2011年09月27日

上海日本人医師会に参加してきました

 定例となっている上海日本人医師会が9月26日に開催され、いつもの「柚子」で、新たに赴任されてこられた先生方と一緒に交流を深めました。

 今回は、いつものメンバーに加えて、女性の日本人医師の新しいメンバーが多く、東和クリニック婦人科の木越先生、上海ファミリークリニックでは、家庭医としてご活躍の矢野先生や整形の富永先生、ユナイテッドファミリーからは、ドイツ人の耳鼻咽喉科医師のJeanette Burkschat先生、上海森茂診療所からは日本で助産師の資格をとられた上海人の看護師の万先生など多彩な女性の先生方とお会いできました。

 いろいろ縁があったりしまして、万先生は私も研修や研究で所属していた上海中医薬大学附属龍華医院で看護師として働いておられた経験をお持ちで、龍華病院の懐かしい話に花を咲かせました。
 さらに、私もゆかりの深い京都や三重県名張市と関係のある先生がおられたり、なんとも愉快な会合となりました。

 上海の日本人向け・日系クリニックもますます充実してきています。それぞれの特色を活かしながら、上海での医療活動に貢献できたらと思っています。
posted by 藤田 康介 at 10:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年09月10日

9月10日、温泉学会 第15回 愛知・奥三河大会のシンポジウムで発表してきました

 またまた事後報告になってしまい、申し訳ございません。

 9月10日〜11日に愛知県県民の森(新城市)で開催された温泉学会 第15回 愛知・奥三河大会で、シンポジウム「温泉といやし-ストレス社会といやされ志向」で、発表させていただきました。

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 近年、健康志向が高まり、中医学のなかでも、「未病を治す」や「医食同源」、さらに「薬膳」の考え方が、日本でもブームになってきています。これらは、歴史のなかで脈々と中国人の生活の中に息づいているモノですが、決して複雑怪奇なものではなく、我々日本人にとっても受け入れやすいものでもあります。

 上海での日頃の臨床で気がついたこと、また我々日本人でもできそうなことやその考え方をご紹介しました。また、上海人の旅行スタイルが、田舎での自然体験を重視する「農家楽」タイプも増えており、温泉と共に癒しのありかたが変わっていることも紹介しました。

 「はづ」グループの加藤 直詳社長室長は、イギリス留学の経験をおもちで、温泉宿での癒しについて、お話されました。また、新城市の原田 哲夫観光課長は、湯谷温泉での取り組みと課題、さらに「癒しの旅に求めるもの」について、医師で、大阪産業大学人間環境学部の中川 晶教授も、「温泉といやし」についての基調講演に続いて、湯治とストレス疾患の治療での効果などのお話がありました。中川先生は、なかがわ中之島クリニックの院長もされております。

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 懇親会では、お互いイギリスでの滞在経験があるということで、中川先生や加藤様と夜遅くまで話し込んでしまいました。とくに、「はづ」グループの加藤様は私と同い年。

 こうした方々との出会いがあるのも、学会に参加する楽しみでもあります。

 関係者の皆様、いろいろありがとうございました。
posted by 藤田 康介 at 10:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年09月05日

第1回日本中医学会 学術総会(2)

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 3日の午後に、次期会頭挨拶としてお話くださった東北大学の関隆志先生のお話は、私にとっては非常にインパクトがありました。

 私の母校である上海中医薬大学の後輩で、鍼灸師の神谷先生が東北大学の病院で勤務されており、東日本大震災で医療のボランティアとして活躍されていましたが、そうした活動の背景に、関先生など漢方や中医学などを積極的に医療に取り入れられている医師の地道な活動があることを忘れないわけにはいきません。

 震災により、精神的なダメージを受け、体だけでなく心のケアが必要ななか、漢方薬(中医薬)が活用され、さらに鍼灸やマッサージなどで被災された方々に伝統医学が大きく貢献できたことは、非常に画期的な事だと思います。先生の発表の中で、西洋医学の安定剤を使うことで、確かに眠ることはできるものの、いざ余震が起こったときに万が一目が覚めなかったらどうしようという恐怖感から、加味逍遥散など精神に作用する漢方薬の活用が被災者の皆さんが望まれたというエピソードもありました。

 また、中国や韓国では、国が中心となって積極的に伝統医学の普及を目指しているのに対して、日本はまだまだ取り組みが遅れており、さらに鍼灸師など数がたくさんいるのに、実際には病院などの医療にすら十分に取り込められていない現実があり、日本の医療政策の課題が浮き彫りになっています。中国は、中医学を使っての世界戦略を描いているのに。。。。

 そういったことも踏まえて、被災地復興に、東北地方に伝統医学を活用した特区を作ろうではないかという構想が関先生をはじめとして東北大学などで考えられているようです。伝統医学のあらゆる要素を盛り込み、統合的な医療として社会に貢献する仕組みは、私は必要だと思います。

 中医学の場合、生薬(中医薬)だけでなく、鍼灸や推拿もあわせて初めて統合医療としての性格を発揮できますが、今の日本の制度では、少なくとも愛好者を増やすことができても、プロを増やすことは難しいと思います。

 関先生、インパクトのあるご講演、ありがとうございました。

 まだ続きます。
posted by 藤田 康介 at 07:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2011年09月04日

第1回日本中医学会・学術総会に参加して(1)

 東京のタワーホール船堀で開催されている記念すべき日本中医学会の学術総会。30分ぐらい前に会場に着きましたが、700−1000人ぐらい入りそうな大ホールにぱらぱらとしか参加者がおらず、心配したのですが、開始間際に多くの参加者が入場され、ほっと一安心。馴染みの顔ともたくさんお会いできました。

 今回は、大ホールと小ホールと2カ所で、時間帯では重なるため、大ホールでは湯液関係が多く、小ホールの鍼灸関連を完全に聞けなかったのが残念。毎回の事ですが、両方する参加者にとっては、苦しい選択になります。

 さて、大ホールで行われたシンポジウムは、『心の疾患と中医学』がテーマ。近年増えているうつ病などでの中医学的治療を生薬と鍼灸療法からの切り込みで討論しました。パネリストの先生方はいずれも関西の医療機関から。

 私も、日頃の臨床で、うつ病やパニック症と診断された患者さんの中医治療を生薬(煎じ薬)と鍼灸を併用してやっていますが、うまくいけば抗うつ剤の力を借りずに、患者さんの症状改善が見込めます。中医学的にもかなり得意な分野かとも思いますが、日本の先生方がどうアプローチされているのか勉強させていただきました。

 東洋堂土方医院の土方康代先生の「難治の自律神経失調症」。弁証論治を強調され、その中で「脾陰証」についての話が何回か出てきていました。教科書中医学ではあまり出てこない考え方なので、その当たりをもう少し詳しく聞きたかった。また、疏肝解鬱+健脾補腎として補中益気湯とスッポン粉末を使われているのも興味深い。女神散(当帰・川芎・桂枝・白朮・黄芩・香附子・梹榔・木香・黄連・人参・甘草・大黄・丁子)は、日本漢方の処方。陣中の神経症に使われたそうです。
 日本赤十字和歌山医療センター心療内科の西田慎二先生は、「ストレス関連疾患に対する漢方治療」で、大阪大学医学部付属病院漢方外来での患者さんの分析と、治療法についてのお話。『黄帝内経』に出てくる、肝に対する記述で、「罷極之本」(罷極の本、魂の居なり)に関して、弛緩と緊張という解釈されていました。ストレスと肝は深く関係があるので、内経からのアプローチをされていました。よく使われている処方は、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、四逆散、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遥散、補中益気湯、抑肝散、加味帰脾湯など。抑肝散(柴胡・茯苓・川芎・当帰・釣藤・甘草)は日本の漢方では、本当によく登場しますね。
 兵庫県立尼崎病院の陸佐代子先生は、「慢性統合失調入院患者への漢方治療の効果」について。長期入院患者に対して、薬物療法の多剤併用を単剤処方にすることに漢方を活用している症例の紹介がありました。苓桂朮甘湯、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯などを組み合わせて、最後はクエチアピンのみの単剤化に成功した症例を発表されていました。
 最後に、明治国際医療大学臨床鍼灸教室の福田文彦先生は、「うつ病(うつ病症候群)と針灸治療」に関して、鍼灸を使った臨床・基礎研究の紹介。患者さん自身が、自宅でも経穴の刺激ができればとも思うぐらいですが、治療の中で百会+印堂の鍼通電刺激も使ってらっしゃるようです。

 実は、このシンポジウムの裏で、越吉平先生の鍼灸の招待講演があり、ものすごく興味があったものの断念。その後の、結鍼灸院の藤井正道先生の「督脈通用法」を聞きに行きました。陽気を深く関係のある督脈から十分な経気を供給させて、温通させる方法。冷えや湿阻が多い、現代日本人の疾患に使われ、実績をあげておられます。実演では、モデルの患者さんもその温熱感を実感されており、応用範囲が非常に広い治療法だと思いました。

 鍼灸の会場はかなりの熱気。今後の課題として、日本の西洋医学の先生と、鍼灸の先生方といかに裾野を共有できるかが、日本での伝統医学(漢方・中医学)発展のカギになるのではないかと強く思いました。 

 そのあと、日本中医学会次期会頭となられる東北大学大学院の関 隆志先生の講演がありましたが、私は今日の大会のなかで、最も刺激的で、啓発を受けました。会議のあと、関先生にも直接お話を伺うことができ、詳しいことは後ほど。
posted by 藤田 康介 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動