2012年07月29日

中国で医療行為をするための2つの資格

 中国で外国人も含めて、合法的に医療行為をするんは、2つのライセンスが必要です。

 一つは、大学の規定の教育をうけて、所定の大学付属病院でのインターン(実習)を1年こなし、医師国家試験を受けて取得する資格です。法律的には、『中華人民共和国執業医師法』に定められています。ただ、近年上海市では、全国に先駆けて卒業後にさらに衛生局指定病院での3年間の研修医制度(レジデント)も始まりました。

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 この資格は、執業医師資格といいます。ただ、3年間医療病院に登録して医療行為をしなければ失効してしまいます。もし失効すると、衛生局管轄の指定病院で研修を受けなければなりません。国家試験には、西洋医学と中医学、さらに中西医結合の3種類があります。私が取得したのは中医学のライセンスです。これは現在でも条件を満たした外国人は受験可能です。
 一般に、中医薬大学の学部(本科)を卒業した段階では、中医学のライセンスしか受験できません。ただし、中医学のライセンスには、中医薬治療全般が含まれるため、生薬・鍼灸・推拿などがテリトリーとなります。私の回りの中国人で中西医結合を受験していたのは、修士課程で中西医結合コースの教官にすすんだ人だけでした。実際に病院での臨床となると中医学ライセンスと中西医結合ライセンスとでは大きな違いはないように思いますが、就職に関しては希少価値がある中西医結合ライセンスのほうがよいみたいです。

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 資格取得後、医療行為をしていたかどうかは、執業医師執業証書をみて判断します。これがいわゆる医療行為を行う衛生局に登録することを指します。この登録期間が、医師としてのキャリアを積んだ期間として認められます。いいかえると、この登録を行っていない場合は合法的な医療行為を行えないことになっています。自分が登録しているかどうかはインターネットで調べることができます。それがこの上海衛生監督のサイトです。

 近年、中国で医師資格を取得した外国人医師に対して新規登録を行っていません。以前沢山いた中医薬大学の韓国人留学生が激減したのも、このあたりの事情と関係があると思います。ただ、海外で医師資格を取得した外国人は、1年間単位の短期更新に限り登録を認めています。日本人の西洋医の先生方が中国で医療行為をされているのは、この制度によるものです。

 このあと臨床経験を積んでいくと、日本では専門医にあたる主治医のライセンスがあります。卒業後5年目もしくは博士課程を修了したら受験資格がもらえます。専門医にはいろいろな種類があります。先日、私の妻は中医内科と全科医のほかにも鍼灸医の専門医をとりましたが、残念ながら外国人には受験資格がありません。総合病院で仕事をする場合には、とても大切な資格となります。

 私が、こちらの大学に入った頃、医師国家試験すらなかった中国の医師の資格制度ですが、最近では急速に制度が確立されてきているのがわかります。

【連絡】 ・8月19日(日)は東京でのTCMN15周年夏大会での発表のため、休診します。

posted by 藤田 康介 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2012年07月28日

中国でのC型肝炎問題

 B型肝炎のキャリアが1.2億人居るといわれている中国ですが、それとは別に、近年はC型肝炎が増えているとして、注意が呼びかけられています。近日発表された『中国C型肝炎医院感染予防指南』では、病院内でのC型肝炎予防についての具体的な対策についてガイドラインがまとめられました。

 B型肝炎は、中国では生まれたすぐに予防接種をうけるのですが、C型肝炎の場合、いまのところ予防接種はなく、しっかりとした治療をしなければ慢性化し、場合によっては肝硬変や肝臓癌になる可能性もあります。一方で、C型肝炎の検査も採血でできますし、中国では30元前後と非常に廉価です。一般にHCV抗体を検査し、陽性の場合はHCVーRNAを測定することになります。

 中国におけるC型肝炎の感染者数は1000万人程度といわれています。ただ、近年急増していて、2010年度と比較して17万人増加(13.1%増)となってます。その主な原因に、院内感染が挙げられています。

 さて、このガイドラインのなかで、特に注意しないといけない人たちとして、以下の場合が挙げられていました。まず中国での輸血や血液製剤の使用に関して、1993年以前はC型肝炎のウイルス検査を行っていませんでした。(日本でも1989年からです)そこで、1993年以前に輸血や血液製剤を使用した場合は要注意となっています。また注射器を1度でも共用したことがある場合、歯ブラシやひげそりなどを共用したことがある場合、安全でない鍼治療(中国でも鍼治療が使い捨て針になったのはまだ最近です)や入れ墨、ピアスのために耳に穴をあけたことがある人などとなっています。原因不明でトランスアミラーゼが上昇している場合も要注意とされています。
posted by 藤田 康介 at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2012年07月27日

長寿の秘訣には社会活動も大切だそうで

 今朝のニュースで、日本人女性の平均余命が85.90歳で、世界一の座を香港に譲ったということが大きく報道されていましたが、香港と言えば薬膳を代表する食養も盛んだし、なんといっても中医学の文化も残っているところなので、こうしたことも関係しているのでは?と勝手に想像していました。

 長生きの秘訣について、2012年6月18日のアサヒコムの記事に、長生きの秘訣3要素は運動・栄養・そして…静岡県調査というのがあがっていました。中国では、同様の記事を新華社が翻訳して発信していて、結構広く知られています。

 結果として、長寿である人の特徴として、毎週5日間以上散歩などの運動を心がけ、3食に大豆製品や魚・肉・卵などのタンパク質を摂取し、さらにボランティアなどの社会活動にも参加することも大切ということでした。

 とくに、上記の三条件のうち、すべて満たした人はどれも満たされていなかった人と比較すると死亡率は51%低下し、さらに栄養と運動を満たしていて、社会活動を行わない人との比較の場合、死亡率が32%低下にとどまることがわかり、高齢者の社会活動の重要性が浮き彫りになったと新華社は報道しています。

 運動と野菜だけでなく、肉とのバランスの良い食事は中医学の世界でも強調されますが、たとえば太極拳や気功などの練習も、グループでやったりすることで、社会性を高めることができるのではと思うのでした。
posted by 藤田 康介 at 17:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感もろもろ

2012年07月24日

冬にしか山羊を食べないのは勿体ない

7月22日は大暑。大暑といえば、上海の奉賢区・金山区エリアでは山羊を食べる習慣があるのです。薬膳でとかよく言われる、山羊は「上火」しやすいから、冬しか食べないというのは正直正しくない。むしろ、夏だからこそ大補できる山羊肉を食べるべきだ、という地方もあるのです。そう、土用の丑にウナギを食べるのと何となく似ている上海で食べる山羊肉の発想です。

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 去年に引き続き、金山区の漕にある知り合いの山羊肉屋へいって、山羊肉を食べに行ってきました。S4高速道を使うと、浦東新区からでも金山まではひとっ走り。ところが、去年と同じ場所にあるかと思いきや、近所に拡張OPENしていました。おお、よく儲かっているんだ!

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 お昼過ぎに入ったのですが、すでに大入り。辛うじて端に席を確保して、ナベをつつきました。地元の人でいっぱいです。山羊と言えば、内臓も含めてあらゆるモノをいただけますが、レバーや胃などの内臓もおいしい。何れもお湯で湯がいて火をしっかりと通したものなので、熱々をいただきます。醤油だけで食べられるのはお肉が美味しいから。不思議と臭みが全然無いのです。

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 中医学の薬膳の世界では、山羊肉は温中暖腎・益気補血となっていて、虚寒系の証や疲れの解消などにいいとされています。夏ばて気味ならいいかもしれません。

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 ところで、ここでも冷たいお茶は出て来ません。飲み物として出て来たのは暖かい佩蘭(はいらん)茶。祛湿・祛暑系の代表選手で、上海エリアの農村部では夏の代表選手の決明子とともにお茶として飲みます。さすが!

 季節とともに動く食文化の魅力。これぞ医食同源の中華料理ですね。
posted by 藤田 康介 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2012年07月20日

夏こそ酸梅湯(自作してみました)

夏になると、上海の家庭や巷でよく目にするのが酸梅湯とよばれる飲み物。甘酸っぱい味が特徴で、独特の清涼感があり、酸味があるので咽の渇きが癒やせてけっこうクセになる味です。

 中医学や漢方薬の生薬としてよく使われる材料が使われます。我が家でも作ってみました。

 作り方はいたって簡単で、山査子50グラム・甘草3グラム・大棗4個(本来は烏棗があればよかったのですが。。。)・烏梅50グラム・氷砂糖100グラムを2リットルの水に2時間ほど浸けておきます。さらに30分〜1時間煮詰め、冷ましたら完成です。氷を入れてしまう人もいるでしょう。(^_^) (食材でつかう薬材ですが、手に入れにくい方は、私にメールをくださればお分けできます。)

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もともと清代に北京エリアで作られた飲み物。宮廷で暑さ対策として採り入れられ、それが上海エリアまで伝わってきています。1930年代に大世界あたりで売られていたのが有名だったそうです。その後、80年代に入ってコーラやスプライトなどの炭酸飲料が席巻するようになりましたが、それでも庶民の間では酸梅湯を飲む習慣は残っています。

 医食同源とか薬膳とか難しいことは考えずに、健康ドリンクとして使えそうですね。食欲がない人は、食欲増進に、油っぽいモノを食べて胃がもたれている人は、油分の分解に使えそうなレシピですね。
posted by 藤田 康介 at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2012年07月19日

オーストラリアで合法化された中医学

 オーストラリアの衛生当局が、2012年7月1日から、中医学を合法的に認め、登録制度を実施したというニュース。中国では、各メディアが大きく報道しています。中医学に関して、国が制度化したのは、欧米の国の中では初めてではないかと思います。ニュースとしてはかなり画期的です。

 オーストラリアというと、中国人が移民先として選ぶ国の中では、圧倒的な人気を誇っています。我が家の隣りもオーストラリアへの移民に成功して上海をあとにしました。ただ、こうした人たちが増えてくると言うことは、必然的に、民間医療の一つとして放っておくことができないことになります。そのためには、中医学の医療現場における地位をはっきりとさせ、政府がしっかりと管理する必要があるのです。

 オーストラリアには現在、5000軒の中医学や鍼灸の診療所があるのだそうです。制度化されることにより、様々なハードルが課されます。私は、しっかりと厳しいハードルを課すべきだし、そうすることで中医学の地位がより確立されたものになると信じています。

 今回の制度化で、オーストラリアの中医師に対して、英語の要求も突きつけられました。もし英語ができないのなら、通訳を導入しなさいという規程。結構なことです。そうすることで、中医学の外国語での標準化の話もどんどん進むことでしょう。実践されるものほど強いことはありません。

 日本も漢方医学を世界に広げようと力をいれています。前回の京都での東洋医学学会でもその意気込みは伝わりました。では、世界の中で、中医学(TCM)という巨人がゴソゴソと動き出している中、漢方(Kanpo)はどう切り込んでいくのか。日本の国としての戦略を期待しています。
posted by 藤田 康介 at 00:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年07月18日

今日から「三伏天」です

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(浦東の世紀公園にて)
 
 毎年、7月中旬の小暑から8月中旬の立秋にかけての時期にやってくる「三伏天」のシーズンになりました。暦の上から決められる「三伏天」ですが、2012年の今年は、7月18日が初伏、7月28日が中伏、8月7日が末伏になります。

 一年の内で、最も暑い時期で、体調管理が難しいのですが、中医学ではこの暑さを利用して、「冬病夏治」という伝統があり、陽気が盛んな時期に、冬の寒さと関係のある疾患の予防をしておこうということです。喘息や気管支炎、アレルギー性鼻炎などのほかに、関節痛や虚弱体質など冬から春にかけて多い疾患予防のポイントは、夏からというわけです。その代表的なのが、「三伏貼」で膏薬を疾患にあわせた経穴に貼ります。

 「冬病夏治」に関しては、各地で様々な習慣がのこっています。上海の郊外の奉賢区では、羊肉を夏に食べる習慣もありますが、これも広義では「冬病夏治」になると思います。こういう文化が残っているのが、中国伝統医学の大きな特徴なのです。

 中医学や漢方に携わっているものからすると、まさに夏本番といった実感がわいてくる時期です。鍼灸科も大忙しになります。日本では各地で記録的な猛暑になっているとニュースでみました。ある意味、昔の人の観察と一致しているのかもしれません。
posted by 藤田 康介 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年07月17日

講演「中国伝統医学からみた上海の最新アレルギー事情」

 7月17日に、ガーデンホテル上海の最上階にある会議室で、「ダニ捕りロボ」の日革研究所主催による講演会を開催しました。テーマは、「中国伝統医学からみた上海の最新アレルギー事情」ということで、ダニ問題を中心に、上海におけるアレルギー事情について、お話しました。当日はあいにくのお天気でしたが、浦東・浦西だけなく、遠くは松江からもいらしてくださいました。お忙しい診察の合間を縫って、H先生やM先生も来て下さいました。本当にありがとうございます。

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(いつも自分の講演している写真がないので、今回は貴重な写真をいただきました。)

 中医学で日頃診察していると、毎日のようにアレルギー関連の疾患の患者さんに接することがあり、また近年、中国人の患者さんの間でも、アトピー性皮膚炎や喘息などの症状を訴えることが増え始めています。日革研究所では、ダニ研究に対する様々な実績をもっておられ、そうしたことから今回の講演会が実現しました。

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(ガーデンホテルの32階から見える景色は、非常によかったです。)

 アレルギー対策は、よく体質改善という言葉が使われますが、それ以外にも、根本的な住環境の整備は欠かせないと思います。今後もあらゆるチャンスを活用させてもらいながら、中医学的な側面だけでなく、現代科学の研究成果も活用しながら、一番いいやり方を模索できたらと思っています。
posted by 藤田 康介 at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2012年07月12日

中医臨床 Vol.33-No.2 連載 夏の猛暑を乗り切る庶民の智恵

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 7月にはいって、上海では最高気温が35℃をこえる日が続いています。もともとエアコンの普及が十分ではなかった上海では、庶民の暑さ対策が色々と充実していました。節電が色々と言われている昨今、人々の智恵が今こそ活用できると思います。未病的観点から、考察してみました。
posted by 藤田 康介 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2012年07月11日

中医臨床 Vol.33-No.2 巻頭企画「上海の地域医療にみる中医学」

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 タイトルですが、実は、地域医療と書くべきか、末端医療と書くべきか、かなり悩んだのですが、要は市民の生活に一番直結している、中国で言う1級病院とよばれる医療施設のことを示します。都市部では、「社区衛生服務中心」と呼ばれています。こういった医療機関に、中医学を導入しようという試みは、数年前から上海でも盛んで、市民に中医学を普及させる上で、非常に大きな役割を果たしています。
 さらに、今後、家庭医の制度が普及されることになっています。背景にあるのは、急速に進む高齢化社会に対して、在宅医療の充実が目標です。西洋医学と中医学の立場がほぼ対等な中国では、双方の家庭医が臨床の第一線で活躍できるような制度を作っています。そのあたりをレポートしてみました。
posted by 藤田 康介 at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2012年07月10日

汗疹対策

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 今週に入って、上海の暑さはパワーアップしています。天気予報によると、今週の最高気温は37℃の予報。私の朝の運動も、5時過ぎからスタート。それでも、空気が重くて、湿気ているのがよく分かります。こう暑くなると、クルマでの移動が増えてくるので、なんとか朝の時間を確保して運動するように心がけています。あと、十分な睡眠も大切。夜更かしをせずに、さっさと寝るようにしています。

 しかし、子供は元気なもので、暑さももろともせず遊んでいます。相変わらず、すごいなあ〜と思います。いつも中医クリニックの患者さんにもお話していますが、我が家では冷蔵庫に飲み物を入れていませんし、氷も作っていません。べつになくてもどうにかなるというのを、自分たちで実践したいと思って、数年前からやっているのですが、おかげで娘は冷たいモノを摂取する習慣はまったくありません。冷やさないことを親子共々今後も重点的に行っていきたいと思っています。もちろん、ここでいう冷やさないというのは、決して熱いモノばかりを摂取するという意味ではなくて、常温以上のモノにするということで、それでも十分に冷たく感じるようにするのがポイントです。

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 子供と言えば、汗疹の問題がどうしても出て来ます。皆さんのご家庭でもいろいろな対策を講じておられるかと思いますが、我が家での対策は、やはり薬浴です。決して熱くないお湯に、地膚子や馬歯莧、薄荷、忍冬根などを煎じてお湯に入れます。お風呂が写真のような色になりますが、汗による皮膚の痒みにはなかなか有効です。中医学的には、清熱や祛湿、袪風などの効能がある生薬を使います。さらに、症状によっては軟膏も併用したりします。内服では、六一散などが有名。

 軟膏では、最近、紫雲膏を作ってみました。しみ・くすみ・肌荒れなどで、日本で一時期流行した紫根(むらさき)を使う伝統的な処方です。日本東洋医学学会でも、皮膚科の分野で使っておられる先生が多いように思いました。

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 昔から、この暑い時期をどのように過ごすか、医学者達はいろいろ智恵を絞っています。そうした智恵を拝借したいところです。
posted by 藤田 康介 at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年07月07日

7月1日半夏生から7月7日小暑へ

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(今朝の世紀公園)

 ブログでも紹介しましたが、7月1日は雑節のひとつで半夏生でした。梅雨の末期で、中医薬や漢方薬で使う生薬半夏(カラスビシャク)が生えてくる、高温多湿な時期をいいます。私の実家が近い、奈良県香芝市エリアでは、半夏生を「はげっしょ」といい、玄米の餅を食べる習慣があるらしい。上海でも、ちょうど7月4日に梅雨が明けていますから、いい感じに季節が進んでいることになりますが、いかんせん、蒸し暑い!!

 先日、京都国際会館で開催された東洋医学学会に参加したとき、名古屋市立大学の牧野先生のご厚意で実現した、有志達による京都薬用植物園(武田薬品工業株式会社)の見学は、時間を忘れるほど熱中してしまいましたが、さすが日本!といった感じの、非常に手入れの行き届いた薬草園に感動しました。おもわず、上海中医薬大学付属の薬草園も気合いを入れないと!と言いたくなりました。(^_^)

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(半夏生です)

さて、その薬草園を歩いていると、季節の生薬が色々と花を咲かせていました。半夏生もきれいな花を咲かせていましたが、雑節の半夏生ははたして生薬半夏(カラスビシャク)なのか、それとも半夏生(カタシログサ)なのか、地域によっていろいろな言い方があるようです。いずれにしろ夏の植物がいい感じに育ってきています。

 7月7日とえば、日本では七夕かもしれませんが、中国ではむしろ小暑のほうが有名。七夕はもっと夏が本格的になってからです。暑さはどんどん本格化していくわけで、7月7日〜8月7日の立秋までの期間を日本では暑中といいますが、中国ではすこし時期的にずれますが、最も暑い時期を三伏といって2012年は7月18日〜8月16日を指します。中医学の夏の養生である「三伏貼」はまさにこの時期のことなのです。

 7月6日は上海で最高気温38℃を記録し、この夏一番の暑さになりましたが、上海市郊外の奉賢区では、熱中症による死者もでています。42歳の男性で、7月2日に道路脇に倒れ、病院に搬送されたときの体温は42℃で、心拍数は130。すでに意識はなく、亡くなりました。

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(はとむぎです)

 暑くなってくると、上海の市場は季節の野菜が増えてきます。とくに、緑豆湯に入れる百合根は人気なのですが、今年は安徽省や湖南省の天気が不良で、値上がり傾向のことです。また、清熱解毒の作用がある菊花や金銀花、夏定番の大麦や決明子、楓斗などがお茶として人気です。特に、決明子は大人気でダイエットでもよく飲まれます。

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(スーパーに売られている涼茶です)

 夏と言えば、涼茶も。基本的に金銀花や夏枯草、菊花、荷葉、桑叶、黄芩、竹葉など清熱解毒・清肝瀉火作用のあるものが多いので、体を冷やす性質のものを使います。逆に言うと、冷やした涼茶は胃腸にキツイので、お腹が弱い子供たちは要注意です。最近では、スーパーにも赤い缶に入った涼茶が売られていますが、味も甘いので飲み過ぎには注意です。
posted by 藤田 康介 at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年07月06日

糖尿病予防のためにも歩こう!

こう暑くなってくると、外で歩くことがかなり苦痛になりますが、かといって運動しないわけにはいきません。今の上海の状況では、朝では7時前までに運動を始めないと、気温的には結構きついようです。

 歩くことの有効性はいろいろ指摘されていますが、米国ワシントン大学の最近の研究で、糖尿病リスクが高く、かつスポーツをする習慣がない人の場合、毎日歩くことでそのリスクを下げることができるとしています。

 研究によると、1800人の糖尿病ではないが、日頃から運動をしていない人を追跡調査すると、5年後に243人が糖尿病になりました。このうち、毎日3500歩も歩かない人の場合、糖尿病の発病率は17%であったのに対して、3500歩以上あるいた人の場合、発病率は12%だったとのこと。分析の結果、歩く歩数が最も少ない人と、最も多い人を比較すると、歩くことによって糖尿病の発病リスクを29%減少できるということです。

 結論として、日頃運動をする習慣がない人は、1日1万歩をあるく習慣を保つことが必要だとしていますが、10000歩というのは、結構なハードルです。運動をしない人は、もともと歩くことも好きでないことが多いですから。でも、西洋薬はもちろんのこと、漢方薬や中医薬も含めて、薬の服用を少しでも減らすためにも、やはりこうした努力は必要です。
posted by 藤田 康介 at 07:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想