福島第一原子力発電所の問題で、日本でも放射線物質による土壌汚染の問題が大きく取りあげられていますが、中国の沿海部の経済発展エリアでは、重金属汚染の問題が相変わらず深刻です。
南京農業大学の専門家が、江蘇省南部エリア(俗に言う蘇南エリア)で、工業汚染・農薬汚染・鉱山からの汚染水廃水により、農地のカドミウム、鉛、水銀、ヒ素、クロムなどの汚染が進んでいる警鐘を鳴らしていました。
有機農業研究所の和文竜所長は、土壌調査を行った結果から、無錫・蘇州など蘇南エリアでは本当の意味での有機農業が出来る土壌がほとんどないと訴えています。同様の状態が、同じ長江デルタエリアの浙江省でも『食品薬品安全状況調研報告』で、都市郊外の農地や水田で重金属による汚染が進んでいる実態が報告されました。
重金属汚染は、肉眼では見ることができませんし、少しずつ蓄積され、短期間では人体への影響を確認することが難しいといわれています。さらに、中国ではムギや米など穀物に対しての重金属の研究は進められていても、野菜類に関してはまだよく分かっていないことも多いのだそうです。
一旦、重金属による汚染が発覚すると、その農地では耕作ができなくなり、大きな損失にもなりますし、農民自身に調査を行わせること自体、コスト的にも難しいのが現状です。
2006年の中国環境保全部の調査では、中国の農地の1割ほどで重金属による汚染が進んでおり、直接的な経済損失は200億元にも及ぶとしています。これから数年の歳月が過ぎており、中国内陸部の工業化も年々拡大しています。
工業化による農地の汚染は、将来起こるであろう世界的な食糧危機に対して、大きな足かせになる可能性は十分に考えられると思います。かといって、有機野菜だけでは人類を養っていけないこともまた事実です。
2011年06月28日
2011年06月27日
さらに早まった上海人女性の自然閉経年齢
上海市老年医学会の最新のデータによると、上海市の50歳前後の女性を対象にした調査で、自然閉経した平均年齢は47.41歳で、10年前と比較すると1.02歳若くなったようです。
女性の更年期障害の中医薬(漢方薬)による治療は、昔から比較効果が期待できる分野の一つでもあります。卵巣の働きが衰え、女性ホルモンが低下するすることによる生理不順、ホットフラッシュ、情緒不安定、不眠、身体のだるさなどが程度に違いがあるにせよみられるようになります。
また、今回の上海の調査で、更年期障害で最もよく見られる症状は、不安・イライラ感であり、全体の半分の女性に見られるということです。さらに、生活に支障が出てくる人も全体の2割程度おり、有効的な治療が求められています。
ただ、中国の場合、こうした症状を正しく認識していない人も少なくなく、薬の使い方の問題も出ています。
女性の更年期障害の中医薬(漢方薬)による治療は、昔から比較効果が期待できる分野の一つでもあります。卵巣の働きが衰え、女性ホルモンが低下するすることによる生理不順、ホットフラッシュ、情緒不安定、不眠、身体のだるさなどが程度に違いがあるにせよみられるようになります。
また、今回の上海の調査で、更年期障害で最もよく見られる症状は、不安・イライラ感であり、全体の半分の女性に見られるということです。さらに、生活に支障が出てくる人も全体の2割程度おり、有効的な治療が求められています。
ただ、中国の場合、こうした症状を正しく認識していない人も少なくなく、薬の使い方の問題も出ています。
2011年06月22日
夏至と果物
2011年は6月23日が夏至でした。夏至が過ぎると、いよいよ夏本番の三伏がやってきます。三伏とは、1年のうちで最も暑い季節で、夏至から3回目にやってくる庚の日を初伏、4回目にやってくる庚の日を中伏、さらに立秋後にやってくる初めての庚の日を末伏とし、それぞれ10日間あります。この3つの伏をあわせて三伏といいます。
三伏は、冬の病気を夏に治すという冬病夏治の大切な時期であり、喘息や鼻炎などアレルギー体質の人や、冬の冷え・関節痛の予防など未病的見地から治療を行います。うちの中医クリニックでも、この時期に大陸や台湾人の子供たちが三伏貼の膏薬貼りにやってくるのもそのためです。
夏になると、様々な果物が美味しくなります。

その代表が、やはり西瓜でしょう。上海では8424の品種が有名です。夏至を過ぎた頃から、自然に受粉した西瓜が増えてきますので、お勧めです。ただし、身体を冷やす性質が強いので、食べ過ぎると食欲が落ちたり、下痢・腹痛になったりすることが多いので、要注意です。冷やす性質のものですから、冷蔵庫に入れたものを直接食べてはいけません。
冷やすものといえば、熱帯のマンゴーも代表選手です。ただし、この果物は汁などでアレルギー反応を起こす人が多く、注意が必要です。対策としては、食べるときはなるべく小さめに切り、直接汁が肌につかないようにすることが大切です。特に、お子さんがマンゴーを食べた後はしっかりと口を漱いであげてください。
アレルギー反応といえば、パイナップルも多いです。パイナップルは、繊維質やビタミンCも豊富なのですが、胃腸の粘膜に作用する酵素の影響で、腹痛や皮膚の痒みなどアレルギー反応を起こす人が少なくありません。対策としては、この酵素を分解させるために、食べる前に希釈した食塩水へ20分間浸けておくことをお勧めします。
夏場といえば、身体を冷やす果物が多いですが、温めるものもあります。その代表が、上海エリアでも多く収穫される桃です。桃は、気を補う滋養強壮の作用のほか、便通を改善する働きもあります。ただし、温める性質がありますので、食べ過ぎると顔に吹き出物ができたり、喉がイガイガしたりする症状を訴える人も少なくありません。サクランボも同様に身体を温めるものですので、いわゆる「上火」にはご注意ください。
とはいえ、せっかくの夏ですから、色々な果物を食べてみたいですね。朝食にぜひ果物の彩りを添えてみてください。(くれぐれも冷やして食べないでくださいね。)
暑くなってくると、身体の調子が今ひとつになり、抵抗力が弱まってしまう人も少なくありません。上海では食中毒が多発する季節でもあるので、いつも以上に気をつける必要があります。
三伏は、冬の病気を夏に治すという冬病夏治の大切な時期であり、喘息や鼻炎などアレルギー体質の人や、冬の冷え・関節痛の予防など未病的見地から治療を行います。うちの中医クリニックでも、この時期に大陸や台湾人の子供たちが三伏貼の膏薬貼りにやってくるのもそのためです。
夏になると、様々な果物が美味しくなります。

その代表が、やはり西瓜でしょう。上海では8424の品種が有名です。夏至を過ぎた頃から、自然に受粉した西瓜が増えてきますので、お勧めです。ただし、身体を冷やす性質が強いので、食べ過ぎると食欲が落ちたり、下痢・腹痛になったりすることが多いので、要注意です。冷やす性質のものですから、冷蔵庫に入れたものを直接食べてはいけません。
冷やすものといえば、熱帯のマンゴーも代表選手です。ただし、この果物は汁などでアレルギー反応を起こす人が多く、注意が必要です。対策としては、食べるときはなるべく小さめに切り、直接汁が肌につかないようにすることが大切です。特に、お子さんがマンゴーを食べた後はしっかりと口を漱いであげてください。
アレルギー反応といえば、パイナップルも多いです。パイナップルは、繊維質やビタミンCも豊富なのですが、胃腸の粘膜に作用する酵素の影響で、腹痛や皮膚の痒みなどアレルギー反応を起こす人が少なくありません。対策としては、この酵素を分解させるために、食べる前に希釈した食塩水へ20分間浸けておくことをお勧めします。
夏場といえば、身体を冷やす果物が多いですが、温めるものもあります。その代表が、上海エリアでも多く収穫される桃です。桃は、気を補う滋養強壮の作用のほか、便通を改善する働きもあります。ただし、温める性質がありますので、食べ過ぎると顔に吹き出物ができたり、喉がイガイガしたりする症状を訴える人も少なくありません。サクランボも同様に身体を温めるものですので、いわゆる「上火」にはご注意ください。
とはいえ、せっかくの夏ですから、色々な果物を食べてみたいですね。朝食にぜひ果物の彩りを添えてみてください。(くれぐれも冷やして食べないでくださいね。)
暑くなってくると、身体の調子が今ひとつになり、抵抗力が弱まってしまう人も少なくありません。上海では食中毒が多発する季節でもあるので、いつも以上に気をつける必要があります。
2011年06月21日
単なるゴキブリと呼ばないで

薬草程度なら普通に受け入れられる漢方薬(中医薬)でも、昆虫となると一歩引かれてしまうことはよくあります。そのなかでも、ゴキブリも生薬になるというと、ますます「え〜!」といった感じになりますが、意外と使われていたりもします。
例えば『金匱要略』に出てくる大黄䗪虫丸。ここに使われている䗪虫(しゃちゅう)とは、地鼈虫とも呼ばれ、シナゴキブリやサツマゴキブリのことを指します。(写真)
非常に強い活血作用があり、中医学では「破血」ともいいます。瘀血が原因の生理痛や、産後の腹痛などにも使われるほか、あまり知られていないが整形外科の分野で使われる骨折による痛みの治療です。
私も、頑固な偏頭痛の治療で、瘀血が原因と思われるケースには使うことがあり、なかなか良好な成果が出ています。ただし、妊婦さんには使えませんので要注意です。
そのほか、肝硬変や心筋梗塞の治療にも使うことがありますが、日本ではなかなか手に入らない生薬だけに、日の目をみることはなかなかないでしょうね。私もいろいろな使い方を研究してみたいと思います。
ちなみに破血作用のある生薬といえば、腎臓内科では欠かせない水蛭もよく使います。
虫たち、ガンバレ!
2011年06月20日
桑の葉
我が家のベランダに、桑の木の鉢植えを置いてあります。

はじめは1本の木の枝が立っている状態で、その後どうなるかと思いましたが、順調に葉っぱも出てきて、いま青々としてきました。
桑の葉っぱは、生薬でもよく使います。
代表的な処方では、風邪薬にも使う桑菊飲があり、発熱や頭痛、咳き、喉の痛みで使えます。さらに熱が原因の空咳や喉の乾燥にも効果的です。そのほか、肝陽上亢が原因の頭痛や眩暈(めまい)、頭のだるさなどにも使われ意外と活躍できる生薬だと思います。
『本草綱目』では、毛が生えてくるという記載もあるのですが、これは本当かどうか。
最近では、血糖値を下げる作用が注目されています。有効成分にある1-デオキシノジリマイシンの作用は日本でも知られています。肺系の薬草なので、消渇に効くというのはまさにその通りでしょうね。

我が家では、喉の調子が悪かったりすると、コップにお湯を入れて写真のように飲みます。まあ、あまり美味しいものではありませんが。。。。

はじめは1本の木の枝が立っている状態で、その後どうなるかと思いましたが、順調に葉っぱも出てきて、いま青々としてきました。
桑の葉っぱは、生薬でもよく使います。
代表的な処方では、風邪薬にも使う桑菊飲があり、発熱や頭痛、咳き、喉の痛みで使えます。さらに熱が原因の空咳や喉の乾燥にも効果的です。そのほか、肝陽上亢が原因の頭痛や眩暈(めまい)、頭のだるさなどにも使われ意外と活躍できる生薬だと思います。
『本草綱目』では、毛が生えてくるという記載もあるのですが、これは本当かどうか。
最近では、血糖値を下げる作用が注目されています。有効成分にある1-デオキシノジリマイシンの作用は日本でも知られています。肺系の薬草なので、消渇に効くというのはまさにその通りでしょうね。

我が家では、喉の調子が悪かったりすると、コップにお湯を入れて写真のように飲みます。まあ、あまり美味しいものではありませんが。。。。
2011年06月13日
睡眠時間
人間は一体どれぐらい眠ると身体にいいのか?色々な研究がされています。中医学の場合、季節による睡眠時間の調節を大切にします。一般に、夏場は短めにし、冬場は長めにするように心がけます。ただ、長すぎる睡眠や短すぎる睡眠はやはりよくないわけで、睡眠時間に関する研究は世界各国で行われています。
アメリカの研究では、中年世代を対象とした認知能力と睡眠の関係で、毎晩7時間程度眠る人の認知能力が最も高く、6時間未満や8時間以上の睡眠時間だと能力が劣るとしています。その衰え方は、実際の年齢よりも4〜7歳分加算される程度に相当するのだそうです。
また「寝る子は育つ」とよく言われますが、赤ちゃんの発育と睡眠時間の関係はどうなのか?Emory Universityの研究では、よく寝る赤ちゃんのほうが身長が伸びやすいのだそうで、毎回1時間多く眠ると、身長が伸びる可能性が20%高まるということです。研究者は身長の増加と睡眠時間との関係はあるとしています。
睡眠時間と肥満との関係も研究されています。スイスのUppsala Universityの研究では、以前、睡眠不足の女性は腰・腹部が肥満になりやすく、浅い眠りや夢をあまりみない眠りも女性の肥満と関係があるとし、徹夜をした人が朝食を食べると、8時間睡眠をとった人と比較して、カロリーの消費が15%低下し、消費されなかったカロリーは、脂肪として蓄積される傾向にあるとしています。
さらに、アメリカのNorthwestern Universityの研究でも、夜更かしをすると体重が増えやすいことを研究しています。平均年齢30歳の人を対象に、午前3時45分〜午前10時45分まで睡眠をとるグループと、午前0時30分〜午前8時まで睡眠をとるグループを比較した場合、前者のほうが体重が増加したのだそうです。
夜更かしすると、カロリーの消耗が減少する一方で、食欲を増進させるグレリンと呼ばれるホルモンの分泌が増え、ものをますます食べたくなるようになり、肥満になるということです。
寝ると言うことは、ダイエットに関しても非常に大切ということですね。
アメリカの研究では、中年世代を対象とした認知能力と睡眠の関係で、毎晩7時間程度眠る人の認知能力が最も高く、6時間未満や8時間以上の睡眠時間だと能力が劣るとしています。その衰え方は、実際の年齢よりも4〜7歳分加算される程度に相当するのだそうです。
また「寝る子は育つ」とよく言われますが、赤ちゃんの発育と睡眠時間の関係はどうなのか?Emory Universityの研究では、よく寝る赤ちゃんのほうが身長が伸びやすいのだそうで、毎回1時間多く眠ると、身長が伸びる可能性が20%高まるということです。研究者は身長の増加と睡眠時間との関係はあるとしています。
睡眠時間と肥満との関係も研究されています。スイスのUppsala Universityの研究では、以前、睡眠不足の女性は腰・腹部が肥満になりやすく、浅い眠りや夢をあまりみない眠りも女性の肥満と関係があるとし、徹夜をした人が朝食を食べると、8時間睡眠をとった人と比較して、カロリーの消費が15%低下し、消費されなかったカロリーは、脂肪として蓄積される傾向にあるとしています。
さらに、アメリカのNorthwestern Universityの研究でも、夜更かしをすると体重が増えやすいことを研究しています。平均年齢30歳の人を対象に、午前3時45分〜午前10時45分まで睡眠をとるグループと、午前0時30分〜午前8時まで睡眠をとるグループを比較した場合、前者のほうが体重が増加したのだそうです。
夜更かしすると、カロリーの消耗が減少する一方で、食欲を増進させるグレリンと呼ばれるホルモンの分泌が増え、ものをますます食べたくなるようになり、肥満になるということです。
寝ると言うことは、ダイエットに関しても非常に大切ということですね。
2011年06月11日
消渇=糖尿病ではないと思う
中医学の内科の教科書で「消渇」という章があり、一般に西洋医学の診断で糖尿病とつけば、ほぼ100パーセントの割合で、中医学の診断で消渇が使われます。ただ、消渇の定義は、喉の渇き、多食、多量の尿、体重の減少、尿の濁りなどなどの症状をあわせて判断することになります。よって、消渇だからといって、すべてが糖尿病にならないことが、中医学と西洋医学との関係で難しいところだと思います。
先日、浙江省舟山から来られた40代半ばの中国の患者さん。
1年ほど前から喉の渇き、尿が濁り、掌の火照りを訴え、中国各地の西洋医学の病院を転々とされておりました。尿検査・血糖値・甲状腺関係・腎機能など一通りの血液検査・エコーもされ、生理も順調で婦人科系も異常がなく、平行して地元の病院で中医薬も服用されていましたが効果がなく、今回は私のところに来られました。舌質は多少赤かったものの、白い苔がうっすらとありました。
中医学的には「消渇」の診断はつけられると思います。おそらく、他の医師もその切り口で考えていたはずです。
そこで、私は脾胃に火があり、これが胃や腎の陰を傷つけたと考え、処方を立ててみました。
『備急千金要方』を記した孫思邈は、こうした代謝内分泌疾患に黄連丸(黄連・熟地)を使いましたし、一般的に地骨皮・石膏・黄耆・麦冬・知母・天花粉などの生薬が使われることが多いです。また、玉女煎や瀉黄散などの処方もよく使われます。
ただ、彼女の飲食の話を来ていると、刺激の強い辛いもの好きで、結構無茶していることも発覚。とりあえず、2週間後に来ると言っておりましたが、さてどのように改善されるか今後診ていきたいと思っています。
先日、浙江省舟山から来られた40代半ばの中国の患者さん。
1年ほど前から喉の渇き、尿が濁り、掌の火照りを訴え、中国各地の西洋医学の病院を転々とされておりました。尿検査・血糖値・甲状腺関係・腎機能など一通りの血液検査・エコーもされ、生理も順調で婦人科系も異常がなく、平行して地元の病院で中医薬も服用されていましたが効果がなく、今回は私のところに来られました。舌質は多少赤かったものの、白い苔がうっすらとありました。
中医学的には「消渇」の診断はつけられると思います。おそらく、他の医師もその切り口で考えていたはずです。
そこで、私は脾胃に火があり、これが胃や腎の陰を傷つけたと考え、処方を立ててみました。
『備急千金要方』を記した孫思邈は、こうした代謝内分泌疾患に黄連丸(黄連・熟地)を使いましたし、一般的に地骨皮・石膏・黄耆・麦冬・知母・天花粉などの生薬が使われることが多いです。また、玉女煎や瀉黄散などの処方もよく使われます。
ただ、彼女の飲食の話を来ていると、刺激の強い辛いもの好きで、結構無茶していることも発覚。とりあえず、2週間後に来ると言っておりましたが、さてどのように改善されるか今後診ていきたいと思っています。
2011年06月08日
中国で増える気管支喘息、中医学は何できる?

(やっぱりもやってしまいます。)
ここ20年間で、中国で気管支喘息患者が急増しています。少なく見積もっても、中国では2000万人の患者がいるといわれており、このうち子供の発病率は中国で3〜5パーセント程度とみられています。
理由は、大気汚染との関係が指摘されていますが、いずれにしろ3〜5歳で気管支喘息を発症しやすく、またこのうち年齢と共に治癒できるのは多くなく、大部分は治療を必要とします。ハウスダストなどのアレルゲンが原因であることも多いわけです。
では、中医学や漢方ではどのように活用できるのか?
もちろん、発作が起きたときに頓服で生薬を使うこともありそこそこ発作を軽くできますが、最大にその力を発揮できるのは、やはり発作が起きていないときのケアだと中医学では考えます。このあたり、私が以前大学院で研究してきた小児ネフローゼも同様で、発作回数を如何に減らすかということが中医や漢方での治療ポイントになります。
中医学でも気管支喘息に関する研究がいろいろ行われていますが、西洋医学のGINAガイドライン(国際喘息指針)同様、中医学でも中国国家中医薬管理局が『中医病証診断療効標準』を定めています。これをもとに、江蘇省中医院が中医学を使って予防的治療を3ヶ月行った場合と、行わなかった場合を比較して、治療後1年間の発作回数を調べたところ、中医学治療を行ったグループの発作回数は1.906回で、中医学を使わなかったグループの4.192回と比較すると有意義的な違いがあったということです。ここで使われていた処方は、玉屏風散や四君子湯、参苓白朮散など極めて基本的な処方の組み合わせの固定処方(加減しない)でした。
気管支喘息の発作を考えた場合、肺の中に溜まった痰が何らかのきっかけで動き出すと症状が発生すると考えます。また、子供は肺や消化器(脾)の働きがまだ完全でないため、痰が生成しやすいとし、それが外邪と呼ばれる外因(アレルゲンや食べ物、大気汚染など)をきっかけに動き出すと発作になるとします。従って、肺や脾の働きを如何にサポートしてあげるかが、痰をつくる量を減らし、発作の回数を減らすことになります。
肺の気というのは非常に大切で、中医学では湊理(体表の穴、汗腺など)の開け閉めをコントロールしたり、衛気と呼ばれる気で外邪から身体を守ったりします。玉屏風散にはまさにその作用があり、一般に風邪の予防などによく使われるのです。
季節柄、冬〜春に発作の多い気管支喘息。夏になると、本格的に中医学の冬病夏治の季節になります。冬の病気は、ぜひ夏のうちにしっかりと予防しておきたいところですね。
2011年06月05日
今更ながらヨモギのお話

(艾と菖蒲)
2011年6月6日は中国では端午の節句。この時期、よく登場するのがヨモギ(艾・艾葉)です。キク科の植物で、葉っぱを生薬として使います。
上海の街を歩いていても、菖蒲やヨモギを市場で買って帰っている人たちをよく見かけます。あの強烈な香りから、ジメジメした時期に邪気を飛ばす薬草として重宝されてきたのです。
中医学的な効能は、消寒除湿・温経止血・止痒などが有名で、お灸の原料にもなります。中国の中医学や日本の漢方の世界では内服でよく使いますが、それ以外にも外用でも重宝します。私も臨床で、湿疹や皮膚の痒み、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹の外用薬を作るときに欠かすことができない生薬の一つになっておりますし、皮膚疾患の入浴剤としても非常にお勧めです。
韓国の韓医などで「蓬蒸し」が一時期流行っていましたが、特に足浴には効果的で、疲労回復や不眠などのほかにも、殺菌作用が強いことから水虫や足のにおいの予防などにも使えます。婦人科では、冷え性の方の生理痛や月経過多などにも使えます。
精油が有効成分で、その50%以上がシネオールと呼ばれる精油です。こうした精油が香りとして鼻から入ってくると、殺菌作用も期待され、特に子供の皮膚などにも優しく作用してくれます。
中国では、今から3000年ぐらい前の殷の時代から艾葉は薬浴として使われてきました。湖北省では、子供が生まれたら3日間は艾風呂に入れる習慣もあるそうです。端午の節句の艾風呂である「蘭湯沐浴」の習慣だけではなかったのですね。
日本ならどこにでも生えているヨモギですが、残念ながら上海ではあまり見かけません。こういった薬草もうまく活用したいところです。
2011年06月04日
後ろ歩き健康法-その後の研究
上海の公園にいくと、よく見かける後ろ歩き健康法ですが、その後欧米でも様々な研究が行われているようです。色々なところで紹介されているので、中国や中医学などを超えた範囲で普及するかもしれません。
これまで、後ろ歩き法は太ももや脛やおしりの筋肉をきたえるのに有効であると言われてきました。また、循環器系の健康維持にもいいということも言われてきました。
今回見つけたのは、米国・University of Oregonの研究です。後ろ歩きをした方が、(この実験では後ろ走りをしているようですが)普通のランニングをするよりも短時間で運動効率を高めることができ、後ろ歩きなら前向きの時よりも2割ほど遅いスピードでも同様の運動量になるということです。
研究では、直線で50〜100メートルの距離があれば一番よく、さらに2人一組になって1人が前向き、1人が後ろ向きになって同時にランニングすることを勧めていました。
アメリカでも後ろ歩き健康法が普及するかも。
これまで、後ろ歩き法は太ももや脛やおしりの筋肉をきたえるのに有効であると言われてきました。また、循環器系の健康維持にもいいということも言われてきました。
今回見つけたのは、米国・University of Oregonの研究です。後ろ歩きをした方が、(この実験では後ろ走りをしているようですが)普通のランニングをするよりも短時間で運動効率を高めることができ、後ろ歩きなら前向きの時よりも2割ほど遅いスピードでも同様の運動量になるということです。
研究では、直線で50〜100メートルの距離があれば一番よく、さらに2人一組になって1人が前向き、1人が後ろ向きになって同時にランニングすることを勧めていました。
アメリカでも後ろ歩き健康法が普及するかも。
2011年06月03日
City Bros 2011年6月号 特集「朝上海。」に登場

先日、上海で発行されている雑誌、お馴染みのCity Brosの編集部の方がインタビューに来られましたが、そのときの記事が掲載されました。特集のテーマは「朝上海。」ということで、中医学で朝を有効に利用できる方法がないのか、編集の方からの依頼でといろいろ考えてみました。編集部は、私が朝型であることを知ってのインタビューかと思うぐらいまさに私にとっては「ドンぴしゃ」のテーマでしたね。
私は日本の奈良高校にいた頃、すなわち中医学を本格的に志す前からの筋金入りの朝型で、勉強もいつも朝やっておりました。その習慣が、大学に行ってからの研究も、病院で仕事をするようになってからも、ずっと続いており、私にとっては朝の時間が非常に貴重です。そう、今日のブログを書いているのも朝4時です。

ただ、人によって体内時計は微妙に違いますし、日中の体力を消耗するバランスも違いますので、一概に朝型をみんなに勧めるというわけではありませんが、時間を有効に使い、朝の空腹感を感じたいという人は、ぜひ朝型を試してみてください。朝、本当にお腹が減り、朝ご飯が美味しくなります。
City Bros 2011年6月号は、上海の日本料理屋さんなどに置かれているはずですので、この機会にぜひ皆さんご一読ください。
2011年06月02日
人工栽培の冬虫夏草を使った研究
上海市の農業科学院が研究を行っている、冬虫夏草の仲間である北冬虫夏草に関して、濃縮精油を抽出することに成功し、近い将来に製品化される可能性が出てきました。今年5月24日に上海市から発表された結果です。
冬虫夏草を慢性腎不全や肝硬変の治療に使うことは、1980年代から中国ではよく行われていきました。論文も多数発表されてますが、冬虫夏草は高価な生薬であるため、また環境破壊に問題もあり普及には問題がありました。その後の研究で、癌の予防や治療、脂質異常、喘息などの改善にも使えることが分かってきています。
いわゆる西蔵や四川省で収穫される真菌と昆虫が合体した冬虫夏草の栽培は成功していません。しかし、北冬虫夏草の研究では、上海市農業科学院が栽培に人工成功しており、さらに両者の有効成分がほぼ同じであることも分かってきて、より使いやすくなる可能性が出てきました。
さらに、ステロール化合物や不飽和脂肪酸、アデノシン、ビタミンEなどの活性有効成分を抽出する技術に関しても、産業化できるメドがたったということです。今後は、医薬品としての研究開発が進められると思います。
冬虫夏草を慢性腎不全や肝硬変の治療に使うことは、1980年代から中国ではよく行われていきました。論文も多数発表されてますが、冬虫夏草は高価な生薬であるため、また環境破壊に問題もあり普及には問題がありました。その後の研究で、癌の予防や治療、脂質異常、喘息などの改善にも使えることが分かってきています。
いわゆる西蔵や四川省で収穫される真菌と昆虫が合体した冬虫夏草の栽培は成功していません。しかし、北冬虫夏草の研究では、上海市農業科学院が栽培に人工成功しており、さらに両者の有効成分がほぼ同じであることも分かってきて、より使いやすくなる可能性が出てきました。
さらに、ステロール化合物や不飽和脂肪酸、アデノシン、ビタミンEなどの活性有効成分を抽出する技術に関しても、産業化できるメドがたったということです。今後は、医薬品としての研究開発が進められると思います。
2011年06月01日
中国の女性の乳がん発病年齢は平均で48歳
中国で初めての大規模な乳がんの疫学的調査が行われ、その結果が発表されました。『中国流線癌流行病学調研項目』と呼ばれる研究で、中国医学科学院腫瘤医院、腫瘤研究所が中心となり、中国全国の7つの総合病院が2年間にわたって華北・東北・華中・華南・華東・西北・西南の各エリアを疫学的に調査したという画期的なものです。
その結果、中国の乳がんの発病平均年齢は48歳で、欧米よりも10歳程度早いことが分かりました。また、上海で発病率が高いように、東部沿岸部の方が西部内陸部よりも発病率が高く、都市部のほうが農村部よりも発病率が高いことも分かりました。以前言われていたとおりの結果です。中国都市部でのストレスや飲食との関係や環境汚染との影響が言われています。
中医学で乳腺に関係する疾患を考えるときに、漢方薬などを服用すること以前に、まず精神的なストレスや疲労を改善し、如何にリラックスできるかを重視します。これは、乳腺に関係する疾患が肝や腎と関係があるからです。
また、一般的に食生活では揚げ物や焼き物類を控え、動物性タンパク質や脂肪の摂取量をコントロールし、滋養強壮といわれる漢方薬や中医薬の服用は控えめにするようにいいます。
その結果、中国の乳がんの発病平均年齢は48歳で、欧米よりも10歳程度早いことが分かりました。また、上海で発病率が高いように、東部沿岸部の方が西部内陸部よりも発病率が高く、都市部のほうが農村部よりも発病率が高いことも分かりました。以前言われていたとおりの結果です。中国都市部でのストレスや飲食との関係や環境汚染との影響が言われています。
中医学で乳腺に関係する疾患を考えるときに、漢方薬などを服用すること以前に、まず精神的なストレスや疲労を改善し、如何にリラックスできるかを重視します。これは、乳腺に関係する疾患が肝や腎と関係があるからです。
また、一般的に食生活では揚げ物や焼き物類を控え、動物性タンパク質や脂肪の摂取量をコントロールし、滋養強壮といわれる漢方薬や中医薬の服用は控えめにするようにいいます。