2012年01月29日

肺癌と中国の大気汚染問題

 春節の連休中は、天気が今ひとつだったこともあり、上海の大気汚染は体感的にもマシだったようですが、ただ、スモッグの問題に関してはまだまだ解決されていないことが山積みで、中国在住者にとっては頭が痛い問題です。

 中国では近年、肺癌患者がものすごいスピードで増えてきています。その数は、30年前と比較して4.5倍以上の増加ともいわれています。中国国内で討論されているのには、ここ数年で喫煙者の数が急増しているわけではないのに、なぜ肺癌患者の数が増え続けているのかという問題です。

 そこで、北京・上海などの大都市で注目を集めてきているのが、PM2.5(particulate matter)の数値で、空気中に漂っている2.5ミクロン以下の微粒子による健康への影響問題です。この中には、鉛やカドニウム、マンガン、クロームなどの有害金属も含まれています。直径の大きなPM10やTSPの粒子に関しては、気管で沈着できても、PM2.5となると、直接肺胞にまで入り込んでしまうため、その脅威は計り知れません。政府もやっと規制に動き出してきました。

 PM2.5の発生源はクルマの排ガスであったり、工場から出るものであったりするわけですが、上海市内には現在24箇所の観測点があり、現段階では何れも基準値をクリアできていません。上海だけでなく、PM2.5による汚染の深刻さは、北京とその周辺の場合だとアメリカの基準値の5−6倍、南方の都市圏で2−4倍程度は越えていると言われています。(『新聞晩報』報道)

 やっかいなのは、このPM2.5は、スモッグなどの原因になっていて、しかもすぐには身体に影響が出ず、7〜8年後に肺癌などの問題として発生してくると言う点です。広州市での研究では、スモッグと増加と肺癌と増加の関係に、数年のタイムラグがあることが分かっています。(『東方早報』報道)スモッグに関して言えば、中国では河北省南部や山西省南部がかなり深刻な状態です。ご存じの通り、石炭が採掘され、鉄鋼や火力発電が盛んで、重工業が集積しているエリアです。1年のうち、300日以上もスモッグが出ていることもあり、中国の中でも極めて大気汚染がひどいエリアだと言われています。

 スモッグでは、もともと珠江エリアが酷かったですが、近年は上海も含めた長江デルタエリアの大気汚染が楽観できません。都市によっては、年間200〜250日もスモッグが観測されることもあるぐらいですから。一方で、広州市の大気汚染が近年改善されてきているのは、隣接している香港からの圧力も関係があり、北京や上海が後れを取っている点は否定できません。中国の大都市の多くは、日本の60〜70年代の大気汚染のような状態を、今初めて体験しており、その結果がどういうことになるのかまだよく分かっていないのもまた事実なのです。歴史から学習できていないことも悲しいわけですが、でも経済の発展なくして国が成長できないとすれば、なんとも遺憾なことですね。

 では、上海に住んでいる我々はどうするべきなのか?

 マスクをしなさい、といってもPM2.5に有効なマスクは、SARSのときに争奪戦となったN95マスクレベルが必要です。となると、せいぜい空気清浄機を使うぐらいしか残念ながら私には思いつきません。それと、休みがとれたら都市圏を脱出して、少しでも空気のいいところに避難するしかないのかもしれません。また、スモッグの出ている時は、極力外での活動は避けましょう。
 タバコも同様にPM2.5の値を高めます。完全禁煙できていないレストランなどには行かないようにしたいところです。分煙程度では全然効果がありません。(中国では田舎にいけば行くほど、タバコを傍若無人に吸う人が急増しますね。)

 本当の意味で持続可能な発展をするためにも、中国は今後ますます大気汚染への規制に力を入れてくるはずです。環境問題とはある意味、もっと大きなマナーの問題です。個人のマナーですらまだまだの中国にとっては、非常に高いハードルだとは思います。
posted by 藤田 康介 at 10:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年01月28日

生薬のビニール袋

 中医薬(漢方薬)を処方するときに避けて通ることができないのが生薬を処方箋にあわせて分配する作業です。今までは、天秤を使ってそれぞれ単味の生薬を日数分に掛け合わせて量り、それを薬剤師さんの目分量とカンで分配していました。しかし、全くの手作業なので、時間がかかります。また、調剤しているときにボロボロとこぼれている生薬も少なく無く、効率がよくありませんでした。

 そこで、近年、上海の病院などで導入されているのがビニール袋に小分けにして調剤する方法です。あらかじめグラム単位で袋詰めされていて、それを処方箋にあわせて組み合わせるというものです。上海中医薬大学附属竜華医院など中医系の大病院では導入されていて、比較的先進的な方法として当時は評価はされていました。2008年8月には中国国家中医薬管理局からその方法が制度化され、2009年4月には市内8箇所の医療機関で実施されてきました。しかし、これも近年問題が指摘されています。

 まず、患者さんが持ち帰った生薬の袋を全部開けてからではないと煎じることができません。仮に、1日分で15種類の生薬を処方したのなら、最低でも15種類の生薬袋を破らなければいけませんし、中医薬局でも生薬を密閉した袋にいれて保管することは品質を保つという観点からも思わしくありません。また、ビニール袋削減に取り組んでいるさなか、買い物袋も中国では有料になっているのに、生薬のビニール袋が増えることは望ましいこととは言えません。

 中医医院にいく患者数が増える中、伝統的な方法では時間もコストもかかってしまいます。何らかの改良が必要なのでしょうが、とくに生薬の調剤に関しては、まだまだ工夫が必要のようです。
posted by 藤田 康介 at 20:32| Comment(1) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2012年01月22日

中医学による不妊治療

 遅れましたが、謹賀新年です。

 クリニックの移転引っ越しもなんとか終わりました。

 2012年1月18日より、上海市中山西路1602号(×柳州路・徐虹北路)宏匯国際広場B座101室に移っております。地下鉄では、3号線・4号線・9号線の宜山路駅が最寄り駅になります。私は9号線を使って通勤していますが、3号出口から中山西路を北上すると、左手にビルが見えてきます。

 そして、ついに春節の大晦日を迎え、私のほうもしばしの休暇です。
 そこで、やっとこちらのブログも更新できるようになりました。

 春節前の最後の診察で、今年2012年では初めての不妊治療で中医学を行っていた患者さんの妊娠の知らせを患者さんご自身からご夫婦でお知らせいただきました。ご夫婦で3ヶ月ほど通っておられましたが、なんとか妊娠までこぎつけて私も内心ほっとしています。ただ、中医学で妊娠を希望されて来られる方は、一般的に西洋医学的な治療を一通り長期にわたって行われ、さらに年齢が高めの方が多いため、私としては妊娠してからの方が心配です。

 去年から、色々と不妊治療に関わるチャンスが多く、場合によっては西洋医学の先生ともコラボで取り組んでいます。そのなかで、いろいろ気がついたのですが、中医学の不妊治療は、女性が一人で取り組むよりも、夫と一緒に治療に来られている方が圧倒的に成功率が高いという点です。少なくとも、去年に関してはそうでした。

 不妊治療の場合、一般に女性の方が熱心なことが多く、男性はあまり治療に積極的ではないのですが、これが問題であったりするような感じもします。実際、男性の精子に関して、中医学(漢方薬)を使うことでその質が高まる研究はすでにいろいろ行われていて、女性と一緒に治療する意義はあるのですが、一般に女性の生理や基礎体温の問題と違って、症状があまりないため、薬を服用する意味を理解できないことが多いのもまた事実です。

 中医学を使うと、睡眠や冷えが改善されたり、思わぬ処に効果が出てきたりするものですが、男性もそういった観点からの改善が必要に思います。
posted by 藤田 康介 at 14:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年01月15日

NHK・BS 「地球アゴラ」にまたまた出演

 NHKから連絡があり、地球アゴラに出ました。

 ほんの数分間の出演だったのですが、中国からの生中継ということもあり、前回正月に日本にもどったときはスタッフの方がわざわざ大阪にまで出てきてくださり、番組内容に打ち合わせをしました。

 ゲストは田原総一郎さん。初めて番組でご一緒させていただきました。テーマは、男性の持っている「かばん」。

 話は大きく展開し、打ち合わせにはないことまで話題となりましたが、なんとか無事終了。 
 生放送の臨場感を楽しませてもらいました。

 そう、この番組を契機に、私も自分のカバンを見直そうと思いました。
posted by 藤田 康介 at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動