2011年11月29日

中医学食育講座「あなたにもできる!家庭の中医学」〜子供を病気にさせないために〜

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  2011年11月29日、上海日本人学校虹橋校の第一体育館で、1時間半にわたってPTA主催の文化行事の一環として、中医学食育講座「あなたにもできる!家庭の中医学」〜子供を病気にさせないために〜でお話しました。日頃、臨床で気がついたことを中心に、中医学に携わっている医師として、いますぐにでもできそうなことをとりあげています。

 主な内容としては、上海での中医学の特徴や医療制度、冬における中医学的養生について、最近中国で注目を集めてきて、整備がすすめられている中医体質学、家庭に常備しておいたら便利な市販されている中医薬の使い方、そして上海の家庭(とくに我が家でもよく使っている)簡単な薬膳、そうした薬膳のルーツ、医食同源の理論的背景などを紹介しました。

 なるべく難しい言葉を使わず、直感的に中医学を体験していただきたいと思ってお話しました。

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 2011年最後の講演会は、定員の200人を大幅に超えてしまい、椅子が足りなくなってしまいました。最終的には250人を越えるものになり、大変印象深いものになりました。

 また機会を見つけて、いろいろお話しようと思っています。
posted by 藤田 康介 at 07:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年11月18日

脳外科での針刺麻酔

上海でまた針刺麻酔を使って脳外科の手術をしたようです

 11月17日付けの上海紙『新民晩報』の報道で、上海中医薬大学付属曙光病院で、針刺麻酔を使った脳外科の手術が取り上げられていました。針刺麻酔は一度、中医学の世界で脚光を浴びましたが、その後一時静かになり、また最近、ニュースに登場するようになっています。

 今回の患者は、安徽省出身の16歳の少年で、頭部CTでは、左側視床神経膠腫と閉塞性水頭症と診断され、上海へ転院してきました。手術による切除が治療方針となりますが、位置が脳の中でもかなり深いため、後遺症が心配されるのと、麻酔の問題がありました。即ち、大脳の手術による損傷を最小限に抑えるために、今回の脳外科手術では、覚醒下手術をあえて行って、患者が医師の指示通りに体を動かす必要があるとのことですが、今回はこの麻酔に針刺麻酔を使おうというもの。曙光病院では、脳外科と針灸科、麻酔科が一緒になってチームを組み、針刺麻酔を行うことを決定、腫瘍摘出手術を行ったようです。

 針灸科の医師が左右5カ所に鍼を打ち、痛みがなくなったことを確認、開頭術が行われました。患者は針刺麻酔を受けた後も意識がしっかりとしたまま医師の指示に受け答えし、2時間10分に及ぶ手術を無事終了したということです。術後の病理診断では、膠芽腫(Glioblastoma)のグレードWでかなり悪性度が高かったようです。

 前回は心臓手術で針刺麻酔が使われていましたが、今後の進展が期待されますね。
posted by 藤田 康介 at 17:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2011年11月14日

アクアリズムVol.51 10月号「中国で身近な中医学」

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 少し前になりますが、上海でも日本人を中心によく使われている浄水器のアクアの内部会報誌、アクアリズムの10月号にショートコラムを書きました。

 今でも悪名高き上海の水道水。これを少しでも快適に使うために、私も含めて皆さん色々試行錯誤されています。アクアの浄水器は、我が家でも使わせてもらっていますが、フィルターが交換される日にお風呂に入るのが楽しみです。上海の水道水特有の滑りがなくなり、日本の水道水のように空色に輝くお湯にはいることができるようになりました。

 上海人にとって、この空色の輝くお湯というのが不思議らしく、何か添加物が入っているのではないかとクレームがきたというニュースが、こちらの新聞に載っていました。水道水と言えば、黄色に濁っていることが多いですからね。浄水された水を使うという習慣が広がってきたのもまさここ数年のことです。

 水は毎日使うものだけに、少しでもこだわってみたい者です。

 アクアの木本総経理から本コーナー執筆のお話をいただいたとき、私も喜んで引き受けさせていただきました。こういうコーナーに書くのは、楽しいものです。またいつか登場するかもしれません。
posted by 藤田 康介 at 08:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年11月08日

千葉ミニ講演会「中医学の冬対策」

2011年は11月8日が立冬です。いよいよ二十四節気も冬モードに突入し、実際に、気候も寒くなっていきます。11月7日は、千葉県松戸市にあるカムクリニックで、地元の人たちを対象にしたミニ講演会を行ってきました。

 漢方薬でお馴染みのツムラの方も要らしていましたが、一般の方が多いので、テーマは養生を中心にしたもので、日頃、私達が中医学で実践していることをお話ししました。

 冬は、万物が冬眠に入る季節です。人間もまた然りで、人の代謝も比較的ゆっくりモードに入ります。また、日照時間も短くなるため、精神的な影響も受けやすいと考えます。ストレスからも上手く身体を守る必要があります。

 中医学では一般に、冬場は早く寝て、太陽がしっかりとでるまで休むようにといいます。太陽と共に、アドレナリンの分泌も徐々に増えてきて、頭をすっきりとさせることができます。

 寒いときにお勧めなのが、やはり足浴です。寒さは、足から襲ってくると考えられており、生薬を活用した様々な足浴方法が中国では考案されています。また、背中〜首を冷やさないことも大切です。背中は足太陽膀胱経の経絡が走っており、五臓六腑と関係のある経穴も並んでいます。そこで、寒さなどの邪気から身体を守ってあげる必要があるのです。

 冬になるとマラソンなどを運動をすることも大変結構なことです。しかし、汗をかきすぎないようにすることも大切です。汗と共に、陽気を消耗してしまうことは、望ましくないとされていますが、適度に汗をかくことはよいことだとされています。また、陽気をまもるためにも、夜の運動はなるべく避けて、できたら日中に運動するのが望ましいとされています。

 陽気を守るという観点から、羊肉・牛肉、クルミ、クリ、棗などの食べ物が重宝されますが、もちろん、大豆やニラ、ニンジン、大根なども結構です。上海では上海蟹シーズン真っ盛りですが、そろそろ冬に入ってくるとエビ・カニ類は避け、スイカなど身体を冷やす果物も避けたいところです。(それでも、こちらではいまだに食後にスイカがでてきますが。。。)
posted by 藤田 康介 at 07:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年11月07日

東京講演テーマ「中医体質学の新たな動き」

 11月6日に東京浜松町で行われたバンキー療法でお馴染みの健康医学総合研究所の治療師の方を対象にした第17回健康医学会・学術大会で、特別講師として1時間半ほどお話してきました。昨年度に続き、2回目です。バンキーはうちの中医クリニックでも使っていますが、いわゆる抜罐法の現代版で、火を使わずに一定の圧力でツボを刺激できるほか、日本でも医者を中心に刺絡療法で使われています。今回は、北は北海道から南は四国・九州まで日本全国から聴講に来てくださいました。

 さて、私がテーマとして話したのは、「中医学の体質論」の最近の動きです。体質改善といった表現は、中医学や漢方の世界でよく使われますが、どうも医者にのってそのとらえ方が色々あり、統一した見解がこれまで有りませんでした。しかし、中国では近年、その理論の整理が行われていて、私も2006年9月の『中医臨床』に詳細を執筆しておりますが、一定の成果が出てきています。この記事では、上海中医薬大学の匡調元教授など中国の専門家を取材してレポートしました。

 ここにきて、なぜ中医学による体質論なのか?

 私は、2つの観点が関係していると思います。一つは、中国の高齢化です。医療費の高騰が中国でも問題になっていて、公的保険制度の整備が急がれていますが、それ以前に、病気にならないことが一番の医療費節約です。そのため、中医学の特徴でもある「未病を治す」という考え方から、人々の体質を大まかに分けて、その体質に合わせた養生方法を医療機関が提案するというものです。上海の公的病院に勤めている私の妻のところでも、すでに地域末端医療の分野でこの体質論が動き始めているようです。

 もう一つは、一般的に難しく考えがちな中医学の弁証論治をわかりやすくするというメリットもあるかと思います。中医体質学では9つの大きなグループに分類しています。健康的な平和質のほかに、気虚質・陽虚質・陰虚質・痰湿質・湿熱質・血瘀質・気鬱質・特稟質の9種類です。北京中医薬大学の王g教授らのグループが中心となり、2009年に中華中医薬学会で正式に決定されたもので、今では中国の体質学のスタンダードになっています。うちの中医クリニックでも、この体質学の分類法を取り入れています。このように大きく分類することで、臨床研究における症状の曖昧さを極力統一し、共通の概念で討論できるようにしていのだと考えられます。

 さらに、体質学を使って、コンピューター診断をするシステムも開発されました。脈診や舌診もできるもので、すでに、上海市内の病院での導入も始まっています。こうした動きは、今後も続くかと思いますが、中医学というプラットホームに、様々なスタンダードを導入していくのはある意味、中医学の普及には欠かせない試みかもしれません。
posted by 藤田 康介 at 07:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動