胃潰瘍の治療で、鍼灸が有効であることは臨床で実践されてきましたが、果たしてそれがどのように作用しているのか、あまりはっきり分かっていませんでした。が、最近、湖南中医薬大学が、足陽明胃経のツボにお灸をすることで、胃の粘膜を修復するメカニズムを研究し、2010年度中国鍼灸学会で技術奨2等賞を受けました。
足陽明胃経のツボに鍼灸をすることで、熱ショックタンパク質(HSP)を誘導し、アポトーシスを抑制して胃粘膜の細胞を増殖させ、保護するというもの。
動物実験では、ラットの足三里(下腿前面、犢鼻と解溪を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に取る)や梁門(上腹部、臍中央の上方4寸、前正中線の外方2寸)に対して灸法を使って、ツボを刺激することで、熱ショックタンパク質の合成を促進させたわけですが、興味深いことにツボを刺激したときと、ツボ以外を刺激したときとでは、熱ショックタンパク質の合成に差が出たと言うことでした。
さらに、お灸だけでなく鍼治療においても同様の効果が得られるようで、電気針を使って足陽明胃経に刺激を与えるとよいと言うことです。中国の臨床では、胃潰瘍の予防だけでなく、治療にも活用されています。
科学的な裏付けで鍼灸の効果が証明されたことは意義あるわけで、今後他分野での応用も期待されています。これに中医薬(漢方薬・生薬)を組み合わせると、さらなる効果が期待できるはずです。
2011年03月26日
2011年03月25日
男性30〜39歳
中国の大都市に住む市民の健康管理は、かなり難しい。よっぽど意識をしなければ、ズルズルと流されていってしまうからです。
中国医師協会などが行った4ヶ月に及ぶ調査で、中国の大都市に住む市民の健康診断などのデータで、男性の場合は脂肪肝・中性脂肪・骨密度の低下が増加している一方、女性の場合は、乳腺増殖・子宮頸炎・痔が順に増加傾向にあるということでした。
この調査で興味深いと思ったのは、男性の場合、高血圧や脳梗塞、冠状動脈アテローム硬化性心疾患のような慢性疾患の原因の多くは、我々のように30〜39歳の間に原因があり、40〜49歳に発症するという調査結果。また、女性の慢性疾患の場合、男性よりも10年遅くて、50〜59歳が慢性疾患発生のピークになるという傾向があるようです。確かに、女性は更年期とも関係がありますからね。
さらに、都市部の女性の間で痔が増えているらしい。
運動しない人が多いだけでなく、やはり事務の仕事など坐ってする仕事が女性に多いことが原因と言うことです。また、最近、中華料理でもあまり噛まなくてもいい柔らかい食べ物が増えているのも原因らしい。その通りです。中国の中華料理の肉も軟らかくなりました。
男性の脂肪肝は、中国では若年層でも非常によく見かけますが、データでは20〜40歳の世代では、その割合は6割にものぼります。運動不足や過度の外食・接待が問題であることは言うまでもありません。
ちなみに、地域別にみると、上海人は心理的には結構うまく調節できている人が多いのに対して、広東人はイライラしている人が多いそうですが、これはホントかどうか。。。
上海で働いている日本人のみなさんについても同様です。日本以上に接待や外食が身体を蝕んでいる人が多く、日本から出張にこられる方も、そのあたりを配慮されたほうがよいかと。うちの中医クリニックでも、接待疲れで身体を痛めている患者さんが少なくありません。
中国医師協会などが行った4ヶ月に及ぶ調査で、中国の大都市に住む市民の健康診断などのデータで、男性の場合は脂肪肝・中性脂肪・骨密度の低下が増加している一方、女性の場合は、乳腺増殖・子宮頸炎・痔が順に増加傾向にあるということでした。
この調査で興味深いと思ったのは、男性の場合、高血圧や脳梗塞、冠状動脈アテローム硬化性心疾患のような慢性疾患の原因の多くは、我々のように30〜39歳の間に原因があり、40〜49歳に発症するという調査結果。また、女性の慢性疾患の場合、男性よりも10年遅くて、50〜59歳が慢性疾患発生のピークになるという傾向があるようです。確かに、女性は更年期とも関係がありますからね。
さらに、都市部の女性の間で痔が増えているらしい。
運動しない人が多いだけでなく、やはり事務の仕事など坐ってする仕事が女性に多いことが原因と言うことです。また、最近、中華料理でもあまり噛まなくてもいい柔らかい食べ物が増えているのも原因らしい。その通りです。中国の中華料理の肉も軟らかくなりました。
男性の脂肪肝は、中国では若年層でも非常によく見かけますが、データでは20〜40歳の世代では、その割合は6割にものぼります。運動不足や過度の外食・接待が問題であることは言うまでもありません。
ちなみに、地域別にみると、上海人は心理的には結構うまく調節できている人が多いのに対して、広東人はイライラしている人が多いそうですが、これはホントかどうか。。。
上海で働いている日本人のみなさんについても同様です。日本以上に接待や外食が身体を蝕んでいる人が多く、日本から出張にこられる方も、そのあたりを配慮されたほうがよいかと。うちの中医クリニックでも、接待疲れで身体を痛めている患者さんが少なくありません。
2011年03月24日
加熱したトマト
考えてみれば、中華料理ではよくトマトが登場します。
一番代表的なのは、「番茄炒蛋」。トマトと卵炒めです。
この料理、正直言って私は衝撃的でした。日本人の私からすると、トマトと卵を炒めるというのはかなり異色の組み合わせに感じたからです。
ちなみに、中国の人たちで、「自分でできる料理は?」と聞かれて、「番茄炒蛋」と答えると、ずばり「料理ができない」の代名詞になっております。
中国では麺類にもトマトはよく使われます。牛肉とトマトという組み合わせが多いように思いますが、料理の世界でも「番茄煮牛肉」といったメニューもあります。これも薬膳というのかな??ウイグル料理などにもトマトは食材として欠かせません。(下の写真は、私の大好きなトマト系のラーメン)

さて、中華料理のトマトは、その殆どが熱した状態で登場します。たまに前菜で生トマトが出てきますが、あまり多くありません。中華料理ではこうした生トマトに砂糖がかかっていることもあり、また驚き!
実は、最近のアメリカの研究で、熱したトマトのほうが生のトマトよりも骨粗鬆症や前立腺癌などの癌症、さらに心臓や血管などの疾患予防につながるということです。イリノイ州国立食品安全センターが発表しました。
それによると、トマトを加熱することで抗酸化作用のあるトマチン(Tomatine)が増強され、炎症や血栓を防ぐ作用が高まるということ。
生野菜の栄養素が高いうんぬんと言われる中で、このトマトのトマチンの性質は興味深いですね。
ちなみに、中医学の薬膳の世界ではトマトは胃・肝の経絡に属し、甘・酸・涼の作用があり身体を冷やす系の食材でもありますが、胃腸の働きを整える作用もあります。温めることで、身体を冷やす作用が軽減されるはずで、ある意味合理的かも知れません。
一番代表的なのは、「番茄炒蛋」。トマトと卵炒めです。
この料理、正直言って私は衝撃的でした。日本人の私からすると、トマトと卵を炒めるというのはかなり異色の組み合わせに感じたからです。
ちなみに、中国の人たちで、「自分でできる料理は?」と聞かれて、「番茄炒蛋」と答えると、ずばり「料理ができない」の代名詞になっております。
中国では麺類にもトマトはよく使われます。牛肉とトマトという組み合わせが多いように思いますが、料理の世界でも「番茄煮牛肉」といったメニューもあります。これも薬膳というのかな??ウイグル料理などにもトマトは食材として欠かせません。(下の写真は、私の大好きなトマト系のラーメン)

さて、中華料理のトマトは、その殆どが熱した状態で登場します。たまに前菜で生トマトが出てきますが、あまり多くありません。中華料理ではこうした生トマトに砂糖がかかっていることもあり、また驚き!
実は、最近のアメリカの研究で、熱したトマトのほうが生のトマトよりも骨粗鬆症や前立腺癌などの癌症、さらに心臓や血管などの疾患予防につながるということです。イリノイ州国立食品安全センターが発表しました。
それによると、トマトを加熱することで抗酸化作用のあるトマチン(Tomatine)が増強され、炎症や血栓を防ぐ作用が高まるということ。
生野菜の栄養素が高いうんぬんと言われる中で、このトマトのトマチンの性質は興味深いですね。
ちなみに、中医学の薬膳の世界ではトマトは胃・肝の経絡に属し、甘・酸・涼の作用があり身体を冷やす系の食材でもありますが、胃腸の働きを整える作用もあります。温めることで、身体を冷やす作用が軽減されるはずで、ある意味合理的かも知れません。
2011年03月23日
安宮牛黄丸と1993年の謎
中医学の世界にいると、結構色々不思議な現象を耳にすることがあります。その中でも、特に多いのが「安宮牛黄丸」という丸薬。中医学の方剤学の教科書にも載っている処方なのですが、色々と秘話が多いのもまた事実です。
成分は、牛黄(牛の胆嚢の結石)、鬱金(ウコン)、犀角(クロサイの角)、黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)、山梔子(クチナシの実)、朱砂(硫化水銀)、梅、麝香(ジャコウジカの分泌物)、真珠、金箔などが含まれています。
先日も、上海中医薬大学附属竜華病院の腫瘤科の主任から、その昔、臨床で安宮牛黄丸を実際につかったときのエピソードを伺いましたが、脳梗塞で意識を失ったり、高熱で意識がもうろうとしているときなど、服用させると意識が戻るといったことをよく聞きます。(私自身はまだそういった臨床経験はありません。)
古い薬局には、そうした丸薬が残されていることもあり、この主任のお話を伺ったときも、丸薬を探しに中医薬局を問い合わせたそうです。
この安宮牛黄丸ですが、中身の生薬がまたすごい。昔は天然産のものが使われた麝香や犀角、牛黄などが含まれていました。ところが、生薬資源保護のため、中国では1993年からこうした生薬の使用が禁止になりました。そのため、今では投資の標的になってしまったという皮肉な話。
今の処方では、麝香が人工合成されたものとなり、犀角は水牛の角にかわり、牛黄は体外で培養された結石になってしまいました。はたして、これが本当に薬効があるのか?というのがこの投資話の理由です。
中国衛生部では、人工のものも天然のものも薬効に大きな変化はないと言っていますが、それでも1993年以前に生産された安宮牛黄丸は、大変重宝されています。実際、1粒で1万元というとんでもない価格がついているのもあるようです。人工で作られた物は、1粒100元前後で手に入ります。
いずれにしろ、こういった高価な薬は、決して不老長寿の薬ではなく、いざというときのためも緊急時の薬です。鍼灸の世界でも「醒脳開竅法」がありますが、脳をはっとさせる(覚醒させる)開竅の働きがあるものなのです。
ちなみに、方剤学では安宮牛黄丸と紫雪、さらに至宝丹をあわせて「三宝」と呼びます。いずれも、高価な生薬を使い、いざというときに力を発揮する丸薬として、伝統的な中医薬局では大切に保存されています。
成分は、牛黄(牛の胆嚢の結石)、鬱金(ウコン)、犀角(クロサイの角)、黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)、山梔子(クチナシの実)、朱砂(硫化水銀)、梅、麝香(ジャコウジカの分泌物)、真珠、金箔などが含まれています。
先日も、上海中医薬大学附属竜華病院の腫瘤科の主任から、その昔、臨床で安宮牛黄丸を実際につかったときのエピソードを伺いましたが、脳梗塞で意識を失ったり、高熱で意識がもうろうとしているときなど、服用させると意識が戻るといったことをよく聞きます。(私自身はまだそういった臨床経験はありません。)
古い薬局には、そうした丸薬が残されていることもあり、この主任のお話を伺ったときも、丸薬を探しに中医薬局を問い合わせたそうです。
この安宮牛黄丸ですが、中身の生薬がまたすごい。昔は天然産のものが使われた麝香や犀角、牛黄などが含まれていました。ところが、生薬資源保護のため、中国では1993年からこうした生薬の使用が禁止になりました。そのため、今では投資の標的になってしまったという皮肉な話。
今の処方では、麝香が人工合成されたものとなり、犀角は水牛の角にかわり、牛黄は体外で培養された結石になってしまいました。はたして、これが本当に薬効があるのか?というのがこの投資話の理由です。
中国衛生部では、人工のものも天然のものも薬効に大きな変化はないと言っていますが、それでも1993年以前に生産された安宮牛黄丸は、大変重宝されています。実際、1粒で1万元というとんでもない価格がついているのもあるようです。人工で作られた物は、1粒100元前後で手に入ります。
いずれにしろ、こういった高価な薬は、決して不老長寿の薬ではなく、いざというときのためも緊急時の薬です。鍼灸の世界でも「醒脳開竅法」がありますが、脳をはっとさせる(覚醒させる)開竅の働きがあるものなのです。
ちなみに、方剤学では安宮牛黄丸と紫雪、さらに至宝丹をあわせて「三宝」と呼びます。いずれも、高価な生薬を使い、いざというときに力を発揮する丸薬として、伝統的な中医薬局では大切に保存されています。
2011年03月22日
月経前症候群にビタミンB類の食べ物がいいようです
女性の月経前に発生し、月経が始まるとともに解消される月経前症候群(PMS)に関して、ビタミンB類を沢山含む食べ物の摂取が有効であるという研究結果が、米国のUniversity of Massachusettsから発表されていました。
うちの中医クリニックでも時々見かけるPMSでは、生理前にイライラしたり気力が出なかったりする精神的な症状のほかにも、ニキビやむくみ、頭痛や眠気など肉体的な症状を抱えておられる場合が多いです。
中医学では、心血不足や肝経欝熱、さらに痰などから弁証し、生薬を使うと一定の改善がみられますが、西洋医学の研究では、ビタミンB類の摂取に効果があるようです。ただし、サプリメントなどでビタミンB類を摂取するのでは効果が無く、ほうれん草やオートミールなどで摂取するのが望ましいとしています。
実験によると、PMS予防のためにも、ビタミンB1やB2などをしっかりと日常生活に取り入れるべきで、そうするとPMSの発病率が25%減少したということです。
胡麻やニラなんかにもビタミンB類が多く含まれています。
薬を服用せずに、食材で症状の改善できればそれが一番です。
うちの中医クリニックでも時々見かけるPMSでは、生理前にイライラしたり気力が出なかったりする精神的な症状のほかにも、ニキビやむくみ、頭痛や眠気など肉体的な症状を抱えておられる場合が多いです。
中医学では、心血不足や肝経欝熱、さらに痰などから弁証し、生薬を使うと一定の改善がみられますが、西洋医学の研究では、ビタミンB類の摂取に効果があるようです。ただし、サプリメントなどでビタミンB類を摂取するのでは効果が無く、ほうれん草やオートミールなどで摂取するのが望ましいとしています。
実験によると、PMS予防のためにも、ビタミンB1やB2などをしっかりと日常生活に取り入れるべきで、そうするとPMSの発病率が25%減少したということです。
胡麻やニラなんかにもビタミンB類が多く含まれています。
薬を服用せずに、食材で症状の改善できればそれが一番です。
2011年03月21日
日本の鍼灸師の先生方
これも何かのご縁かと思います。
千客万来は嬉しい限りです。
日本の東京からわざわざ日本医学柔整鍼灸専門学校のスタッフや鍼灸師の先生方が来られました。私自身が、夜の診察の時しか時間が取れなかったにもかかわらず、ご足労いただいて非常に恐縮です。ありがとうございました。1時間ほどいろいろ交流させていただきました。
中医学をしている以上、日本の鍼灸や薬剤師の先生方との交流は日頃からあるのですが、結構、中医学系の先生との交流が多いため、日本の鍼灸の先生とお会いできて非常に光栄でした。
東北東日本大震災の影響で、医療の世界も大変なことになっていますが、いろいろお話を伺っていると、鍼灸師や柔道整復師の先生方も、被災地でボランティアとして施術に行っておられると言うことです。
医療機器や医薬品が被災地で不足する中、鍼灸がもし現場で使えるのなら、これはかなり役立つはずです。カゼはもちろんのこと、不眠症の治療、腹痛や便秘などの症状にも、針ならばとりあえずの応急処置はできます。
中国では、鍼灸をしている中医学の先生が、カバンの中に鍼灸セットを忍ばせていて、鉄道や飛行機などで急病人が出たときに医師として手を挙げて治療されます。それぐらい鍼灸の世界は応用範囲が広いのです。
日本では、昨今、就職難のあおりをうけて、鍼灸師などの資格を目指す人が増えていると聞きます。確かに独立開業できるチャンスでもありますが、数が増えすぎて過当競争にもなってきているみたいです。でも、伝統医学のすばらしさを、こうした学習を通じて知っていただければ、裾野が広がるわけですし、決して悪いことではないと思います。
若い鍼灸師の先生からは、まだまだ治療に対して自身が持てないといったお話も伺いました。
私も臨床に出たばかりのころは、果たして中医学で本当に効果があるのかいろいろ不安がありました。でも、諦めずに師匠につきながら地道に経験を積んでいくうちに、実は想像以上の効果があることが実感できるようになってきました。私の中医学の師匠、上海中医薬大学附属龍華医院の陳以平教授には、本当に感謝しています。
日本人であるからこそ、中国人には見えない中医学に魅力を感じることができ、そしてそれを実践していかなくてはいけません。純粋な医療としての中医学の発展に、私もがんばって行きたいと思っています。
しかし、日本でせっかく伝統医学の知識を専門的に勉強している鍼灸師の先生が、生薬を処方できないというのは(少なくとも専門学校などで勉強しないというのは)なんか間違っていると思います。伝統医学は鍼灸以外にも、生薬など内服の薬を結合することで初めて本領を発揮するのですから。
千客万来は嬉しい限りです。
日本の東京からわざわざ日本医学柔整鍼灸専門学校のスタッフや鍼灸師の先生方が来られました。私自身が、夜の診察の時しか時間が取れなかったにもかかわらず、ご足労いただいて非常に恐縮です。ありがとうございました。1時間ほどいろいろ交流させていただきました。
中医学をしている以上、日本の鍼灸や薬剤師の先生方との交流は日頃からあるのですが、結構、中医学系の先生との交流が多いため、日本の鍼灸の先生とお会いできて非常に光栄でした。
東北東日本大震災の影響で、医療の世界も大変なことになっていますが、いろいろお話を伺っていると、鍼灸師や柔道整復師の先生方も、被災地でボランティアとして施術に行っておられると言うことです。
医療機器や医薬品が被災地で不足する中、鍼灸がもし現場で使えるのなら、これはかなり役立つはずです。カゼはもちろんのこと、不眠症の治療、腹痛や便秘などの症状にも、針ならばとりあえずの応急処置はできます。
中国では、鍼灸をしている中医学の先生が、カバンの中に鍼灸セットを忍ばせていて、鉄道や飛行機などで急病人が出たときに医師として手を挙げて治療されます。それぐらい鍼灸の世界は応用範囲が広いのです。
日本では、昨今、就職難のあおりをうけて、鍼灸師などの資格を目指す人が増えていると聞きます。確かに独立開業できるチャンスでもありますが、数が増えすぎて過当競争にもなってきているみたいです。でも、伝統医学のすばらしさを、こうした学習を通じて知っていただければ、裾野が広がるわけですし、決して悪いことではないと思います。
若い鍼灸師の先生からは、まだまだ治療に対して自身が持てないといったお話も伺いました。
私も臨床に出たばかりのころは、果たして中医学で本当に効果があるのかいろいろ不安がありました。でも、諦めずに師匠につきながら地道に経験を積んでいくうちに、実は想像以上の効果があることが実感できるようになってきました。私の中医学の師匠、上海中医薬大学附属龍華医院の陳以平教授には、本当に感謝しています。
日本人であるからこそ、中国人には見えない中医学に魅力を感じることができ、そしてそれを実践していかなくてはいけません。純粋な医療としての中医学の発展に、私もがんばって行きたいと思っています。
しかし、日本でせっかく伝統医学の知識を専門的に勉強している鍼灸師の先生が、生薬を処方できないというのは(少なくとも専門学校などで勉強しないというのは)なんか間違っていると思います。伝統医学は鍼灸以外にも、生薬など内服の薬を結合することで初めて本領を発揮するのですから。
2011年03月20日
ニラのおハコで陽を蓄える?!
妻の実家から、手作りの点心の差し入れがありました。

中国語では、「韭菜盒子」と呼びますが、日本語で言うと「ニラのハコ」といってもいいのではないでしょうか。小麦粉で作られた生地のなかに、ニラがぎっしりと詰め込まれています。ニラをたっぷりと食べるのにはふさわしいメニューかもしれません。

中のニラは、卵炒めされており、皮の食感とものすごくマッチして美味しいのです。巨大餃子ぐらいのサイズがあります。 上海の街角でも時々売られていますよね。
この時期、ニラを食べるメニューが多いように思います。
ニラのことを、中国語での別名を「壮陽草」とも呼びます。文字通り、身体の陽気をパワーアップさせる食べ物です。春の陽気が盛んになってくるときに、また早春の寒さを吹っ飛ばすためにもぜひ食べてみたい食材の一つです。
漢方薬や中医薬ではインポテツなどの治療に、このニラの種を使ったりしますが(韭菜子・五子丸)、ニラ自身にも身体を温める働きがあります。また、血巡りを改善する作用もあったりします。これは、ニラのにおいの成分でもある「硫化アリル」の働きと関係があり、ビタミンB群の含有量が多いことからも、ニラを食べたら元気になることと繋がるかと思います。
とはいえ、もともと身体が火照っていたりする熱系の体質の人はあまり食べ過ぎないように、ということです。

中国語では、「韭菜盒子」と呼びますが、日本語で言うと「ニラのハコ」といってもいいのではないでしょうか。小麦粉で作られた生地のなかに、ニラがぎっしりと詰め込まれています。ニラをたっぷりと食べるのにはふさわしいメニューかもしれません。

中のニラは、卵炒めされており、皮の食感とものすごくマッチして美味しいのです。巨大餃子ぐらいのサイズがあります。 上海の街角でも時々売られていますよね。
この時期、ニラを食べるメニューが多いように思います。
ニラのことを、中国語での別名を「壮陽草」とも呼びます。文字通り、身体の陽気をパワーアップさせる食べ物です。春の陽気が盛んになってくるときに、また早春の寒さを吹っ飛ばすためにもぜひ食べてみたい食材の一つです。
漢方薬や中医薬ではインポテツなどの治療に、このニラの種を使ったりしますが(韭菜子・五子丸)、ニラ自身にも身体を温める働きがあります。また、血巡りを改善する作用もあったりします。これは、ニラのにおいの成分でもある「硫化アリル」の働きと関係があり、ビタミンB群の含有量が多いことからも、ニラを食べたら元気になることと繋がるかと思います。
とはいえ、もともと身体が火照っていたりする熱系の体質の人はあまり食べ過ぎないように、ということです。
2011年03月18日
第1回中医ミニサロン無事終了
3月18日、第1回中医ミニサロンが無事終了しました。

おかげさまで満員御礼で、今回は定員より3人多い18人の方にご参加いただきました。場所が狭くて大変申し訳ございませんでした。いつかもっと大きな会場でできたらと思っています。
今回は、私自身の経験に基づく鼻炎対策をお話ししました。今年は日本で例年よりも花粉の量が多いという報道でしたが、私も日本出張を抗ヒスタミン剤などを使わず無事乗り越えることができました。花粉症になるメカニズムと中医学におけるいわゆる「体質改善」のポイントについて、皆様といろいろ交流できて良かったです。
このミニサロン、せっかくですので定期的にできないかと考えています。少人数で交流しながらお互い知識を共有できるような取り組みにしたいと思います。私にとっては中医学の裾野を広げていくことで、日本漢方などへの関心ももっていただけたらと思いました。
日本では今年も様々な場所で講演活動をやっておりまして、今年も5月に大阪で日本薬膳研究会(中西喜次会長)での講演が決まっております。日本の大学の先生などいわゆる有識者が多い研究会なので、交流できるのを楽しみにしております。

おかげさまで満員御礼で、今回は定員より3人多い18人の方にご参加いただきました。場所が狭くて大変申し訳ございませんでした。いつかもっと大きな会場でできたらと思っています。
今回は、私自身の経験に基づく鼻炎対策をお話ししました。今年は日本で例年よりも花粉の量が多いという報道でしたが、私も日本出張を抗ヒスタミン剤などを使わず無事乗り越えることができました。花粉症になるメカニズムと中医学におけるいわゆる「体質改善」のポイントについて、皆様といろいろ交流できて良かったです。
このミニサロン、せっかくですので定期的にできないかと考えています。少人数で交流しながらお互い知識を共有できるような取り組みにしたいと思います。私にとっては中医学の裾野を広げていくことで、日本漢方などへの関心ももっていただけたらと思いました。
日本では今年も様々な場所で講演活動をやっておりまして、今年も5月に大阪で日本薬膳研究会(中西喜次会長)での講演が決まっております。日本の大学の先生などいわゆる有識者が多い研究会なので、交流できるのを楽しみにしております。
2011年03月16日
健康医学3月号連載『中医学的花粉対策』
2011年03月14日
日皮協ジャーナル Vol.33
2011年03月11日
大和当帰
私の地元奈良で大変お世話になっている大峰堂薬品工業株式会社様からのご紹介で、奈良県桜井で和漢生薬を古くから扱っておられる福田商店様へ、奈良県の生薬事情を伺いに行かせていただきました。折しも東北東日本大震災があった3月11日の訪問でした。
以前から、奈良で収穫される品種の生薬に興味があり、奈良県製薬協同組合の事務局からも、福田商店の福田先生を一度訪れてみるようにというお話がありましたが、今回やっと実現できました。本当に嬉しい限りです。
福田真三先生が、奈良には大和芍薬・大和牡丹・大和当帰(大深当帰)の代表的な3種類の生薬があることを論文に書かれており、この中でも最も丹精込めて作られていたのが大和当帰だということです。その歴史は300年にも及ぶというのですから、ものすごいものです。
日本産の当帰では、北海道のものが有名ですが、奈良の土壌からも、特に奈良県五條市大深町のものも香りが良く、すばらしい品質だそうです。まだ実物を見たことがないので、今度ぜひ見てみたいと思います。
ちなみに、奈良の当帰は効能的に補剤系の力がつよいのだそうです。

この福田商店様では、日本国産の生薬を取り扱っており、日本有数の生薬取り扱い商店でもあります。写真は、国産の蒼朮(そうじゅつ)です。日本漢方では水毒を治す生薬として重宝されますが、中医学では湿をとる生薬として使われます。表面に白いブツブツが沢山あるのがやはり良質とされています。
こうした日本の生薬資源をみると、もっと積極的に使われなければ勿体ないように思います。その土壌でしか収穫できないものも多く、奈良県の宝でもあるのです。
この日、大阪に出て、大峰堂薬品工業株式会社の辻将央社長と会食。お忙しい中お時間をとっていただき、社長お勧めの新明石鮓へ。生まれて初めて世界各地のトロを一度にいただきました。生薬同様、産地によって本当に味が違うことを知り、驚きました。
実は、この日、社長も私と会う予定がなければ東京だったそうで、私も福田商店様や社長と会う予定がなければ東京だったわけで、地震の影響で翌12日に私自身が上海に戻るのも大変だったかもしれません。本当に奇遇なご縁でした。
以前から、奈良で収穫される品種の生薬に興味があり、奈良県製薬協同組合の事務局からも、福田商店の福田先生を一度訪れてみるようにというお話がありましたが、今回やっと実現できました。本当に嬉しい限りです。
福田真三先生が、奈良には大和芍薬・大和牡丹・大和当帰(大深当帰)の代表的な3種類の生薬があることを論文に書かれており、この中でも最も丹精込めて作られていたのが大和当帰だということです。その歴史は300年にも及ぶというのですから、ものすごいものです。
日本産の当帰では、北海道のものが有名ですが、奈良の土壌からも、特に奈良県五條市大深町のものも香りが良く、すばらしい品質だそうです。まだ実物を見たことがないので、今度ぜひ見てみたいと思います。
ちなみに、奈良の当帰は効能的に補剤系の力がつよいのだそうです。

この福田商店様では、日本国産の生薬を取り扱っており、日本有数の生薬取り扱い商店でもあります。写真は、国産の蒼朮(そうじゅつ)です。日本漢方では水毒を治す生薬として重宝されますが、中医学では湿をとる生薬として使われます。表面に白いブツブツが沢山あるのがやはり良質とされています。
こうした日本の生薬資源をみると、もっと積極的に使われなければ勿体ないように思います。その土壌でしか収穫できないものも多く、奈良県の宝でもあるのです。
この日、大阪に出て、大峰堂薬品工業株式会社の辻将央社長と会食。お忙しい中お時間をとっていただき、社長お勧めの新明石鮓へ。生まれて初めて世界各地のトロを一度にいただきました。生薬同様、産地によって本当に味が違うことを知り、驚きました。
実は、この日、社長も私と会う予定がなければ東京だったそうで、私も福田商店様や社長と会う予定がなければ東京だったわけで、地震の影響で翌12日に私自身が上海に戻るのも大変だったかもしれません。本当に奇遇なご縁でした。
2011年03月07日
日本温泉学会 第14回 三重・熊野大会に出ております
2011年03月01日
不足する中国の小児科医
上海中医薬大学の大学院で博士課程での研究をしていたとき、研究テーマが小児ネフローゼと関係があったため、一時復旦大学附属児科医院に通っていた時期がありました。
その当時、師事させていただいた院長の徐虹教授が小児腎臓病のご専門で、臨床を半年ほどご一緒させていただいたことがあります。西洋医学の病院ですので、中医学とはつながりがないと思いきや、意外にも中医学に大きな関心を持っておられ、私の研究にいろいろご指導してくださいました。
児科医院は、上海でも有数の小児科専門総合病院で、中国全国からも患者が訪れます。折しも手足口病が大流行し、外来の行列が入り口の外まで続いておりました。
充実しているように見えている中国の小児科ですが、やはり人材不足が深刻化しているようです。こちらでは有名な話ですが、最近15年間で小児科専門医の増加はたった5000人で、実に20万人は不足しているというのです。
大病院では、かなりの科で医師のボーナス支給などにおいて独立採算制が採用されているところが多いのですが、小児科は薬を使用する量も相対的に大人よりは少ないため収入が少なめというのがこちらでは常識になっていて、さらに一人っ子政策の影響で、父兄の小児科に対する要求が非常に高く、リスクが高いという原因で敬遠されているようです。
検査一つにしても、子供はなかなか言うことが聞かないだけでなく、採血一つにしても拒否する親もいたりして、大変だという現実もあります。
ただ、一方で小児科疾患は回復するのも早いことが多く、一度元気になれば素直にそのパワーを見せてくれます。医者をしていて、これほど嬉しいことはありません。
中国の小児科の権威、上海交通大学附属新華医院の郭迪教授が、「小児科医の多くは長寿である。なぜなら、子供の天真爛漫な姿に、医師たちが影響を受けるからである」というようなことをおっしゃっていました。
責任が重い分、達成感や充実感があるのだと思います。
その当時、師事させていただいた院長の徐虹教授が小児腎臓病のご専門で、臨床を半年ほどご一緒させていただいたことがあります。西洋医学の病院ですので、中医学とはつながりがないと思いきや、意外にも中医学に大きな関心を持っておられ、私の研究にいろいろご指導してくださいました。
児科医院は、上海でも有数の小児科専門総合病院で、中国全国からも患者が訪れます。折しも手足口病が大流行し、外来の行列が入り口の外まで続いておりました。
充実しているように見えている中国の小児科ですが、やはり人材不足が深刻化しているようです。こちらでは有名な話ですが、最近15年間で小児科専門医の増加はたった5000人で、実に20万人は不足しているというのです。
大病院では、かなりの科で医師のボーナス支給などにおいて独立採算制が採用されているところが多いのですが、小児科は薬を使用する量も相対的に大人よりは少ないため収入が少なめというのがこちらでは常識になっていて、さらに一人っ子政策の影響で、父兄の小児科に対する要求が非常に高く、リスクが高いという原因で敬遠されているようです。
検査一つにしても、子供はなかなか言うことが聞かないだけでなく、採血一つにしても拒否する親もいたりして、大変だという現実もあります。
ただ、一方で小児科疾患は回復するのも早いことが多く、一度元気になれば素直にそのパワーを見せてくれます。医者をしていて、これほど嬉しいことはありません。
中国の小児科の権威、上海交通大学附属新華医院の郭迪教授が、「小児科医の多くは長寿である。なぜなら、子供の天真爛漫な姿に、医師たちが影響を受けるからである」というようなことをおっしゃっていました。
責任が重い分、達成感や充実感があるのだと思います。