2012年05月24日

中医学や漢方医学のはたす役割はまだまだあると思う

 現代医学は、遺伝子治療にまで進歩し、論文を読んでいる限りでは、あたかもすべての病気が治療できるようなイメージをもってしまいがちですが、中医学や日本漢方といった伝統医学も私はまだまだ活躍する場面があると思います。

 確かに、原因が特定され、はっきりと治療法が分かっている場合だったら、西洋医学は圧倒的に有利です。例えば、癌治療で外科的手術が出来る場合なら、私は絶対西洋医学を優先するべきだと思います。でも、残念ながら、私が日頃臨床で出くわす問題は、そうではないのです。

 先日も数ヶ月にわたって咳が止まらない患者さんが来られました。日本で西洋医学の検査をやっても原因が特定できず、初めは半信半疑で中医学の煎じ薬を試されたようです。そうすると、びっくり。2週間ぐらいで症状が改善し、咳で喋ることが難しく、仕事への影響も出ていたということなのですが、先日お会いしたら咳がまったく無くなってしまいました。患者さん自身も驚いていました。慢性の咳に関しては、私自身も困ったことがあり、学生時代はしばらく竜華医院呼吸器科の邵長栄教授のもとへ通って勉強させていただきました。先生の達筆なカルテを分析するのには時間を要しましたが、独創的な弁証方法で、目からうろこでした。このように、中医学では自由な発想で治療方法を組み立てることができる独創性があり、そこから効果を引き出すことができます。

 そのほかにも、頑固な湿疹が治ってしまったり、マッサージなどでも治らなかった肩こりや頭痛が治ってしまったり。そういう症例が結構出て来ます。不妊治療もそうでしょう。一部の西洋医学の医師から、不妊治療では漢方は効かない、と毛嫌いされているようですが、実際にはやっぱり100%ではないにしろ、ちゃんと結果的には妊娠してしまいます。

 もちろん、全部が全部効果があるとはいいません。でもなにがしらいい結果をもたらす可能性が、中医学や漢方医学にはあります。それは、西洋医学の「症例」として上げることはできないかもしれないけど、個別の症状を解決することができるという伝統医学ならではの特性と可能性があると思います。だから中医学では症例のことを「病案」というんです。
 一般に、西洋医学では患者さんお病気・ケガなろの症状の経過や分析を症例とか病例といいますが、中医学では病案とか脈案といいます。中国語でもこの点は区別されています。中医学では、「案」という言い方をするのが私は好きです。これはすなわち一般的な「例」ではなく、「案」という言葉が指し示すように医者や患者さんの考えや思考のエキスが詰まったものなのです。
 ちなみに、脈案というのは、中医学では昔から脈を重視したから。私も中医学や漢方医学で診察するのなら、脈は非常に大切だと思います。カルテを書きながら、脈をとるという中医学の先生も中国で時々みますが、私は真剣度から言えばどうもいただけない。

 医療の中の治療手段のひとつとして、中医学や漢方医学を活用してもらえたら、私は嬉しいです。現代医学がいくら発展してきてもまだその役割がしっかりと息づいているのです。いわゆる、西洋医学の隙間を埋めていくのが伝統医学であり、両者は対立するものでは決してないのです。
posted by 藤田 康介 at 07:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感もろもろ