタンパク質を豊富に含むような飲み物を飲むのは避けたいところです。



 
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