2012年05月30日

生薬の山茱萸(さんしゅゆ)のお菓子

 生薬といえば、「苦い」というイメージがありますが、全部が全部そうではありません。美味しいモノも結構あるのです。この山茱萸もそうです。ほんのり甘みがありますが、クセがある味というわけではなく、幼児など子供の処方に使っても嫌がれません。

05300.JPG

 たまたま、河南省からのお土産で頂いたのが、なんと赤い実で有名な山茱萸(さんしゅゆ)を乾燥させたお菓子。上海周辺の浙江省や安徽省などでも栽培されています。山茱萸の有効成分はタンニンやモノテルペノイド多糖体などを有効成分にもっていて、日本漢方では滋養強壮で使われますが、中医学でも肝腎不足の目眩やインポテツなどのほか、多汗症や夜尿症の治療にも使います。中成薬としては、今や非常にポピュラーになった六味地黄丸や八味地黄丸などにも使われています。

 この山茱萸ですが、実は我が故郷の奈良県でも栽培されています。これだけ食べやすかったら、レーズン代わりにパンに入れてみてもいいでしょうし、いろいろ活用法がありそうですよね。
posted by 藤田 康介 at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

2012年05月27日

小満すぎて、マンゴーや生姜はほどほどに

 5月21日は小満でした。朝夕はまだまだ涼しい上海ですが、もう少ししたら猛暑がやってきます。
 小満から次にやってくる二十四節気の芒種までの期間に、上海など長江デルタエリアでは夏らしい天気が本格化します。

 この時期、湿気が徐々に盛んになってきます。アトピー性皮膚炎など皮膚が弱い人は、徐々に痒みを増すようになります。そのため、食べものは熱をもつものを少なめに摂取することが必要です。代表的なのが、羊肉や牛肉類。また、アレルギーも出やすく、この時期よく出てくるマンゴーなどは食べ過ぎないように。うるし科のマンゴーは、接触性皮膚炎を起こしやすいので要注意です。中医学でのマンゴーの性質は、中性からやや冷やすぐらいですので決してきつい食べ物ではないのですが、アレルギーが心配なのです。

 また、冬場はあれほど重宝された生姜もこの時期はすこし控えめに。生姜は温める性質がありますが、燥性も強いので、夏の中医学の養生では食べ過ぎないようにと言われます。とくに、内熱が過剰になりすぎると、高血圧の人にはあまりよくありませんし、ニキビや痔の原因になったりします。

 一方で、これからあっさりとした野菜類が増えてきます。緑豆やヘチマ、冬瓜、西瓜、トマト、ニンジン、レンコン、ハトムギ、小豆、キュウリ、ヘチマなどです。これらの野菜には、清熱利湿作用があるので、ジメジメとした季節にはぴったりです。

 そして、うちの中医クリニックにこられる子供たちに再三注意しているのは、冷たいモノや生ものを食べ過ぎないこと。子供や高齢者は、消化器の働きがまだ弱いので、食欲不振や下痢の原因になります。それでも、私の目の前で氷をたっぷりといれた水筒をもってきた子供がいたのにはビックリ。(^_^)

 また、気温の差がまだまだあるので、朝夕は風邪引かないように、特に寝るときはまだまだ夏モードは早いです。夏の五臓は心です。精神的に不安定にないやすいので、ストレス発散も兼ねて適度に散歩などをして体を動かすことが必要です。
posted by 藤田 康介 at 07:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年05月25日

上海の末端医療機関で推進されることになる中医治療

 上海市衛生局のHPによると、5月14日に市内の末端医療機関(社区衛生服務中心)で普及が考えられている中医学の治療方法12種類が公開されました。その内容は以下の通りです。

・ 経穴敷貼による慢性呼吸器疾患の予防と治療
・ 棍棒体操による中風後の肩関節活動障害の予防と治療
・ 督脈灸と耳穴貼法を使った不眠治療
・ 五行健骨体操
・ 「六歩奶結疏通法」による乳汁欝滞の治療
・ 中薬処方腸痺方と推拿と竜形六式体操を使った慢性便秘の治療
・ 艾灸を使った膝の骨関節炎の治療
・ 「項八針」による頸椎病の予防と治療
・ 「陽明法」による高齢者の咳喘症の予防と治療
・ 電針浅刺法による顔面神経麻痺の治療
・ 腕踝針
・ 中薬を使った糖尿病による足部神経障害の早期治療

 上海市衛生局には、合わせて98種類の中医学を使った特色ある治療方法が提案されたそうですが、その中から専門家の討論をへて、上記の12種類が決まりました。末端医療では、全科医師と呼ばれる主治医の国家資格を取得した医師がGPとして治療にあたります。近年、中国の医療制度も様々な資格が作られ、徐々にですが整備がすすめられています。私の妻も、全科医師の主治医の資格以外に、最近は鍼灸医師の主治医の資格も受けてきました。合格結果はまだですが。。。。

 中医学は、医師がそれぞれ特有の治療経験をもっています。それらの勉強と普及が今後益々必要となってきています。
posted by 藤田 康介 at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年05月24日

中医学や漢方医学のはたす役割はまだまだあると思う

 現代医学は、遺伝子治療にまで進歩し、論文を読んでいる限りでは、あたかもすべての病気が治療できるようなイメージをもってしまいがちですが、中医学や日本漢方といった伝統医学も私はまだまだ活躍する場面があると思います。

 確かに、原因が特定され、はっきりと治療法が分かっている場合だったら、西洋医学は圧倒的に有利です。例えば、癌治療で外科的手術が出来る場合なら、私は絶対西洋医学を優先するべきだと思います。でも、残念ながら、私が日頃臨床で出くわす問題は、そうではないのです。

 先日も数ヶ月にわたって咳が止まらない患者さんが来られました。日本で西洋医学の検査をやっても原因が特定できず、初めは半信半疑で中医学の煎じ薬を試されたようです。そうすると、びっくり。2週間ぐらいで症状が改善し、咳で喋ることが難しく、仕事への影響も出ていたということなのですが、先日お会いしたら咳がまったく無くなってしまいました。患者さん自身も驚いていました。慢性の咳に関しては、私自身も困ったことがあり、学生時代はしばらく竜華医院呼吸器科の邵長栄教授のもとへ通って勉強させていただきました。先生の達筆なカルテを分析するのには時間を要しましたが、独創的な弁証方法で、目からうろこでした。このように、中医学では自由な発想で治療方法を組み立てることができる独創性があり、そこから効果を引き出すことができます。

 そのほかにも、頑固な湿疹が治ってしまったり、マッサージなどでも治らなかった肩こりや頭痛が治ってしまったり。そういう症例が結構出て来ます。不妊治療もそうでしょう。一部の西洋医学の医師から、不妊治療では漢方は効かない、と毛嫌いされているようですが、実際にはやっぱり100%ではないにしろ、ちゃんと結果的には妊娠してしまいます。

 もちろん、全部が全部効果があるとはいいません。でもなにがしらいい結果をもたらす可能性が、中医学や漢方医学にはあります。それは、西洋医学の「症例」として上げることはできないかもしれないけど、個別の症状を解決することができるという伝統医学ならではの特性と可能性があると思います。だから中医学では症例のことを「病案」というんです。
 一般に、西洋医学では患者さんお病気・ケガなろの症状の経過や分析を症例とか病例といいますが、中医学では病案とか脈案といいます。中国語でもこの点は区別されています。中医学では、「案」という言い方をするのが私は好きです。これはすなわち一般的な「例」ではなく、「案」という言葉が指し示すように医者や患者さんの考えや思考のエキスが詰まったものなのです。
 ちなみに、脈案というのは、中医学では昔から脈を重視したから。私も中医学や漢方医学で診察するのなら、脈は非常に大切だと思います。カルテを書きながら、脈をとるという中医学の先生も中国で時々みますが、私は真剣度から言えばどうもいただけない。

 医療の中の治療手段のひとつとして、中医学や漢方医学を活用してもらえたら、私は嬉しいです。現代医学がいくら発展してきてもまだその役割がしっかりと息づいているのです。いわゆる、西洋医学の隙間を埋めていくのが伝統医学であり、両者は対立するものでは決してないのです。
posted by 藤田 康介 at 07:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感もろもろ

2012年05月23日

4月の上海での麻疹患者は新疆についで多く

 新華社の報道によると、中国衛生部の発表として、2012年4月の中国全国での麻疹(はしか)の症例数は557例で、前年度同期と比較して72%の減少だったようですが、死亡例が一人出ています。

 全国的にみると、発病数では新疆エリアが最も多く、そのあとに上海・広東省・四川省と続きます。また、発病率では、新疆・上海・チベット・北京と続きます。

 発病数からも、発病率からも、上海市は全国で2位となっているので、注意が必要かと思います。

 なお、手足口病に関しては、相変わらず警戒が必要です。上海のCDCの発表では、中高生でも手足口病の患者が出ているとのことです。
 上海市衛生局のHPでは、毎月の上海での法定伝染病の状況を公開しています。2012年3月に関しては、こちらで確認できます。
posted by 藤田 康介 at 10:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う

2012年05月19日

4月も中国で手足口病発病数及び死亡例が増えました

 毎年、春から夏にかけて中国で流行する手足口病ですが、今年も患者数が増えています。

 中国衛生部によると、2012年4月には中国全国で報告された手足口病の症例数は237478例で、死亡例が77例となっています。これは、前年同期の発症例99819例と死亡例45例と比較しても明らかに増えています。

 上海市では、復旦大学附属児科医院と交通大学附属新華医院の2箇所が手足口病患者用の専門病院として指定されていますが、重篤患者に使われるベッドも満床となっているようで、その他の小児科総合病院でも患者の受け入れ体制を整えているということです。

 手足口病は、3歳以下の子供への発病率が最も高く、飛沫感や糞便による感染が中心ですが、食器やタオル、おもちゃなどを通じても感染しますので、そうした物品の消毒が大切です。
 
 一般に手足口病患者の80%は軽いのですが、こちらの専門家も感染拡大防止のために、自宅での休養をすすめています。しかし、例年重篤症例や死亡例が出ており、特に39℃以上の熱が出て、ぐったいりしていて、食欲がない場合は、専門病院への診察が必要です。

 また、妊婦の感染は、胎児への影響も考えられますので、手洗いの励行や、生ものを食べない、部屋の換気をしっかりするなどの注意が必要です。
posted by 藤田 康介 at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う

2012年05月18日

生薬(中医薬・漢方薬)のリサイクルの問題

私は仕事柄、毎日のように生薬を使った処方を書いていますが、エキス剤にしろ、煎じ薬にしろ、中医薬の使用には、どうしても大量の生薬のガラが出てきます。環境保護が言われている昨今、このガラをどのように処理するかが大きな問題になってきました。

 中国では、中医薬関係の製薬業界だけでも、年間70万トンの植物系の生薬が消費されていて、100万トンの生薬のガラが出てきているといわれています。乾燥した生薬は、一旦煎じると水分を含むため、膨大な量のガラとなります。そのガラの有効利用について、中国でもやっと第十二次五カ年計画の国家プロジェクトとして動き出しました。

 その仕組みは、生薬のガラを高温発酵させ、再び生薬栽培基地に再利用するというもので、総投資額は1.45億元。プロジェクトでは、広東省四会市の広東一力集団製薬有限公司が事業を行い、製薬会社の持っているGMP認証を取得した生薬栽培基地から生産された生薬を使って、生薬のガラから15万トンの有機肥料の原材料を作り出すというものだそうです。

 以前、三重県伊賀市(旧大山田村)にある農家の人に、製薬会社から出た生薬のガラを試しに肥料として使ったら、農作物がびっくりするほどよく育ったという話を聞いたことがあります。安全に肥料として加工できるのなら、循環型の農業として環境保護にも大きく役立つと思われます。
posted by 藤田 康介 at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2012年05月17日

中医学の外治法の一つ、香嚢(香り袋)が出来てきました

05193.jpg 

 中医学の外用治療の一つでもある、香佩法。

その中でも端午の節句前後からよく使われるのが、香嚢をつかった治療法です。

 袋のなかに、芳香性の強い生薬をいれて、部屋にぶら下げたり、子供の首から掛けたりします。風邪の予防や、各種アレルギー対策など用途が広いですが、小児科の湿疹やアトピー性皮膚炎の治療などにも活用されます。

 元々は厄除けとして使われてきました。中には、白芷や丁香、ヨモギ、蒼朮、藿香など揮発性の強い生薬をいれます。非常にいい香りを漂わせています。

 庶民の文化としての中医学の一つですね。
posted by 藤田 康介 at 09:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年05月16日

蚊に刺されたときはまずは冷やす?!

 ふと見つけた英国の新聞にこんな小さな記事がありました。「Over-the-counter insect bite remedies are just not worth buying , say experts」というもの。ごく普通に蚊などの小さな昆虫類に噛まれたとき、薬局で売られている処方箋の薬はあまり効果は無く、虫さされの痒みをとるには、冷やすことがよいということでした。そのため、医療関係者に対しても、抗ヒスタミン剤やステロイド軟膏は、湿疹などの痒み止めには効果があるが、虫さされには効果がないので、むやみやたらに薬を出す必要はないという専門家のコメントを載せていました。

 中医学の世界でも、虫さされ用の軟膏が色々あります。うちのクリニックにもありますが、要は噛まれたときの痒みを紛らす働きがメインです。冷やす働きが強いのも納得できます。

 
posted by 藤田 康介 at 09:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 中医学と皮膚病

2012年05月15日

AS(強直性脊椎炎)の中医学的治療の研究成果

 再び、中西医結合学会の2011年度科技奨に関しての話題です。
 時々、このブログでも1等賞に選ばれた研究成果を見てきていますが、今回は老中医の経験から、現代医学への研究アプローチを行ったという例です。

 中日友好病院の研究グループが、国家中医薬管理局などの支持を受けながら、十年間に渡って研究を行ってきた『補腎強督法を中心にしたAS(強直性脊椎炎)総合治療法の臨床と実験』です。グループでは、焦樹徳教授の経験に基づき、国の「十一五重点専科診療方案」として重点的に研究が行われてきたテーマでもあります。

 AS(強直性脊椎炎)は、脊椎や股関節、肩の関節などに痛みや腫れなどの炎症反応がおこり、進行すると脊椎が硬直してしまう原因がまだ明らかではない疾患です。

 焦樹徳教授は、ASの中医病名を大僂と命名しています。この言葉は、『黄帝内経・素問・生気通天論』に登場しており、「阳气者,精则养神,柔则养筋。开阖不得,寒气从生,乃生大偻。」とあります。ここからも推測されるように、ASの弁証に関しては、寒熱がポイントとなります。

 そこで、AS治療の理論として、補腎強督を提唱し、中薬治療をベースに、運動・健康教育・西洋医学との併用・外用と内服の活用により、治療案が検討され、現在では国家中医薬管理局の「十一五重点専科診療方案」として採用されています。また、研究によって開発された補腎舒脊顆粒(骨砕補・杜仲・狗脊など10種類の生薬で構成、効能は補腎舒脊・散寒除湿・活血止痛)は、日中友好病院で院内製剤として使われていて、中国国内では唯一のAS治療用の中成薬として活用されています。
 
 これまでの研究では、補腎強督法により早期ASの骨量喪失の改善や、骨代謝の双方向での調節、骨密度や瘀血状態の改善などが確認されたとしていうます。

 AS治療の一つの方法として、今後も研究が続けられていくものと思います。

 中医学の興味深いところは、単なる古典の処方を検証するだけでなく、日頃の臨床結果から、効果の良かった処方を再検証し、新しい理論・弁証を構成していく点です。そのためにも、経験豊かな老中医たちの処方を勉強することも大切なのです。
posted by 藤田 康介 at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年05月14日

上海で近年急増している大腸癌

 上海市衛生局は、市の重点公共医療サービスの一環として、2012年度は地域にある社区衛生サービスセンターを活用して、大腸癌リスク評価や大便潜血検査を無料で行う方針を発表しています。

 その背景にあるのは、上海市での大腸癌患者の近年の急増があります。

 1970年代には、悪性腫瘍のなかでの発病率が第6位だったのに、現在では第2位に急上昇しています。さらに、発病率も70年代の10万分の12から10万分の56にまで上昇しており、なんと3.67倍の増加医。年平均にすると4%の増加になります。

 この原因について、上海疾病予防コントロールセンターは、いろいろ挙げていますが、どれも納得がいく理由ばかり。

 上海に来られた方なら分かるかと思いますが、いままで経済的に豊かでなかったときは、なかなか摂取できなかった高タンパクで、高カロリーな食生活が、ここ数年で爆発的に増加していますし、穀物摂取の減少、果物や野菜類の摂取減少、運動不足、そして健康診断に行かないという現実。大便鮮血検査の受診率は5%未満ですし、大腸カメラ検査も3%程度ということです。大腸癌を早期で発見するには不可欠な検査なのですが、上海市でも発見されれば大抵は末期で、早期で発見される割合は11.8%で、5年間生存率は43%と低いのです。

 上海にいる日本人を日頃から診察していますが、一部を除いて、大部分が運動不足。大腸癌の予防には、歩いたりする運動が有効なことは、以前にもこのブログで1日30分歩くことと大腸癌のリスクに書きました。

 食生活などライフスタイルを、もう一度見直してみたいとところですね。
posted by 藤田 康介 at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年05月13日

中医学を活用した非小細胞肺癌の研究

 近年、大気汚染や喫煙の関係で、中国でも急増している肺癌の問題について、2011年度の中国中西医結合学会の科技奨を受賞した7つの研究成果のうちの一つに、中医学を活用した非小細胞肺癌の研究がありました。

 肺癌は、大きく分けて小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けられます。小細胞肺癌は全体の20%を占め、悪性度が高く、進行も早いです。腫瘍マーカーは、ProGRPやNSEが使われます。一方で、非小細胞肺癌は、肺扁平上皮癌と肺腺癌、肺大細胞癌に分類され、肺扁平上皮癌ではSCCとCyfra、肺腺癌ではCEAやSLXなどが腫瘍マーカーとして使われています。肺腺癌は、非喫煙の若い女性に発生する肺癌として知られています。

 今回の研究では、中国中医科学院広安門医院など13箇所の主要な中国の医療機関が合同で研究を行い、931例の非小細胞肺癌の患者に対して術後の再発率や、生存期間、QOLについて、Mult-Center Clinical TrialやProspective study、Queuing theoryなどの手法を用いて分析しました。

 この中で、化学療法を行っているときは、健脾和胃・益気養血・滋補肝腎を使い、放射線治療をしているときは、養陰生津・活血解毒とし、放射線治療をしていない早期患者の術後は、益気活血・解毒、末期患者の術後は、益気活血・解毒散結を使い、治療段階において、中医学による治則を変化させました。

 その結果、非小細胞肺癌のうち、ステージT〜VAの術後の患者に対しては、体重や体力を改善し、QOLを高め、化学療法による骨髄抑制を抑え、消化器系の副作用も改善し、転移を減少させる傾向にあることが分かったようです。

 いずれにしろ、肺癌治療において、何らかの形で中医薬(漢方薬)を介入させることが有効であるので、単純に数種類の生薬を使うだけでなく、今後はその治則の変化をうまく弁証することが求められるのではないかと思います。
posted by 藤田 康介 at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年05月12日

中医学での中薬薬剤師の役割

 西洋医学の医師と中医学の医師とでは、その専門性からライセンスが分かれている中国ですが、薬剤師も同様です。

 西洋医学での薬剤師と中医学での薬剤師の資格は分かれていて、それぞれの役割がはっきりとしています。それほど、生薬を扱うということは、ある意味プロフエッショナルな仕事だとも言えます。中医学の医療としての技術も、代々継承されなければなりませんが、中医薬(いわゆる漢方薬)の薬剤師も、様々な技術を検証されなければならず、いい医師と薬剤師との共同作業で、生薬の調剤がすすめられているのです。私達中医学の医師が中医クリニックでいろいろ生薬の工夫ができるのも、優秀な中薬薬剤師がいなければ実現できません。

 上海市非物質文化遺産の伝統医薬の分野では、中薬薬剤師のそうした技術を、中医薬局全体として保護する動きが出ています。それが、上海市松江にある余天成堂薬局です。1782年創業で、上海エリアでは最も古い中医薬局です。90年代に老舗ブランドに与えられる「中華老字号」の称号を取得して以来、中薬分野での伝統技術の継承に力を入れてきているようです。

 とくに、中医薬局の場合、生薬の配合以外にも、生薬をふるいに掛けたりする作業や、丸薬の製造技術も大切で、最低でも2〜3年の修行が必要といわれています。さらに生薬の修治も、中医薬局の大切な役割で、薬草を乾したらすぐに使えるというわけではありません。

 近年、上海市非物質文化遺産に指定されたことで、さらに伝統的に伝わっている中成薬の処方の保護も可能になり、継承するための素地が出来てくることになります。以前、後継者難が言われていましたが、いまでは若い継承者のトレーニングも進んでいるそうです。
posted by 藤田 康介 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2012年05月11日

国医大師、故裘沛然伝承工作室のHPが公開されました

 高齢化が進む老中医達の臨床経験を伝承するために、中国では国家中医薬管理局などが中心になって、さまざまな取り組みが行われています。中医学のベテラン医師を老中医といいますが、弟子達がつながっていて、先生の学説を継承していくのが慣例です。 そこで、中医学を管轄する国家中医薬管理局名中医工作室プロジェクトの一環として、2005年8月から上海中医薬大学に「名師伝承研究工程」が作られ、裘沛然先生など9人の老中医の工作室が設置されました。

 工作室では、専任のスタッフが配属され、裘沛然先生の医案や講義案に論文、さらに著作や詩なども収集され、学術思想や臨床経験の整理などが行われています。そして、2012年4月にはその成果を対外的に発信する「国医大師裘沛然伝承工作室」のHPがOPENしました。(URL:http://www.chinaqpr.com/


 中医学の医師というのは、単に病気を診察できるだけでなく、人間的にも、人文的にも魅力があり、多くの人たちを惹きつけてきました。このサイトをみると、医案だけでなく、生前の講義などの動画もアップされています。こういった試みは、これからもぜひ継続してほしいと思います。中国の中医学の裾野が広いのは、こうした地道な努力とも関係があるのでしょう。

posted by 藤田 康介 at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年05月10日

中医学によるダイエットの問題

 これから暑い季節になってくると、だんだんと薄着になってきますが、冬に蓄えすぎた「肉」を、少しでも減らそうというわけで、ダイエット(減量)を目的に、うちの中医クリニックに来られる方が少なくありません。

 中医学では、肥満治療に関して一定の認識があります。よくそのガイドラインとして使われているのが、2002年に中国で発表された『中薬新薬治療肥胖病的臨床研究指導原則』で、単純性肥満を5つのタイプに分類しています。すなわち、胃熱湿阻型・脾虚湿阻型・肝欝気滞型・陰虚内熱型・脾腎陽虚型の5つになります。

 上海の巷では、鍼灸による美容やダイエットが人気のようですが、これも中医学による減量手段の一つです。鍼灸によるダイエットは果たして本当に効果があるのか?臨床では確かにいろいろな実績があるようですが、実はその科学性に関しては色々な意見があるのもまた事実です。ただ、一般には鍼灸によって中枢神経から食欲を抑制し、内分泌の働きを調節し、胃腸の消化吸収を抑えるという考え方は一般的です。中医学的には、さしずめ、鍼灸によって気血のバランスをとり、経絡の流れを整えるといった感じでしょうか。


 その観点から行くと、耳ツボや灸や抜罐も使えそうですし、もちろん生薬も併用することも可能です。ただ、はっきりと言えることは、無理に排便を促したり、極端に食べるものを減らしたりするのが目的ではなく、中医学ならではの体のバランスをとることが大切だと思います。そのためには、最低でも、前述した5つのタイプのうち、せめて実証と虚証の区別ぐらいはしっかりとつけておく必要があると思います。

 また、ダイエット(減量)の治療を行う時、まずは肥満の原因をしっかりと見極める必要があります。中医学のうち、とくに鍼灸などの経穴での刺激が有効なのは単純性肥満で、その他の疾患が原因での肥満では、まずその疾患の治療を行わないといけません。

 では、減量のスピードとしてはどれぐらいが理想なのでしょうか?WHOの情報と、私自身の経験からも1週間に1.5〜2キロぐらいが理想とされ、これを越えると健康的なダイエットとは言えません。リバウンドのリスクも高まります。

 ちなみに、WHOの、Dietのページを色々見てみたら、トップの写真で登場しているのが、ジャンクフードではなく、どうみても我々がよく食べる中華料理のような気がします。こうみると、不健康そうな感じがしますよね。(でも、実際の家庭料理はそうでもないです。)

 減量に関しては、もちろん中医学の様々な治療法も有効ですが、まずは、自分自身の体重をしっかりと認識し、食べている量を把握すること、そして運動していることを実感することが大切だと思います。そして、リバウンドをしないためにも、継続ができる必要があり、極端に食べる量を減らさないことがポイントです。特に、日本でも問題になっている、日本人の晩ご飯の時間が遅い問題は、健康のためにも早急に解決すべきで、寝る3〜4時間前には何も食べないと言うことをぜひ実践したいところですよね。
posted by 藤田 康介 at 17:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学の魅力

2012年05月09日

「補脳」という発想

 中国人の健康食品とかみてみると、「補」という言葉がよく出て来ます。間違いなく、その出所は中医学で、「補腎」や「補肺」など虚証に対して補う「補」の発想なのだけど、これが近年エスカレートしてきているような気がします。

 その典型的な言葉が「補脳」。特に、初夏に行われる入試が近づいてくるこの時期、スーパーなどにいくとよく見かけます。中医学的な「補」という発想から、脳も補ってあげると、頭がよく働き、試験の問題もスラスラ解けてしまうといった錯覚に陥ってしまうようです。

 そもそも、「補脳」といった考え方は、大学の教科書で勉強する中医学では出てきませんし、中国の国家食品薬品監管局も、そうしたエセ「健康食品」は食用しないようにと呼びかけています。

 でも試験が近づいてくると、そうした「補脳」できる中医薬や漢方薬があれば、思わず服用したくなるところですが、そう単純な問題でないことは明らか。また、この広い中国には、規制しても規制しきれないぐらい不法企業も沢山あり、「国家○○○局の批准を受けた・・・」とでも書いてしまうこともチラホラ。ほんとに消費者の判断に委ねられる、自己責任の国です。

 そうした怪しい健康食品に頼ることなく、最善の精神状態で試験に臨んで欲しいところですね。
posted by 藤田 康介 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年05月08日

現代病には脾陰虚が多いのかも

 中医学の脾臓というと、後天之本といって、食べ物を吸収して気を作り出したりする非常に大切な臓腑です。そのため、脾陽虚や脾気虚はよく登場し、李東垣の補中益気丸などの処方は、日本でも広く使われています。ところが、中医学を教科書で勉強すると、脾陽と脾気はよく登場するのですが、脾陰というのはあまり登場してきません。このことに、疑問をもっている方も少なくないかと思います。
  
 だからといって、脾陰が存在しないわけではなく、「各家学説」を勉強すると、明代の医学者、繆希雍(江蘇省常州出身)で脾陰の考え方が登場しています。ここでは、「食欲がなく、消化不良気味で、腹部に膨満感があり、四肢に力が入らない、四肢が熱く感じる」といった症状が挙げられています。脾陰の働きは、脾の運化の働きと関係があり、五臓を潤し、筋肉や骨に栄養を巡らしますが、疲労やストレスなどが原因で脾陰が不足すると、熱が発生し、四肢煩熱になるということです。

 消化器系の陰虚として区別する必要があるのは、胃陰と脾陰の違いかと思います。これは、臓である脾と腑である胃の働きの違いから考察できると思います。脾陰は他の五臓や骨・筋肉を潤す必要があるので、どちらかといえばドロッとした感じのもので、胃陰は、伝達させる必要があるから、サラサラとしたイメージだと考えられます。そうすると、ストレスなど慢性疾患による下痢は脾陰と関係があるし、外感による嘔吐や胸焼け、お腹が空くのだけど食欲がないといった症状は胃陰と関係があるので、両者の性質が違うことが分かります。胃の陰虚の場合、大便が硬くなることも考えられます。

 さて、脾陰虚の治療のポイントとなるのは、繆希雍らが示している「甘涼滋潤・酸甘化陰」法です。黄耆や党参など温補系の生薬ではなく、沙参や麦門冬といった甘涼系の生薬ではなく、芍薬や山薬、薏苡仁、蓮子、白偏豆、芡実、石斛といったものを使います。明代の医学者、張錫純は生山薬をよく使ったそうですが、ここにも脾陰を補う発想があったことも考えられるかもしれません。

 一般に腹部膨満感や下痢などの症状があった場合、中医学では多かれ少なかれ脾気虚を考えて黄耆・人参・白朮といったものを使い、そして膨満感解消のために理気作用のある木香や砂仁を使いたくなります。ただ、脾陰虚の場合、こうした補気昇陽は脾陰を傷つけてしまうことになり、逆効果になってしまう場合があります。よって、脾陰虚と脾気虚の違いを分析しておく必要があります。
 一説では、脾陰虚の場合は、脈が細数で、舌は苔がすくないのですが、脾気虚の場合は、脈に力がなく、弦緩であり、舌も歯形がついているようなタイプではないかと考えられています。また、脾虚により下痢が続くと傷陰するため、脾陰虚となることも考えられます。

 結論として、様々な陰虚を治療するには、「後天之本」である脾の陰が非常に大切です。たとえば、糖尿病に代表される消渇や、泄瀉となる過敏性大腸炎、舌苔が赤くて少ないことが多い喘息、脾陰虚系の不眠などにも使えると思います。

 
posted by 藤田 康介 at 12:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年05月07日

上海市の予防接種スケジュール

 中国では1978年よりワクチンプログラムを実施しています。これにあわせて、上海市も色々なワクチン強化プログラムも実施していて、2010年からは麻疹ワクチン強化プログラム、同年には上海に居住している18歳以上の人全員を対象に、希望者にはB型肝炎の予防接種を無料で行っています。上海市衛生局の発表では、麻疹の発症例はこの強化プログラムの結果、2010年と比較して73.5%減少したということです。

 B型肝炎大国の中国では、うちの娘が生まれたときもそうでしたが、生まれたすぐにB型肝炎とBCGワクチンの予防接種をすることになっています。そのあと、『上海市予防接種証』が発行され、満1ヶ月になったら、子供をつれて近くの社区衛生サービスセンターにいって予防接種の手続きを行い、2回目のB型肝炎の接種を受けます。『上海市予防接種証』は非常に大切な冊子で、幼稚園や小学校に入るときに必要ですし、引っ越ししたときなども予防接種を受けてきたことを証明する基礎となります。また、外から転入してきたときも通常は1週間以内に社区衛生サービスセンターで手続きを行います。

 中国全国のB型肝炎に関しては、表面抗原キャリアーは1992年の9.75%から、2006年の7.18%にまで減少し、5歳以下の子供に関しては0.96%にまで減少して一定の効果をあげています。ポリオ(小児麻痺)に関しては、中国では2000年に撲滅を達成しています。(と書いたのですが、実は2011年に感染が確認されております。ご指摘いただき、ありがとうございます。野生型ポリオへの感染が中国で確認されました。

zhushe1.jpg

 2007年に中国では予防接種スケジュールを拡大し、上海市では11種類の予防接種を受けることになっています。詳細は以下のようになっています。

・B型肝炎・・・・出生後24時間以内、1ヶ月、6ヶ月の3回(注射)
・BCG・・・・・出生後24時間〜1ヶ月以内(注射)
・ポリオ・・・・2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月+4歳(経口)
・百日咳・ジフテリア・新生児破傷風・・・3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月+18ヶ月(注射)
・流行性髄膜炎A群・・・6ヶ月、9ヶ月(注射)
・麻疹・・・・8ヶ月+18ヶ月、4歳(注射)(注:18ヶ月と4歳は 麻疹・風疹・流行性耳下腺炎で)
・日本脳炎・・・・8ヶ月+2歳(注射)
・麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・・・・18ヶ月+4歳(注射)
・A型肝炎・・・・18ヶ月+2歳(注射)
・流行性髄膜炎AC群・・・3歳+6歳(注射)
・ジフテリア・破傷風・・・・6歳+16歳(注射)

(2012年現在 「+」は追加接種の意味です)

 
posted by 藤田 康介 at 08:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2012年05月06日

妊娠する前に&不妊治療をする前に気をつけたいこと

 今年は辰年ということもあり、中国ではまたまたベビーブームですが、上海に居る日本人の間でも、妊娠した女性が多いようにも感じられます。家政婦さんとかも比較的雇いやすい環境ですので、意外と便利であったりします。私も、そうして元気に生まれてくる赤ちゃんを楽しみにしています。

 中医学や漢方の世界でも、不妊症の治療や妊娠前の体調管理は古くから実績のある分野でもあり、いろいろな手段が考えられますが、ただ、西洋医学にしろ中医学にしろ妊娠をする前にぜひ気をつけてもらいたい最低限の注意事項があります。未病対策の観点からも、妊娠を目的にすることで、夫婦共に体調管理を整えることは非常に大切です。
 今日は上海で生活するにあたって、注意することをいくつかご紹介します。

 まずは喫煙の問題です。先日も受動喫煙でご紹介しましたが、ニコチンがホルモンや精子に直接的に与える影響はいろいろあります。また、胎児の発育への影響も大きく、妊娠するのなら、3ヶ月〜半年前には禁煙する必要があると言われています。

 また、お酒についてもアルコールが精子や卵子の質に影響を与え、また男性がアルコールを飲み過ぎていると性機能に障害が出るほかに、精子の発育や運動に
影響を与えます。そのため、妊娠を検討しているのなら、女性の場合なら1ヶ月前にはお酒をやめ、男性でも2ヶ月前にはお酒の量を制限し、夫婦生活の1週間前ぐらいにはできたら禁酒をしたいところです。

 コーヒーに関しては諸説があります。ただ、近年の研究ではコーヒーの飲む量が1日4杯以上であれば、早産の確率が30%高まるとか、流産の可能性が20%高まるとか、さらに精子の運動力が落ちるとか、いろいろ言われています。やはり、コーヒーの量は減らしたほうが無難のようです。

 中国での生活で気になるのは、やはり食品添加物の問題。そこで、中国では中華料理でも時々出て来ますが、ソーセージやベーコンなどの肉の加工食品や、塩辛い漬け物類は控えるようにいわれています。寧波などでは、塩漬けにした魚なども食べる習慣がありますが、こういった食品は亜硝酸塩などを含んでおり、長期に服用している子供の奇形と関係があるといわれています。そのほかに、保存料や防腐剤、着色料など体内に蓄積される心配のある物質はよくないのはご承知の通りです。

 妊娠を考えているのなら、日頃から新鮮な天然の食材を摂取するように心がけたいところですね。
posted by 藤田 康介 at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年05月05日

今年の5月5日は立夏でした 肝→心へ

 最近、上海の気温は急上昇、5月5日はついに最高気温が30℃を突破しました。おかげで、スモッグも。空気の良くないときは、外での運動は控えるようにいわれています。

0506.jpg

 さらに、5月5日といえば、日本では「こどもの日=端午の節句」ということでしょうが、中国では旧暦ですので、むしろ立夏のほうが強調されます。ちなみに、中国の端午節は、今年は6月23日です。同じアジア文化圏なのに、端午の節句の時期がずれているのは、どうも納得いかない。。。。

 立夏ということは、暦の上では夏モード。中医学の養生でもいろいろと変化が出てくるころです。

 立夏にはいると、気温が明らかに上昇し、雷雨も増えてきます。そして、農作物が一気に生長し出します。そう、子供たちも一気に成長します。そんなとき、自然界では暑さの原因となる暑気が増え始めてきます。これが、過剰になると暑邪となり、人の元気を消耗させて夏ばての原因となります。余談ですが、太陽がしっかりと出ている時は、可能な限り子供を外で遊ばせてあげたいです。最近の研究で、近視の予防には外で遊ぶことが大事だという結果が出ています。(Lack of outdoor life blamed for high rate of myopia among East Asian kids

 最近、朝が明らかに早く明けてきます。よって、いつもよりは少し遅めに寝て、早く目覚めることを心がけます。そして、お昼の暑いときは、極力お昼寝を取る時間を確保しましょう。15分〜30分ぐらいでいいと思います。また、午後からの活動を活発にするためには、お昼寝後はすぐに起き上がらないことも大切です。すこし一服してから、活動開始すると頭がすっきりしますし、偏頭痛の予防にもなると思います。

 五臓六腑では、春では肝の働きを重視していましたが、立夏以降は、心への影響を考えることになります。暑気はが心影響を与えると、イライラや倦怠感が増すことになります。よって、楽しいことを考えたり、笑ったりすることが大切です。

 食べ物では、いよいよ瓜類や緑豆など夏系のものの登場です。中医学や漢方でも、夏場は消化器の働きが弱まるので、あっさりしたものを食べるようにといいます。その代表がやっぱり夏野菜。トマトや冬瓜、キュウリなどは代表選手で、清熱利湿・消暑系の働きがあるものを食べます。

 よく、西瓜とかキュウリは体を冷やすから食べないという話を聞きますが、それは冷蔵庫で冷やした西瓜とかキュウリを食べるからで、本来は、そういった食べ物も夏場では必要で、冷やしていないものならぜひ食べてみたいところ。決して、いつでも温野菜でいいというわけではないのです。バランスが大切です。

 ただし、気温の上昇で、細菌の繁殖も盛んになります。上海市当局も、食中毒に気をつけるように注意を呼びかけています。また、中医学的にも脾胃など消化器系が弱まる時期なので、例えば朝にお粥をたべてみるのもいいかもしれません。胃を養うのには一番いいのです。
 
 また、冷たいものの食べ過ぎには要注意を。特に、冷蔵庫から出してきたものをすぐには食べないようにしてください。これは鉄則です!!
posted by 藤田 康介 at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想