中医学はテリトリーが広く、毎日本当に様々な主訴の治療の研究を行っています。
不妊症の治療もその一つですが、先日、無事妊娠されたあるご夫婦で不妊治療に来られていた患者さんからものすごく嬉しくて、かつ不思議なシンクロのあったメールを頂きました。思わず、ここで紹介したい衝動にかられました。
患者さんから頂いたメールには、
「(前略)・・・・私はおかげさまで女の子を出産しました。ありがとうございます。○月××日の明け方3時半頃にお産を終えたのですが、その数時間後に病室で藤田先生が出演されている「トクダネ」の放送を観ました。地下鉄事故の解説をなさっている藤田先生のお声を聞きながら、無事に出産を終えた喜びに浸っていました。・・・(後略)」
とあったのですが、今思い出すと、そういえば、○月××日と言えば上海地下鉄10号線事故があって間もない頃で、その後の夜に東京のフジテレビの「とくダネ!」番組スタッフから私の携帯に電話がかかってきて、事故についての私の見解を述べる電話インタビューがありました。
ここまで読んだだけでも、かなりの偶然でびっくりなのですが、実はこの○月××日というのは私の誕生日だったのです!
つまり、生まれてきた女の子と私は偶然にも同じ誕生日。これだけ幾重にも偶然が重なることがあるんだと、喜びはもちろんのこと、本当におったまげました。
新しい生命の誕生に私が関わることができたことは大変光栄で嬉しく思います。また中医学で不妊治療に研究をしての醍醐味です。来年2012年も少しでも沢山の子供たちが元気に生まれてきてくれるためのお手伝いができたらと思っています。
私と同じ日に生まれた赤ちゃんの写真をお母さんから頂きました。大切な記念とさせてください。
2011年12月29日
2011年12月17日
中医学の冬令進補・膏方の作り方
慢性疾患や虚弱体質、さらに日頃漢方薬や中医薬を服用して、それをフオローする形で毎年冬場に処方されるのが膏方です。上海江南エリアの特徴で、私も大学院時代はよく師匠の膏方外来のお手伝いを毎年していました。
膏方は飲みやすく、さらに効果が比較的マイルドなので、子供から高齢者まで重宝されています。一通り、中医学を使って症状が改善され、処方が固まっている状態にも使えますし、上海の人たちの間では、冬だけ処方にこられるかたも多いです。私達の中医クリニックでも、この膏方の処方で忙しくなします。
膏方は1ヶ月〜2ヶ月程度と比較的長期にわたって服用するものですので、まずは開路方から入ります。これは、その現在の症状にあわせ、膏方を導入するにあたって身体に合っているかどうかを再検討するための処方(煎じ薬)で、1〜2週間服用するのが一般的です。もちろん、今まで継続的に漢方薬を服用している場合は、そちらを参考にして検討します。こうすることで、膏方が身体にあわないようなことを極力避けることができます。
そのあと、膏方の処方箋を考えます。
膏方に使う生薬は、一般的に30種類以上。医師の考え方で決まってきます。ただ、私はあまり生薬量が多すぎる膏方は好きではありません。ある程度、目的がしっかりした膏方が処方できるように30種類程度で納めるように心がけています。(中国の患者さんの中では、多ければ多い方がいいという人もいますが。。)

膏方の処方箋(写真)は、患者さんに渡します。そこには、なぜこの膏方が作られたのか、どういう弁証になっているのか、そして簡単な生薬の加工方法などの指示が記されていて、患者さんはまたつぎの年に膏方を処方するときの参考にします。有名な先生の膏方の処方箋は、毛筆で、さらに達筆でもあり、文化遺産として額に入ることもあるぐらいです。中医学の文化の一つだと思います。
さて、この膏方ですが、通常の煎じ薬とはまったく違った煎じ方がされます。すこし前の上海地元の人たちなら、自分たちで膏方を作っていました。それぐらいメジャーなもので、上海エリア(江南エリア)の中医文化の特徴の一つです。私の妻の実家でも作っていました。
まず、生薬を1日しっかりと水につけます。しっかりと水分を吸収させます。多少水を足した後、沸騰するまで強火で、水加減に気をつけながら、弱火で2-3時間煮込みます。銅の鍋(写真)をつかうのがよいとされています。

煮出した物を濾しながら別の容器に入れ、再度水を足して煮詰めます。これを4-5回繰り返すと、だんだんと煮出す物がなくなってきて色が薄くなってきます。
煮詰めた生薬をしっかりと絞り出し、上記で煮出した煎じ汁を混ぜ、再び濾します。煎じ汁のなかに生薬の糟が完全になくなるまで濾し続けます。
次に、濃縮の作業にはいります。強火で沸騰させたあと、しっかりと混ぜながら(焦がさないように)ドロドロになるまで煮詰めます。とろみが出てくるまで煮詰めるのがポイントで、以前見学にいった薬局では、人力でやっていました。今はかなり機械化されているようです。
膏方には氷砂糖を使うことが多いです。私も処方するときに使っています。
氷砂糖や黒砂糖を焦げないようにしっかりと撹拌しながら加熱し、上記の濃縮液と混ぜます。再び弱火でしっかりと煮詰めていきます。

以前、膏方は上記のようなツボにはいっていました。中医薬局にいくと、ツボが並べられていて、なかなか見応えがありました。ただ、それでは保管が不便なので、うちの中医クリニックもそうしていますが、下記のようなパックに詰められています。

これで、膏方の持ち運びや携帯がかなりラクになりました。
私も、毎年自分の処方した膏方を味見しています。好みの違いもあるかもしれませんが、私は自分の処方に関しては比較的服用しやすいと思っています。
服用方法は1日2回朝晩が一般的です。食前でも服用できますが、馴れるまではまずは食後から試してみる方がいいと思います。
膏方は飲みやすく、さらに効果が比較的マイルドなので、子供から高齢者まで重宝されています。一通り、中医学を使って症状が改善され、処方が固まっている状態にも使えますし、上海の人たちの間では、冬だけ処方にこられるかたも多いです。私達の中医クリニックでも、この膏方の処方で忙しくなします。
膏方は1ヶ月〜2ヶ月程度と比較的長期にわたって服用するものですので、まずは開路方から入ります。これは、その現在の症状にあわせ、膏方を導入するにあたって身体に合っているかどうかを再検討するための処方(煎じ薬)で、1〜2週間服用するのが一般的です。もちろん、今まで継続的に漢方薬を服用している場合は、そちらを参考にして検討します。こうすることで、膏方が身体にあわないようなことを極力避けることができます。
そのあと、膏方の処方箋を考えます。
膏方に使う生薬は、一般的に30種類以上。医師の考え方で決まってきます。ただ、私はあまり生薬量が多すぎる膏方は好きではありません。ある程度、目的がしっかりした膏方が処方できるように30種類程度で納めるように心がけています。(中国の患者さんの中では、多ければ多い方がいいという人もいますが。。)

膏方の処方箋(写真)は、患者さんに渡します。そこには、なぜこの膏方が作られたのか、どういう弁証になっているのか、そして簡単な生薬の加工方法などの指示が記されていて、患者さんはまたつぎの年に膏方を処方するときの参考にします。有名な先生の膏方の処方箋は、毛筆で、さらに達筆でもあり、文化遺産として額に入ることもあるぐらいです。中医学の文化の一つだと思います。
さて、この膏方ですが、通常の煎じ薬とはまったく違った煎じ方がされます。すこし前の上海地元の人たちなら、自分たちで膏方を作っていました。それぐらいメジャーなもので、上海エリア(江南エリア)の中医文化の特徴の一つです。私の妻の実家でも作っていました。
まず、生薬を1日しっかりと水につけます。しっかりと水分を吸収させます。多少水を足した後、沸騰するまで強火で、水加減に気をつけながら、弱火で2-3時間煮込みます。銅の鍋(写真)をつかうのがよいとされています。

煮出した物を濾しながら別の容器に入れ、再度水を足して煮詰めます。これを4-5回繰り返すと、だんだんと煮出す物がなくなってきて色が薄くなってきます。
煮詰めた生薬をしっかりと絞り出し、上記で煮出した煎じ汁を混ぜ、再び濾します。煎じ汁のなかに生薬の糟が完全になくなるまで濾し続けます。
次に、濃縮の作業にはいります。強火で沸騰させたあと、しっかりと混ぜながら(焦がさないように)ドロドロになるまで煮詰めます。とろみが出てくるまで煮詰めるのがポイントで、以前見学にいった薬局では、人力でやっていました。今はかなり機械化されているようです。
膏方には氷砂糖を使うことが多いです。私も処方するときに使っています。
氷砂糖や黒砂糖を焦げないようにしっかりと撹拌しながら加熱し、上記の濃縮液と混ぜます。再び弱火でしっかりと煮詰めていきます。

以前、膏方は上記のようなツボにはいっていました。中医薬局にいくと、ツボが並べられていて、なかなか見応えがありました。ただ、それでは保管が不便なので、うちの中医クリニックもそうしていますが、下記のようなパックに詰められています。

これで、膏方の持ち運びや携帯がかなりラクになりました。
私も、毎年自分の処方した膏方を味見しています。好みの違いもあるかもしれませんが、私は自分の処方に関しては比較的服用しやすいと思っています。
服用方法は1日2回朝晩が一般的です。食前でも服用できますが、馴れるまではまずは食後から試してみる方がいいと思います。
2011年12月09日
中医臨床 2011年9月「秋の養生」、健康医学2011年9月「秋凍」中医学や漢方の季節的養生。
「中医臨床」のほうは、12月号の執筆を終え、原稿の校正までやったのですが、9月号の紹介を忘れていたので、記録しておきます。ブログは私の備忘録にもなっておりますので。。。
2011年9月には秋の養生シリーズとして書いた原稿です。季刊「中医臨床」では、「秋の養生」として総括的な紹介を紹介しました。


臨床でよく見かける、「秋燥」の対策と、上海でよく使われる秋の食材と、その中医学的な考え方について書きました。

健康医学の9月号で取りあげた秋の養生の中でも代表的な「秋凍」の考え方です。寒くなっても、上海近郊ではまだ河で泳いでいる人がいるのですが、なんと、12月のこの寒い時期にもいたのには驚きました。そこまでやる必要なないですが、日本人の薄着の習慣も、おそらくこの「秋凍」の考え方と関連があると思います。しかし、真冬にはいってまで「秋凍」をする必要はありません。
この秋は、養生関係で執筆したことが多かったです。中医学がその特徴を活かせる、未病を治すという観点から言っても、秋にいろいろ実践したいと思いますし、なにより夏〜秋から冬の冷え性対策はしておくべきだと中医学では考えます。寒くなってからの冷え性対策では少し遅い感じです。もちろん、やらないよりはずっといいですが。
2011年9月には秋の養生シリーズとして書いた原稿です。季刊「中医臨床」では、「秋の養生」として総括的な紹介を紹介しました。


臨床でよく見かける、「秋燥」の対策と、上海でよく使われる秋の食材と、その中医学的な考え方について書きました。

健康医学の9月号で取りあげた秋の養生の中でも代表的な「秋凍」の考え方です。寒くなっても、上海近郊ではまだ河で泳いでいる人がいるのですが、なんと、12月のこの寒い時期にもいたのには驚きました。そこまでやる必要なないですが、日本人の薄着の習慣も、おそらくこの「秋凍」の考え方と関連があると思います。しかし、真冬にはいってまで「秋凍」をする必要はありません。
この秋は、養生関係で執筆したことが多かったです。中医学がその特徴を活かせる、未病を治すという観点から言っても、秋にいろいろ実践したいと思いますし、なにより夏〜秋から冬の冷え性対策はしておくべきだと中医学では考えます。寒くなってからの冷え性対策では少し遅い感じです。もちろん、やらないよりはずっといいですが。
2011年12月08日
荠菜(ナズナ・薺)

上海で比較的よく食べられる野菜、ナズナ(中国名:荠菜)。日本では春の七草の一つですよね。ぺんぺん草と呼ばれることもあります。
我が家ではもちろん料理に使いますし、上海市内の饅頭屋さんでは、肉まんのバリエーションの一つに、荠菜肉包をよく見かけますが、これがまさにナズナ(薺)です。
実は、上海では結構巷に生えていたりします。原産地は中国だそうで、いまでは広く世界に分布していますが、上海では近年栽培されるようになっています。市場でも時々見かけますね。
先日、世紀公園に散歩に出かけたら、お年寄りが木の下でせっせと草を採っていました。よく見てみると、ナズナでした。これだけ上海で都市化が進んでも、自然の中之恵みはちゃんと残っています。
中医学の世界では、医食同源の食べ物の一つです。日本でも、漢方医学の世界では医食同源の食材として使われます。性質は、甘・淡・涼なので、産後の出血や、血尿、月経過多、目の腫れや赤みなどに使います。利尿作用や浮腫にもよく、中医学では涼血止血・清肝明目・利水などの効能がつけられています。
2011年12月07日
健康医学11月号「腎臓病と中医学の腎」

今回の健康医学11月号では、腎臓病の特集と言うことで、中医学での腎臓病治療の概況を紹介してみました。中医学の腎と西洋医学の腎臓とでは、考え方が大きくことなりますが、昨今では、西洋医学の腎臓病治療でも力を発揮しています。
中医学の腎臓内科では、IgA腎症、紫斑病性腎炎、ループス腎炎などの治療で、西洋医学との併用で成果をあげていますし、膜性腎症では、中医学単独で治療することもあります。慢性糸球体腎炎に関しては、腎生検の結果も中医学で重視するようになっています。
私が大学院で研究した小児ネフローゼでは、再発防止に中医学の活用に効果があることも分かりました。冬になると、膏方も使います。
腎臓病に関しては、もう少し現代医学と漢方・中医学との併用が進んでもいいように思います。
2011年12月05日
健康医学10月号「中医学による糖尿病の考え方・糖尿病と生薬の研究」
毎月連載を書かせて頂いている雑誌「健康医学」ですが、10月号よりリニューアルして大きくなりました。

さて、10月号は中医学による糖尿病の考え方についてです。中国では、現在3000万人もの糖尿病患者がいると言われており、この数は今後も増え続ける見込みです。肥満の子供の問題も重要視されてきました。

中医学では「消渇」とよばれる糖尿病ですが、西洋医学との併用方法でいろいろ注目が集まっています。従来の、陰虚や燥熱などの病因病機のほかにも、瘀血に関しても研究されるようになりました。糖尿病の合併症予防のためにも、瘀血の解決は重要です。
三大合併症としてよく言われる糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症の中医学的治療では、中国でも中医学治療によるガイドラインも作られました。糖尿病のインスリン抵抗性では、黄連や葛根などが使われ、黄連に関してはその有効成分であるベルべリンの錠剤も作られました。
糖尿病に有効な生薬は数多くあり、今後の研究が期待されます。

さて、10月号は中医学による糖尿病の考え方についてです。中国では、現在3000万人もの糖尿病患者がいると言われており、この数は今後も増え続ける見込みです。肥満の子供の問題も重要視されてきました。

中医学では「消渇」とよばれる糖尿病ですが、西洋医学との併用方法でいろいろ注目が集まっています。従来の、陰虚や燥熱などの病因病機のほかにも、瘀血に関しても研究されるようになりました。糖尿病の合併症予防のためにも、瘀血の解決は重要です。
三大合併症としてよく言われる糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症の中医学的治療では、中国でも中医学治療によるガイドラインも作られました。糖尿病のインスリン抵抗性では、黄連や葛根などが使われ、黄連に関してはその有効成分であるベルべリンの錠剤も作られました。
糖尿病に有効な生薬は数多くあり、今後の研究が期待されます。